「なぁ、機嫌なおしてくれよ」
対面に座る不機嫌な彼女に一生懸命頭を下げる。
エルフ耳を下げ、不機嫌を表現する彼女はどうやら許してくれないらしい。
「嫌よ・・・」
何度か頭を下げると、彼女はそう、ぽつりとこぼした。
頼むよ。ともう一度下げるとプイッと顔を逸らした彼女は、続けて言う。
「・・・おいしい・・・ツ・・・けて・・・連れて・・・さい」
微かに呟かれた言葉に怪訝な目を向けると彼女は少し恥ずかしそうな目をして私に言った。
「おいしいスイーツ店を見つけて、連れて行きなさい!」
「はい!喜んで!」
私はパルスィの分の代金までおいて、席を立った。
そして、半刻もならない内に、泣きついていた。
「・・・甘味所の場所聞いてきた理由は分かったけど、何でそんなことに?」
宙からブラリンと垂れ下がる、亜麻色髪をした土蜘蛛のヤマメは、呆れた事を伝える流し目で私をみる。
「そりゃお前・・・黙秘権だよ」
言うのは恥ずかしい、主に威厳的意味で。だがしかし、そんな少しの見栄は、土蜘蛛の横に降りてきた釣瓶落としによって無意味となる。
釣瓶落としの少女、キスメがヤマメの耳元に口を寄せて、コショコショと語りかける。ヤマメはフムフムと頷いた後、分かったよ、ありがとうとキスメに言う。キスメは今後ともご贔屓にーと言って上空に消えていった。
「んで、勇儀はパルスィの体型について口にしちゃったと」
はいその通りですと口で言いながら、キスメの奴には気をつけようと心の隅に書き留めた。
「なーんで勇儀はそう言うの口に出すかな・・・まぁ、いいや。それで旧都でも甘味所は幾つかあるけど、どうすんの?」
それなんだよなぁと悩みの声を上げる。パルスィが喜びそうな店は見つけることができたが、いかんせんパルスィの言うおいしいところというのに合うのかがわからない。
「どうしたらいいんだろうなぁ」
お前はどう思うとヤマメに視線を向けると、はぁとため息をついて、片腕をあげた。
どういうサインかといぶかしんだ瞬間、頭に何かがぶつかる。
悲鳴をあげる暇もなく頭に当たった感触は上空に消えた。
「なにしやがるヤマメェ!」
「ノロケるだけなら余所行ってしなさいよ馬鹿。どうせするべき事なんて頭ん中にあるんでしょ?余計な事悩んでんじゃないわよ」
ガシガシと頭を掻きながらめんどくさそうにヤマメは言う。
あん?と声を出すとヤマメはめんどいという顔をしつつ、口を開いた。
「そんな店行ったって機嫌の改善だけだよ。するべきは改善だけじゃなくて愛の進展だろう?」
「馬鹿ッ!んな事思ってるわけねぇだろうが!」
頬が紅潮するのが分かるが、勢いだけでかき消せる雰囲気でもなく、仕方なく怒りをおさめる。
「どうせお前みたいな女子力がない奴に渡しても意味ないとは思うけどさ」
ヤマメが手をたたくと見慣れてきた桶が降ってくる。だが、入っているのはキスメではなく、お菓子づくりに必要な物一式だった。
「謝罪がただ高いだけだと、その程度だと思ってしまうのがあいつだろ?なら、誠意はあんたの体で払いな」
下世話なヤマメのお節介に拳骨を一発やりたいが、上から降りてこない蜘蛛女は殴ることはできない。
「わぁったよ・・・」
私は桶の中身をもって家路についた。