スカーレット姉妹の現代旅   作:松雨

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スカーレット姉妹とお泊まり

「助かったよレミリア。お陰で誰も気絶しなかったし、僕たちも気分悪くならずに済んだから」

「それは良かったけど……今まであれを聞いてて良く死人が出なかったわね。多分、幻想郷の下手な妖怪なら音の圧力だけで殺せるわよ」

「本当、あれに耐えれたなんてお兄様たち凄いよ! 私たちでもかなり辛かったのに……」

 

 レミリアの結界により、自分たちを含む誰の体調不良者を出す事もなくジャイアンリサイタルを乗り切れた事に、のび太やドラえもんは安堵していた。

 

 今までであればひみつ道具を使って何とかしていたが、数が足りなかったり準備不足だったりで対処しきれなくて、結構な確率で対処しきれずに体調が悪くなる事が多かった。しかし、今回はレミリアが居たのと、『魔法』と言う力を彼女が扱えた事によって完全ではないものの、轟音を耐え抜く事が出来たのだ。

 

 そして、普通の人間よりも種族的に遥かに強い吸血鬼ですら苦しめる轟音を、今まで耐え抜けたのび太たちにレミリアとフランは純粋に称賛の意を表していた。

 

「でも、あれは普通の人間には耐えがたいわ。即刻止めさせた方が良いと思うのだけど……無理なのかしら?」

「あはは……無理だね。でも、あのリサイタルのお陰で助かった事だってあったから、そう言う意味でも完全に歌うの止めろとは言いづらいかな。僕たちとしては、普段から歌って欲しくはないけど」

「でしょうね。まあ、()()のび太やドラえもんの友達だって言うから、私から行動は起こさないけど」

「私としては、のび太お兄様とお姉様を苦しめたあの歌を実力で止めたいところなんだけど……お兄様とお姉様がなにもしないなら、私もなにもしないでおくね」

「うん。そうしてもらえると助かるよ、フラン」

 

 ジャイアンの歌は体調に大きな影響を与えるため、即刻止めさせた方が良いのではないかと提案するレミリアに対し、止めようとするのは無理な上にそれで何度も救われた事だってあるから、そう言う意味でも言い出しづらいとのび太が断る。

 そして、それなら仕方ないからなにもしないでおくとレミリアが言い、不満げながらもフランがのび太やレミリアに同調すると言うやり取りを行いながら、4人はのび太の家へと向かった。

 

「あら、随分楽しそうにしてるじゃない。良かったわ」

「全く……突然逆さまで出てこないで、紫。のび太たちが驚くじゃないの。と言うか、こんな所でスキマなんか出したら……」

「勿論、ここに居る4人以外の認識を阻害する結界を張っておいたから心配せずとも大丈夫よ、レミリア」

 

 すると、のび太の家に向かう途中で皆の目の前にいきなりスキマが現れ、そこから更に紫が上下逆さまで顔だけを出して現れた。それを目撃したドラえもんは突然の出来事に驚き、のび太はこう言う類いの行動に弱いためドラえもん以上に驚くも、既に1度前に会っている事が功を奏して、尻餅はつかなかった。

 

「えっと……紫さん、お久しぶりです」

「ええ……久しぶりね、のび太。そちらの青い方はお友達かしら?」

「はい。僕の親友の『ドラえもん』です」

「改めまして、紫さん。僕は22世紀の未来からやって来た、猫型ロボットのドラえもんと言います」

「ドラえもん……ええ、よろしくお願いね。それにしても、未来からやって来て、人のように話す機械……そんな事があるのね」

「まあ、普通はないですね。僕だけだと思います」

 

 そうして現れた紫にのび太は挨拶した後、親友であるドラえもんを紹介し、自身も改めて自己紹介をして握手を交わした。

 

「で、何の用なの? 貴女の事だから、ただ挨拶しに来た訳じゃないでしょ?」

「ええ。これから貴女たち2人、彼の家で幻想郷に帰るまで泊まってもらおうと思ってるのよね。で、そのためにはのび太のご両親に頭を下げに行く必要があるから、ついでにと」

「「「え!?」」」

 

 初対面の2人の挨拶が終わった後、レミリアが紫に対して何の用事で来たんだと問いかけると、彼女以外のこの場に居る全員、特にのび太とドラえもんが声を上げて驚いた。何故なら、これからレミリアとフランは外の世界に滞在している間、ずっとのび太の家に泊まらせる予定であると言ったからだ。

 

 長い間泊まる事に対する許可は取っておらず、なおかつ取れたとしても生活費の問題がのしかかってくる。それ以外にも色々と細かい問題も発生してくるため、そう言った理由からのび太とドラえもんは2人が泊まる事に否定的である。ただ、来る事自体が嫌と言う訳ではない。

 

「ねえ、紫。断られた時の事は考えてるの?」

「ええ、勿論よ。急なお願いだからね」

「生活費とかはどうするの? ここ、外の世界だけど」

「それも勿論、沢山用意してるわ」

「……なら良いけど、のび太お兄様たちはどう思う? もし、お父様とお母様に許可をもらえたら泊まっても良い?」

「うん。パパとママに許しをもらえれば、僕は構わないよ」

「僕も、のび太君と同じ意見だよ」

「決まりね」

 

 そうして、紫を含めた5人で歩きながら今後の事について色々な話し合いをしている内に、目的の場所まで到着した。その後はのび太とドラえもんが家の中に入って両親を呼び、紫たちは家の前で待機している。

 

 1分後、のび太たちに連れられて玄関に母親がやって来たので、泊まる事に対する許可を取るための交渉が始まった。

 

「突然申し訳ありません。私、そこに居る2人の子の親代わりをしている、『八雲紫』と申します。1月程前から、息子さんにうちのフランドールやレミリアが仲良くして頂けてるみたいで、感謝致します」

「いえいえ、こちらこそお世話になってるらしくて。それで、のび太から聞きましたけど……うちに1ヶ月から2ヶ月お泊まりさせたいと」

「ええ、その通りですわ。実は……」

 

 まずはお互いに初の顔合わせと言う事で挨拶から始め、その後に紫がレミリアとフランと自身についての話や、のび太との出会いを多少偽装した話等を、まるで本当であるかのように話す。そして最後に、どう言う伝で調達したか不明な2ヶ月分のレミリアとフランの生活費を取り出し、野比家に金銭面での負担を絶対にさせない事を強くアピールした。

 

「うちの子たちも、この町に来てから元気がなくて困っていたのですが、息子さんのお陰で今ではだいぶ元気を取り戻してくれて……フランドールに至っては、彼をまるで家族であるかのように慕うまでになりました。本当に感謝しかありません」

「なるほど……」

「それで本日、うちの子の強い希望で今回の依頼に来た次第でありまして……」

 

 更に、でっち上げたエピソードの中にしれっと真実を混ぜ込み、完全な嘘ではなくす事で、問い詰められた際の対策も完璧とは言い難いものの、かなり良い感じに仕上げる手の込みようである。紫の話を聞いていたレミリアやフラン、のび太やドラえもんはまるで本当であるかのように出てくる嘘話に感心さえ覚えていた。

 

 長期滞在中にもし2人に何か起こっても悪意を持ってさえいなければ一切合切責任は問わない事も付け加え、安心させる。

 

 そうした紫の尽力のお陰か母親の了承と、家の中に居たのび太の父親の了承も得る事に成功し、晴れてレミリアとフランの2人が1ヶ月~2ヶ月の間、この家に長期滞在する事となった。

 

「と言う訳でのび太、ドラちゃん。八雲さんの娘さんが長期滞在する事になったから迷惑かけないこと。分かった?」

「分かってるよ」

「勿論だよ」

 

 紫が一礼して皆と別れて家の中に入った後、レミリアとフランはのび太の母親に連れられで父親の居る居間へ向かい、自己紹介を始める。

 

「えっと……私はレミリア・スカーレットで、こっちが妹のフランドール・スカーレット。これから1月から2月程よろしくお願いするわ、のび太のお父様、お母様」

「よろしくね! のび太のお父様、お母様!」

「フラン、せめて初対面の時位もう少し丁寧に……」

「ハハハ! 僕は別にフランクで構わないよ。これから長い間一緒に居るんだからね。むしろ、元気で良いじゃないか!」

「それよりも、私たちは貴女たちをなんて呼べば……レミリアちゃん、フランちゃんで良いかしら?」

「ええ、それで構わないわ」

「私もそれで良いよ!」

 

 そうして好感触のままレミリアとフランは自己紹介を終え、階段を上ってのび太の部屋へと向かったは良いものの、もうやる事がない。今来たばかりな上、もうすぐ夕方と言う時間帯であるため外へ遊びに行くのは論外である。何故なら、あくまでも今はのび太と同世代の女の子と言う体であるためだ。

 

 まあ、吸血鬼のレミリアやフランにとっては普通の人間の暴漢など雑魚同然である。ただ、日本刀などの刀身の長い武器や銀製の武器になりそうな物、銃を持った相手は一応注意しなければならないが。

 

「ねえ、のび太お兄様。何かやる事ない?」

「うーん……あ、そう言えばもうすぐママが夕ごはん作ってくれるはずだから、話でもして待たない?」

「お兄様のお母様が作るご飯かぁ……咲夜の料理とどっちが美味しいんだろ?」

「確かに、うちの咲夜と妖精たちが作る料理と、のび太のお母様が作る料理とどっちが美味しいか気になる……でも、きっと咲夜たちよ。何て言っても自慢のメイドたちだからね」

 

 そんな事をのび太が考えているとフランが退屈し始めたらしく、彼に対して『何かやる事はないか』と聞いてきた。それに対して少し考えた後、ママが夕ごはん作るから話でもしてて待ってようとのび太は提案する。他の事をして遊ぶと余裕で時間が足りなくなってしまい、せっかく作ってもらった夕ごはんが冷めて美味しくなくなるためだ。

 

 するとその提案を聞いたフランとレミリアが、咲夜とその妖精たちの料理とのび太の母親の料理、どちらが美味しいのか議論し始めた。ただ、2人は咲夜の料理しか食べた事がないため、のび太の母親の料理の味は完全に想像でしかない分、期待が膨らんでいくようだ。

 

「妖精に吸血鬼、妖怪や神様まで居るなんて……どんな感じなのか実際に見てみたいなぁ」

「いつか来れると良いね」

「うん。そうだね、フラン」

 

 2人の会話を聞いて、現実世界で幻想となった存在が居る幻想郷とは実際どんな世界なんだろうかと想像を膨らませ、実際に見たい気持ちに駆られて出したその言葉にフランが反応し、のび太にいつか来れると良いねと声をかけた。それに対して更にのび太が反応し、そうだねと言いながら、フランに微笑みかけた。

 

「あ、それと『さくや』って人は妖怪?」

「違うよ。お兄様と同じ人間。だけど、時間を操る能力があったり、ナイフの腕に純粋な身体能力も結構高いから、普通の人間よりは遥かに強いよ。それでも勝てない実力者が沢山居るけどね」

「時間を操る……ひみつ道具がなくてもそんな事出来る人間が居るなんて凄いなぁ。まあ、幻想郷には危険な妖怪も居るみたいだし、それくらい強くないといざって時に対処出来ないんだろうね」

 

 その後、のび太はレミリアとフランの話の途中で出てきた『咲夜』と言う人物が気になったらしく、妖怪なのかと質問を投げ掛けた。実際は妖怪ではなく人間であるため、質問を投げ掛けられたフランは即座に妖怪である事を否定し、のび太と同じ人間であると伝える。同時に、時間を操る能力を含めて戦闘能力が高く、家事全般の能力も高いが故に、普通の人間より強いと言うのもフランは伝えた。

 

 説明を聞き、まるでひみつ道具みたいな事が出来る人間が居るなんて凄いなと感心し、同時にそれくらい強くないと幻想郷では何かあった時に対処出来ないんだろうとのび太は痛感していた。

 

「相手にもよるけど、概ねそんな感じかな。だから、のび太お兄様が幻想郷に来た時は私を頼ってね! 絶対に守りきってみせるから!」

「うん。僕は非力な人間だからもしその時はよろしくお願いね、フラン」

 

 フランがそう言ってのび太の言葉を肯定した後、もしも幻想郷に来た時は守りきってみせるから、私を頼ってくれと彼女は言った。自信に満ちた発言に頼もしさを覚えながら、フランによろしく頼むとのび太が頼んでいると

 

「夕飯が出来たわよー! レミリアちゃんとフランちゃんの分も用意してあるから食べてねー!」

「「「はーい!」」」

 

 のび太の母親が大きな声で夕飯が出来たと、2階に居るレミリアたちに呼びかけて来た。とうとうこの時間が来たかと、レミリアやフランは気分よく先に駆け足で下へと下りて行き、のび太とドラえもんはその後を追う。

 

「今日の夕食はミートソースパスタ……結構な量があるわね」

「凄く美味しそうな匂いがするね! これだけでも、咲夜と良い勝負が出来そう!」

「『さくや』って人、八雲さんとフランちゃんたちの住む所のメイドさんなんだよね?」

「うん!『十六夜咲夜(いざよいさくや)』って言うんだけど、この人の作る料理は本当に美味しい! うちの館のお掃除に他のメイドさんの指導だってやってるし、侵入者の対処だって……何でも出来る人なの!」

「それはまた、凄いねぇ。流石、お金持ちのところのお嬢様だ」

「ええ。彼女が居なければきっと……いや、絶対に困るわね」

 

 2人を追いかけてキッチンにのび太たちが着くと、レミリアとフランが夕飯であるパスタを見て気分が高揚していたのを目撃した。その楽しそうな様子に良かったと思いながら、用意されていた席に着く。

 

 全員が揃ったところで頂きますの挨拶をして、全員でパスタを食べ始めた。それなりに多くよそられていたパスタであったが、のび太の母親が作ったこれは相当美味しいようで、かなりの勢いで減っていく。特にのび太とフランの2人はお腹が空いていたのか、他の4人を凌駕する勢いで麺をすすっていた。

 

「どうしよ……咲夜のも美味しい、のび太お兄様のお母様のも美味しい……ああ、もう! どっちも美味しいって事で良いや!」

「そこまでフランちゃんに喜んでもらえて、良かったわ」

 

 食事の途中はフランは最初の疑問である、咲夜の料理とのび太の母親の料理のどちらが美味しいか白黒つけようと考えていたが、彼女曰くどっちも美味しいため、もうそれで良いやと決めてパスタを味わう事に決めたようだ。

 

「ご馳走さま!」

「とっても美味しかった。のび太のお母様も、料理が上手いのね」

「レミリアちゃんとフランちゃんににそう言ってもらえて、私も嬉しいわ」

「まあ、うちのママの料理は絶品だからね」

 

 そんな感じの楽しい雰囲気のまま夕食を終えた後、4人は2階へと上がって何をするでもなくただ単に談笑したり、ドラえもんが未来の遊び道具を出し、それを使って遊びながら時を過ごした。

 

「しかし、ドラえもんは本当に不思議な物を持ってるのね。未来からやって来たってのも、納得せざるを得ないわ」

「まあ、僕も最初の頃は本当に驚きの連続だったし、信用も今ほどはなかったからね。でも……ドラえもん。僕のところに来てくれてありがとう。君のお陰で毎日が楽しいよ」

「ふふ……色々とあるけど僕もだよ、のび太君」

「本当、のび太お兄様とドラえもんって親友なんだね!」

「「まあね!」」

 

 4人でそんな感じのやり取りをしていると、いつの間にか夜遅くになっていたらしい。母親が2階へとやって来て、もうそろそろ寝る時間だから早く寝なさいとのび太に呼びかけ、レミリアとフランにはテレビのある部屋に寝床を用意してあるから、早く寝た方が良いと呼びかけた。

 

「もうそんな時間になってたんだ……早く寝ないと。レミリアにフランはどうするの?」

「私たちも寝るわ」

「うん! 一応人間って設定になってるからね」

「なるほど、確かにそうだね。じゃあ、お休み」

「ええ、お休み。のび太」

「お休みなさい、お兄様!」

 

 のび太たち4人はそう言った理由から寝る事に決めた。こうして、色々な事があった1日が幕を閉じる事になった。

 




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