社会に出たゆかりとメール
ゆかりは夢をみた。友人と食事をする夢。もう少し見ていたかったが開いた瞼は朝日ですっかり醒めてしまった。「みんな元気かな」携帯を手に取り、学生時代のメールを開く。特筆することがない日常。くだらないやり取り。社会に出てもメールで連絡をとって、また皆と遊べると思っていた。でも
現実は違くて、互いの都合はあわないし、メールも必要最小限になっていた。「最後にメールしたのは半年前……会ったのは2年前かぁ」久しぶりに連絡してみようかしら。そう思ったものの、携帯の電源を切ってベッドに横たわる。ダメだ。明日からまた仕事。そんな気力はなかった。
なんとなく。幼馴染のマキにメールを送った。病が流行ってるし、気になったから。朝食を終えてみると返信が来ていた。通知をみて心がわずかに弾んだ。どんな返事が来るか待ちきれず、そわそわしていたあの頃の感覚だ。メールを読んで返事を送る。話題は流行り病から互いの仕事へ。久しぶりの
やり取りに夢中になって、気づけば大分日が昇ってしまっていた。そろそろ買い出しに行かなくては、その旨を伝える。最後に届いたメールのある一行が目に留まる。『また食事しよう』胸が苦しくなった。
「ふっ…くっ…」涙が零れた。ほんとはこわかった。忘れられてるかもしれない。うざがられるかもしれない。長年一緒だったからこそ、長い間会えないことは耐え難かった。彼女の言葉を見るだけで泣き出してしまう程に。
買い物の帰りに公園を訪れる。「あれ、ゆかりさんやないの?」赤い髪に大きな髪飾りをつけた女性が駆け寄ってきた。「おや、茜ちゃん。奇遇ですね」「なんやなんや、中学卒業ぶりやのにリアクション薄いやんけ」「茜ちゃんこそ、その癖直ってないんですね」
彼女のエセ関西弁は中学の頃からだった。なんでも関西から来た手前、引き返せなくなったとか。「そんなことじゃ困りますよ」「ええんよ。これはうちのアイデテテーなんやから!」「アイデンティティです」「大体なぁ!それいうたらゆかりさんこそ、後輩にそんな固くてどうすんや」「私はいいんです」
納得いかないという顔で頬を膨らませる彼女の脇を通り過ぎ、自販機に硬貨を入れる。「はい、えびふらい好きでしたよね」海老フライ味のジュースを渡すと表情は一変し、満面の笑顔になった。「ふふっ、変わらないなぁ」後輩が変わらないでいてくれたことに(色々心配ではあるが)何故か安心する。
「ゆかりさん年寄りっぽいで」口を手で押さえてぷーくすと笑う茜ちゃん。ふと、私がもつ缶を見て言葉を零す。「なんや炭酸じゃないんか」言われて気づいた。学生の私は炭酸飲料ばかり飲んでいた気がする。(あれ?)いつから飲まなくなったんだろう。
続きは思いついたら