スカーレット姉妹の現代旅   作:松雨

7 / 29
スカーレット姉妹と野球遊び

「のび太、何をしようとしているの? いつもと違う服を着てるし、妙な物を持っているけど」

「これ? 野球って遊びのために使う道具だよ。服もこの遊びの時にしか着ないんだ」

「へぇ……フランは知ってる? この遊びのルールとか、どう言う感じの遊びなのかとか」

「うん、少しだけならね。でも、やった事はないから私も野球のルールについては殆んど分からないなぁ。だからお兄様、教えてくれる?」

 

 レミリアとフランが現代旅を始めてから6日目の昼間、学校が休みであるのび太はジャイアンとスネ夫に誘われていたので、野球をやる準備をしていた。

 

 そうして外出しようとした時、ちょうど昼食を食べ終えて居間でのんびりしようとレミリアにいつもと違う変わった格好を指摘され、色々と聞かれたため、時間もまだ少しある事から野球の道具である事を説明していた。

 

 その後、野球はどんな遊びなのか、ルールはどんな感じなのかレミリアは知っているかとフランに聞くものの、詳しいルールは分からないとの事。なので、のび太に対して説明を求め、それに対しても詳しく教えたりした。

 

「なるほど……その『ヤキュウ』とか言う遊び、少し気になるわね」

「確かに、見た事だけはあるけど実際にやってみたい! ねえ、お兄様。私とお姉様も一緒に行っても良い? 出来れば参加したいなって思ってるんだけど……」

「一緒に行くのは全然良いよ。でも、参加出来るかはジャイアンやスネ夫に聞いてみないと分からないし、1回もやった事ないのに……大丈夫?」

「勿論、大丈夫だよ!」

 

 すると、その説明を聞いていたレミリアは野球に対して少しだけ興味を持ち、それに釣られる形でフランも強く興味を示した上に実際にやってみたいと思ったらしい。のび太に対してレミリアと一緒に河原のグラウンドまで行って、野球に参加したいと頼み込んでいた。

 

 のび太はフランからの頼みに対し、一緒に会場まで行って見る事は全く構わないが、参加出来るかどうかはジャイアンやスネ夫の采配次第である事と、仮にその問題をクリアしたとしても今まで1回も野球をやった事もないと言う理由から、それに関してはあまり乗り気ではなかった。他にも色々な心配事はあるみたいだが。

 

「うーん……のび太君。僕は良いと思うよ。だって、今日はただ野球を楽しむついでに練習するだけなんでしょ? それに、いつからかは分からないけど学校にも通うんだから、交流も兼ねてるって意味でもね。レミリアとフランも、事前に何人かの顔を知ってた方が安心だろうし。僕も一緒に行って頼んでみるから」

 

 すると、レミリアとフランの後に昼食を終えて廊下にやって来たドラえもんが話に割り込んできて、のび太に向けて意見を述べ始めた。今回はあくまでも娯楽として楽しみながら、練習はついでにこなす方に重きを置いているのだから、別に参加を頼んでも良いのではないかと言うものだ。

 

「確かにそうだね……レミリア、フラン。じゃあ、一緒に行って野球をやろう。僕も強く頼んでみるから」

「ええ。よろしく頼むわ」

「ふふっ……お兄様、ありがと!」

 

 ドラえもんからの意見を全て真剣に聞いたのび太は、確かにその通りだと納得したらしく、一転して何としてでも一緒に野球を楽しめるように強く頼んでみると言いながら、2人に対して河原のグラウンドまで連れていくと約束した。

 

 そうして、キッチンに居る自分の母親と父親にレミリアとフランを連れて遊びに行ってくる事を伝え、日光や流水などに耐えるためのテキオー灯を浴びせた後、ドラえもんも一緒に家を出て河原のグラウンドへと向かう。

 

「その格好のお兄様、初めて見たけど何だか新鮮だね! そう言う格好いいのも、私は好きだよ!」

「格好いい……そんな事言われたの初めてだから、何だか恥ずかしいなぁ……」

「そうなの? うーん……まあ、考えてみれば確かにお兄様って格好いいとは言えないし、強くて頼もしくはないよね。どちらかと言えば、弱いから守ってあげたくなる感じかな」

「なんか複雑……」

 

 道中、フランが初めてのび太の野球のユニフォーム姿を見て格好いいと思ったようで、思った事をそのまま率直に伝えていた。今までそんな事を言われた経験がないのび太は、突然フランから格好いいと言われて恥ずかしいと本人に言いつつも、喜んでいた。

 

 そんな発言を聞いたフランは少し驚いてから考え込み、確かにのび太は格好いいとは言えず、弱くて守ってあげたくなる存在だと笑顔で言い放って辺りの空気を少しだけ冷やし、そう言われたのび太は複雑そうな表情を浮かべている。

 

「でも、お兄様って優しいでしょ? それに、お兄様の顔を見てたら何だかお姉様と居る時みたいにスッゴく心地良くて、抱えてた不安とか全部綺麗になくなった気がして、巣食う狂気だって不思議と出て来なくて……だから格好良くなくても、どれだけ弱くてもどうでも良い。一緒に居るだけで幸せだから。それに、私がこんな気分になるの、お姉様と一緒に寝てる時にイチャイチャ――」

 

 ただ、悪気もなく貶した後は間髪入れずに、フランはのび太の良いところを穏やかな笑顔で沢山挙げ、冷えたこの場の雰囲気を一気に心地良い物へと変化させた。そして、高揚する気分のままレミリアとの一緒に寝ていた時の事を言おうとして……

 

「ちょっ……フラン!? ここは外だし、それ以上は言っては駄目よ!」

「あ……はーい!」

 

 当然だが、こんな誰が聞いてるかも分からないような場所で話されては堪らないため、レミリアは全力でフランの口を手で塞ぎつつ、こんな場所で言ってはいけないと顔を赤くしながら諭す。大好きな姉にそう言われたフランはハッとした表情を浮かべながら、元気良く返事を返した。

 

 その様子を見ていたのび太は、どうしてそこまで必死にフランが言おうとしてた事をレミリアが止めるのかを、正しく理解出来ていなかった。故にイチャイチャの内容が少し気になったが、2人の様子を見て何か人には言えない事とは推測していたため、確認も兼ねてこれ以上突っ込まない方が良いかとレミリアに聞く。

 

「えっと……僕はこれ以上聞かない方が……?」

「そうね。聞かないでもらえるとありがたいわ。流石に恥ずかしいから」

「うん。レミリアがそう言うなら……」

 

 すると、レミリアはその問いに対して、恥ずかしいから聞かないでもらえるとありがたいと即答したため、のび太はこれ以上突っ込まない事に決めた。

 

「ねえ、お兄様にお姉様。手を繋いで行かない?」

「手を繋ぐ? うん、良いよ」

「勿論よ、フラン」

 

 そんなやり取りを交わしていると、フランがそんな事をのび太とレミリアに手を差し出しながら頼んでいた。簡単に出来る事であったため、2人はその頼みを快く了承して手を繋いであげていた。

 

 レミリアが左側、のび太が右側と言った感じで挟まれる形となったフランは、大好きな()()()()()2()()に触れていられる事が相当嬉しいのか、即興で作った歌をとても幸せそうな笑顔を見せながら歌ったりしていた。

 

 即興で作られた歌の中でフランからレミリアと同等の、正式かつ大好きな家族として認定すると言われたのび太は嬉しく思いつつも、種族も年も違う事から色々な意味で大丈夫なのかと問いかけるも、そんな事は百も承知だと即答されたため、受け入れる事に決めた。

 

 とは言ってものび太には家族が居るため、レミリアとフランの家族と言っても本当にずっと一緒に暮らすわけではなく、単なる称号のようなものであるが。

 

 そうしたやり取りを交わしつつ当たり障りのない会話をしていると、ようやく河原のグラウンドが4人の視界に入ってきた。既にそこにはいつものメンバーが集まっていたため、少しだけ急いで向かう

 

「ジャイアンお待たせーー!!」

「遅ぇぞのび太……お? ドラえもんに、レミリアとフランも居るのか」

 

 すると、ジャイアンはのび太やドラえもんだけではなく、レミリアやフランが居る事について少しだけ不思議に思っていたが、特に驚きを見せる事はなかった。スネ夫はレミリアを初めて見たものの、フランの様子と姿形から彼女の姉である事はすぐに理解が出来たようで、ジャイアンと同じく驚く事はなかった。

 

 しかし、他の野球の参加者たちはどう見ても外国人の女の子である2人が、のび太やドラえもんにジャイアンやスネ夫と顔見知りである事に対して驚いていた。

 

 更に、フランがのび太をお兄様と呼んで懐いているのを見て、一部の参加者たちはアイツはいつの間にあんな可愛い子に懐かれてんだ羨ましいなどと、そんな反応を示していた。

 

「あのさ、ジャイアン。この2人にも野球をやらせて欲しいんだけど……」

「そいつは構わねぇぞ。ただ一応聞くが、やった事はないんだよな?」

「うん」

「まあ、レミリアとフランの事だし、ルールさえ教えれば後は何とかなるか……よし分かった! 一緒にやろうぜ! スネ夫、構わねえよな?」

「勿論さ。2人とも、楽しくやろう」

「感謝するわ。ジャイアン、スネ夫」

「ありがとね!」

 

 そんな彼らをよそに、のび太とジャイアンはレミリアとフランの野球参加交渉を進め、結果的にドラえもんが口を出す必要もなく、難参加が決まった。ただ1つの問題である、2人の使う道具がない問題も、ドラえもんが『フエルミラー』と言うひみつ道具を使って増やした事で解決した。

 

 服装はどうするかと言うのも、今回は試合に向けた練習と言うよりは楽しむ方面が強い上、そもそも色々用意出来ていない事が大きいためそのままでやる事に決まり、2人もそれを了承した。

 

 その後、ジャイアンやスネ夫以外の参加者たちとレミリアやフランとの自己紹介を軽めに済ませてから、野球を早速始めた。

 

「嘘だろ……あの2人凄すぎる……あれで野球をやるのは初めてとか、どれだけ天才なんだ?」

「まあ、初見じゃ驚くか……あの2人、俺の見立てでは運動に関しては出来杉を凌駕するからな」

「「「なるほど……確かに」」」

 

 すると、レミリアやフランはジャイアンの投げるボールを超高確率で打ち返し、稀にホームランですら叩き出すと言う活躍を見せ、参加者たちを驚かせた。そして更に、ジャイアンが2人の事を『運動に関しては出来杉すら凌駕するレベル』と発言した事により、参加者たちは揃って驚く事となった。

 

 これにより、容姿も相まって余計に注目を浴びてしまいはしたものの、レミリアとフランが手加減を間違えて超人プレーをうっかり見せてしまったとしても、疑いの目を向ける者は居なくなって楽しみやすくなった。ジャイアンなりの気遣いかどうかは不明ではあるが。

 

 そんな2人の後にのび太も半ば強制的にスネ夫に促されてやったが、基礎的な身体能力の差で劣るレミリアやフランのようにはいかないものの、いつもよりも空振りの回数が減っていた上、ホームラン級の当たりを3回も出す事が出来た。これにはスネ夫もビックリし、いつもこれくらい出来てくれたらと愚痴をこぼしながらも、のび太を素直に称賛した。

 

「のび太、お前今日は調子良いな! 凄い当たってたじゃねぇか」

「私も、今日ののび太の様子を見る限り、周りと比べて劣りはするかもしれないけどそんなに下手くそだとは思わないわ。自信を持ちなさい」

「前に会った時、自分は野球は下手くそだって言ってたけど、凄いじゃん! 流石、()()()()()だね!」

「でも、たまたま調子が良かっただけだから……」

 

 ある程度遊んだ後の休憩時間中は、ドラえもんと話していたのび太に対してジャイアンとレミリアとフランの3人が詰めかけ、今日の調子の良さは凄かったと褒めると言ったやり取りが行われていた。しかし、3人から褒められているのび太はこれ程までとは思わず、当惑していたため、調子が良かっただけだと言うにとどまっていた。

 

 更に、フランが普段レミリアにもやっているように、腕にしがみつく行為をした上で何故か()()()()()とそこだけ強調して宣言したため、そう言う意味だと解釈した一部の参加者たちから、のび太は羨望の眼差しを向けられたり、もはや恨んでないかと言うレベルの妬む視線を向けたりされていた。

 

 しかし、のび太はそんな眼差しを向けられている事に全く気がつかない上、それに気づいたフランが参加者たちの表情などを見て色々と誤解をしてしまった。それ故に全力で睨み返し、危うく何かが起こってしまいそうになったが、のび太が咄嗟に頭を撫でた事によって落ち着き、レミリアがあの表情の真意を教えた事で完全に解決した。

 

「えっと……ごめんなさい。許してくれるかな……?」

 

 そして、レミリアに促された事で、フランは全力で睨み付けた野球の参加者に対して頭を下げて謝った後、全員と握手をした事でこちらについても取り敢えず解決はした。

 

 ただ、その時のフランが放った威圧感による恐怖は完全には消えないため、握手していた人たちの動きが少しぎこちないが、のび太を守りたい一心から相手に恐怖を植え付けるつもりで威圧したため、しょうがないと割り切る。

 

 そう言ったやり取りをするなどして休憩が終わった後、今度はレミリアとフランが守備をやったが、こちらの方は色々な意味で苦戦する事となった。誰かが打ったボールを取るのは問題なかったものの、手加減しつつそれを適切なタイミングで他の誰かに投げるのが難しかったためである。

 

 攻撃側はほぼ同じレベルであるが、守備に関しては力加減を上手くやっている技巧派のレミリアの方がフランよりも上手い事出来ていた。周りで一緒に守備をしていた参加者たちも、レミリアの方が総合的に見れば野球は上手いと言う評価を下している。

 

「本当に残念だよなぁ。1ヶ月から2ヶ月程度でアメリカに帰っちゃうなんて」

「まあ、そうだね。ここに住んでたら、オレたちのチームもかなり強くなっただろうに……」

「今度やる試合にも出れそうじゃない?」

「確かに!」

 

 ある程度守備を楽しんで野球が終わった後は、疲れを癒すためにベンチで座って休憩しながら、参加者たちはレミリアとフランについて話をしていた。のび太と会話しているところに勇気を振り絞って話しかけ、ドラえもんやジャイアンにスネ夫の輪の中に入って一緒に盛り上がっている参加者も出てきている。

 

「あー楽しかった! でも、これ人数揃えないと出来ないのが欠点だよね」

「そうね。帰ったら、誰かを誘ってやりましょう」

「うん! でも、やってくれる人居るかなぁ? 館の皆なら大丈夫だろうけど」

「うーん……紅魔館でパーティーでも開いて、来てくれた人を誘いましょう。まあ、人数足りなかったら……その時は諦めるって感じかしら」

 

 野球遊びが終わって皆が家に帰るなり、どこかに遊びに行ったり塾などに向かおうとして解散していく中、野球を皆でやった事がとても楽しかったレミリアにフランは、幻想郷に帰ったら知り合いや自分達の住む館の住人たちを誘ってやろうと言う計画を立てていた。色々と問題があるため、実際に実現するかどうかは不明であるが。

 

「良かったね、のび太君。2人とも、凄く楽しかったみたいで」

「うん。連れてきて本当に良かったよ。この町に居る間、存分に楽しんで欲しいから」

 

 そんな感じでレミリアとフランが話し合い、それをのび太とドラえもんが温かい目で見守っていると、突然ジャイアンがこの場に残っていた4人とスネ夫に向けて、かなりの上機嫌な感じで話しかけていった。

 




ここまで読んで頂き感謝です。お気に入りと評価をしてくださった方にも感謝です。励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。