異世界転生したら、三国志だから、アレッと思って、美少女だっけ、性転換しちゃって、もうゴールインさ   作:にゃあたいぷ。

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ひっそりと名前を日向葵から向日葵へ、馬玩から馬雲緑に変えました。
なんかそっちの方がしっくり来たので。


第一話.

 数百年と続いてきた漢王朝、

 女性主流の時代において、今も昔も御家を持つ名家豪族を悩ませ続けてきたのが子作りの問題であった。

 通常、人間は異性に恋愛感情を持つように作られている。不思議な蜂蜜なるものが発見されて、女性同士の交配が可能になった今でもそれは変わらない。また女性同士で交配した場合、確率的に子は女になる事が多かった。現に今、私が孕ませた三人娘の超、休、鉄も全員女性だ。この事が名家豪族、特に皇族の間では問題視されており、分家からの取り入れ、もしくは養子縁組を活性化させることで、できるだけ男児を多く産ませようという試みが各地で起きている。とはいえ、由緒ある家柄の御家では身元も分からぬ者を血族に加える訳にも行かず、かといって名家豪族に男が減りつつある今の御時世、男を娶ることも難しい。また当主としての責務を果たす為に子を孕む時期も考えなくてはならないとあっては、時間に余裕が持てず、止むなく妻を娶って子を孕ませる事になる御家は多かった。もし仮に天の御使いなる者が現れたとして、その者が男性であった場合、それはもう引く手数多の人気物件になるに違いない。今の大陸には由緒正しい血筋、少なくとも周りを納得させられるだけの背景を持った男性が求められているのだ。そして、なによりも同性相手の交配というのは、異性愛者からすれば意外ときついものがあったりする。先ず陰茎を勃たせることで一苦労だ。勃起させる為に性癖の開発から試みなくてはならない事もあり、娶った妻と共同作業であれやこれやと様々な行為を試す羽目になる。

 それが私、馬騰。(つぅい)であった。

 男を孕ませる為に三度も子を産ませたが、結局、女性ばかりになってしまった。元は互いに異性愛者、今は離れて暮らす妻には申し訳ないことをしたと思っている。娘達には自分と同じ過ちを犯して欲しくはない。されども御家の後継を用意することは必要だ。今が平和な世の中であれば、同性だの、異性だの、そういう情事に口を挟む気はないのだが、うちの娘は全員が武芸の腕が立ち、涼州軍の中核を担っているのが問題だった。今の不安定な時期に、妊娠で戦線を離脱されるのは凄く困る。いや、回すだけなら一人が抜けたところで問題はない。しかし、それでは緊急時の対応ができなくなる。(董卓)(賈駆)が居ない今、涼州戦線は割とギリギリなところで保たれていた。今の状況が何時まで続くかも分からない。後になって無理をして子を作るくらいなら、と今の内に女を与える事を考えていた。そんな時に拾ったのが(あおい)という小娘だ。幸いと云うべきか、我が家は定期的に異民族の血が混じるような家柄であり、由緒正しい名家や豪族のように家柄や血筋に拘りはない。そして、なによりも葵は「男は絶対に無理です」というような奴だ。少なくとも私の時と同じ不幸を味あわせることはないと考えた。

 三人の内一人、誰か一人でも夫婦として仲睦まじい生活を送ってくれれば良い。私個人としては後継ぎが一人、産まれてくれるだけでも良いのだ。できることならば男児を一人、欲を言えば一人でも多くの子を残して欲しいとは思っているが、それはそれ、後世に御家が残るのであれば、それ以上の贅沢を云うつもりはなかった。誰か一人くらいは本気になってくれたら良い、そんな軽い気持ちだった。

 ただ誤算だったのは、私の娘達は皆、思っていた以上に真面目だった事だ。

 

「……で、どうして私のところに来る事になる?」

 

 真夜中。私、馬騰の私室にて、扉の前に立つのは何時ぞや拾った小娘であった。是と否と大きく書かれた枕を両手に抱えた姿で、ぷるぷると震えながら涙目で突っ立っている。理由を問えば、「怖い」と単純な答えが返ってきた。どうやら私が思っていた以上に進展が早かったようだ。最初の段階で説明を済ませてあるし、いずれ婚姻し、子を孕ませる相手だと意識はさせていた。その上で夜な夜な娘達の部屋に送り込んでいるのだ。彼女に持たせた枕も性的対象として意識付けさせる為の小道具だ。ちなみに是は快適な睡眠を、否は眠り難い形に仕立ててあったりする。さておき、今は目の前の小娘をどうにかすべきか。小動物のように身を震わせた挙句、何処かに隠れるような事もせずに私のところに来る辺り、なかなかに追い詰められているのかも知れない。少なくとも三人共に彼女、葵を性的対象として見ていることは確かなようだ。

 

「……私も女相手に孕ませた経験を持っているのだが?」

 

 それはもう性癖を開発する為にあれやこれやと口に出せない事を多く取り組んでいた程だ。葵はびくりと身を震わせると「わ、私はこちらで寝ますから」と来客用の長椅子に向かっていった。「私は怖くないのか?」と問えば「翠達とは目が違うし……奥様も居ましたよね?」と返された。まあ確かに私は妻以外と性行為に及ぶつもりもないし、そもそも最後まで女性を性的対象として見ることはなかった。必要だからした、男児が求められていたことも事実。それだけの為に体を重ねてきた。ただ睡眠場所に長椅子を選ぶ辺り、信用は得られていないのだろうけど。

 

「まあ、今日は良い。でも明日からは鍵を閉めたままにするからな」

 

 言って布団を被り、目を閉じる。

 

 

 彼女、向日(むかい)(あおい)は孤児であった。

 涼州の英傑と持て囃された(ゆえ)が、この地を離れてから異民族が活性化している。その為、国境では異民族による襲撃と略奪が定期的に行われており、涼州軍の中核を務める馬家は度々戦場へと駆り出されていた。追い払うだけなら問題はない。ただ戦後処理やら、事後の対策というのは(えい)が居なければ捗らなかった。他にも月が趣味の一環で続けていた屯田も彼女なしには成果を上げられず、遠征先の補給に苦労するにもなっていたりする。

 かつて三人で涼州を支えていた時、面倒だからと戦以外の全てを月と詠に押し付けていたものだが、こうして二人が居なくなって初めて後方支援の大切さを理解した。だから私達の仕事が円滑に進むようにと後方で輸送を担当する者達には酒場の席で労いの言葉を入れたり、敵将の頸を取った者は勿論、そのお膳立てをした者達にも等しく功績を与えるようにしている。気苦労ばかりが増えた気がする。詠だけでも戻って来ないかな、と思う毎日だ。

 さておき、いつもの様に戦を終えて、被害確認の為に村を回っていた時のことだ。

 

 彼女はただ一人で荒地を徘徊していた。

 これだけであれば、珍しいことでもない。戦災から逃れる為に民草が村を飛び出すことは珍しい話ではなかった。

 しかし、彼女はそういった者達とは違っていた。村から逃げ出したにしては身形が小綺麗であったし、戦から逃れてきたにしては緊張感のない顔をしていた。きょろきょろと私のことを見たり、連れてきた配下を見たりして、なんというか現実感のない様子だった。それはまるで危険を知らない幼子のような有様であり、たぶん放っておくと簡単に死ぬのだろうな。とも思う。少なくとも賊徒や異民族の慰み者になるのは確実で、仮に街まで辿り着けたとしても商人相手にコロッと騙されて、娼館辺りで働いてそうな人物だ。無警戒に、トコトコと歩み寄ってきた彼女を見て、不安に思う。武装した私を相手に危機感ひとつ抱かないのは、抜けている。を通り越して無神経と云うべきだろう。

 

「あの、此処は一体、何処なのでしょうか?」

 

 今の御時世、官軍であっても決して信用できる相手ではないだろうに。

「此処は臨羌県になるぞ」と呆れ混じりに答えると「りんきょう県?」と聞き慣れない言葉を繰り返すように呟いた。そんな県なんて聞いたこともないな、とか考え込んでいたので「金城郡の最西にある臨羌県だ」と付け加えた。すると余計に首を傾げてしまった。民草の中にも教養を持たない者は多い、というよりも足し引き算盤ができる民草がどれだけいるのかっていう話だ。

 だからもっと分かりやすい言葉で口にする

 

「此処は涼州だ。これぐらいは聞いたことがあるだろう?」

「りょう……しゅう? 涼州!? いや、待て……中国では、もう読み方も変わっているはずでは!? そもそも言語が伝わっているのもおかしくならない!? えっ、ちょっと、いやいや、えっ、それって本物?」

 

 ようやく状況が掴めたのか、私が持つ抜き身の槍を見て顔を蒼褪めさせる。

 それはそれで話がおかしいような気がする。正しい判断力を持っていればこそ、今のような反応を見せる。しかし先程までは判断力が欠如した人間だと私は思っていた。そして私と配下の将兵を見て、軍勢以外の何と勘違いすると云うのか。まるで花よ花よと育てられてきた箱入り娘のような人物だが、それはそれで彼女の立ち振る舞いが名家や豪族のソレに見えないと云う問題が出てくる。

 今、分かるのは、私が見放したら不幸になるんだろうな。と云うことだけだった。

 

「行く宛がないのであれば付いてくるか?」

 

 手を差し伸べると小娘は、特に警戒もなしに私の手を受け取った。

 

 小娘は、余りにも無知が過ぎた。

 異民族も持っている真名の文化を知らない程であり、初めて名乗った名が真名であったことには驚いた。身形から良い生まれだとは思っていた。不自然に抜け落ちた常識から箱入り娘だという説も考えた。しかし、彼女は用の足し方も分からないということを打ち明かされた時には、流石に私も頭を抱えてしまった。何処で用を足せば良いのか、とかではなく、女性はどうやって用を足しているのか分からない、である。記憶喪失という線も考えたが、その割には彼女は自分ことをよく分かっていた。少なくとも自分が何者か、という点で混乱するようなことは一度もない。

 まあ彼女の話は俄かに信じられないことが多いのは事実だ。元は天の国とも呼べる場所で男として暮らしていたが、ひょんなことから気付けば、この地に女として突っ立っていたとのだと彼女は云うのだ。仮に彼女が天の御使いだったとして、どうせなら男のままでも良かったのに、と思うこともあったがそれはそれ、根っからの女好きの女というのは意外と希少だったりする。民草の間では異性同士の恋愛が常であるし、名家豪族では同性を愛せるように幼い頃から特別な教養を授ける者も多い。特に子を他家へと嫁がせる予定の場合は、その傾向が強かった。そして、それだけしても、やはり異性の方が好み、となる者も多い。

 そういう意味で言えば、葵は稀有な才能を持っていたと云える。自分は元男と言うだけあり、男性の裸体を見ても何も感じない癖に、私の裸を見ると顔を真っ赤にして慌てふためいたりする。というよりも自分の裸でも顔を赤くするし、今でも慣れきってはいない。反応だけ見ると元男という話は、ひとまず理解できるものではあった。

 屋敷で妹達と一緒に暮らさせてみると、元男という話が嘘のように家事全般を熟している。それも丁寧に事細かく、それに彼女が作る料理は美味しかった。娘達の面倒もよく見てくれており、唯一、家の手伝いをしてくれてた鶸は感涙を流していた。ごめんね、ずっと政務と軍務で家のことを放ったらかしにしてごめんね。

 ほどなくして小娘を馬家の養子として受け入れて、馬雲緑の名を与えることになった。

 それと同時に是否枕を授ける。

 ムッツリな癖に、こういう事には疎いのか。ぽかんとした顔を浮かべる葵に私は告げる。

 

「うちの娘の内、誰でも良いから抱かれて来い」

 

 急に言われても現実味が薄かったのか。はあ、と気のない返事を零すだけだった。

 

 

 そして今、長椅子で眠る葵を思いながら少しだけ思案する。

 大方、自分が子を孕む事に現実味が帯びて、臆したと言ったところか。何か手を打つ必要はあるだろう、この状態で事に及んでは行為そのものに恐怖心が植え付けられるかもしれない。それに無理強いは互いを不幸にするだけだ。とりあえず今は逃げ道が必要か、私が頭ごなしに娘達を抑えつけては、それはそれで暴発する可能性もある。

 ……そういえば丁度良い奴が居たな。そう思い至った私は明日、筆を取ることを決める。

 

 

 

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