「のび太お兄様のお母様にドラえもん、ただいまー!」
「レミリアにフラン、お帰り。のび太君との学校までの旅は楽しかったかい?」
「うん、楽しかったよ! まあ、お姉様とのび太お兄様と一緒ならどこでも楽しいけどね!」
「ええ。私もフランと同じく、新鮮な体験が出来て楽しかったわ」
「それなら良かった」
のび太と一緒に学校まで歩いていき、校内に入って見えなくなるまで見送り、再び家へとレミリアとフランはとても楽しい気分のまま戻り、元気良く扉を開けて挨拶をした。
そんな2人に対してドラえもんは暖かい目を向けながら楽しかったかと聞き、フランが満面の笑みを浮かべながらレミリアとのび太が一緒であれば楽しいと即答した。一方のレミリアもフランと同様、楽しかったと言った事で、ドラえもんも良かったと一安心している。
「あれ? そう言えばお兄様のお母様が居ないけど、どこに居るのかなぁ……」
「確かに、のび太と家を出る前までは居たのにね。ドラえもん、のび太のお母様の居場所知らない?」
すると、フランがのび太の家から母親が居なくなっている事に気づいたらしく、どこに行ったのかと疑問に思っていた。レミリアもそれに同意し、家に1人で居たドラえもんに母親の場所について知らないかと尋ねた。
「のび太君と君たち2人が学校に一緒に行った後、昔からのお友達に誘われて、今日の夜辺りまで帰って来ないって言って出掛けていったんだ。行き先は聞いてないから知らないなあ」
「ふーん……じゃあ、お姉様と私とドラえもんで今日はお留守番かな?」
「まあ、そうなるね。もしかして、外に遊びに行きたかったの?」
レミリアからの、のび太の母親の行き先に対する質問に、ドラえもんは外に友人と遊びに行った事とは聞いたけど、その行き先自体は知らないと答える。すると、フランがそれなら3人でお留守番なのかと聞いてきたため、ドラえもんはそれに肯定の意を表した。
その後、フランの質問の仕方から彼女が外に遊びに行きたいのではないかと判断したらしく、ドラえもんはすぐさまそう質問を投げ掛ける。
「ううん、別に。まだ現代旅2日目だし、1日や2日程度お留守番でも私は構わないよ!」
「私としても、留守番で構わないわ。どうせなら、最高の状態でフランとドラえもんとのび太、その友達と一緒に外の世界を楽しみたいもの」
「なるほど……まあ、君たちがそう言ってくれて助かったよ」
しかし、フランはその質問に対して首を横に振って即座に否定し、留守番でも構わないとの意思表示をした。流れでレミリアも、どうせなら最高の状態でのび太とその友人たち、ドラえもんやフランと一緒に遊びたいと言う理由から、今日1日留守番となる事をすんなりと了承し、居間へと向かった。
「とは言え、何をしようかしらね……」
「じゃあさ、お姉様と一緒に寝てる部屋でいつものスキンシップを――」
「昼間だし、ドラえもんが居るから駄目……いや、のび太の家だから駄目ね。軽めで済めばここでもやって良いけど、7割位の確率で激しめの奴になるじゃない? そうなると最悪、辺り一面血まみれよ。紅魔館の私の部屋かフランの地下室ならともかく……」
それからレミリアとフランの2人は、今日1日留守番をするに当たって家で何をしていようかと相談をし始めた。フランからはいつもやってるスキンシップをやろうと提案があったものの、今居る場所がのび太の家である事と、それをやるとかなりの確率で激しいものになってしまい、酷い場合になると布団周辺が血まみれになってしまうと言う理由から、レミリアはこれを少し残念そうに拒否した。
「……確かに、のび太お兄様たちに迷惑かけちゃうね。じゃあ仕方ないけど、それは止めておこうかな」
「ええ、それが良いわ。まあ本当は、都合良く汚れと臭いとその他諸々をどうにかする魔法か何かがあればやっても良かったのだけど……」
レミリアから拒否されたフランは残念そうにしていたものの、のび太たちに迷惑をかけてしまう事を考え、しょうがないかと諦め、ひとまず昼間のスキンシップは却下となった。ただ、その問題がどうにか解決しさえすれば、やる気ではあるようだが。
「君たち一体家で何してるの……姉妹喧嘩とか……?」
「ううん、違うよ! えっとね……まずはお姉様の部屋に私が行って、それから――」
「それ以上は恥ずかしいから止めなさい、フラン!」
「お兄様とお兄様の親友のドラえもんにも?」
「当たり前よ。もしそれを話したら……まあ現代の他の有象無象はともかく、のび太とドラえもんとの楽しい雰囲気は完全に崩壊するかもしれないわ。幻想郷でも、外には言いふらすなって固く口止めしてるでしょう?」
「のび太お兄様と親友のドラえもんなら、それでも大丈夫だと思うんだけど……うん、分かった!」
居間でのレミリアとフランの話し合いを側で聞き、スキンシップで血まみれとはどう言う訳なんだと、殴り合いの姉妹喧嘩でもする気なのかと思ったドラえもんは思わず、いつも家で何してるのかと質問を投げ掛けてしまう。
しかし、それに対してフランは即座に否定した後、相手がドラえもんだからかは不明だが、特に躊躇う事もなく話そうとしてしまい、慌てたレミリアに止められてから言っては駄目だと言い聞かせられた。当のフランは、別にのび太やドラえもんなら大丈夫ではないかと思いつつ、レミリアがそこまで言うなら仕方ないかと、言うのを止めた。
「とにかく、君たちがとても仲の良い姉妹だって事なんだよね?」
「うん! そうだよ!」
「まあ、そう言う事ね。昔は今とは真逆だったけれど」
途中で話が止められたため、尚更気になってしまうドラえもんであったが、話の内容が内容なのでこれ以上は突っ込まない方が良いと判断し、気にするのを止めた。それと、相手は魔法も扱う吸血鬼であり、下手に怒らせてしまえば危ないと言う理由もあった。
その後はレミリアがボソッと言った、フランとの仲が最低最悪だった5年前までの過去の話と、幻想郷に行ってから起こした『異変』の話と以降の話、今の様にとても仲良く過ごすまでに至った経緯について、覚えている限りの事を全てドラえもんに話す。それが終われば、ドラえもんが今までのび太たちと冒険した話や未来の世界の話をしたりした。
特に何か身体を動かして遊んだわけでもなかったが、レミリアやフランにとっては現代の町の光景ですら新鮮で面白い物ばかりなのに、それよりも更にあらゆる面で発展している未来の話に、当然ながら興味をそそられたらしい。出来る事なら滞在中に行ってみたいと言う思いが強くなったようだった。
「でも、今は現代旅を楽しまないとね。未来は現代旅を楽しみ尽くしたって思ってからでも遅くはないわ」
「うん。でもお姉様、現代旅で1ヶ月は余裕で終わりそうじゃない?」
「まあ、それならそれで構わないわ。今回の目的は、現代旅を楽しむ事だもの」
しかし、まだ現代のほんの一部しか体験したりしていない事から、優先すべきは現代の町を楽しみ尽くす事に決め、未来の話はひとまず頭の隅にでも置いておく事にしたようだ。ドラえもんもそれを聞き、出来る限り楽しんでもらうように尽力する事を伝え、この話は終わった。
お互いの世界について一通り話した後は、ひみつ道具『グルメテーブル掛け』を使い、ドラえもんはどら焼きと緑茶、レミリアとフランはショートケーキと紅茶を出し、飲み食いしながら他愛もない世間話をしたり、トランプなどをしながらのんびり過ごした。
「あら、もう3時間も経ったのね」
「本当だ! まあ、未来の話とか色々と夢中で話し込んだし、紅茶とケーキを食べながらのんびり過ごしたから、意外と妥当なのかも――」
そうして居間でのんびりし始めてから3時間経った頃、会話に割り込むようにして家にチャイムの音が鳴り響いたのを、3人は聞いた。何の音かと疑問に思うレミリアだったが、既に1人で来た事がある時に経験済みだったフランが、お客さんが来た時に鳴る音だと教えた。
「なるほど、それは便利ね……ってそんな事よりも、お客のところに行かなくて良いのかしら?」
「確かに……じゃあ、私が行ってくるね!」
「いや、ここは僕が行った方が……」
「大丈夫だよ、ドラえもん! 対応の仕方が分からなかったら呼ぶからさ、1人で行かせて!」
「うーん……でもまあ、これも現代旅の一部かな。分かったよ、フラン。行ってきて」
「ありがとうね、ドラえもん!」
フランのその説明を聞いてレミリアは便利だと言い、同時にそれなら早く行かなくて良いのかと言ったのを聞き、ハッとしたフランとドラえもんが同時に立ち上がる。
来客の対応に行きたがるフランに対し、それは僕が行った方が良いのではとドラえもんが言うやり取りを少しの間交わしたものの、結局は勢いに押し切られる形でドラえもんが折れてフランが行く事になった。
「こんにちは! おじさん、何か用事?」
「え……ああ、そうだ。コイツらを売りに、この辺りの家を回ってる」
そうしてフランが扉を開けると、現れたのは町のどこにでも居そうなおじさんであった。フランが何の用事かと聞くと、彼は少しだけ驚きながら持っていた風呂敷を開いて商品らしき物を見せつつ、これを売りに来たと答える。
「うーん……これはスポンジって奴だよね。こっちはタワシで、あれは確かキッチンにあった奴で、名前はえっと……何だっけ? これも知らないなぁ……」
ただ、フランは物売りのおじさんが持ってきた物の半分程度は知らないらしく、商品を手に取って眺めたり回したりしながら、そんな事を独り言のように言っている。
「それで、どうなんだ? 買ってくれないか?」
フランのそんな様子を訝しみつつも、物売りのおじさんは買ってくれないかと聞くが……どうしようか判断がつかないようで、ドラえもんを呼んで判断を仰いだ。
「あ、そう言うのは家に沢山あるので要りません。帰って下さい」
「しかしなぁ、オレも生活が……」
相対した瞬間、ドラえもんは開口一番『要りません』と言い放ち、物売りのおじさんに帰るように促した。しかし、彼も生活がかかっていると言う理由で、どうにかして買ってくれとドラえもんに食い下がった事で、話は平行線のまま続いた。
そして、物売りのおじさんが家の玄関に居座る事30分、彼の口調も半ば脅すような感じになってきて、ドラえもんも困り果てていた時に隣で見ていたフランがため息を吐きながら……
「ねえ。時間の無駄だからさ、早く帰ってくれない?」
冷や汗をかくくらいの威圧を放ちながら、時間の無駄だから早く帰れと、気だるそうに言ったその行為によって底知れぬ恐怖を感じたのか、物売りのおじさんは逃げ帰るようにして立ち去って行き、この場を乗り切る事に成功した。
「ちょっと脅しただけで逃げ帰る位なら、最初からやらなければ良いのに……」
「まあ、確かにね。それにしても、君が吸血鬼の力を少し見せてくれたお陰で、ひみつ道具使わずに済んだよ。ありがとう」
「えへへ、どういたしまして!」
そうして物売りのおじさんが逃げ帰った後は再び居間へと戻り、ドラえもんが出した未来のボードゲームをやったり、レミリアが魔法でちょっとした芸を披露したりして、比較的楽しく過ごしていた。
「レミリア、フランドール。少し伝えたい事があるのだけど、今は大丈夫?」
「紫、貴女相変わらず変なところから現れるのが好きね……ええ。ちょうどボードゲームも終わったところだったから、別に大丈夫よ」
「私も同じ! それで、どうしたの?」
そんな時、突然天井にスキマが開き、そこから蝙蝠のようにして紫がレミリアとフランに伝えたい事があるけど、今は大丈夫かと言いながら現れた。相変わらず変なところから現れるのが好きだなと、レミリアはそう思いながらも大丈夫だと言い、紫からの言葉を待つ。
「貴女たち、のび太と学校に行ければいいなって言ってたでしょう?」
「ええ、確かにそう言ってたけど……紫。あれからずっと見てたの?」
「確かに見てたわ。まあ、それは良いとして……貴女たち2人、1週間後に学校見学に行く事になったのを伝えに来たのよ」
すると、紫が1週間後に学校見学に行く事になったと伝えてきた事により、昨日に続いてレミリアとフランは驚く事となった。色々な手続きなどの面倒事はどうしたのかと2人が聞くと、どうやら
「と言う事はもしかして、私たちが現代に送られるのは前から既に決まっていた……?」
「その通りよ」
「一応聞くけど、断っていたら?」
「強制的にスキマ送りにしてたわね。今回は、たまたまフランドールが現代旅に乗り気だったから穏便に連れてこれて良かったわ、本当にね」
「全く、何を企んでるんだか……まあ、今回に関しては感謝するわ紫」
前から学校見学をするために準備を進めていたと言う話を聞いたレミリアは、自分とフランが現代に送られる事は予定されていたと感じたらしく、そう問いかけた。すると、案の定その通りだったらしく、レミリアの問いに対して肯定の意を表し、更に断っていた場合は有無を言わさずスキマ送りにしていたと、そう伝えてきた。
紫からそう言う話を聞き、レミリアは何を企んでるんだか分からないと少し呆れながらも、結果的にフランが現代旅をとても楽しめている事から、感謝の意は伝えた。
「じゃあ、伝えるべき事は伝えたから帰るわね。それと、貴女たち2人は『アメリカ合衆国』と言う国から来たって言う設定で、私は貴女たちの保護者と言う設定だから、当然1週間後の学校見学には同行する事になってるからね」
そして紫は最後に、2人の出身地がアメリカだと言う設定だと言う事と、1週間後の学校見学にはレミリアとフランの保護者と言う立場で同行すると言う事を伝えて、ドラえもんに一礼してから天井のスキマに消えていった。
「……ねえ。学校見学に行くって事は、のび太お兄様やお姉様と一緒に学校に行けるって事なんだよね?」
「まあ、見学しに行くって事は……そう言う事ね、フラン。後、決まっていないのはいつから通うかと言う事だけれど、これは1週間後の見学の時に決めると思うわ」
紫がスキマで幻想郷に帰った後、今までの話を聞いていて興奮したフランが、レミリアに対してのび太と一緒に学校に行けると言う事なのかと、凄い勢いで詰め寄りながら確認していた。当然、この町に居る間は学校に通うと言う事であるため、レミリアはフランの問いに対してそう答えた。
「やったぁーー!! ドラえもん、やったよ!!」
「良かったね、フラン。のび太君に伝えたら、きっと喜ぶと思うよ」
「うん! 今すぐにでもこの事を伝えたいんだけど……早くのび太お兄様帰って来ないかなぁ……そうだ! 玄関で待ってよっと!」
すると、それを聞いたフランのテンションが最高潮に達し、側に居たドラえもんに抱きついて喜びを表現した。そんなフランに対してドラえもんは少しだけ驚くも、頭を撫でながら良かったねと語りかけた。
その後、フランはのび太が学校から帰ってくる時まで、満面の笑みを浮かべながら玄関で待っている事に決めたらしく、軽い足取りで向かっていった。
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