スカーレット姉妹の現代旅   作:松雨

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スカーレット姉妹と学校最後の日

「今日でレミリアちゃんにフランちゃん、うちの学校に来るのは終わりかぁ……本当、時間が経つのは早いよねー」

「本当、あっという間の1ヵ月だったわ。まあ、学校に来るのは今日が最後だけど、日本には明日まで居るのよね」

 

 レミリアとフランが現代旅を始めてから42日目の朝、学校の教室の一角で、2人はクラスメートたちとの会話にいつもよりも積極的に勤しんでいた。何故なら、今日が学校に登校する最後の日であるためである。

 いつもならば、登校してから1時間目の授業が始められるまではのび太と3人で一緒に居るか、そこにジャイアンやスネ夫、しずかちゃんを加えた6人で楽しく会話を交わす事が殆んどであり、今日もそうなるはずだった。

 

 しかし、フランが『今日1日はクラスの皆とじっくりお話した方が良いと思うよ?』とレミリアに言った事により、今日に限って学校に居る間はのび太との会話よりも、他のクラスメートとの会話に重点を置くと決めた訳である。

 

 フランがこう決め、レミリアに提案したのには、大きく2つの理由があった。

 それは、今日が学校登校の最終日であれど()()()()()()()()()()()と言う事と、こんな特別な日までのび太とべったりくっついていたせいでクラスメートから不興を買い、自分たちが居なくなった後に大好きなのび太に何かあっては堪らないと言うものだった。

 ただ、これをフランがレミリアに提案している際、今更感が漂ってた故にいつも通りにしようかとも思ったらしいが、やらぬよりはマシだと思い直し、実行に至った経緯が存在した。

 

「それに今日、ドッジボール大会だから……2人の最後の登校日だし、勝って思い出残したいから、頑張ろうね!」

「ええ、勿論よ。今日のドッジボール大会は、私とフランの思い出のためと言う意味でも、貴女たちの思い出のためと言う意味でも、絶対に負けて終われないからね」

「うん! それに、負けたら()()()に褒めてもらえないもん! 何がなんでも、絶対に勝って見せるよ!」

 

 そんな思いの元、会話をしていたクラスメートの女の子の1人が、今日行われる事になっている高学年のドッジボール大会についての話題を、勝ちたいから頑張ろうねとテンション高めかつ唐突に、レミリアとフランに振っていた。

 

 どうやら、クラスメートの女の子曰く、2人の最後の登校日だから自分たちの思い出にも残したいし、何より2人の最後の良い思い出として、この大会を勝利で飾りたいと言う意図があったが故のハイテンションであるようだ。

 ちなみに、のび太一行を含めた他のクラスメートたちも、同様の思いを抱いているらしい。

 

 当然、レミリアとフランもこの学校に来て最初の大イベントかつ、最後の登校日である今日の大会を、最高の思い出として超長期的に記憶に残しておくつもりであった。

 その上、更に優しく接してくれたクラスメートたちに感謝の気持ちを込め、勝利をプレゼントするつもりでもあったため、この女の子の言葉に対して強く肯定の意を示す。

 

 もっとも、レミリアはともかくとしてフランの場合は、自分の活躍をのび太の思い出に残した上で、それを褒めてもらって自分の思い出をより強固にしたいと言う欲の方が()()()に強く、クラスメートたちの事は二の次であったが。

 

「さてと……もうそろそろ時間だぞ。男子は第1体育館に、女子は第2体育館へと向かいなさい」

「「はーい!」」

 

 で、2人がそんな感じのやり取りを女の子と交わしていた時、教室の扉が開いて先生が入ってくると、クラスの皆に向かってい男子は第1体育館へと向かい、女子は第2体育館に向かえとの指示を出し始めた。ドッジボールの大会が始まる時間が迫ってきているらしい。

 

「レミリア、フラン。頑張ってね。その場に応援には行けないかもしれないけど、応援してるから」

「勿論よ、のび太。それと、貴方のために勝利をプレゼントするつもりだから、楽しみにしてなさい」

「お兄様! 私頑張ってくるから、お兄様も頑張って! 勿論、無理しない程度にね!」

 

 先生の指示を聞き、各々話などで盛り上がっていたクラスメートたちは準備を素早く済ませると、各々体育館へと向かい始めていった。レミリアとフランも、のび太に対して『最高の勝利』をプレゼントすると言う強気の宣言をした上、そっちも無理しない程度に頑張ってくれと言うやり取りを交わすと、他の女子たちと共に第2体育館へと向かっていった。

 

「あら……私たちのクラス、いきなり試合みたいよ。しかも、相手は6年生……強いのかどうかは知らないけど、油断は出来ないわね」

「ふーん。まあ、どんな相手でも負ける気なんてさらさらないから、私には関係ないけどさ」

 

 目的の体育館へ着くと、入り口の扉付近にでかでかと貼られていた大会の試合順などが書かれている大きな紙に気づき、それを見たレミリアとフランは、自分たちの居るクラスがいきなり試合がある事と、最初の相手が上級生だと言う事を知った。

 初戦の相手の強さが不明な以上、人間らしい範囲でどう行動すれば正解なのかが分からないためにレミリアは()()警戒しているものの、フランは無警戒とは言わないが、気楽そうに返事を返していた。

 

「2人共、試合が始まるからこっちに来てー!」

「今行くわ!」

「はーい! 今行くよー!」

 

 

 大きな紙を時折横目で見ながら会話を交わしていると、コートの方に先に行っていたクラスメートの1人が、試合が始まるからこっちに来てくれと声をかけてきたのを2人は耳にした。まだ話は途中であったものの、試合が始まるとあっては話を続ける訳にもいかないため、即座に中断して返事を返しつつコート内に向かっていった。

 

「ふっ……今回の相手に噂の留学生2人が居るとは、何とも言えないわ」

「小さい子たちだから、他の子たちよりも多少当てにくそうです。運動能力も分からないから、油断は禁物ですね」

「それに、あの子たちを抜きにしても決して弱いクラスではない……緊張してきたわぁ……!」

「まあ、いくら相手が強かろうともうちのクラスがが圧勝してやるがな。いつぞや戦った別クラスの子たちのように、相手にならんよ」

 

 すると、コート内に入ってくるレミリアとフランを見た相手陣営が、各々話し合いを始めたのを確認出来た。その様子を見るに、彼女たちにとって未知の存在である2人を警戒している事が良く分かる。

 若干名、自分のクラスの強さを信じて疑わないが故に舐めてかかってきていたのも2人とクラスメートには分かったものの、そう言う人も居るよねと殆んど気にはしなかった。むしろ、勝ってやると言う意欲がより高まった位だった。

 

「それでは、試合を始めます!!」

 

 2人がコート内に入ってから1分程経った時、審判役の先生が試合を始めるとの号令をした事によって1回目の試合が始まったが……結果から先に言ってしまうと、この試合は他のクラスメートが何故か鬼のような強さを発揮したため、レミリアとフランが活躍するまでもなく、余裕の勝利で幕を閉じた。

 

 まず、最初のジャンプボールでは相手方に取られてしまいはしたものの、それから中盤辺りまでは外野を含めた相手の女子の投げるボールをことごとく回避し、男子とやり合えると言える位の攻撃を仕掛け、ほぼ半分まで数を減らす事に成功する。

 中盤以降は疲労や相手方の奮戦もあってか徐々に味方側の数を減らされはしたものの終始有利に試合を進め、最終的にはレミリアとフランを含めた6人を残しての勝利と言う結果を得る。

 

「お姉様。今日の皆、やたらと強くない?」

「確かに、やたらと強いわね。大方、本番だから気合いが入ったと言ったところでしょうけどね」

 

 あまりの余裕の勝利にレミリアとフランはもとより、クラスメートの他の女子たちも、ただただ驚くばかりであったらしい。そして、相手の方はあっさり負けすぎて複雑な思いを抱いているようだったが、試合が終わった後はこちらに挨拶を済ませ、すぐに立ち直っていたため、心配は要らないようだ。

 

「なるほど。ところで、次の試合はいつなんだろうね?」

「次の試合? いつなのかしら……」

「2人共。次の試合なら、順々に進めばおよそ40分後ですよ。だから、それまでは休憩と他クラスの試合観戦……それと、男子の方の試合も気になるのなら見に行っても大丈夫みたいです」

 

 そうして、鬼のような強さを誇った味方に驚きながらも戦った相手との挨拶を済ませた2人が、次の試合はいつ頃だろうかと話をしていた時、クラスメートの女の子が会話に割り込んでくると、2人の今1番知りたかった事を話し始めた。

 

 女の子曰く、普通に試合が進めばと言う条件がつくものの、およそ40分で自分たちの2回目の試合が始まるとの事らしい。そして、それが始まるまでの間は体育館内でのトイレや水分補給休憩を行ったり、高学年限定ではあるものの、他クラスの男子や女子の試合を見に行ったりする事が可能なようだ。

 

「へぇ、そうなの? うーん……フラン。貴女はどうしたい?」

「私? えっと、どうしようかな……あっ。そう言えば、男子たちの試合はどうなってるの?」

「男子の方は確か、うちのクラスはこれからすぐ始まるって聞きましたけど――」

 

 レミリアは女の子からその話を聞き、少し考え込んだ後にフランに対し、貴女はどうしたいのかと質問をしてきていた。その問いに対する答えによって、どうするか迷っていた自分の行動を決めるつもりでいたらしい。

 

 貴女はどうしたいのかとレミリアから聞かれたフランは、同様に少し考え込んだ後に男子たちの試合がどうなっているのかが疑問に思い始めてきたらしい。話に割り込んできた女の子に対し、今はどうなってるのかとの質問を投げ掛ける。

 

「なら、私はそっちを見に行く! お兄様が頑張ってる姿を見れるなんて、最高だもん! お姉様も、一緒にお兄様()見に行くでしょ?」

 

 そんな感じで、男子たちの試合はどうなっているのかと聞かれた女の子が、自分たちのクラスの男子はこれから始まると聞いたと言ったところで、フランは即座に男子の試合を見に行く事を決意した。理由は勿論、のび太が活躍しているところを見ていたいからである。

 当然、のび太がまるで役に立っていないと言う状況になる可能性も0ではないものの、仮にそうなったとしても見れる限界の時間まで見続けようと心の中で誓っていた。

 

「のび太を? 勿論よ。フランも行くのなら、尚更行かなきゃね」

「うん! じゃあ、早く行こう! お姉様」

 

 で、その後レミリアに一緒にのび太の活躍しているところを見に行くかとフランが確認をとったところ、勿論だとすぐさま答えを出した事によって正式に男子が試合をする第1体育館へと2人は向かう事に決まり、教えてくれた女の子に会釈をしてから早速歩みを進め始める。

 

「あっ、始まってる! ギリギリセーフだったね、お姉様」

「ええ、そうね」

 

 第1体育館へと着き、クラスメート以外の男子たちから自分たちに降り注ぐ視線をないものとして扱いつつ、ちょうど試合が見えやすいところに腰を落ち着け、観戦を始めた。

 

 レミリアとフランが観戦し始めてから7分後、終盤も終盤に相手の投げたボールが運悪くのび太の顔に思い切り当たり、怪我をして途中退場してしまうと言うトラブルが発生してしまったものの、試合自体はジャイアンや出来杉を筆頭とした運動神経抜群の男子の活躍によって、のび太が退場してから僅かな時間で女子同士の戦いと同じく、勝利で終える事は出来た。

 

「痛そうな怪我……待ってて、お兄様。今治してあげる」

 

 が、フランはのび太が見るからに痛そうな怪我をしてしまった事で、勝利を喜ぶどころの精神状態ではなくなってしまう。故に、保健室へと向かうのび太を半ば強引に人目につかないところへと連れ込むと、即座に回復魔法を使って顔に負った怪我を治し、垂れていた血を手持ちのハンカチで拭って綺麗にした。幸いにも、洋服には血の汚れは付いていなかったため、着替えはしなくても済みそうである。

 

「大丈夫? 痛くない……?」

「うん。もう大丈夫だよ、フラン。ありがとう」

「良かったぁ……えへへ、お兄様! 勝って良かったね!」

 

 回復魔法による怪我の治療を終え、痛みも完全に消え去ったところを確認してからようやく、フランはのび太たちが勝利した事に対して喜びを露にする事が可能となった。

 

 ある程度の時間会話を交わした後は、2人でレミリアのところへと戻り、怪我は問題なく治療が出来た事を耳元で報告し、女子の試合が始まるまでの残りの時間、他クラスの試合を見ると言う名目でこの場に留まり、ずっと会話をして過ごした。

 途中、綺麗さっぱりのび太の怪我が治っている事に対する疑問を抱いたクラスメートに話しかけられるも、適当に話をして受け流す。

 

「じゃあ、のび太。私たちはもうそろそろ試合だから戻るわね」

「お兄様も怪我に気を付けてね!」

 

 女子の試合が始まる5分前、第1体育館からの距離も考慮したレミリアとフランはのび太に一旦別れを告げ、少しだけ急いで第2体育館へと戻った。

 

 体育館へと戻り、時間が少し延長されて6分後に2回目の試合が始まったが、結果は先程よりも余裕はなくなってきてはいたものの、レミリアとフランが本格的に活躍するまでもなく、2人を含めた5人を残した状態で同学年の相手から勝利を得る事に成功した。これにより、味方側はまだ戦っていないクラスから本格的に警戒される事となる。

 

 そして、クラスメートやのび太たちと試合を背景に楽しく会話を交わすなどの、ある程度の休憩を挟みつつ行われた3回目と4回目の試合も同様に女子の試合は勝利で飾る事が出来た。3回目の試合は相手が対策を練ってきた上にかなり強い事もあって、レミリアとフランが人の常識の範囲内での本気で動く事になる位の、若干危ないシーンがあったが。

 

「ふぅ……3回目も4回目の試合も何とか勝てたわね。けど、次は並大抵では行かなそうよ」

「確かに、決勝戦だもんね。相手もかなり強くなってくるだろうし」

「でも、レミリアちゃんとフランちゃんが居てくれるから大丈夫だと私は思うわ。勿論、油断しない事が前提だけどね」

 

 4回目の試合が終わり、休憩などを済ませて5回目の決勝戦が行われるお昼近くになった時、快進撃を見せているレミリアとフランも含めたクラスメートの皆にも、流石に緊張感が漂って来はじめたようだ。まあ、相手も決勝戦まで勝ち抜いてきた強敵であるから、そうなのも当たり前であろう。

 

「それでは、決勝戦を行いたいと思います! ここまで残ったクラスの女子の方々は、すぐさまコート内にお集まり下さい!」

 

 そんな感じでクラスメートの女子たちが決勝戦についての話題で持ちきりでいた時、体育館内にここまで勝ち残ったクラスの女子はすぐさまコート内に集まるようにとの、マイクを使用した先生の声が響き渡った。時間的に試合がもうすぐ始められる事になるみたいだ。

 

「お姉様……!」

「ええ! 今回の相手、今まで戦った相手とは桁が違うわ! 様子見せず、心してかかりなさい!」

 

 両クラスの女子たちが先生の呼び掛けで集まり、行われたジャンプボールが背が高めの女子に相手に取られた状態で試合が始まると、すぐさまレミリアとフランは驚く事となってしまった。どうやら、初撃をスレスレで避けた際、今までの試合の中で戦った相手と比べて、かなり強いと肌で感じ取った事が要因であるらしい。

 

 勿論、吸血鬼の身体能力を発揮すれば、この程度の速さのボールなどは2人にとって、回避も受け止めるのも容易だ。しかし、あくまでも人間の子供と言う体である故に、下手に超人的な力を発揮して目立ってしまえば、そこから芋づる式に人間ではないとのび太一行以外の誰かにバレてしまう可能性が全くないとは言えない。

 

 故に、上手い事人の子供として違和感のないように振る舞いなどをを装う必要があるのだが、今回のように技術的に優れている個人や団体を相手にする場合、それが普通よりも難しくなってしまう。

 ジャイアンがクラスメートに対し、出来杉を超える運動神経の持ち主だと明言したお陰で幾分か難易度は下がっているものの、余計に気を使う事になるのは間違いないのも、1つの要因である。

 

「なっ……あの青っぽい髪の外国の子、動きがヤバい。金髪の方の子も凄い動きだし、本当に人間?」

「確かに、そう思うのも分かります。他の女の子もそれなりに強いけど、あの2人だけは別格ですし。既に3人、あの2人を狙ってやり返されて倒されてますから」

「でも、あの子たちを倒さないと勝てない。だから、やるしかない」

 

 ただ、ある時に相手が投げたボールを、レミリアが振る舞いの装いの一部をうっかり忘れて見せた、軽くジャンプして開脚回避を行い、股下を通過したボールを片手で掴んでからの無茶なそのままの体勢で投げつけて当てると言う超人的な技により、今までの努力に少々綻びが生じてきてしまう。

 

 まあ、このお陰で味方の女子たちが奮起して強さが増し、動揺した相手の一部の気を逸らしたと言う意味では、レミリアのこの行為もあながち無駄ではない。それに、空を飛んだり人には発揮し得ない怪力を披露した訳ではないため、まだ言い訳が効くレベルでもあったため、状況はそれ程悪くはない。

 

「フラン、行くわよ!」

「うん! 分かった!」

 

 それからは味方の女子たちの士気も上がり、徐々にではあるが全体的な勢いでも押し始めてきた。ただ、技術力や判断力では相手の方に若干の分がある。数的有利を取れているとは言え、まだ微塵たりとも気を抜けない事だけは確かだ。

 

「勝った……」

「勝ったわね……」

 

 そうして10分近く、激しいボールの投げ合いを経て、最終的には外野にいた味方の女子が残っていた相手クラスの1人の足に投げたボールを見事に当てたため、レミリアとフランを含めた3人を残した状態でこの決勝戦を最高の勝利で飾る事に成功した。




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