スカーレット姉妹の現代旅   作:松雨

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スカーレット姉妹とのび太

「ふぁぁぁ……良く寝た……!? あ、そう言えば現代旅をしてたんだったわ」

 

 現代旅の2日目の明け方、フランと一緒にのび太の家の居間で寝ていたレミリアは先に目覚めた。紅魔館以外の場所、それも幻想郷ではなく外の世界で目覚めると言う経験は今までなかったため、ほんの一瞬だけ混乱した。その後、すぐに現代旅をしていた事を思い出しながら、多少寝ぼけた頭で初日に経験した事を振り返っていた。

 

 立ち寄ったラーメン店で絡まれたり、想像を遥かに超える破壊力を誇るジャイアンのリサイタルを聞く事になったりと言ったそこそこ面倒な事から、幻想郷にはない物や人里とはレベルの違う沢山の人、美味しい食べ物に新鮮な経験や出会い、フランの喜ぶ顔を見れたなどの楽しかった経験の事である。

 

「初日であれだけ楽しかったのだから、2日目以降はもっと楽しそうね……」

 

 来て初日にあれだけの経験が出来たが故、2日目以降は一体どんな楽しい経験が出来るのだろうかと、まだスヤスヤ寝息を立てながら眠っているフランを見つつ、レミリアは独り言を言っていた。

 

「本当、可愛い寝顔……」

 

 そうしている内に、紅魔館でフランを起こす際にたまにやっている『スキンシップ』をやろうと思ったらしく、レミリアは寝ている彼女に至近距離まで顔を近づけた。ただ、今居るこの場所がのび太の家である事、万が一それがエスカレートしてしまった場合の後始末が大変になる事を考慮し、フランの寝顔を堪能しておくだけにしておいたようだ。

 

「んぁ……あ、お姉様おはよー。先に起きてたんだね」

「おはよう、フラン。良く寝れた?」

「うん。お布団で寝たのは初めてだったけど、快適だったよ」

 

 レミリアが時折指で頬をつついてみたり、可愛い寝顔を存分に堪能する事およそ2時間、カーテンの隙間から日光が部屋に入ってくる時間帯に、眠い目を擦りながらフランは目覚めた。館の自分の部屋と違う環境での睡眠であったがしっかり寝れていたらしく、レミリアが良く寝れたかと聞くと、快適だったとフランは答えた。

 

「そう言えば、のび太お兄様は起きてるかな?」

「まだ朝だし、寝てると思うわ。起こしに行く?」

「うーん……お姉様、一緒に行こう!」

「決まりね。じゃあ、行きましょうか」

 

 すると、フランがのび太は起きているのかと誰に聞くでもなく言い出した。それに対して、特に聞かれた訳でもないがレミリアが朝だから寝てると思うと言った後、起こしに行くかとフランに聞く。

 

 そうレミリアから問いかけられたフランは、どうしようか少し考えた後一緒にのび太の部屋へと向かい、起こしに行く事を決めた。

 

「気持ち良さそうに寝てるわね。のび太にとって、眠る時間が至福の一時なのかしら?」

「うん。前に来たときの話なんだけど……のび太お兄様、寝るのが大好きだって言ってた。0.93秒で眠るって特技を得るくらいにはね」

「1秒もかからないって……もはや気絶って言っても過言じゃないわ」

「そう。私も1回だけ見せてもらったけど、最初見た時は狸寝入りだと思っててさ。試しにくすぐってみたり、身体を少しだけ強く揺すったりしてみたりしても全く反応なくて……で、本当に寝てるって分かった時は驚いたなぁ」

「……凄いわね」

 

 部屋へと入り、気持ち良さそうに寝ているのび太の顔を見たレミリアが、彼にとって眠る時間は何ものにも代えがたいものであると感じたようで、フランにそう問いかけた。

 

 すると、フランは前に1度のび太と出会った際に聞いた、『寝るのに1秒もかからない事』や『1度寝てしまえば何しようともなかなか起きない』など、睡眠に関する話をそっくりそのまま言葉にし始めたため、レミリアは唖然とする事となった。

 

 何故なら、自分の意志だけで0.93秒と言う非常に短い時間……気絶レベルの時間で眠ると言う、普通ならどうあがこうとも出来ない事をあっさりとやってのけたからである。日常生活には使えない技ではあるが、1秒とかからず眠れると言うのは、ただ単に凄いと言えるだろう。

 

「……起こせるの?」

「うん! 目覚まし魔法を使えばね」

「一応聞くけど、やかましかったりしない? 大丈夫なの?」

「大丈夫だよ、お姉様。あの頭にガンガン響くリサイタル程じゃないから」

「なら良いわ。まあ、一応この部屋に防音結界は張っておくけれど」

 

 フランの話を聞き、そんな眠りのスペシャリストであるのび太を本当に起こせるのかを疑問に思ったレミリアであったが、そんな彼でも起こせるような、眠っている者を起こすためだけの魔法があるとも聞いたため、一抹の不安がありながらも部屋の外に音が漏れないような対策をした後、それを使う事に決まった。

 

「フラン、結界は張ったからやっても良いわよ」

「分かった! じゃあ行くよ……それっ!」

 

 そうしてフランが掌から野球ボール3つ程の幅の光の球を出し、のび太の上に浮かべた後に破裂させた瞬間、まるで爆竹を使った時のような乾いた音が部屋のなかに響いた。これがなかなかやかましく、至近距離で鳴らされたのび太はもとより、押し入れで寝ていたドラえもんですら飛び起きる程であった。もしも、防音結界を張らずにいたら、関係ない人に迷惑をかけていた事だろう。

 

「うわぁぁぇ!? なになに……もしかして、フランとレミリアの仕業?」

「ううん、お姉様は防音結界をかけてただけで、煩い奴は私がやったんだよ。寝ているお兄様を起こすためにね。でも、ドラえもんまで起こしちゃった……ごめんなさい」

「急にビックリしたけど、そう言う事なら大丈夫。むしろ、のび太君を起こしてくれてありがとう」

「僕結構寝坊するから、起こしてくれたのは有り難いよ。けど……今日みたいなのは流石にビックリするから、次から出来れば穏便にお願いね」

「うん! 分かったよ、お兄様!」

 

 突然、寝起きに爆竹が爆発したかのような煩い音を発する魔法によって起こされたのび太とドラえもんはビックリしたものの、理由が理由なのでお礼を言いつつ、次からはもう少しマシな方法で起こして欲しいとのお願いに対し、フランはそれに快く返答してこの話は終わった。

 

「ねえ、お兄様。今日は一緒にお出かけしない? お姉様とドラえもんも混ぜて町歩きするのが楽しみなの」

「あぁ……ごめんね、フラン。今日は学校に行く日だから、午後4時頃まで遊べないんだ……」

「あ、そうなんだ……じゃあ、帰ってきたら遊ぼ!」

 

 話が終わった後、フランがのび太とドラえもんに今日1日一緒に出かけないかと誘った。前に来た時とは違って大好きな姉に加え、姉と同等の安心感を得れるのび太にその親友であるドラえもんが居ると言う、彼女にとっては楽しい要素しかないためだ。

 

 しかし、残念ながらのび太は学校に行かなければならない日であったため、少し申し訳なさそうにして断られてしまった。フランも学校に行く日であるなら仕方ないと少しガッカリしながらも諦め、午後4時頃になれば帰ってくるからその時疲れてなければ遊ぼうと言う事になった。

 

「フラン、その『ガッコウ』って何なの?」

「えっとね、人里にある寺子屋みたいなものだよ。大きさは比べ物にならないけどね」

「なるほど。これだけ外の世界には人が多いのだから、子供の数だって多いものね。どれくらい大きいのかは知らないけど、寺子屋よりは数倍程度大きいと見とくべきか……」

 

 のび太とフランの話が少し途切れたタイミングで、レミリアが学校とは何かと彼女に対して質問をしてきた。それにフランが人里のある寺子屋を凄く大きくしたようなものであると簡単に答えると、外の世界には人が多いから子供の数だって多いだろうし、寺子屋よりは軽く数倍は大きいだろうと、レミリアは推測した。

 

 その後4人で色々と話をしていると、のび太の母親が2階へと上がってきて、朝ごはんの時間だと呼びに来た。その際、のび太が自分から起きていて、なおかつ着替えと学校に行く準備すら済ませていた事に対して驚いていた。

 

 朝食のためにキッチンへと向かうと、メニューは味噌汁に白ご飯、コロッケにサラダと言った、典型的な和食であった。そうして席に着き、頂きますの挨拶をしてから食べ始める。昨日の夕食であるパスタとは違う美味しさに、フランはあっという間に完食した。

 

「ご馳走さま! 美味しかったよ、お母様!」

「ええ。今日の朝食もとても美味しいわね。普段和食を殆ど食べないから、こう言う味も新鮮ね」

「お粗末様でした。フランちゃんにレミリアちゃん、本当美味しそうに食べてくれるから、作りがいがあるわぁ」

 

 そうして皆で楽しく会話をしながら朝食を取り終えると、のび太の父親が早めの仕事があるらしく、レミリアたちに行ってくると声をかけた後、素早く支度をして家を出ていった。30分後、今度はのび太の学校へ行く時間になったため、既に用意してあったランドセルを背負い、家を出ようとした。

 

「私も学校までついていきたいんだけど、駄目かな? 入り口までで良いから……お願い。のび太お兄様、お母様」

「僕は構わないよ」

「フランちゃんとレミリアちゃんの意志があるなら良いんじゃない? 怪我さえしないように」

「ありがと! ねえ、お姉様も行こうよ!」

「勿論、貴女が行くなら私も行くわ。のび太の通う『ガッコウ』がどんなところか気になるからね」

 

 すると、フランがのび太に対して、そんな事をお願いをし始めた。彼女の学校の入り口まで一緒に行きたいと言う気持ちは相当強いらしく、笑顔でのび太と母親に懇願していた。

 

 その結果、特に断られる事もなくあっさりと許可が降り、レミリアもフランと一緒に行くと言った事で、学校の入り口まで同行する事に決まった。

 

「ちょっと待ってのび太君」

「ドラえもん、どうしたの……あ、そう言う事」

「万が一を考えてね。レミリアにフラン、ちょっと眩しいけど我慢して」

「ん……?」

「大丈夫だよお姉様。本当にちょっと眩しいだけだからね!」

 

 そうして日傘を持ち、のび太は2人を連れて学校まで向かおうとした時、今度はドラえもんが声をかけてきた。どうしたのかとのび太が聞いたら、レミリアとフランの万が一の日光対策として手に持っていたひみつ道具『テキオー灯』を使うためとドラえもんが言っていたので、足を止めた。

 

「よし。これで大丈夫。引き留めてごめんね、のび太君行ってらっしゃい。レミリアにフランもね」

「うん。じゃあ、行ってきます!」

「何だか良く分からないけど、とにかく行ってくるわね」

「ドラえもん、ありがと! 行ってくるねー!」

 

 こうして、改めてのび太はスカーレット姉妹を連れて、学校へと向かう事となった。

 

「レミリア。日傘を畳んで、試しに日に当たってみてくれない?」

「え? 急に何を言い出すの……ってフラン!?」

「ほら! さっきの光を浴びたから、今から1日無防備に日光浴びても全然大丈夫だよ、お姉様! 私も平気だし、やってみて!」

 

 学校へ向かう道中、日傘を差しているレミリアに対してのび太が日光に当たってみてくれと、吸血鬼にとっては今すぐ死ねと言うも同然のお願いをした。家を出てくる時に日光対策としてテキオー灯と言う道具からの光を浴びたレミリアであったが、初めて見るひみつ道具であったため、未だに半信半疑である。

 

 しかし、フランがもう既に日傘を畳んで日光浴を存分に楽しんでいた光景を目撃し、更に当の本人から大丈夫だからやってみてと言われた事で、恐る恐る日傘を畳んで日光浴をしてみる。

 

「まさか、本当に平気だなんて……驚いたわ。ドラえもんって凄いのね」

「ね? 日傘なくても大丈夫でしょ?」

「ええ。それにしても、未来にはあれみたいに魔法じみた道具がゴロゴロあるの?」

 

 すると、普通なら身体から煙が昇り始めるレベルの日光をいくら浴びてみても一切の変化が起きなかった。あの道具からの光をほんの一瞬浴びただけで耐性を得れたと言う事実にレミリアは驚き、未来には魔法のような事が出来る道具がゴロゴロあるのかとのび太に聞いていた。

 

「まあね。僕が使った事のある凄いのだと書いた事が本当に起こる『あらかじめ日記』とか、ついたウソが本当になる『ソノウソホント』とか、自由に時間を移動出来る『タイムマシン』とかあるよ。他にも沢山あるけど……」

「……その気になれば幻想郷で最強になれるわよ。恐ろしいわね、未来」

「そんな道具があるなんて、未来って凄いんだね! お兄様!」

 

 レミリアのその問いをのび太は肯定し、更に凄い効果を持つ道具の例を3つ挙げた。どれもこれも、上手く使えば誰でも神にすらなれるレベルの効果を発揮する道具に、未来とは恐ろしいところだとレミリアは言い、凄いところであると話を聞いていたフランは目を輝かせた。

 

 そんな感じで楽しく話ながら歩いていると、3人は学校が目と鼻の先にあるところまで近づいていた。そうなると学校に向かって歩く児童たちの数も増えていくと同時にレミリアとフラン、2人と手を繋いでいるのび太に注がれる視線が増えていった。

 

「随分注目を浴びてるわね。まあ、そう言う類いの視線はもう既に1度経験してるから、大したことないけど……のび太は大丈夫?」

「のび太お兄様、私たちが迷惑だったら無理しないで言ってね」

「レミリア、フラン。迷惑だなんて微塵も思ってないから心配しなくても良いよ」

「……優しいのね、のび太って」

「そうなんだよ、お姉様!」

 

 更に、フランがのび太お兄様と呼んだ事により注がれる視線が増えて、唖然とする児童すら出てきた。しかし、いちいち気にしてたらやっていけないので無視し、変わらず楽しく会話をしながら歩いていき、学校の門前に3人はたどり着いた。

 

 休みの日以外は毎日腐る程見ているどころか中に入っているのび太や、ほんの数回程度ではあるものの、外観を見た事自体はあるフランは特に反応はしなかった。ただ、外観すら1度も見た事がないレミリアは学校の建物を見て、まるで紅魔館と同等かそれ以上の大きさだと、結構驚いていた。

 

「確かにこれは、比較対象がうちの館しかない時点で比べ物にならないわね」

「でしょ? 私とお姉様はここに通ってないから、建物の中には入れないのが残念なんだけど」

「まあ、確かに沢山の関係ない人間に誰彼構わず入られたら面倒だし、何か起こればそれこそ問題だし……とにかく、勉強頑張ってね。のび太」

「私も応援するね! 頑張って、お兄様!」

「うん、ありがとう。レミリア、フラン。行ってくるよ」

 

 そんな話をしながら学校の建物の入り口まで行き、中に入っていくのび太にエールを送りながらフランとレミリアは手を振った。そうして見えなくなればここに居る用事は全くないため、2人は素早くこの場を後にした。

 

「お姉様、学校って楽しいと思う?」

「私はどうかわからないけど、多分フランだったら楽しめると思うわよ。のび太とその友人たちも居るだろうし……まあ、何をするところなのか分からないから、何とも言えないけど」

「そっか……1日だけでも良いから、のび太お兄様と学校の中に行ってみたいなぁ……」

「いつか皆で行けると良いわね」

「うん!」

 

 そうして、フランがいつかのび太と一緒に学校で過ごしたいと言い、レミリアがそれに対して3人で行ける日が来れば良いと言う話をしながら、のび太の家へのんびり手を繋いで歩いて行った。

 

 




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