異世界転生したら、三国志だから、アレッと思って、美少女だっけ、性転換しちゃって、もうゴールインさ 作:にゃあたいぷ。
「あ、えっと、その、つまり、そういうことです! よろしくお願いします!」
辿々しい様子で頭を下げる少女、
詳しい事は告げられず、母は少女一人を置いて部屋を出る。知りたい事があるのなら本人に聞けという投げやりっぷりだ。ただまあ部屋に残された少女は素直で大人しそうだった事に内心で安堵する。いやだって今居る姉妹だけでも手に余る有様だし、これ以上、問題児が増えてしまったら私の身が保たない。
ただ如何にも女性らしい容姿と仕草を持つ彼女には少なからず思うところがある。
葵が隣に居ると自分の女性としての自信が損なわれてしまうのだ。家事全般をソツなく熟す。時折、失敗する事もあるけども持ち前の愛嬌と明るさで皆を笑顔に変えてしまうのだ。なんというか、彼女は無知で、無邪気で正直だった。偽りのない心からの行動は見るものを揺さぶる。自分の感情を小さな体を使って、目一杯に表現し、しかし周りを不快にさせないように取り繕ったり、誰かが気落ちしている時は理由も聞かずに寄り添った。自分の事だって、周りの事だって、構わずに自分のできる最大限を発揮しようとする彼女は何時も輝いて見えた。
きっと彼女のような人間が、世の中で云う魅力的な女性なんだろう。と私、鶸は思った。
彼女に抱いた嫉妬心、疼く想いは何を意味するのか。
初めて彼女を女として見たのは、私が姉妹の愚痴を零していた時だ。いつも散らかすばかりで、とか、ちゃんと栄養とかも考えているのに、とか、今日は御馳走って言ったのに外で買い食いするし、とか、そんな事をよく口にしていたような気がする。そんな面白くもない話を相槌を打ちながら黙って聞いてくれる葵に甘えてしまって、つい長話をしてしまった私に嫌な顔ひとつ見せずに葵は優しく微笑んだ。そして私の頭にポンと手を乗せる。爪先立ちで目一杯に体を伸ばしながら「ひとりで頑張って来たんだねえ」と柔らかく撫でられる。実の親にすら一度もされた事がない行為、軍隊を率いる立場になると書類仕事なんて出来ても誰も褒めてくれないし、家のことだって誰も理解してくれない。戦働きだって姉さんには敵わない。家事に書類、御家の帳簿とやる事が多いから鍛錬に費やす時間も取れない。姉さんから一度、「最近、鍛錬をサボってないか?」と呆れるように言われた時は姉妹なのにガチめの殺意が湧いた。とはいえ今は割り切っているから前よりも辛くはない。姉さんの武芸には神が宿っている。天賦の才とは姉の為にあるような言葉であり、私がどれだけ努力しても辿り着けないとは理解している。なにより姉さんは西涼の錦だ、姉さんが戦場に立つ意味は私なんかとは比べものにならない。だから姉さんを万全な状態で戦場に送り出せるように、余計な事に気を煩わせることがないように、私は自分が日陰者である事を認めたのだ。誰にも褒められず、これが当たり前なんだと言い聞かせて、だけど、私だって姉さんに負けないくらいには頑張ってきたつもりだ。
抑え込んでいた気持ちが溢れ出す。「あれ、おかしいな?」と拭っても止まらない涙に私自身が一番動揺していた。
嫉妬心に僅かな劣情が混ざっていたことに気付いたのは何時頃か。
日が過ぎて、葵が馬家に馴染んできた頃合の話だ。同居人に過ぎなかった彼女は家族になった。今はまだ義理の妹と云う話、しかし御母様は私達のいずれかと婚姻させると言った。その瞬間、私はチラリと横を盗み見る。姉妹二人と目が合った、そして皆が私と同じように葵の事を単なる妹として見ていないことに気付いた。嫌だな、って思った。二人には渡したくない。でも、私は二人よりも魅力的で居られる自信はなかった。いや、でも、同性を愛すると云うのは、やはり違っている。名家豪族の間に根付いた女尊男卑の社会において、男性の地位は極端に低くなっているが、それでも男の子は女の子を、女の子は男の子を愛するのが自然だと云う考えが増え始めていた。女性同士で子を作ると女性が生まれる事が多く、そのことを問題視する声が大きくなっている為だ。それに女性が女性を愛するには、本来、特別な訓練や教養が必要だとも知らされている。だから私が抱いた感情が、普通ではないことを私は理解していた。
それでも嫌だと云う想いは拭い取れなかった。
これから先、葵は私達三姉妹の中から一人と夜を過ごすことになる。
話し合いの結果、葵からの要望がない限り、三日に一度、ジャンケンで決めた順番で葵と一緒に夜を過ごす事に決める。そして初めて、葵と添い寝をすることになったのは姉さんだった。真夜中、胸が疼く、布団に丸まりながら悶々とした想いを抑え込んだ。今、姉さんと葵が同じ寝台の上で眠っている。その事を意識するだけで胸が締めつけられるほどに苦しくて、爛れ落ちそうな程に心が痛かった。もしかすると初日から肌を重ねていたりとかするのだろうか、嫌だな、それは凄く嫌だ。初日から肌を許している葵を想像することも嫌だったし、それが理想を押し付けているようで自分の事も嫌になった。もし仮に肌を許していたとして、自分にも許してくれるのだろうか。とか考えてしまうのも最低だった。何よりも最低なのは、嫌なのに、疼く想いを止められず、姉さんに抱かれる葵を想って、自慰をしている自分だった。最低だ、絶対に幻滅される。粘着質な音を立てながら幾ら続けても眠れなくて、半ば自棄になりながら、自らの秘部をずっと弄り続けた。外が明るくなり始めた頃合、嗚呼、本当に最低だ。と真っ赤に腫らした目を閉じる。もう何も考えたくない。
その日、私は初めてズル休みというものをした。大して体調も悪くないのに調練を休んだ私は、その日、気不味さから憂鬱に過ごしていた。ずっと私室から出ることが出来ず、時折、葵が様子を見に来てくれる時だけ部屋を開ける。大丈夫? とか、熱はない? とか、コツンと額同士をくっ付けられた時は別の意味で顔が熱くなってしまった。今日の食事も私の担当だったのに葵に全て任せてしまった。それでも葵は一言も嫌味を言わず、今日は御馳走だよ。と満面の笑顔で伝えてくれた。
夕食は赤飯だった。何のお祝い事だったのか分からずに聞くと「大人になった記念だよ」とドヤ顔を胸を張ってみせる。その後ろで顔を赤くする姉さんを見て、胸の奥底に溜まる想いがぐじゅぐじゅと醜い色へと変貌していくのが分かった。「今日は鶸だって聞いてたけど体調が悪いなら……」続く言葉を聞きたくなくて「大丈夫」と咄嗟に葵の手を握った。本当は大丈夫なはずなんてなかったけども、明日以降に回されると、それこそ可笑しくなりそうだった。気遣う葵を無理やりに説き伏せて、葵と夜を共にすることになる。
夜遅く、部屋に訪れた葵は肌着姿だった。そして、その肌着と云うのが、襯衣*1に妙な文字が書かれているのだ。受入準備万端、とドヤ顔で着熟している。何を受け入れるのだろうか、ナニを受け入れてくれるのだろうか。葵は是否枕を片手に抱えたまま、寝台に座る私の隣に腰を降ろすと強気な顔付きで口を開いた。「なにか悩んでいるのなら、この私が話を聞いてあげるよ」と胸を叩いた。ああ、そういう意味ね。ホッとしたような、ちょっと残念なような、自分の卑しさに嫌気が差すような、キラキラと目を輝かせながら包容力を発揮しようとする葵の姿に、なんだか悩んでいるのが少し馬鹿らしくなって、ほんのちょっとだけ気楽になった。この警戒心のなさ、葵の心はまだ誰にも揺れていない。
それを確信して、私は今はまだ妹の彼女に問いかける。
「翠姉さんとは何処までしたんです?」
「んー? 何処までって?」
「赤飯、炊いてましたよね?」
ああ、と葵はポンと手を叩いて答える。
「抱きしめられて口付けを交わしました。だからもう誰にも子供っぽいとか言わせません」
ふふん、と鼻を鳴らす葵に安堵し、そして、その唇が他の誰かに汚された事に嫉妬する。
初めては私が良かった、と。何時ものままの奥手な姉さんで良かったのに、と。私にも初めてが欲しい。
もっと大人にしてあげます。と決意を込めて、彼女の小さな体をギュッと抱き寄せる。
「……えっと、その? 鶸も?」
「私とは嫌です?」
「い、嫌じゃない。嫌じゃないけど、なんか、皆、おかしくなってない?」
おかしくしたのは貴女です、と唇を重ねた。
柔らかい感触。本当なら汚いと感じる唾液が、今は甘美だった。抱き締めて唇を重ねる、それだけの行為が気持ち良かった。ピクンピクンと震える葵の体が可愛らしい、愛おしい。もっと感じたいな、そう思って、唇を軽く吸ってみた。すると葵が悲鳴を上げた。大きく体を跳ねさせて、反射的に私の体から逃れようとする。もう腕の中から逃したくなくて、強く抱き締める。葵の匂いする、少し甘い匂いだ。唇を重ねる、吸い付ける。すると葵は体を跳ねさせて、身動ぎする。余りにも暴れるものだから寝台に押し倒した。そのまま体重を掛けるように唇を重ねる。チュッという可愛らしい音がなる。葵の顔は真っ赤で涙をポロポロと流していた。やだ、と。やめて、と。怖い、と。泣きながら懇願する。そんな彼女が愛くるしくて仕方なかった。唇を重ねる、チュッと短い音が何度も鳴らされる。バタバタと足を暴れさせる葵をしっかりと抑えつけながら葵の頰を舌で舐める、葵の味がした。そして頰に唇を落とす、葵の感触がした。首筋に唇を這わせる、チュッと吸うと薄っすらと赤い跡ができた。今度はもっと強く吸うと、くっきりと吸い跡が残された。あっ、あっ、と声にもならない声を上げる葵を見下して、嗚呼、これはいいな。と、もっと吸い跡を付けた。首筋から胸元に、そしてまた唇を奪った。とろんと蕩け始めた葵の目が、急に見開かれた。「もうやめて!」と「本当に不味いから!」と暴れる葵を、もっと虐めたいの一心で抑え付けた。もっと激しく唇を吸って、その奥にある舌を吸い上げた。
ビクンと葵の体が大きく跳ねる。そして全身から力が抜け落ちるように抵抗がなくなった。
「あー……だから、嫌だったのに……やめてって言ったのに……」
うわ言のように零される言葉、そして下半身、葵を抑え付ける為に股間部に立てた膝に温かく濡れる感触があった。
「もうやだー……」
声もなく泣き始める葵に、私は狼狽えるしかない。
とりあえず服を脱がせて、着替えさせて、布団も別のものに取り替えて、必死になって機嫌を取る為に頑張った。しかし、その甲斐なく私は床で寝た。
朝になっても機嫌は直らず、目も合わせてくれなかった。
†
ふと街中を歩いていると面白いシャツを売っている店を見つけた。それは多種多様の文字が書かれているシャツであり、文字使いとか、かなりの拘りを感じられる出来栄えになっている。というか普通に格好良い気がする。天上天下唯我独尊とか、気合を入れるのに丁度良さそうだ。勝負下着ならぬ勝負シャツを仕入れるつもりで幾つか選んでみる。絶対に失敗できない時の為に「一発必中」とか。目出度いことがあった日なんかは「当たり目」とか。あと大人の魅力を出したいなって時は「危険日」とか! 大人の危ない魅力を全面的に出しちゃうのだ、私に惚れると怪我するぜ! それで幾つかのイケイケなシャツを手に入れて、ホクホクな私が屋敷に戻ると鶸の調子がおかしかったので、ここは一つ景気付けに新しく買ったシャツを着込んで人生相談へと赴いた。男らしいところを見せるのだ、そしたらきっと彼女も私に惚れ直すかも知れない! 頑張って元気付けてあげるのだ!
――激おこぷんぷん丸。
†
翌日、調練から戻ると寝台に襯衣が置かれていた。広げてみると「私は駄目な人間です」と書かれている。
胸が少しキツかったが、朝から話もしてくれなかった葵が少しだけ口を利いてくれた。