あらゆる反作用・反存在は増大するほどにその反射的性質故時空間の歪みとの相関係数を上昇させる、私はついにその方程式を発見し、久しぶりにかつて共に旅をした三体のサンプルを召集しました。知能が欲しいというのでAIを組み込んだカカシと、心が欲しいというので刺激を受けると電気が走るよう配線したブリキのきこり、そして勇気が欲しいというので脳をいじって恐怖を感じないようにしたライオンです。私はサンプル達に問いかけました。
「あなた達の一番の宿敵はなんですかー?」
まず始めに答えてくれたのがカカシ。まぁAI組み込んでありますし。カカシは言いました。
「我々は物質である以上、物理的な破壊に酷く弱い。そして物理的な破壊は速度と質量によりもたらされるものだ。とするとやはり一番の脅威として考えられるのはあの自然災害だろう。台風なんてどうだい?」
そして次に、ライオンが答えました。
「宿敵? そんなものいるはずがないだろう、私は陸の王者なのだから。しかし陸でなく海の王者なら、決して出会うことはないが、宿敵足り得るかもしれんな。とすると、そう、サメといったか? あれだ」
最後にブリキのきこりの答えはというと。
「僕の仕事は木を切ることだ。自然を壊すものはやっぱり宿敵かな。でもそう、火力発電がなくなっても、仕事がなくなるし困る。だから原子力発電なんてのもいけないね。つまり、原子力発電で生じた核廃棄物、あひぃっ! 考えただけで電気が走る! これが宿敵だね!」
ということで、私はすぐに作業に取り掛かりました。まず始めに完成させたのが、カカシとライオンの宿敵、台風とサメを融合させたシャーク・ネード(仮)です。この内側に時空の歪みが発生すれば成功、でしたが、いやいや、タイムトンネルはそう簡単には開かないものです。なのできこりの宿敵、核廃棄物も融合させまして、そうして誕生したのが、意思をもって暴れるサメの巨大集合体、シャーク・ジラーでした。シャーク・ジラーは海から陸へと移動し、新宿一帯を破壊。ですが何も問題はありません。むしろ好都合。新宿は昔から時空の歪みが発生しやすい場所ですので、ええ、私の調査によりますと。今、ハーフナイトメアと化したアリスさんが東京タワーを槍として、シャーク・ジラーに狙いを定めています。私は無線機を片手に、その様子を離れたビルの屋上から眺めていました。
「ワァ、夜空に輝く逆東京タワー、ナンて綺麗なンダぁ」
隣でアンキが呟きました。
「そうですかぁ? もっと近くで見てきたらどうです?」
「いやイヤ、危険すぎデスから。というかドレだけノ被害が出るかワカってまス?」
「まぁ、それなりに。ですがすでに相当の死者が出ていますし、大した問題でもありませんよ」
「ナントいうマッドサイエンティスト!」
「科学の発展に犠牲はつきものですし。あーあー、アリスさん聴こえてます~?」
「……ワス……全部、壊ス!」
無線機の向こうから聞こえるアリスさんの声は、ほとんど狂乱状態。いったい誰がアリスさんをそんな風に? あぁ、私でした。
「ええ壊しちゃってください。座標的にちょうどいい頃合いです。シャーク・ジラーにブスリ、と。どうぞどうぞ」
「壊ス! 壊ス壊ス壊ス!」
「ごーごー」
輝く東京タワーが地に向けて、突き下ろされます。一瞬シャーク・ジラーの鳴き声が聞こえましたが、次の瞬間には音さえも吹き飛ばして、辺りに凄まじい衝撃、爆風が巻き起こり、アンキも吹き飛んでいきました。
「さぁ、どうです!?」
シャーク・ジラーのいた辺りから緑色の光が溢れ出し、その光が世界に拡散していきます。
「グッド!」
私はタイムボックスを手に、それを操作しながらビルの屋上から屋上へと、跳び移り爆心地へ向かいました。世界を包む緑の光が、その輝きを増していきます。
「いける!」
中心へ、輝きの中へ、飛び込む! そして、私の身体は光と共に、空間と時を超えたのです。
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着地した時、そこはもう新宿ではありませんでした。空は青く、日は高く、足元にあるのは赤い岩肌。足元だけじゃありません。見渡す限りどこも岩、岩、岩。人工物がまるで見えない。タイムボックスで年代を確認します。人工物が見えないだけでは単に空間を移動しただけかもわーお! いえいえきちんとタイムスリップできてます! 現在、タイムボックスが示している年代は、まだ人類が誕生する以前! 大成功です! はあ、素晴らしい。これほど上手くいくとは。
私はそして、岩肌を歩き始めました。当然、サンプルを探すために。三時間ほど歩き、ようやくサンプル発見です。彼等は毛むくじゃらの肌で、しかしおおよその形は人類とよく似ていました。有体に言ってしまえば、そうです、お猿さん。ちょうどいいサンプルです。
「どーもー、こんにちは~、って言っても言葉が通じるわけもありませんが、注目して下さ~い」
私が言葉を発しながらお猿さんに近づくと、すぐに岩陰のあちらこちらからお猿さん達が顔を出し、私を警戒するように観察し始めました。まぁいいでしょう、最初くらいは観察される側になってあげます。
「まぁ~皆さん毛むくじゃらですね。リーダーとかいます?」
更に近づくと、お猿さんの内の一匹が鳴き声を上げ威嚇してきました。それに釣られるようにして、一匹また一匹と威嚇を開始します。
「ええ、ええ、いいですよ。私は余所者です。排除を試みてください」
更に近づいたところで、一匹のお猿さんが飛びかかってきてくれました。ライブラリの力でハンマーを取り出し、ガツン! 一撃ノックアウトです。
「さぁ皆さんご覧あれ。武器があれば、戦いはこんなにも効率的に。これから皆さんにこれと同じものを配ります。まずはそこから始めましょう。その後はナイフを。そして植物の育て方を。そして文字の描き方を。地球の歴史を一気に進めていきますよ。地球が滅ぶ前に人類の科学を人類存続に十分なレベルまで引き上げるには、これしかないんです。頑張っていきましょうねー」
私は最高の笑顔で、世界の再構築を宣言しました。まずは今の言葉を理解できるところまで、引き上げるのを第一目標として。今日から忙しい毎日が始まります。
オズの魔法使い。ドロシーはカンザス州の農場に立つ素朴な家で暮らしていた。ある日大きな竜巻がやってきて、ドロシーを家ごと異国の地へと飛ばしてしまう。ドロシーの家はちょうど東の悪い魔女の上に落ち、彼女を潰し殺した。そこへ北の良い魔女がやってきて、ドロシーに礼を言い、東の魔女の銀の靴を渡す。ドロシーが家に帰りたいと言うと魔法使いオズに願いを叶えてもらうように言われ、ドロシーはオズを探す旅に出る。途中で知恵が欲しいカカシ、心が欲しいブリキの人形、勇気が欲しいライオンを仲間に加え、ようやくオズの元へ辿り着くと、願いを叶える代わりに西の悪い魔女を倒すよう言われる。仲間と力を合わせ西の悪い魔女を殺し、金の帽子を奪ってオズの元へ戻ると、しかしオズは魔法使いなどではなく、ただのマジシャンだった。オズはカカシにおがくずの脳みそ、ブリキの人形に布切れの心臓、ライオンに勇気の出るジュースと結局見せかけに過ぎない贈り物をし、またドロシーには気球を用意するが、この気球も結局オズだけを乗せドロシーは乗せずに飛び去ってしまう。ドロシーは別の方法を探すため南の良い魔女へ会いに行き、金の帽子と引き換えにカンザスへ帰る方法を教えてもらった。そうして銀の靴を3回打ち鳴らす。すると次の瞬間、ドロシーは元いたカンザスの家へ辿り着いていたのだった。
結局誰も願いを叶えてはくれない、何度も無駄な回り道をさせられる、オズの魔法使いはそういうお話です。そして最後、「家」に帰ってくるのです。家は竜巻で飛ばされたのでは?夢落ちでしょうか。違います。竜巻は別次元へドロシーを飛ばし、また銀の靴はカンザスへは戻してくれましたが、そこは竜巻が家を襲うことのなかった平行世界、パラレルワールドだったのです。竜巻と銀の靴は別時空へ飛ぶ時空間移動装置の役割を果たしたのでした。
というわけで、竜巻で時空間移動といえば、シャークネードですね(シリーズ5及びシリーズ6)。良く分からない人はシャークネードを6まで観てください。シャークジラが何なのかも分かります。分かりませんけど。
ともかく高度に発達をしたシャークネードはタイムマシーン同然なので、ドロシーはそこへ追いエネルギー、ハーフナイトメアと化したアリスの槍(東京タワー)の一撃を加え、タイムトンネルを完成させます。そうして過去の地球へとやってきたドロシーは人類の科学を加速させるため、ひいてはいずれ訪れる世界の崩壊の原因を突き止めるだけの科学力を人類にもたらすため、類人猿への教育を始めますが……結果はいばら姫の回のラストであった通りです。ドロシーの試みは人類の科学を加速させることなく、世界の支配種がヒトから類人猿へと切り替わっただけでした。残念。