異世界転生したら、三国志だから、アレッと思って、美少女だっけ、性転換しちゃって、もうゴールインさ   作:にゃあたいぷ。

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第一話.

 嘗て、董卓は涼州の借金王だった。

 友誼を結んでいた羌族から贈られてた獣畜千頭は当時、豪農を自称する董卓の財政を圧迫した。というよりも一月もせずに破綻する計算を弾き出した。その為、董卓は自らが生き延びる為に東奔西走と駆け巡り、あの手この手と形振り構わずに借金をしては農業や牧畜に必要な機材と人手を片っ端から買い漁ったのだ。それでも一年や二年で千頭の獣畜を活用しきることは難しく、かといって活用し切らなければ、畜獣の餌代だけでも借金が無制限に膨らみ続ける。何もしなければ破産する以外に道がなかったから形振り構わずに開発を進めて、資金が足りなくなれば、何処かしらから追加の借金をして更なる開拓を続けてきた。最初は余裕を見せていた金貸しも、気付けば董卓に貸し付けた金額が青天井となっており、董卓に破産されると借金が回収できず、周囲の豪族や名家を次々に巻き込んでは董卓に金を貸し付けていった。結果的に涼州における多くの豪族、名家が董卓に金を貸し付ける事態に発展し、董卓の開発事業は多くの御家を巻き込んだ一大計画にまで発展していた。何処かで躓いては一気に財政は破綻する。というか常に財政は破綻しており、借金を繰り返すことで誤魔化しているだけに過ぎない。収益が伸びた分だけ借金が膨らみ続ける。立ち止まった分だけ、億単位で借金が膨らんでいくものだからと、文字通り、死に物狂いで開発を続けてきた結果、董卓は涼州における一番の豪農という立場にまで駆け上がったのだ。

 この時の経験から董卓は借金に対する忌避感が失われていた、借金ができる内は破産しないということを学んでしまった。資金が余って使い道に困っている豪農や商家からは積極的に借用を進言し、なにか新しいことをやってみたい。もしくは資金難故に燻っている者に対して、積極的に資金を貸し与えるようになる。収益という点でいえば、これはあまり儲けにはなっていなかった。どちらかといえば赤字になることの方が多い。この事に関して当人は「稼ぐだけなら荘園運営だけで十分ですよ。それにもう収益を伸ばす為に借金をしているのか、更なる借金をする為に借金をしているのか分からなくなる事態は勘弁してください」と真顔で答えており、結果的に全体で赤字になっていなければ問題ないとも言っていた。でも、本人は知っているのだろうか、確かに赤字は減ったけども借用書の紙束が日に日に増え続けていることに。執務室に入る度、董卓の目から光が失われて、乾いた笑みを浮かべていた。時には借金の肩代わりに従業員も含めて施設を徴収し、董卓自身が指揮を執って財政を立て直し、借金の取り立てを終えてから改めて手放すこともある程だ。董卓が云うには、「死に物狂いでやれば、世の中の九割程度はなんとかなります」とのことだ。目が死んでた。董卓が融資する条件の一つには、死に物狂いになれる才能というのがある。そういう人間には董卓自身が手を貸すのだとか。破産から財政を立て直し、借金の返済を終える頃には、みんな目が死んでる。

 この積極的な資金運用は、涼州の開発を大きく前進させた。同時に董卓が持つ涼州の影響力を爆発的に増幅させることになる。というよりも涼州刺史ですらも董卓の意向を無視できない程になっており、涼州の方針には董卓の意向が強く反映されるようになってしまった。実際、財政面で涼州に最も貢献しているのが董卓であり、涼州軍の糧食の半分近くが董卓の荘園から出されている為、州刺史を始めとした官僚達は董卓に頭が上がらないというのが現状だ。その影響力は董卓が涼州を離れてからも残っており、并州に居る今となっては涼州と并州の橋渡し的な存在にもなっていた。

 董卓が居た時に比べると涼州の開拓速度は衰えたが、それでも董卓が残したものは大きい。

 今の涼州があるのは、董卓のおかげと言っても過言ではない。

 

 此処は涼州隴西郡にある董卓の荘園。

 見渡す限りの田畑が広がっており、途中には幾つかの小屋が置かれている。少し離れた場所には田畑を管理する奴婢達の集落があり、そこは下手な村よりも豊かで発展していたりする。荘園の取引に来たついでに集落に寄る商人も多いし、武器以外は特に制限を設けていないし、生活費他諸々を差し引いた給金を支払っていたりするからね。偶に集落に足を運ぶと知らない間に店が増えていたり、家屋が増えていたりする。常在してくれる鍛冶屋が来てからは農具の手入れも随分、楽になった。これも全て、御姉様が築いた基盤あっての話だ。私はただ引き継いだだけに過ぎない。

 私の名は牛輔、真名は夜見(よみ)。偉大なる御姉様、(董卓)の親戚になる。

 

 私は御茶を飲むのが好きだった。

 地平線の先まで届きそうな田畑に植えられた蕎麦や米、野菜、果物が成長していく様子を眺めながら啜る茶は格別だ。春は少し涼しげな衣服を着込んで、夏には麦藁帽子を被る。秋には肌着を着込み、冬は流石に寒いから屋敷に籠る。時折、外で食事を摂ったりもする。それから御姉様が抱えていた物書きから小説や随筆、時には脚本を読み耽り、ほんのりのほほんとした毎日を送る。

 私には御姉様のような行動力はなかった。御姉様みたいに誰にも彼にも融資しようとは思わないし、豪族や商家に資金が余っていようとも借用を申し出ない。そもそも私は御姉様が残した借用書の処理だけで手一杯で、資金を集めたところで御姉様みたいにポンポンと使い道が思い付く訳でもなかった。その結果、ただ業務を終えてるだけでも貯金が貯まり続けて、気付いた時には唖然とする程の量の金銭が倉庫に溢れ返っていた。御姉様がいた時には、ほとんど空だったのにこの有様である。「どれだけ資金を消費し続けてきたのですか?」と突っ込みたくなる。きっと御姉様なら「お金があるなら使わなきゃ、使わなきゃ破産します。借金してでも稼がなきゃ……」とか死んだ目で呟いている気がする。お金はあっても困るものじゃない。と云うけども、限度が過ぎると持て余して使い道に困る。

 最近は奴婢に子供達が増えているようだから教育に力を入れ始めてみようかな、とかそんな感じだ。

 金持ちの道楽って、こんな感じで始まるんですねえ。と何処か遠くを眺める。

 

「金があって困るとは羨ましい限りだよ」

 

 私の向かい側に座る女性が鼻で笑ってみせた。癖っ毛の強い金色の髪は背中を覆い隠すほどに長く、揺れる程度には大きな胸元。そして勝気の強そうな目元、彼女は湯呑みに注がれた茶を啜り、「良い葉を使っている」とうっとりと目を細めて微笑んだ。

 

「満足してくれたかな?」

 

 そう問いかければ、ああ。と彼女は頷き返す。見た目の年齢は皇甫嵩や馬騰と大差なく、体格も二人と比べて見劣りしない。小柄な私や御姉様と比べると頭一つ分、大きな感じだ。彼女の返事に、良かった。と満足して微笑み返す。

 彼女の名は韓遂、字は文約。涼州では有名な任侠の一人だ。馬騰が統治者の立場から民草を守る存在とするならば、彼女は民草の中から圧政や賊徒から民草を守る義賊とも呼ぶべき人物であった。無論、やっていることは犯罪に違いないが、それでも官僚の手が届かない無法地帯で着実に支持を得ている人物でもある。韓遂の影響力は僻地においては董卓や馬騰よりも強く、涼州の統治に大きく貢献していた。そんな彼女が私のところに来るのは一度や二度ではない。知己と呼べる程度には見知った仲ではある。

 そういえば、と彼女は世間話を始めるように口を開いた。

 

「今、世間では黄巾党と呼ばれる賊共が暴れているようだ」

 

 その情報は既に得ており、そうだね。と返した。

 馬騰にも相談してみたことがあるけども、涼州は中央ほど黄巾党の影響を受けておらず、万が一があったとしても優先的に兵を回してくれると約束してくれた。馬騰がそう言ってくれるのであれば安心できる、と今日も呑気に茶を啜っている。実際、私には軍事がよく分からない。だから素人が口出しするのは控えた方が良い。私は無能に違いないけども、御姉様の足を引っ張る無能にはなりたくなかった。

 しかし、それはいけない。と韓遂が口にする。

 

「今の御時世、ある程度は自衛する手段を身に付けておくべきだ」

 

 その言葉に「馬騰は守ってくれると約束してくれているから大丈夫」と返せば、彼女は首を横に降る。

 

「馬騰なら確かに手が届く範囲で助けてくれるだろうが、黄巾党の被害が涼州全土に及んだ時、もしくは異民族の襲撃があった時、馬騰の手がこの荘園まで届かなくなる可能性が出てくる。そうなってからでは遅い」

 

 強い口調、私を見つめる青色の瞳。そこには私を慮る気持ちが混じっていることが見て取れた。茶を啜る、間を取る。彼女のいうことは一理ある。私は御姉様から荘園を任された身だ。万が一にも失う訳にはいかなかった。同時に私は自らの無能を知っている。こういう大きな決断をする時、私は誰かに相談することに決めていた。

 

「もし仮に私兵を持つことになっても指導できる人間に心当たりがないしね」

「それこそ心配ない、募集すれば涼州中から人材が集まるよ」

「とりあえず、今はまだ決め兼ねるかな」

 

 茶を啜ろうとして、中身が入っていないことに気付いた。仕方なく使用人の一人に茶のおかわりを要求する。

 

「……まあ無理強いはしない。ただ頼る先に私が居ることも忘れないで欲しい」

 

 そう告げる韓遂の瞳は、やはり友人を慮るものだった。

 御姉様が漢王朝から疎まれていることは知っている。そして私は董卓の親戚で荘園を受け継いだ人間だ。確かに漢王朝が私を見放す可能性は少なくないだろう。だが馬騰が私を見捨てる可能性もまた限りなく低い。……もし仮に馬騰が遠征などで近くに居ない時、誰が私と荘園を助けてくれるのだろうか。きっと呼び掛ければ、助けてくれる者が少なからず存在するだろうが、それが戦となれば尻込みする者も多いに違いない。心が揺れている。中身の入っていない茶を啜る。

 とりあえず、行動を起こすにしても馬騰に相談した方が良いだろうか。

 

 韓遂と別れた後、椅子に座って、机を引き寄せる。

 書籍を幾つか積み重ねて、その上に胸を置いて、ふぅっと溜息を零した。資金と一緒であるに越したことはないのだろうが、大き過ぎるのも考えものだ。肩が凝ることが多い私は、はしたないとわかっていながらも、こうやって無駄に大きな胸を置いていることが多い。特に読書を嗜んでいる時は、ずっとこんな感じだ。

 使用人達からの視線も、もう慣れたものである。

 

 

 




月「……(死んだ魚の目)」
月の融資者「……(死んだ魚の目)」
月から融資を受けた人「……(死んだ魚の目)」

詠「あれが借金を返す為に稼がなくてはならず、稼ぐ為には借金をするしかない地獄を乗り越えてきた者達よ。面構えが違う」
夜見「……(身震い)」
詠「ちなみに此処に並んでいる人間は、元を取ってる」

※4/27 22:30
畜獣の数を千と万で間違えていました。
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