加古さん企画の突発イベント『同一イニシャル即席チーム戦』。
これによって結成された二宮匡貴、奈良坂透、那須玲、仁礼光の四人によるチーム『N』!
仁礼「顔面偏差値たっけーなこのチーム……」果たしてチーム『N』はトーナメントの優勝を勝ち取ることが出来るのか!?

というのを考えていたのですが、今月の神回を読んだ後にこの駄文を見返したとき
私の頭の中のみかみかお姉さんから「もうちょっとマジメに」とお叱りを受けてしまったので一端お蔵入り。
ただ丸ごと闇に葬るのも勿体ないと思うくらいには書いたのでチラ裏に投げます。
お時間に余裕がありましたらご覧下さい。

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『N』

 奈良坂透にとっての『天敵』と言っても過言ではない人物が、ボーダーには二名存在している。

 一人はNo.1スナイパー当真勇。訓練嫌いの感覚派にして超実戦志向、何より狙撃に独自の美学を持っている男。あの人の考え方は兵士というよりも芸術家のそれに近い、そう奈良坂は思っている。ランク戦、或いは訓練でも構わないからとにかくいつかは一発、あのリーゼントのど真ん中をイーグレットでぶち抜いてやろうと密かに意気込んではいるのだが、今のところそれが達成出来た試しはない。No.2スナイパーなどという『汚名』を返上出来るのはいつの日か。

 

「見て見て、とーちゃん」

 

 そしてもう一人が、何も知らない第三者が聞けば父親を呼ぶ子供のような敬称で呼びつけてくるこの従姉妹。

 

「……なんだ、玲」

 

 B級那須隊隊長、那須玲17歳。年齢を表記することで、彼女が奈良坂透の娘でも何でもないことの証明とする。

 では『とーちゃん』とは一体何なのか。言うまでもなく『透』を由来として考案された綽名である。

 ちなみに利用者はこの世に那須玲ただ一人しかいない。故に奈良坂を父のように呼びつける者もまた、那須玲ただ一人しかいないのである。かつて奈良坂のチームメイト達が周囲にいるにもかかわらず彼女がその呼び名で奈良坂に声をかけた際、三輪秀次はぎょっとして奈良坂と玲の二人を交互に眺め、米屋陽介は飲んでいた紙ペットのコーヒーを盛大に吹き出し、古寺章平は『奈良坂先輩と那須先輩って親子だったんですか!?』と正気を疑う反応を示す始末であった。自分も大概だが章平は輪をかけてアドリブが利かないというかイレギュラーに弱い、そんなことを思いながら必死になって場の混乱を鎮めたのは奈良坂にとって苦い記憶である。

 閑話休題。

 二人は現在、ボーダー本部基地内部の売店に立ち寄っている。品揃えは駅のコンビニと同レベルだが、学生隊員の多いボーダーにとってはそれなりの人気スポットであり、奈良坂もチームメイトや狙撃手仲間と頻繁に足を踏み入れていた。が、ずらりと並ぶカップ麺の前でわいわいとはしゃぐ目の前の従姉妹と共に来店する機会はあまり多くはない。そもそも本部で二人が行動を共にする機会自体が少なかったのである。

 何しろ学校も階級も性別もポジションも異なる二人、普段は互いにチームメイト達とつるんで行動しており、たまに三輪隊と那須隊が鉢合わせた場合、奈良坂を真っ先に捕まえるのは玲ではなく日浦茜の役割であった。互いが一人の時にふらっと立ち寄った売店でばったり、などという現在の状況は非常にレアな事例であり、二人っきりで顔を突き合わせるのが久々だからといって今更気まずくなるような関係でもないので、かくして奈良坂透は那須玲に付き合ってカップ麺売り場の真ん前で突っ立っている訳なのだが――

 

「コラボ商品ですって」

「……『赤いねつきと緑のきぬた』……?」

「攻めてるわよね」

「誰が買うんだこんなの」

「私よ」

「本気か」

「二つ一緒に買うと特製ストラップも付いてくるのよ、ほら」

「尚更買う気が失せたぞ」

「そう?」

 

 かわいいのに、と呟きながら売場に並んだ大量の小型中年男性達をつんつんと指でつついていく那須玲。

 本物の二人に同じことをしたらどういう反応を示すだろうか。根付は真っ先に辺りを見回してパパラッチの不在を確認することだろう。メディア対策室長は世間の目に敏感である。

 鬼怒田はどうだろうか。やめんかと言いながら苛立ち交じりに手を振り払うのか、或いは噂の別居している娘とやらを思い出して雨取千佳と接する時のように光のたぬきと化すのだろうか。

 関係ないが先日、玲をLINEで怒らせた際にデフォルメ化された鬼怒田のスタンプが送られてきたことを奈良坂は唐突に思い出した。なんだこれはと尋ねたところ、『おにおこ!』の意であったという。女子隊員の間では腹が立った時に鬼怒田本吉48歳バツイチのスタンプを送り付けるのがトレンドらしい。人生において全く役立たない知識を得てしまったというのが奈良坂の感想であった。

 

「とーちゃんは根付さんと鬼怒田さんのどっちが好き?」

「カップ麺と本人どっちの話だ」

「本人の方」

「鬼怒田さんだな」

「まあそうよね」

「意外に思わないんだな」

「とーちゃんは鬼怒田さんみたいに実直な人の方が好みだろうなって思ってたから」

「別に根付さんが嫌いって訳じゃない」

「わかってる。ちなみに根付さんたけのこ派よ」

「やっぱり根付さんが好きだな」

「たけのこ好きなら誰でもいいのね……たけのこビッチだわ……」

「訳の分からない新語を勝手に作るな」

 

 『同士』を大切に想うのは当然の話。ただそれだけのことである。ちなみに玲は忌むべき異教徒、即ちきのこの手先~ダークサイドの住人~であった。神は玲に外見の麗しさを与えても、健康と確かな舌だけは与えてくれなかった。哀れな玲。略してあわれい。いつの日かトリオン体に頼らず、生身の身体で駆け回れるほどの健やかさを手に入れたとき、正しい味覚も取り戻すことが出来ればいい。そう奈良坂は願っている。割と本気で。

 

「というか、なんで根付さんの好みなんて知ってるんだ」

「本人に聞いたから」

「そんな機会あったのか」

「私の従兄弟はたまに本気で引きたくなるくらいたけのこの里が好きなんですけど、

 根付さんはどっち派なんですかって」

「俺の下り必要ないだろ」

「そうね。素直に私がきのこ派だということだけを伝えておくべきだったわ」

「卑怯な手で邪教に引きずり込もうとするんじゃない」

「邪教……」

「で、いつの話なんだそれ」

「ボーダーに入隊して半年くらいのことだから……一年とちょっと前?」

「ああ……テレビ出た時か」

「そうそう」

 

 合点がいった。玲と根付が関わりを持つ機会といったらそこしかない。

 今から二年ほど前、入院中だった玲のもとにボーダー職員達が訪れ、我々の研究に協力してほしいと誘いをかけた。『トリオン体』と呼ばれる代替品の肉体を用意することで、病弱な人間に運動能力を与えることは出来るのか。そのプロジェクトの被験体として選ばれたのが玲だった。

 三門市においては既に一定以上の知名度を得ていたボーダーからの申し出とはいえ、防衛組織からの勧誘という事実が玲の両親たちに二の足を踏ませた。場合によっては玲が近界民と戦うようなことがあるのかという玲の父親の問いに対し、希望とあらば可能な限り実戦からは遠ざけるが、隊員としての高い資質が見出された場合は戦力として駆り出されることも非常時においては想定される――勧誘に来た職員はそう答えたという。

 非常時。それこそ現ボーダーが表舞台に立つこととなったきっかけの戦い、第一次近界民侵攻の時のような。

 そんな戦場の矢面に、この病弱な娘が立つ? 正気の沙汰ではない――取り乱しかけた母親の手を抑え、

 

『受けます』

 

 そう答えた半年後には、驚異の新人変態バイパー使いとしてボーダー内でもにわかに脚光を浴びる存在となっていたのが那須玲という女であった。トリオン体の感覚に馴染むまでそれなりの時間を要したがため、同期に入隊した奈良坂に半期遅れてのランク戦参加となったものの、参戦時期が被っていたら自分の新人王獲得は危うかったかもしれないとさえ奈良坂は思っている。

 かくして、プロジェクトの偉大な成功例となった玲の元に飛び込んできた新たな依頼が、件のテレビ出演の誘いであった。『半年後、そこには元気な姿で戦場を駆け回る那須さんの姿が!』などという世界まる見えよろしくのナレーションをバックにお茶の間デビューを果たした玲、その彼女とテレビ局の間に立ったのが、他ならぬ根付栄蔵その人であったのだという。

 玲曰く、テレビ側は当初『ボーダー隊員の那須玲』よりも『悲運の病弱少女那須玲』を推していくことでお涙頂戴を狙いたいという目論見があったそうなのだが、そんなことよりもトリオン体を手に入れたこと、即ちボーダー隊員になることで、体の弱い人間であっても市民を守る力になることが出来るのだというポジティブな面をアピールしてほしい、そう強く主張したのが根付であったそうだ。

 那須玲という一隊員のプライベートに着目されたところで何も得るものがない以上、根付からしてみれば当然の主張ではあったとはいえ、結果的に玲は不快な思いをすることもなく撮影を終え、根付もまたボーダーという組織のイメージアップと新たな入隊希望者(幾人かの不健康児たちと鼻息の荒い青少年が主だったという)の確保に成功した。いわゆるwin-winの関係という奴なのだが、その際に雑談程度の交流機会もあったという訳だ。

 

「それじゃあ玲は根付さん派か」

「唐沢さん派よ」

「それは卑怯だろ」

「唐沢さんはラグビーやってるものね」

「だからなんで知って――いや誰でも知ってるか」

 

 唐沢克己は何かにつけて『俺はラグビーやってたからね』とアピールを欠かさないことで有名である。

 その自己主張の激しさたるや、佐鳥賢の『俺のツインスナイプ見た?』に勝るとも劣らない。

 前者は敬意を持って聞き入れられ後者は聞き流されることが多いとも言われている。人徳の差だろうか。

 俄かにラグビー人気が高まってきている昨今、ついに時代が我らが営業部長に追いついたとボーダー内部の唐沢シンパ達は胸を熱くしているとかどうとか。玲もそんなミーハー達の一人なのだろうか。

 

「私もこの間勉強してみたのよ」

「ラグビーをか」

「Kapa o Pango~Au-e Hi~HA~♪」

「ミーハー臭さが倍増しになったな……」

 

 上から下まで真っ白けっけの那須隊服で高らかにオールブラックスを賛美し始めるあたりが最高に俄か臭い。

 やめろ。店内で踊りだすのはやめろ。バイトのC級隊員が信じられないものを見る目でこっちを見ているぞ。今日の晩には間違いなくSNSで噂になっている。『那須さんが奈良坂さんと二人で売店でハカ踊ってた!』いや俺は踊ってない。やめろ。俺を巻き込むんじゃない。だがこの場にいては間違いなく一緒に噂になる。

 帰ろう。そう思って踵を返しかけた奈良坂の前に躍り出る、いや踊り出る新たな影が一人。

 

「Ka mate! ka mate!」

 

 加古望が現れた。

 

「ka ora! ka ora!」

 

 何相槌打ってるんだこの従姉妹は。

 

「悪夢のような光景だな」

「二宮さん……!」

 

 いつものポケイン黒スーツ姿で現れてそんなこと言われても芸人が三人に増えたようにしか見えません、などという邪な感想はとても伝えられない奈良坂である。だが加古と二宮という来訪者の存在はありがたい。この三人に囲まれていれば自分など気の毒な被害者Aにしか映らない筈。『那須玲と加古望と二宮匡貴に絡まれた可哀想な奈良坂透』の図式がここに完成したのである。

 

「何か買いますか二宮さん」

「いつからそんな使いっぱしりのようなキャラになった奈良坂」

「見て見て二宮くん、根付さんと鬼怒田さんがうどんになってる」

「言い方」

「普通のやつと味一緒だったぞ。もう買わん」

「食べたんですか」

「四つ買わないと二人とも手に入らんからな」

「何スマホにぶら下げてるんですか」

 

 当たり前のことを聞くなと言わんばかりに二人の小さいおじ様がぷらんと吊るされたスマホを掲げる二宮。

 やはりランク戦の最中に雪だるま捏ねだす人間の趣味趣向は分からん。そう奈良坂は思った。

 

「珍しい組み合わせね、奈良坂くんと那須さんの二人だなんて」

「訓練帰りに寄ったら鉢合わせになりまして」

「とーちゃんはいとこなんです」

「とーちゃん?」

「父親は従兄弟にはなり得ないだろう」

「二宮さん」

「ああ、えっと。透くんの『とー』です」

「那須さんはお気に入りの子をちゃん付けで呼ぶタイプなのね」

「言われてみれば……とーちゃん、くまちゃん、茜ちゃん、小夜ちゃん……」

「私のことも加古ちゃんって呼んでもいいのよ」

「歳を考えろ」

「張り倒すわよニノちゃん」

「蹴り飛ばすぞ加古ちゃん」

「呼んでますよ二宮ちゃんさん」

「奈良坂」

「すみません」

 

 いかん。流れに釣られてしまった。ちなみに加古の名誉のために補足しておくと、堤大地は普通に彼女を加古ちゃんと呼んでいる筈である。まだまだいける。二十歳でも心はガール。

 

「絵になるいとこ同士ね。二人でいる機会が増えたら絶対噂になるわ」

「あら。絵になるっていうなら、加古さんと二宮さんだってそうですよ」

「那須。冗談はよせ」

「ごめんなさいね那須さん、うちの子って素直じゃないのよ」

「私のところもそうなんです。なんだか似てますね、私たち」

「おい玲」

「誰がうちの子だ」

「まあ。本当によく似てる。うふふ」

「奈良坂。この女どもをまとめて吹っ飛ばしてやりたいとは思わないか」

「気が合いますね二宮さん。ブースに行きますか」

「あら面白いわね。美人シューター姉妹とボーダー屈指のイケメンタッグで決闘というわけ」

「お姉様……」

 

 姉妹という表現に当てられてか、ひしりと加古の腕に身を寄せる玲。何の茶番だこれは。

 

「……うん? 奈良坂くん、二宮くん、それに那須さん……」

 

 ふと三人の名字を呟きながらそれぞれの顔をまじまじと眺め出す加古。困惑する奈良坂、眉を顰める二宮、至近距離故かあわあわと狼狽え始める玲。自分から寄り添った手前、身を剥がす訳にもいかないのだろう。貴重な光景である。しかし絵になるというのならこの二人の組み合わせも大概だな。そう奈良坂は思った。

 

 

 

「あなた達――『N』ね」

『は?』

 

 三人のリアクションが見事にハモった。

 

 

 

「……ああ。イニシャルですか」

 

 いち早く混乱から脱したのは奈良坂であった。他の人間ならいざ知らず、加古望という女性が他者をそれで括ることには特に違和感がない。

 何しろ、自分と同じイニシャルの隊員のみを勧誘するという縛りの下でA級6位まで上り詰めた女傑である。我らが三輪隊の一つ上に立つ目下最大のライバルということもあり、かねてから奈良坂はそれなりに加古隊のことを意識はしていた。もっとも、意識の強さで言えば自分よりも隊長である三輪秀次の方がよっぽど上だろうとも思ってはいるが。元チームメイトのよしみで。

 

「またお前の悪癖が始まったか――優れた才能を下らん縛りで一括りにしようとするな」

「あら。限られた素材の中で試行錯誤を尽くすのが楽しいんじゃない」

「それで出来上がるのが死人の出る炒飯なら世話がない」

「食べたことないくせに」

「死にたくないからな」

「お姉様はお料理もなさるんですね」

「良かったら今度那須さんにも食べさせてあげる」

「まあ。楽しみです」

「よく俺の話を聞いてこいつの料理が食べたいと思ったな」

「怖いもの見たさです」

「あら、思ってたよりも生意気な妹ね。うりうり」

「ふがふが」

 

 あの那須玲が鼻をつままれてふがふが言っている。見てるかC級隊員、最早俺など道端にひっそりと生えたきのこ、いやたけのこに過ぎないだろう。

 だがバイト中に堂々とスマホを取り出してこちらに向けるのは如何なものかと思うぞC級隊員。

 あ、二宮さんが一睨みしたら引っ込めた。流石は二宮さんだ。やはり何か驕ろう。そう奈良坂は思った。

 

「……で、その発見が一体何の役に立つ。まさか俺と奈良坂と那須で隊を組めという訳じゃないだろう」

「あら。二宮くんにしては冴えてるじゃない」

「おい」

「加古さん、流石にそれは……」

「――はっ! お姉様、もしかして私の隊からくまちゃんを引き抜こうと……!?」

「斬新な解釈だな」

「いいわね。その案もいただき」

「お姉様!?」

「おい」

「加古さん、流石にそれは……」

「古寺くんはうちとはちょっと合わないタイプかな」

「いえ別に章平を引き抜かれる心配はしてませんが」

 

 とばっちりでフラれる羽目になった古寺に内心で合掌しつつも奈良坂は困惑を隠せない。

 一体加古は何を企んでいるというのだろう。二宮も玲も隊長として自前の隊を持つ責任ある立場であるし、自分もまた三輪隊を離れるつもりは微塵もない。何より加古の思いつき一つで三つの隊をバラバラに出来る訳もなし、加古特有の奇行にしても幾ら何でも無茶が過ぎる。あまつさえこの場にいない熊谷をも巻き込んで何を仕出かそうとしているのか。

 

「心配しなくても大丈夫よ。ちょっとしたお遊びだから」

「お前の言うお遊びとやらが『ちょっとした』で済んだ試しはない」

「心外ね。分別を付けられるようにはなったつもりよ。もう大人だもの」

「それも背伸びした子供の台詞だ」

「あら。二宮くんがそれを言う?」

「まあまあお姉様」

「よくこの二人の間に割って入っていけるな……」

 

 この二人を止められるのはあの人しかいないと東春秋にLINEを送りかけていた手を止める奈良坂。

 見かけによらないクソ度胸は我が従姉妹の強みの一つである。しかしいつまでその呼び方を続けるんだ玲。

 

「まあ、空気悪くしてまで引っ張るようなネタでもないからバラしちゃうけど――たまに職員さんが開催してる1dayトーナメントってあるじゃない」

「ああ……1対1ばっかりなんで、あんまり俺には縁がないですが」

「それよ。攻撃手や二宮くんみたいな一部の射手銃手だけじゃなくて、他のポジションの子たちも参加出来る企画は何かないか――イベント担当の職員さんから、そんな相談を受けててね」

「お姉様は職員の方とも繋がりがあるんですね」

「城戸正宗さんっていうんだけど」

「最高司令官じゃないですか」

「イニシャルが同じだからね」

「お前それ言えば何でも解決出来ると思うなよ」

「『我がボーダー主催の突発イベントも四年目を迎えてマンネリの危機を迎えている。君の奇抜な発想力が必要だ』」

「それらしい物真似で冗談に信憑性を持たせようとするのはやめろ」

「何なら顔に傷でも付けましょうか」

「ダメですよお姉様。女の子なんですから」

「まあ、かわいい子ね。イニシャルがKなら本当の妹にしているところだわ」

「イニシャルが同じなら妹に出来るなどという法律は存在しない」

「キノミヤくんさっきからうるさい」

「…………」

「あら、二宮さんの周りにかわいい形のトリオンキューブがいっぱい」

「おおおお客様、店内でのトリガー使用は固くお断r」

「模擬戦以外の戦闘は隊務規定違反で厳罰よ。影浦くんもこの間2000点減らされたそうじゃない?」

「たかだか2000点程度を惜しむほどポイントに困ってはいない」

「俺だって何点削られようが知ったこっちゃねェよ」

「ひっ――!?」

 

 噂をすれば影。浦雅人。注意しに来たC級バイトが喉の奥から掠れた悲鳴を捻り出しながら店の奥へと消えていく。そろそろ店長、もとい本部職員でも出てくるんじゃないだろうか。

 

「最近よく会うわね影浦くん」

「せめーんだよ四人もごちゃごちゃ集まりやがって。俺ァそこのカップ麺に用があんだ、さっさとどけ」

「ねつきぬたうどん大人気じゃないですか」

「影浦くんは根付さんと鬼怒田さんのどっちがお好き?」

「俺が誰の顎かち上げて降格と8000点没収食らったと思ってやがる」

「だろうな。つまりはそういうことだ」

「言いたいだけですよね二宮さん」

「二宮テメー目障りなキューブふわふわさせてんじゃねーよ邪魔だ邪魔」

「チッ……」

 

 舌打ちしながらもポケットに手を突っ込んだままキューブを掻き消す二宮。流石にこれは影浦が正論である。

 ずかずかと大股で四人の間を割って入り緑のきぬたに手を伸ばす影浦。

 しかしカップを手に取る寸前、ぴたりと動きが止まる。唐突にガシガシと頭を掻き始めたかと思うと、くるりと振り向いて四人のうちの一人へと向き直った。その視線の先にいるのは――

 

「……誰だ、なんかむず痒いやつでチクチク刺してきてんのは」

「あ」

 

 玲だった。思えば玲と影浦の間に接点は殆ど思い浮かばない。影浦隊はB級に降格こそしたものの中位落ちは一度として経験しておらず、那須隊との対戦機会は一度もない筈だ。かつて狙撃手仲間の絵馬ユズルから、うちの隊長は対戦記録を全然見ないという話を聞いたこともある。そして玲もまたチームメイト以外の隊員に対する関心が薄い節があり、下手をすると入隊二年目にも関わらず『狂犬』影浦のサイドエフェクトを知らないという可能性がある。一体玲が影浦に対してどういった感情を向けているのかは知る由もないが、何故だろうか、しょうもないことを考えている予感しかしない――そう思いつつも、いつでも一歩を踏み出せる体制だけは整えておく奈良坂であった。

 そしてその直感は当たっていた。

 

「ごめんなさい。その、先輩の髪が気になって」

「あァ?」

「シャンプーでわしゃわしゃしたら絶対気持ちいいだろうなって思ったんです」

「……おい。何だこの女」

「すみません。俺の従姉妹です」

「B級那須隊の那須玲です」

「知らねー」

 

 やはりか。『先輩』という敬称を用いたことからして流石に玲の方は影浦の存在を認知していたらしいが、そうでなくてもこのボサボサ頭猫目マスクマンを前にして「奈良坂」「すみません。心が滑りました」「生まれてこの方聞いたことのない言い回しね」真正面から堂々と『貴方の髪をわしゃわしゃしたい』と言ってのけるあたりがつくづく那須玲である。案の定影浦も毒気を抜かれたのか、玲から目を逸らすと再び頭をガシガシと掻き始める。悪意0、好奇心100%の感情から発せられた言葉だということが伝わったのだろう。今回ばかりはサイドエフェクトに感謝だなと奈良坂は思った。下手をすれば喧嘩を売っていると思われてもおかしくない発言であるからして。

 

「先に言っとくが、勝手に手ェ突っ込んできたらいくら女でもキレるからな」

「流石に出会ったばかりの男のひとにそんな真似はしません」

「影浦くん相手にそんなこと出来るのは犬飼くんくらいのものよね」

「嫌なこと思い出させるんじゃねーよファントムばばあ」

「初耳だな」

「テメーんとこの隊員だろが。しっかりと躾けて首輪巻いときやがれ。犬だけにな」

「犬飼は犬飼であって犬ではない。そして犬飼も犬を飼ってはいない」

「二宮さん」

「うちの双葉の髪弄るのと同じようなノリだったんじゃないかしら?

 あれ以来影浦くんは犬飼くんのこと苦手なのよね」

「頭にぞわっとする感覚が刺さったと思ったらほぼ同時に野郎の手が突っ込まれてたんだぞ。軽いホラーだろ」

「わしゃわしゃしたいって気持ちを向けられるとぞわっとするんですか」

「あー、テメーのは犬飼のクソヤローよりもどっちかってェと――」

「こらー! おそいぞバカカゲー!!」

 

 狭い店内によく通る少女の声が盛大に響く。全員が一斉に声のする方に視線を向けると、五人分の視線を一斉に浴びた故か威勢の良い声を発した少女も流石におおうとたじろいだ。

 

「――こいつに似てる」

「……へ? なに、アタシが誰に似てるって?」

 

 仁礼光。B級2位影浦隊のオペレーターであるが、彼女の姿を見た途端に奈良坂は気が付いてしまった。

 この場において、彼女は四人目の――

 

「――『N』だ」

「お? おおう、ならさか。おっす」

「完璧じゃない。オペレーターまで揃うなんて、これはもう運命としか思えないわ」

「あァ? おいばばあ、テメー何言ってやがる」

「ようやく話が本筋に戻ってきたわね。二宮くん、奈良坂くん、那須さん、そして仁礼さん――」

 

 全てを意のままに進める女王が如き振る舞いで、加古望は四人の名を順々に読み上げて、高らかに宣言する。

 

 

 

「――あなた達はチーム『N』として、私の企画する『同一イニシャル即席チーム戦』に参加するのよ!」

 

 

 

「……はァ?」

「……んん?」

 

 事情を呑み込めていない影浦隊の二人だけが、困惑の色を隠せずにまじまじと加古を見つめていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ――そして数日後。

 

『ボーダーの皆さん、御機嫌よう。加古隊隊長の加古望よ。本日は私が企画したイベント、『同一イニシャル即席チーム戦』にお越しいただいてありがとう。この場を借りて感謝の意を伝えるわ』

 

 お馴染みのランク戦会場にC級隊員を中心とした観客たちの拍手がパチパチと響き渡るのを、奈良坂透は二宮隊作戦室備え付けのモニターで眺めていた。画面越しというのもあってか、未だに非現実感というか『本当に実現するとは……』感が抜け切っていない。滅多なことでは訪れない二宮隊の作戦室に足を踏み入れているというのもそうだし、隣に座る玲はいいとして、向かいの席で顎に手を突き仏頂面でモニタを眺めている二宮の存在も、借りてきた猫のようにそわそわと落ち着きがない仁礼の姿も実に新鮮である。進級したてでクラスが変わり、打ち解けてもいないクラスメイト達と共にやって来た修学旅行初日か何かのようだった。

 

「お……おちつかねー……」

「大丈夫? ヒカリちゃん」

「なすっちーって結構ハートつえーよな……緊張とかそういうのねーの?」

「こういう静かで清潔にされたところは慣れてるから」

「アタシはダメだぁー……散らかってないと自分の部屋って感じがしねー……コタツがほしー……」

「俺の隊室だ。仁礼の部屋だと感じないのは当然のことだろう」

「あ、はいマジすんません……」

 

 そこで助けを求めるように俺の方を見られても困るんだが仁礼。気付かぬフリをして奈良坂はそっとモニタへと視線を戻した。どうも思っていた以上に二宮と仁礼の噛み合わせが宜しくない。

 これも絵馬から聞いた話だが、曰く『ヒカリはああ見えて突き放されると弱いんだよね。すぐ落ち込むし』とのことらしい。アタシがいないと何にも出来ないってよく言ってるけどヒカリこそ一人になると全然ダメ、とも言っていた。『要はかまってちゃんなんだよ』と最終的にばっさり切り捨ててはいたが、何のかんの言っても最終的には全員が仁礼に合わせるであろう影浦隊の面々に対して、独自の世界を築くことにおいては他の追随を許さないことで知られているのが二宮匡貴という男である。

 気を遣っていないという訳ではない。多分。先の発言も二宮的にはフォローのつもりだったのだろうが、突っ込みどころを完全に間違えているので誰も救われていない。仁礼もいつもの調子ならいざ知らず、完全にこの部屋一帯に漂う二宮イズムに呑まれた今となっては反撃のしようもないようだった。合掌。

 

 

 

『ルールの説明をするわね。試合形式はシンプルに1チーム同士の一騎打ち、制限時間は一試合20分。時間内に決着がつかなかった場合は両者敗退。トーナメントだからそこら辺はサクサクいくわよ。マップは市街地Aに固定、転送場所も各チームばらけず一纏めで、狙撃手以外はバッグワーム使用禁止。

 そしてこれが最も重要なルールになるけれど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。勿論ベイルアウトしたらそこで貴方の大会はおしまい。次の試合にも参加は不可能よ。トリオンだけは毎試合ごとに補充するけど、傷口から普通に漏れていくからあまり過信はしないように。

 なるべく傷つかず、それでいて時間内にきっちりとケリを付ける――優勝するには、そういう立ち回りが求められるわ。後のルールはランク戦と一緒。頑張ってね』

 

 

 

「――回復なしか」

「マジかー……捨て駒戦術使えねーじゃん……」

 

 厳しいな、と反射的に奈良坂は思った。戦闘員が三人しかいないこの即席チームにおいてはかなり重い足枷となることだろう。同じことを考えたのか仁礼も渋い顔をしている。呟きの内容はさておき。

 

「条件は他所も同じだ。お前たち二人は被弾しないための立ち回り方も知っている、普段通りにやればいい」

「そうですね――細かいダメージを負いやすい攻撃手がいない分、むしろ私たちが有利かも」

「……そういう考え方もあるか。しかし初戦の相手が怖いな、四人チームかつ万全の攻撃手が相手だと……」

「攻撃手の相手は俺が引き受ける。何も問題はない」

 

 自信満々に言い放つ二宮。この辺りは流石に個人総合二位の貫禄である。言葉に絶対の説得力があった。

 

「――そうですね。そもそも二宮さんと玲の二人で弾幕を張れば、近付ける攻撃手もそういないでしょう」

「……私が二宮さんと並んで戦うのよね。足を引っ張らないか心配だわ」

「謙遜をするな。お前の弾道の鮮やかさには出水も一定の評価を下している。変化弾の技術で言えば俺以上だ」

「そうは言っても二宮さん、バイパーはお使いにならないでしょう?」

「目下練習中だ。ハウンドの変化とはまた異なる感覚を要求されるのが気に食わん。出水の奴は『バイパーは無理に曲げようとしても言うこと聞かないんすよねー』などと言っていたな」

「そうですか? 私はハウンドの方が曲げづらいと感じます。言うことを聞かないというのならそれこそ――」

 

 唐突に射手トークで盛り上がり始める二人。置いてけぼりを食らった格好になる奈良坂と仁礼。

 互いにきょろきょろと周囲を見回した後ぴたりと視線が合い、仕方なしに先に動いたのは奈良坂の方だった。

 

「……たけのこでも食べるか?」

「アタシきのこ派」

「お前も俺の敵だ」

「ならさか!?」

 

 

 

『それじゃあお待ちかね、出場チームの発表といくわよ。かなりの豪華メンバーが集まったから、観客の皆も期待しててちょうだい。エントリーナンバー1――』

 

 啓蒙すべき邪教徒たちの名を連ねた『TAKE NOTE』に新たな名前を奈良坂が刻んだ頃、加古の話はチーム紹介へと移っていた。

 とはいえ奈良坂に限らず、この場にいる四人全員、心の奥底では少なからず余裕を抱いていた。何しろNo.1シューターとNo.2スナイパー、そして全射手屈指のバイパー使いが揃ったチームである。イニシャル縛りという条件下に加えて、今回のイベントはランク戦でもない、加古が思いつきで立ち上げた一種の馬鹿騒ぎに過ぎないのだ。逆にこんなガチ感の漂うチームで参加して観客から引かれないかという危惧すら奈良坂は抱いていた。

 

 

 

 しかし誰もが甘く見ていた。

 加古望という女の『思いつき』に費やす行動力とその()()を。

 

 

 

『――東春秋、嵐山准、荒船哲次、雨取千佳、綾辻遥! チーム『A』!』

 

 

 

「ぶふぉあっ!!」

 

 奈良坂にすげなく拒絶されて救いを求めた仁礼の口にしたお茶が、テーブルに盛大にぶち撒けられる。自分の隊室を派手に汚されたことに少しは反応を見せても良さそうなものだが、当の二宮は画面に映るチーム『A』の面々(ランク戦中の一幕を切り取った写真によるもの)に視線が釘付けになっていた。意識しているのは恩師の東か、或いは自分を上回るトリオンの持ち主である雨取か――

 

「あらあら。トリオン体で良かったわねヒカリちゃん」

「え、心配するとこそこ……?」

「……開幕東さんだと……? やってくれたな、加古め……」

「……確かにこれはインパクト強いですね。C級隊員たちが露骨にざわついてますよ」

 

『東さんってこういうイベント出るんだ……』『東さんとトリモンが組んでるとか反則じゃない?』『優勝ここだろ』『嵐山さんと綾辻さんが揃ってるのもポイント高いし』『荒船さんが地味に見えるレベル』そんな感じの呟きがあちこちから聞こえてくる。ほぼ同じことを奈良坂も考えていた。最後の呟きは除いて。

 

『次は結構アルファベットが飛ぶわよ』

 

 どよめきの残る客席をよそに、加古の紹介は続いていく。

 

『エントリーナンバー2。冬島慎次、穂刈篤、半崎義人、日浦茜、氷見亜季! チーム『H』!』

「茜ちゃん!?」

「日浦――な、」

「……何やってるんだ氷見」

「ニノさん、アタシら人のこと言えねーっす……」

 

 何やってるんだ、と言いかけた口が仁礼の突っ込みで止まる。二宮は犠牲になったのだ。奈良坂の犠牲――もとい、チームAに比べると地味に見えるがここも中々に未知数である。B級狙撃手三人という編成だけ見れば劣化荒船隊となるが、工作員冬島の存在がその認識に待ったをかける。冬島とNo.1スナイパー当真勇、たった二人の戦闘員から成るチームがA級2位に君臨していることを知らないボーダー隊員など存在しない。

 とはいえ、穂刈半崎日浦の三人が当真一人分の戦力に勝るのかと言えばそうとも言い切れないところに当真の恐ろしさがあり、仮にそうだとしても一人と三人では冬島も勝手が違うし氷見の負担も大きいだろう。何より二宮隊には狙撃手が――

 ――いや、それは違う。画面の向こうから『イニシャルHってスナイパー多いなー』という観客の声が聞こえた時、二宮の眉がぴくりと震えたのを奈良坂は見逃さなかった。

 ……なるほど、確かに狙撃手が多い。

 

『エントリーナンバー3。出水公平、犬飼澄晴、生駒達人。チーム『I』。続いてエントリーナンバー4――』

『ちょーちょーちょー。加古さんちょお待って下さいよ、おかしいですやんその流れ』

『あら、偶然にもこのタイミングでチームIの控室(生駒隊作戦室)とマイクが繋がったわ』

 

 そうこうしている間に画面の向こうで謎の寸劇が始まっていた。

 

『俺らんとこオペの子おらへんですやん。どないなっとんですか』

『つまりはそういうことよ』

『ウチの隊長に怒られますよ加古さん』

『そのツッコミ犬飼さんも二宮さんに怒られるやつじゃねーの?』

『あっちゃ。ヤブヘビ』

『最初はてっきりマリオちゃん他所のチームに取られてしもたんか思うたんですけど、なんやチームHのオペレーター氷見ちゃんやないですか。俺ら三人で誰がHのオペレーターやるか賭けとったんですけど、おかげ様で犬飼の一人勝ちですわ』

『俺は摩子さんに賭けた』

『俺も自分で賭けといてなんだけど、ひゃみちゃんがこういうのに参加するの意外だったなー。加古さん何かしました? 買収とか』

『ご想像にお任せするわ。それでね、オペレーターが見つからなかったのに貴方たち三人を無理矢理ねじ込んだ理由だけど』

『やけど』

『三人ともキャラが濃いから捨てるには勿体ないと思って』

『捨てるて』

『いやー、御眼鏡に適ったのはありがたいんすけど、流石に前の2チーム相手にオペ無しはキツいっすよ。柚宇さん空いてないの? 柚宇さん』

『かわいいかわいいマリオちゃんどこ?』

『以上。通信終わり』

『ちょお待っ』

 

 ぷつん。

 

「……ネタ枠もちゃんといるみたいで安心しました」

「そう? 扱いはあんなだったけど、出水くん犬飼先輩生駒さんって並びだけ見たら強そうじゃない」

「強そうなことと笑いを取れることは矛盾しないからな」

「なるほど」

「……今更なんだけどさ、ならさかとなすっちーってどういう関係なわけ?」

「いとこだ」

「いとこよ」

「マジかー……DNAつえー……」

『お騒がせしたわね。改めてエントリーナンバー4いくわよ。

 村上鋼、緑川駿、水上敏志、南沢海、真木理佐! チーム『M』!』

 

 『マキリサって誰だ?』『知られざるA級2位冬島隊のオペレーター。その生態は謎に包まれている』『実質オリキャラじゃん』『真木理佐はこわい』何故かオペレーターにC級隊員の言及が集中しているが、ここも中々に手堅い。村上緑川という強力な二人の攻撃手を、勝手知ったる生駒隊の二人が支えるのだ。やや構成が近接に寄り過ぎている感はあるものの、嵌まれば強いチームであろう。ある意味チームHに近い。

 しかし、イニシャルMというなら奈良坂的には真っ先に思い浮かぶあの男の名前は呼ばれなかった。まあこんな馬鹿騒ぎに顔を出すようなタイプでもないか――そう思いつつ、先ほど仁礼に差し出そうとしてそのままになっていたたけのこを一撮みして口に含んだ矢先のこと。

 

 

 

『エントリーナンバー5。三輪秀次、三雲修、三浦雄太、三上歌歩! チーム『M2』!』

 

 

 

「――ごほっ! がはっ、げほっ……!」

 

 呼ばれた。しかもどう考えてもネタチームに放り込まれていた。何がチームM2だ、チーム『三』の間違いじゃないのか。こんな狭い括りでオペレーターまで含めて隊を組めるとは、さぞかし加古もノリノリで参加を打診したことだろう。しかし、よりにもよって三輪と三雲のチームとは――

 

「あらあらとーちゃん。トリオン体で」

「なすっちーも天丼とか使うんだなー」

「……吹き出してない。少しむせただけだ」

「東さんが参加してる時点で秀次も巻き添えを食ってる可能性には気付けた筈だ。油断だな奈良坂」

「その、同じイニシャルで複数のチームが参加してるという発想がなかったので」

「アタシもさー、ウチってKで始まるやつやたら多いけどどうすんだろなーって思ってた。カゲもゾエもだし」

「そういえばKって飛ばされてるわよね」

「最後に紹介するんじゃないか。加古さんもKだし、大トリ扱いで」

「あ、それっぽい」

『続いては――エントリーナンバー6にして今イベント発足のきっかけにもなった、いわば立役者たちの紹介よ。

 二宮匡貴、奈良坂透、那須玲、仁礼光! チーム『N』!』

 

 などと騒いでいる間に自分たちの名が呼ばれていた。立役者といえば聞こえはいいが、実際はたまたま揃った奈良坂玲二宮の三人を見た加古が一人で勝手に思いついて暴走しただけである。まるで自分たちも企画立案に絡んだかのような言い回しはやめてもらいたい。風評被害である。

 そうは思っても画面の向こうの加古には届く筈もなし。行き場のない感情は食欲となって奈良坂に新たなたけのこを摘まませるのであった。

 

『雪だるまつくーろ――――――――――――!!』

『たけのこ王子――――――――――――――!!』

『那須さーん! 俺だー! 弾道を引いてくれー!!』

「……C級隊員がやけに騒がしいですね」

「ランク戦会場に雪など降っていない筈だが」

「今叫んだ子……変化弾の練習中か何かかしら」

「え、これアタシがツッコミ入れねーとダメなわけ……?」

 

 何やら仁礼が複雑な表情で奈良坂ら三人を順々に見回していた。きのこ派特有の奇行か何かだろうか。

 それにしても――たけのこ王子か。いい響きだ。もっと呼んでくれ。

 

『エントリーナンバー7。王子一彰、隠岐孝二、奥寺常幸、帯島ユカリ、小佐野瑠衣! チーム『O』!』

『王子――――――――――――――――――!!』

 

 たけのこと関係のない王子が呼ばれてしまった。

 

『モテるのー!? モテないのー!?』

『帯島ァ! 俺だー! みかん剥いてくれー!!』

『おサノの咥えた飴になりたいだけの人生だった』

「あら、ここも大人気ね」

「なんか変な奴混じってないか」

「おくでら……わかる、アタシにはわかるぞー……」

 

 何やら仁礼がうんうんと頷きながら奥寺常幸と心を通わせていた。きのこ派特有の末期症状か何かだろうか。

 さてこのチームO、ビジュアル面はともかく戦力的にはどうだろうか。兎にも角にも王子一彰がチームの核であるということは分かる。王子隊の戦闘記録を目にしたことはあまりないのだが、王子の戦略眼を元にして機動力を活かした立ち回りで点を獲っていく部隊であったと記憶している。そういう意味で言えば、他三人に不安要素は見受けられない。特に隠岐といえば、狙撃手においては異端のグラスホッパー使いとして知られている『機動型狙撃手』。王子としてはさぞかし操り甲斐のある駒だろう。

 

『エントリーナンバー8。里見一馬、佐鳥賢、諏訪洸太郎、笹森日佐人、志岐小夜子! チーム『S』!』

「――里見も出るのか」

「小夜ちゃんまで……大丈夫かしら」

 

 今度のメンバー紹介では二宮と玲が反応を示した。奈良坂もこの面子に無関心ではいられないのだが、まずは二宮の言う通り、里見一馬が最大の警戒対象になるだろう。人当たりの良い気さくな振る舞いで親しみやすいと評判だが、その実態はまさかのボーダーNo.1銃手。本人がそう思わせる素振りを一切見せないことから、隊員間では『里見は自分の順位を知らない』などという噂が立っているほどである。まったくもって馬鹿げた話だが。

 加えて里見は、平時から自身を『二宮信者』と公言して憚らないことでも知られている。二宮側が里見に対してどういう印象を抱いているのかは知らないが、そういう意味でも無視は出来ない存在であったのだろう。流石に里見の一方的な信奉ということもあるまい。

 志岐小夜子については依然、玲から話を聞いたことがある。なんでも異性恐怖症であり、特に年上の男性を極度に苦手としていると。年齢は奈良坂、玲の一つ下で16歳。チームSは彼女以外全ての隊員が男性になる訳だが、佐鳥賢と笹森日佐人の二人は彼女と同い年にあたる。佐鳥はともかくとして、大規模侵攻以来やけに落ち着いた男になったと一部で話題の笹森ならば、志岐も他の三人に比べれば多少は接しやすいのではないだろうか。逆にいわゆる『ウェイ系』とやらに当たる佐鳥と里見の二人、そして志岐と年齢が大きく離れた諏訪洸太郎に関しては――

 

「あら、いつの間にかLINEの未読が溜まって――全部小夜ちゃんだわ。『ナスケテ』『那須先輩決して走らず急いで歩いて来て』『そして早く私を助けて』……どうしましょう」

「……試合が始まる頃には染井にオペレーターが変わっているんじゃないか」

 

 こっちもこっちでチームSの雰囲気に合う気はまるでしないが、まあ志岐よりは機能するだろう。確実に。

 さて、トーナメントを銘打つからには8チームという数は一つの区切りとなり得る訳だが、多分これでは終わらないだろうという確信が奈良坂には存在していた。

 とはいえ、次に紹介された面々が与える衝撃は、何口目かのたけのこを手から取りこぼすには充分過ぎた。

 

 

 

『後半突入よ。エントリーナンバー9、太刀川慶、当真勇、時枝充、辻新之助、月見蓮! チーム『T』!

 続けてエントリーナンバー10、堤大地、外岡一斗、照屋文香、巴虎太郎、武富桜子! チーム『T2』!』

 

 

 

「――な」

 

 太刀川の名が呼ばれた時点で二宮の動きが止まり、続けて当真の名前も呼ばれた瞬間に他三人も硬直した。

 太刀川と当真がチームを組む? 一人だけでも優勝候補のバランスブレイカー達を同じチームに?

 人数が足りなかったのなら分かる。しかし2チーム組めるだけの人材が集まっているのなら普通は分ける。

 『……これマジ?』『優勝ここだろ』『お前それチームAの時にも言ってただろ』『ダンガーとハンピレー』『脇を固める二人がまた渋いよな』『渋さで言ったらT2も結構渋いぞ』『渋いけどさあ』『渋いだけやん』

 

「……観客引いてんじゃん」

「まあ……気持ちは分かる」

「フン――上等だ」

 

 依然として三人が衝撃から脱せられない中、二宮だけが鼻を鳴らしている。心なしか昂ぶっているようにさえ奈良坂には見えた。やはり太刀川慶の存在というのは二宮にとっても無視できないものなのだろう、自分にとっての当真勇がそうであるように――

 そう、肩書だけを見ればチームTはチームNの上位互換なのだ。個人総合一位とNo.1狙撃手のチームT、個人総合二位とNo.2狙撃手のチームN――

 

『そんなだからいつまでたってもナンバー2なんだよ、おまえは』

 

 ……まったく、腹立たしい!

 

「お前はどうだ。奈良坂」

「――そうですね。俺も、望むところです」

「あら珍しい。とーちゃんが熱くなってる」

「茶化すな。玲、お前の存在はチームTに対する明確なアドバンテージになる。当たるまで落ちるなよ」

「私なんかがそこまで役に立つかしら」

「お前は辻にぶつける」

「辻くんに? どうして?」

「見てのお楽しみだ」

 

 少なくとも人数的な不利はないのだ。実質。とはいえ残る時枝のサポート力もまた脅威であるし、何よりオペレーターである月見の優秀さは自分が一番良く知っている。紛れもない強敵。それでも――

 

「――まあ、とーちゃんに頼りにされたからには、張り切らなくっちゃね」

 

 そうとも。

 従姉妹の見ている前で、無様な姿を晒す訳にはいかないのだ。

 

『エントリーナンバー11。唯我尊、米屋陽介、弓場拓磨、結束夏凛! チーム『Y』!』

「……ここは実質戦闘員二人か」

「お前のチームメイトはイニシャルに恵まれていないな奈良坂」

「イニシャルに恵まれてないって表現生まれて初めて聞くなーアタシ……」

「結束さんが参加してるのに他の片桐隊の人たちは不参加みたいね」

「草壁隊も里見と緑川は参加しているが佐伯は呼ばれなかったようだな」

 

 そこに触れてはいけない。

 

 

 

『さて――皆さんもうお気づきとは思うけれど、これまでのチーム紹介において飛ばされたアルファベットが一つあるわよね?

 そう、そのイニシャルは『K』――この私、加古望もまたその一人よ。

 『K』が最も優れたイニシャルであることの証明として、ボーダーにはなんと5つものチームを組めるほどの『K』が揃っていることが明らかになったの。

 というわけで、残りの5枠はその全てがチーム『K』。その陣容の厚さに震えてちょうだい』

 

 唐突に演説が始まった。それにしても、5チームとは確かに大したものである。加古の縛りは案外緩いのではという疑惑さえ浮かんでくるレベルだ。加古隊は今のところ女性隊員のみで構成されているチームだが、先日あの空閑遊真が加古直々のスカウトを受けたという噂も立っている。紛れもないボーダーにおける最大派閥、それが『K』と言っても過言ではないだろう。イニシャルに限った話ではあるが。

 

『エントリーナンバー12。風間蒼也、菊地原士郎、古寺章平、来馬辰也、今結花! チーム『K』!

 エントリーナンバー13。柿崎国治、木虎藍、黒江双葉、香取葉子、加賀美倫! チーム『K2』!

 エントリーナンバー14。北添尋、小荒井登、蔵内和紀、樫尾由多嘉、橘高羽矢! チーム『K3』!』

「……章平は当たりを引いたようだな」

「うわ、ザキさんがハーレム作ってる。てるてるキレそー」

「王子隊ってKで始まる人が多かったのね」

 

 三者三様の反応を見せるチーム『N』。そんな中、またしても二宮だけが特にリアクションを見せずにいる。

 基本的にこの人は常に周囲と違うことを考えている生き物なのだということに、奈良坂は気付き始めていた。

 

「――加古と黒江が分かれているな」

「おー、ゾエだけ呼ばれてカゲもいねーや」

 

 二宮の発見に仁礼が追従する。言われてみれば、チームKは風間隊と鈴鳴第一から二人ずつ、チームK3には王子隊が三人と、極力元から同一部隊に所属している隊員は分けないように編成されている節があるにも関わらず、加古と影浦、あの売店で出会った二人だけが不自然に名前を呼ばれていない。更に――

 

「……くまちゃんもいないわ」

 

 そう、玲にとっての『K』と言えば、間違いなく熊谷友子ただ一人のことを指す。

 加古、影浦、熊谷。チーム『N』の面々と深い関わりを持つ三人の『K』が揃って名前を呼ばれていない。

 『お姉様、もしかして私の隊からくまちゃんを引き抜こうと……!?』『いいわね。その案もいただき』

 売店における二人のやり取りが蘇る。まさかとは思うが、加古は本当に――

 

『エントリーナンバー15』

 

 二宮隊作戦室に謎の緊張が走る。ある意味ではチームTをも上回る、最大のライバル出現を予感して――

 

 

 

『木崎レイジ』

「む」二宮。

 

『小南桐絵』

「あら」玲。

 

『烏丸京介』

「……これは……」奈良坂。

 

『空閑遊真――』

「――のぁ!?」仁礼。

 

 

 

『――国近柚宇! チーム『K4』!』

 

 

 

『玉狛ァァァァァァァァァァァァァ!!』

 

 画面の向こうでC級隊員達の絶叫が木霊した。

 

「国近は玉狛所属ではないだろう」

「二宮さん」

 

 『こマ?』『優勝』『おまそれ』『玉狛怖えー』C級隊員達の反応で我に返る奈良坂。

 そう、『実質玉狛第一やんけ!』という第一印象のせいでネタチーム扱いしてしまいそうになるが、そもそもその玉狛第一こそ事実上のボーダー最高戦力なのだ。そこに玉狛第二のトップエース空閑が加わり、オペレーターはA級1位の国近が務める。完璧である。全くもって隙がない。今までのチーム紹介は全て、このチームを発表するための前振りだったのではないかとさえ思ってしまうレベルで。

 

「……どうすんだこれ?」

 

 呻くように吐き出された仁礼の呟きに応える者は誰もいなかった。太刀川という仮想敵の不在故か、二宮も今一つ打倒の意欲が湧いてこない様子が窺える。玲はいつも通り。この従姉妹も大概大物である。

 

 

 

『随分な反響ね。でもまだ最後じゃないのよ。トリを飾るのはこの私、加古――』

『ちょ――っと待ったァ――――――――――――――――!!』

 

 

 

 最後のチーム紹介が始まろうとしたその時、現れる乱入者。切り替わるカメラ。

 ランク戦会場の中央を走る階段最上段に立つは、サングラスを額に乗せた不敵な笑みの青年が一人。

 

『アルファベットの最後は何か。言ってみなよ加古さん』

『……Z?』

『そのとーり!』

 

 青年は立ち幅跳びの要領で飛び上がると、落差20m近くはある階段の最下段へとスーパーヒーロー着地。

 玉狛支部のエンブレムが刻まれた隊服を靡かせ立ち上がると客席へと向き直り、声高らかに宣言する。

 

 

 

『俺! 総勢一名参上!!』

 

 

 

 迅悠一であった。言うまでもないがトリオン体である。

 

『ていうか迅くんのイニシャルってJでしょ』

『え、そうなの?』

『小南さんみたいなリアクションしても可愛くないわよ。

 ほらこれ、ボーダーのブリーフィングファイル見てもそうなってるじゃない』

『うわホントだ。主役は遅れてやってくるって感じの演出にしたかったんだけどなあ』

 

 会場のモニタに迅の隊員情報が表示される。堂々と記載された『YUICHI JIN』の文字を見て、チームK4の衝撃で揺れていた会場にどっと笑いが起こった。掴みは上々である。いやコントか。

 

『今日の主役はあなたじゃないの。さっさと帰りなさい。しっしっ』

『つれないなあ。今回の俺はさ、加古さんの作った料理の味をまろやかにするために来たわけよ』

『詩的な言い回しね。私にはあなたこそがとびっきりのスパイスに見えるけど』

『今のままだとこのイベントは加古さんの新作失敗炒飯になるよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる』

『心外ね。二宮くんあたりも誤解してるけど、10回に8回は上手く作れるのよ』

『そのハズレの2回を引かないために俺は仕事してる。加古さんにとっては2/10でも、食べる人にとっては1/1だからね』

『……話を聞きましょうか』

『どーも』

 

 了承を得た迅が加古へと歩み寄り、ひそひそと何かを耳打ちする。ふんふんと頷く加古。

 かつて迅に二度も作戦を妨害された奈良坂は思う。陰謀の予感しかしないと。

 

『――いいでしょう。エントリーナンバー16、迅悠一! チーム『J』!』

『どうぞよろしく~』

 

 取引が成立したらしい。顔の横に星を光らせ、目をΞにして客席にひらひらと手を振る迅の姿を、チーム『N』の面々はどこか釈然としない気持ちで見ていた。先の予測は考え過ぎだったのだろうか。しかし迅が現れる直前、明らかに加古は自らのチームを引っ提げて名乗りをあげようとしていた筈。いくら暗に『このままだとお前の炒飯で新たな死人が出るぞ』と言われたからといって、加古望はそれでフライパンに火をかけようとする手を止めるような女だろうか。怪しい。怪し過ぎる。

 

「……何を企んでやがる」

 

 二宮の呟きに内心で全員が同調する。それにしても、よもや迅まで介入してくるとは――

 想像を遥かに上回る規模のお遊びになったものである。ボーダーオールスターに近い面子が揃ってしまった。

 

『――で、参加するのはいいけど、あなたどこから転送しようとしてるわけ? 今から玉狛支部まで走るの?』

『嵐山から許可取って作戦室を借りるよ。チームAの皆は東さんのとこに集まってるみたいだし』

『そう。出番がいつになるか知らないけど遅刻しないようにね』

『了解! それじゃあ加古さん、それから皆も。()()()()()

 

 ビシッ! と芝居がかった敬礼を決めると、迅はぴょんぴょんと十数段飛ばしで階段を飛び上っていき、あっという間にランク戦会場から姿を消した。まったくもって嵐山、もとい嵐のような男である。嵐山に似ているのは髪型だけだ。

 

『――お待たせしたわね。小芝居を二つも挟んだせいで予定より大分時間を食ってしまったわ。

 チーム紹介も終わったことだし、次は対戦カードを決めましょうか。はい、モニタの方に注目』

 

 東、冬島、生駒、村上、三輪、二宮――各チームの代表と思われる隊員たちの顔写真が、画面の左右で高速に切り替わっていく。トリオン体の動体視力でも追いきれないほどのスピードだ。

 

『私の手元のボタンを押すとこの回転は停止するわ。止めるタイミングは――そうね、不正を疑われるのも癪だし、観客の誰かにストップって言ってもらいましょうか。そこの猫を連れたあなた』

『……へっ? あ、アタシっすか?』

「あ、こないだユズルが連れてきた女子だ」

 

 加古が声を掛けたC級隊員の顔に、奈良坂も見覚えがあった。そうか――来季かそのまた先かは知らないが、もう少し後にこのイベントが開催されていたら、彼女もまた五人目の『N』として、自分たちの横でモニタを眺める側になっていたかもしれない。C級隊員夏目出穂。ポジションは狙撃手。

 

『い、いや~……それって結構責任重大じゃないっすか?』

『変な組み合わせになったからって怒るような器量の小さい隊員はウチにはいないから大丈夫よ。二宮くんはどうだか知らないけど』

「おい」

『ま、まあそういうことなら……えーと、もう言っていいんっすか?』

『いつでもどうぞ』

『……おっし! す――ストップ!』

 

 ぴこーん。

 画面左側に二宮の顔写真が大写しになった。

 

『あら二宮くん』

『うはあー……』

『プレッシャー感じてるところ悪いわね。もう一回どうぞ』

『え……えーいままよ! ストップ!!』

 

 ぴこーん。

 画面右側に写し出されたのは――三輪。

 

「……いきなりで、いきなりだな」

 

 出番と相手、二つの意味で。そんな思いの込められた、奈良坂の呟きであった。

 

 

 

 




とりあえずここまで。一応第一試合も途中まで書いてありますが到底お見せ出来たもんじゃありません。
私の頭の中の太刀川が「マジメに? OK」って星を出せたらひょっとしたらマジメに書き直すかもしれないです。正直期待薄。

使用楽曲コード:0U483201,1F636465,1N610101


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