異世界転生したら、三国志だから、アレッと思って、美少女だっけ、性転換しちゃって、もうゴールインさ 作:にゃあたいぷ。
ひょんなある日、調練を終えて部屋に戻ってきた時のことだ。
隠していたはずの同性愛を書かれた小説が机の上で綺麗に並べてあった。
とりあえず書籍を人目の付かない場所に移動させた後、無言で走り出す。とりあえず
一縷の希望を持って、恐る恐ると問いかける。
「私の部屋を掃除してくれたのって、葵?」
すると少女は満面の笑顔で「はい!」と元気良く頷き返す。
ああ、もう、嗚呼、と両手で顔を覆いながらその場に崩れ落ちた。これが単なる艶本なら此処までの絶望はない。しかし机の上に並べられていた艶本は私が手掛けたものだ。そして、その中には異世界に転生した少年が女の子になり、両性器具の女の子に攻められるという内容のものがある。言うまでもなく葵から聞いた話を元にしたものだ。そして、これは一種の夢小説のようなものであり、衝動のままに書いたものだから世の中に出せる内容ではない。ましてや本人に見せられるようなものではなかった。今日は葵と夜を一緒にする予定の日だった。葵と目を見つめ合いながら優しく抱き寄せて、甘い夜になるかも知れないっていう願望もあった。もちろん、現実はそんなに甘くないってことは分かっている。それでも妄想するくらいは許して欲しい、勝手に希望を抱く程度のことは許して欲しい。それが台無しになった。私はいつもそうだ。この失敗は私の人生そのものだ。私はいつも失敗だかりだ。私は色んな萌えに手を付けるけど、ひとつだって現実で見たことはない。誰も私を愛さない。
ポンッと優しく肩を叩かれる。頭を上げると葵の顔があった。
「私、ああいうの結構、好きだよ?」
それだけを言うと葵は上機嫌に台所へと向かって行った。
えっ? 結構、えげつないのも書いていたと思うけど、えっ?
遠のく背中、ただただ呆然と見送った。
†
異世界転生ものって良いよね!
前世での私はネット小説と呼ばれるものも結構読んでいた。なんというか書籍とかだと身構えて読まなきゃいけない気になるが、二次創作とかだと気軽に読める気がするのだ。たぶん気分の問題だけど、百万文字とか三日で読み切ることもあったし、活字を読む事を苦にしなかったのも強い。前世の私が好きだったのは悪役令嬢ものだった。男主人公よりも女主人公の方を読む方が好み。ああでも男は基本的に馬鹿だとか、相手の事情を考えない俺様系は苦手だ。ああいう強引な人を好いちゃう人の気持ちはよく分からない。でも好きだから独占したいとか、そういう嫉妬染みた感じだと少し可愛いとか思っちゃうから不思議だ。どうにも自分は強引過ぎるのとか、決めつけだとか、そういうのは苦手なようだ。私だって男だ。エロいのは好きだ、女の子が好きだ。受けよりも攻めの方が好きだ! 経験はないけども勝手に決めつけて欲しくない。私は攻める男なのだ。
さておき、異世界転生ものも結構な数を読んでいた。
だから蒼の部屋を掃除していた時に発見した小説は懐かしく感じられた。それは異世界に飛ばされた元男の少女がたった一人でも挫けず、色んな人に助けられながら新しい世界で生きていく物語。なんとなしに私と似た境遇の主人公に感銘を受けて、もっと頑張らなきゃって思った。やっぱり女の子になったからって急に男に興味を持てるようになるはずなんてないよねって共感を得たり、何か身体的な悩みを抱える女の子とも良い感じになってたし、もうちょっと読んでいたいなって思ったけども他にも掃除しなくちゃいけないから程々のところで中断した。後で蒼に貸して貰えば良いかなって、そういえば、主人公の名前が奏で私の名前と字面が似ている。そういう意味でも親近感が持てた。ヒロインの名前も碧で、蒼とは青色繋がりがあったりと不思議な偶然を感じちゃうなー。
台所で料理をしていると「私は駄目な人間です」と書かれたシャツを着た鶸が気不味そうな顔で手伝いに来た。
仕方ないから少しだけ許してあげる事にした、チョロい奴とは思われたくないので少しだけだ。
†
夕食後に改めて読み返すと自分自身でも引いちゃう内容だった。
うっわ、こんなの書いてたっけ? これを読んでも結構好きってどういうこと? あんな無邪気な子がこれを読んでも平静でいられるってどういう神経してるんだろ。実はむっつりさんとか? 性欲強かったり? それはそれで滾るんですけど、あんなに小さい子が性欲に従順。やばい、背徳感が半端ない。それだけでこれから先の数ヶ月、自慰のオカズに困ることがなくなりそうだ。
悶々とした想い、今日は葵と一緒に寝るというのに耐えきれそうにない。一度、性欲を発散しておいた方が良いだろうか? 葵が来るまでに、と股間に指を這わせる。すると既に下着が少し湿っていた。その事に自分で、うわっ、と軽く引いた。そういえば葵って他二人とも寝てるんだっけ? 今日、夕食を食べている時に鶸が「私は駄目な人間です」と書かれた襯衣を着せられていたので、もしかしたら手を出してしまったのかも知れない。でも葵もあんまり怒っている様子もなかったので満更でもなかったりするのかも知れない。それともただ単に葵が単純な性格をしているだけだろうか? 葵の事を想いながら、昨晩と一昨日に行われていたかも知れない情事を想いながら指を動かす。やばい、これ、やっばい。荒くなる息にギュッと目を閉じる。もう我慢できなくなってきて、服を全部脱いで大股を開いた。自分を慰める時は大胆な姿勢を取った方が気持ち良かった。上気する体、昂ぶる心、もっと、と心と体が欲している。だから衝動の赴くままに指を這わせようとした。
こんばんは、という可愛らしい声と共に扉が開かれた。
「うわぁ……すっご……」
しっかりと見つめられた後、おずおずと扉が閉じられる。
「待って、違うから! これは違うからッ!」
「私は何も見てないから、だから、ね? 今日は私、翠の部屋で寝るから」
「待ってって言ってるのに……!」
「蒼、裸で出て来ないでッ!? あッ!!」
逃げ出そうとする葵の手首を掴んで、そのまま部屋まで連れ込んだ。
†
切に、切に状況を説明して欲しい葵なのです。
目の前に女の人の裸があった。でっかいのが二つもあった。
とりあえず深呼吸、状況を整理する為に少し遡ってみよう。
私、葵は今日も今日とて是否枕を抱き締めながら誰かの部屋へと潜り込む。今日、向かうのは蒼の部屋、姉妹達の中で最も胸が大きくて、ゆるっとふわっと包容力が強い御人だ。扉の前まで辿り着き、扉の取っ手に手を掛けようとして、軽く深呼吸をする。察しの良い私は気付いている。先ず最初に義親の馬騰こと翡が告げた「うちの娘の内、誰でも良いから抱かれて来い」という言葉、そして義姉妹達の前で告げた「この子を貴女達の誰か一人と婚姻して貰うから、そのつもりで」という発言。加えて、二日連続で続いた義姉妹達の狂行を鑑みるに、これら全てが本気だったということはもう確実だ。たぶん、今日もまた私は抱き締められてキスをする。しかし、私には既に何度もキスを交わした経験がある。そうだ、つまりキス童貞の蒼に比べて、私には一日の長がある。つまり、これはもう勝ち確なのだ! 今日は唇の手入れも丹念にしてきたし、ちょっとキスの練習もしてきた。さくらんぼを口の中で種を付けたまま綺麗に結ぶことができたのだ、えっへん。んべって翠に見せると頭を撫でて褒めてくれた、鶸は何故か顔を赤くしていた。勝負下着もバッチリで、今日は「やればできる女」シャツを着込んでいる。そうだ、私はやればできる女である、今は元男だけど。
パンと両頬を叩いて気合を入れる。そして、ガチャッと扉を開け放った。
「こんばんは!」
すると目に飛び込んできたのは全裸で大股を開いた蒼の姿だった。
そっと扉を閉じる。
えっ、なに? 今のって、えっ? すごかった、うん、とてもすごかった。
扉を背に座り込み、両手で顔を覆いながら地面にへたり込んだ。
胸の動悸が治まらない、やっばいものを見た。自慰をした事もある、河川敷のエロ神様が残してくれた雑誌を読んだ事もある。しかし、今までの価値観が塗り替えられてしまう程に、なんか凄かった。時々、SNSで女性が「心のちんこが勃起した」なんて言葉を使うことがあるけども、なんか今、その気持ちがすっごくわかる。なんというか、もどかしい。今はなき息子がない事がとてももどかしかった。
なんとなしに前のめりになりながら、そおっとその場を離れようとすると背後の扉が勢いよく開け放たれた。
「待って、違うから! これは違うからッ!」
全裸の蒼が隠そうともせずに突っ立っていた。
詰め寄ってくる、ブルンと胸が揺れる。ズンズンと大きなメロンが迫ってくる光景は圧力が凄かった。
いや、待って、ちょっと待って。
「私は何も見てないから、だから、ね?」
興奮した馬を宥めるように両手を前に出し、熊と遭遇した時のようにゆっくりと距離を取る。
「じゃっ! 今日は私、翠の部屋で寝るから……」
十分に距離を取ったところで逃げ出そうとしたが「待って!」と間合いを一瞬にして零にしてきた。バルンと目の前で揺れる胸囲の暴力、いや、これ全然えっちぃくない!
「蒼、裸で出て来ないでッ!?」
咄嗟に振り払おうとする手を止められて、力のままに部屋へと連れ込まれた。
急に景色が変わり、おっとっと、と姿勢を立て直しているとガチャリと音がした。扉の前には全裸の蒼が居て、後ろ手に取って辺りを捻っている。あれ、これって閉じ込められた? 巷でよく見たセックスしないと出られない部屋かな? ちょっと物理が強すぎる気がするけども。隠すべくを隠さずに詰め寄ってくる蒼に、私も唾を飲み込んで覚悟を決める。今日の私はやればできる女なのだ、元男だけど。略して、やれる女。この程度の危機なんて、簡単に突破してみせる。そうだ、合わせて、簡単にやれる女だ! ふんす、と鼻息を荒くして気合を入れる。どうせ、されることなんて分かっている。口付けなら鶸との一戦で幾度と経験した。つまり百戦錬磨の実践を経た私はキスの達人なのだ! キス素人の蒼になんて絶対に負けないんだから!
詰め寄られる。蒼の目が完全に獲物を見据えるソレと同じものになっていた。そのことに若干の気後れがあり、しかし凛然と胸を張って迎え入れる。ちょっと怖かったから目を閉じる。さあ、どこからでもかかって来い。さあ、覚悟はもうできている! だから、覚悟が萎えない内に早く! ドキドキと高鳴る鼓動、じっと見つめられている感覚があって、少し擽ったい。時折、肌に息が吹きかかり、優しく抱き寄せられた。来た、と思った。口付けされると思った、だから受け入れられるように少しだけ唇を押し出す。歯が当たったら痛いから、鶸の時にちょっと唇を切っちゃったし、そのまま待ち続けること数十秒、待っても待っても来ないから、アレ? って思って目を開こうとすると唇を重ねられた。
ふぐッ!? くぐもった声が出る。にゅるりと口の中に冷たいものが入り込んできた。やだ、何これ、なにッ!?
舌を入れられた、と気付いた時には全身を使って暴れていた。口の中を暴力的に蹂躙される。舌で押し返そうとすれば、絡め取られて、それでもと強く押し込んだら逆に吸われてしまって体が跳ねた。視界が火花が散ったように瞬き、その間も骨が軋む程に強く抱きしめられながら口の中を舌が蠢いた。口が離される、思いっきり酸素を吸い込んだ。まだ目がチカチカする。気付けば、ベッドに押し倒されている。大きく上下する自分の胸、内側から叩きつけるような鼓動、そして私の上には蒼が名残惜しむように口元を舌で舐め取っている。そして休憩も程々に蒼が顔を近付けてきた。絶対に負けないから、と意思を総動員して、蒼の首裏に両手を回して抱き寄せる。ギュッと唇を押し付けて、チュッと吸い上げる。
どうだ! と勝ちを確信した笑みを浮かべてみせる。
「……今の良かった…………」
全然、効いている気配がない。
妖艶に細める目は、ただただ私だけを映している。
私は悟る。そして、懇願する。
「…………優しく、お願いします」
「誘ったのは、葵だよ?」
全然、優しくなかった。
†
やり過ぎた。
空が白じんできた時間帯、汗と体液で湿った寝台には仰向けになったまま体を痙攣させる葵の姿があった。なんというかムラッと来る。やばい、相手から誘ってきたとはいえ、やり過ぎた。声を掛けると辛うじて、意識は保っていたのか、水、と一言だけ告げる。それで予め用意していた果汁水を口に含んで、葵の体を抱き起こしながら口移しで飲ませる。全身を脱力させているせいか、葵の体は何時もよりも重く感じられた。やり過ぎた。助けを呼ぼうとしてたから、ずっと口を塞ぎ続けていた。でも仕方ない。だって、最初にキスをする時、葵は受け入れ態勢万全だったし、目を閉じた後、これ見よがしに首筋を見せつけてきたのだ。赤い痕がいくつも付けた首筋を。あんなのを見せられて、黙っていられるはずなんてない。むしろ私の色に染めたくて、上書きしてやりたくて、こういうのって寝取りっていうのかな。とにかく私の物にしたかったのだ。でも、やり過ぎた。今日は優しくしよう、仕事は休みにして、葵の分の家事を代わりにしよう。ああでもない、こうでもない、仕方ないじゃない、ぐるんぐるんと回す思考に、チュッと小さな音が聞こえた。チュッチュッと何度も舌を吸ってくる。ちょっと誘導してやると葵は自分から私の口の中に舌を入れてきた。なんで、こんなに積極的になっているんだろうか。舌を絡める、というよりも口の中を舐め取られる感じだ。暫くすると葵はほんの少しだけ眉間に皺を寄せて、口を離す。そして、喉乾いた、と小さな声で告げる。もう一度、口に果汁水を含んで飲ませてやると葵はちょっとだけ嬉しそうに果汁水を嚥下し、また口の中を舐め取り始めてきた。そこで漸く、葵が積極的になっているのは口の中が甘くなっているせいだと気付いた。一生懸命、舌を吸ってする葵がいじらしくて、可愛らしくて、あと少し、もう少し、と思っている内に太陽が高く昇る。それは部屋の中まで押し行ってきた姉様と鶸に引き剥がされるまで続けてしまっていた。
程なくして調練の時間、引き剥がされてから葵は会ってもくれなかった。意気消沈する中、部屋で身支度を整えた後の話だ。部屋を開けると何かが扉の開けた先に置かれていた。襯衣だった。広げてみると「私は駄目な人間です」と書かれていた。ああ、なるほど、こういうことだったのか。その日、私は胸が苦しい思いをしながら調練に出る。
周りから視線を浴びる中、次はもうちょっと自制心を持とうと決意した。