異世界転生したら、三国志だから、アレッと思って、美少女だっけ、性転換しちゃって、もうゴールインさ   作:にゃあたいぷ。

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この話までが前振り。


第五話.

 翠、鶸、蒼の三人と共に過ごした後、更にもう一周して流石の私も自覚した。

 きっと私は近々犯されることになる。昼間だと好意の方が強い視線も、夜が近付くに連れて、もっと言えば、その日、夜を共にする相手が獲物を見るような目で私を見つめてくるのだ。まるで猛禽類が生き餌を前にして涎を垂らすかのように、ベッドは俎板で、私は鯉だった。流石の私も貞操の危機だっていうことはわかる。童貞の前に処女を失いそうだっていうことは分かる。今、息子ないけど。男に抱かれるくらいなら男性器を生やした女の人に抱かれる方が数倍ましだって気持ちもあるし、結婚するのも男じゃなくて女の方が絶対に良い。その点で云えば、私は恵まれた世界に来れたと云える。いや、不幸中の幸いと云った方が正しいか。転生するなら男のままが良かったし、挿入れられる方よりも挿入れる方で居たかった。異世界に来た事には、あまり難しく考えていない。異世界に来たなら来たで仕方ないと思うし、そもそも私は元の世界に対する未練が少なかったりする。それには中学生くらいの時から親はあまり家には居なかったし、高校生になってからは家を出てしまっている事が大きく関わっている。それでも友達とか、知り合いには申し訳ないなって思ったりするけども、躍起になってまで元の世界に帰りたいとまでは思わない。機会があれば、その時に考えようとか、そんな感じだ。少なくとも美人な三姉妹に迫られている状況は嫌ではない。むしろ好ましい。これが女としてではなく、男としてだったなら尚のこと良かった。なんとなしに前の世界で男からラブレターを貰ったことを思い出す。いや、私の性的嗜好は女ですし、逞しい男に興味はないですし、守られるよりも守りたいって思いますし、それに男でも女でも構わないみたいな言い回しは好きくない。私は男だ、少なくとも前世では男という自覚を持って生きていた。それが私のアイデンティティとして象られていたことは紛れもない事実になる。だから私のことを女として見る者を毛嫌いする。今は肉体が女になっているから折り合いを付けようと頑張っているけども、やっぱり女性として見られることには慣れない。ましてや、子作りとまでなると忌避感の方が強い。翠も、鶸も、蒼も好きだ。現時点での印象だけで言うなら結婚しても構わないって思ってる。三人は男としては好きだ、女としても好ましいとは思っている。しかし子供を作りたいとまでは思えない。だから私にはまだ三人が望むような関係になる覚悟がなかった。いずれ、そうなる。とは分かっていてもこればっかりは心の整理が付けられないでいる。私は女である、しかし私の心は男のままだった。

 馬騰、(つぅい)の部屋に寝泊まりして三日後のことだ。

 

「私は馬岱。もう皆、真名を交換しちゃってるから私も預けちゃうけども蒲公英だよ。これから宜しくね」

 

 翡の姪、そして翠達の従姉妹に当たる蒲公英が屋敷の住人として新しくやって来た。蒲公英は私の事情を知っているようで、従姉妹達には聞こえないようにひっそりと、いの一番に訊いてきたことは「で、本命は誰?」ということであった。その時、パッと思い浮かんだ相手は居なかった。全員という答えがない訳でもなかったが、いまいち仲睦まじく愛し合っている未来が想像できない。それで答えに窮していると「あー、んー、駄目じゃん」と蒲公英は呆れたように溜息を零す。

 

「あいつらって皆、脳筋だからねー。御姉様は勿論、鶸も蒼も五十歩百歩だし?」

 

 うんうん、と蒲公英はひとり納得するように頷くと「叔母様からも葵のことを支えて欲しいって言われてるからね、それなりに頼ってよ」と肩を叩かれる。どうやら彼女には私を結婚相手、つまり子作りの対象として見る意思ないようだ。その事実だけで、ほうっと安堵の息が零れる。義姉妹と同衾するようになってから毎夜、まともに寝られたことがなかった事もあり、ちょっと眠たくなって来た。でもまだ家事が残っていたから挨拶も程々に、さっさと終わらせてしまおうと足を運んだ。

 

「あれ?」

 

 ふらりと体がよろめいた、それはちょっと頭が眩んだだけに過ぎない。

 

「よっと」

 

 しかし、そんな私の体を支える者がいた。

 私の肩を片手で掴んで抱き寄せられる、ビクリと身を硬ばらせる。こんな時、咄嗟に身構えてしまうのは義姉妹の好意を受け止めてしまった結果だ。しかし、私を支えてくれた少女は、私の無事を確認すると呆気なく私を手放した。義姉妹の少し羨む視線を受けながら「貴女、大丈夫なの?」と下心なく問いかけてくれる。なんでか言葉が詰まった、代わりに力強く頷き返すと蒲公英はいまいち納得していない様子で顔を顰めた。その好意を伴わない心配が新鮮で心地良い。

 その日の夜、早速、私は蒲公英の部屋へと赴いた。

「えぇ……っ」と引き攣った笑みを浮かべる彼女なんて無視して、手際よくベッドの端っこを陣取り、そのまま、くぅっと瞼を閉じる。その日、何事もなく、一週間ぶりの安眠を得ることができた。好意を向けられるのも良いのだけど、そうやって愛情ばかりを押し付けられるのは、やっぱり疲れちゃうものだ。この部屋は私にとってのセーフティゾーン、それから事ある度にお邪魔することになる。迷惑をかけちゃっている自覚はあるので、お手製の菓子とか包んであげたりとか、御茶を淹れたりとかして縁が切れないように御奉仕するのも忘れない。というか見捨てられたら私の身と心が保たない。そんな私の気持ちを知ってか知らずか、蒲公英は溜息混じりに私のおもてなしを受け取ってくれるのだ。

 勿論、義姉妹達にも菓子を用意してますよ。ついでだけど。

 

 

 最初、初めて手紙が届いた時には、翡叔母様が馬鹿になったのかと思った。

 いやだって久しぶりに馬氏本家から来た手紙が「拾った少女を娘達に嫁として与えたら揃いも揃って恋煩悩になった」とかいうことが書かれていたのである。いや、ないわ。何処の蒼の同類が書いた小説だよ、と。しかも少女は、天の御使い疑惑があり、天の国では男だったと主張している。とか、なんとか? いや、今時そんな設定とか流行らないし、誰もやらないって。でもまあ困っている事は確かなようだし――少女は日に日に元気をなくしていっているらしい――、分家筋の私が本家当主の翡叔母様に逆らえるはずもなく、本家の要請に従う形で屋敷へと赴いた。

 そこには前に挨拶した時にはいなかった人物が一人、馬家特有の茶髪ではなく、真っ黒な髪と瞳をした少女が混ざり込んでいた。彼女が手紙に書かれていた少女だと察するのは難しくない。なにより乙女ではあっても女らしくない馬家一門の中で、彼女だけがとびきりに女らしかった。いや、彼女が元男って嘘でしょ、これ。ちょっと私、女としての自信なくすんだけど? 仕草とかがいちいち女っぽくて、なんというか凄くあざとかった。これが無意識なら超ド級の天然ものであるし、これが意識してのことだったら、それはそれで末恐ろしいものがある。

 自己紹介の時に本家当主と真名の交換をしていることが分かったから私とも真名を交換しておいた。異民族とも付き合い多いし、司隷に住む連中ほど真名に固執もしていない。少女、葵もまた快く真名を交換してくれた。

 さて、手紙に書かれていた元気がないっていう話は本当だったようで、顔に活力がなかった。なんとなしに気疲れしているような感じ、それで注意深く観察していたら案の定、足元をふらつかせて危なっかしかった。咄嗟に手を差し出すと、何故か従姉妹達から嫉妬を込めた目で睨まれた。いや、むしろ、そこは感謝されるところでは? 兎にも角にもウチの馬鹿達が色々と拗らせていることは理解した。そして、その原因として葵が関わっている事もわかった。

 なら、どうするのか。とりあえず尋問である。どうせ、この馬鹿な従姉妹達がやらかしたんだろう。と当たりを付けて、葵抜きでお話をさせて貰った。ひと通りの話を聞き終えた時、従姉妹達は揃いも揃って正座をしていた。

 その日の夜、葵が部屋に来た。

 普通、初対面の相手のところに来るかな? そんな私の疑問に答えもせずに、さっさと寝台の端を陣取って眠ってしまった。あまりの寝付きの良さ、その無防備さ加減に呆れながら溜息を零す。何度か頰を突いても起きないところを見るに、どうやら本当に眠かったようだ。今日の昼間、尋問中の従姉妹達の姿を思い返して、「あっこれ、夜に寝かせて来なかったな」と察する。翌日、追加で説教をする事を決断した。

 私、そういう感じじゃないんだけどな。と思いつつ従姉妹達の馬鹿さ加減に呆れながら。

 

 それから更に刻が過ぎる。

 

 葵に懐かれた。本人に自覚があるのか分からないが、屋敷に戻るとベッタリだ。

 事ある度に挨拶して来るし、屋敷に戻るといの一番で出迎えに来るし、週に何度かの頻度で菓子を手渡して来るし、そして、その度に従姉妹達からの視線が痛く感じられた。ついでに言えば、夜中、私の部屋に添い寝を頼みに来る頻度は従姉妹達と比べて多い。具体的に云うと、二、三日に一度の頻度だ。週に一度、多くて二度の従姉妹達と比べると格段に多い。とは言っても葵はほとんど寝に来るだけだし、偶に御茶と菓子で愚痴を聞かされるくらいなものだ。翠は力加減ができないとか、鶸はまともそうだけど火が点くと止まらないとか、蒼は性欲に忠実過ぎるとか、何が悲しくて従姉妹の性生活を聞かなくてはいけないのか。いや、ほとんど接吻で終わっている辺りが情けないというか、なんというか。というよりも本人、好意を向けられること自体は嫌がっていないのだから、性欲を少し抑えるだけで簡単に靡きそうなところが本当に馬鹿らしかった。まあ教えてあげないけど、茶番染みてるなあ、と思ったりもした。

 葵の私物が増えつつある部屋、全体の三割程度が侵食されている。葵が部屋に来ない夜は、何時も葵が陣取っている場所に顔を埋めた。そして葵の変な文字が書かれた襯衣を嗅ぎながら自慰に耽る。いや、溜まるって性欲、ずっと生々しい性事情を聞かされ続けているのだから。そして今もまた従姉妹の誰かのところで好き勝手されていることを思いながら下腹部に指を伸ばす。

 葵は従姉妹の誰かと婚姻する。それは分かっている。だから、この気持ちは単なる情欲に過ぎない。彼女の話に興奮しているだけに過ぎないのだ。それは艶本を片手に自分を慰める行為と大差ない。そう言い聞かせる。もしも私が勘違いを起こせば、それは誰も幸せにならない結末になる。それが分かっているから私は絶対に間違いを犯さない。自慰に耽る時、ただただ性欲の対象として葵を見る事を強く意識した。そして翌日、何食わぬ顔で葵と顔を合わせて、何時ものように愚痴を聞いたり、ベッタリと引っ付く彼女に呆れたりする。

 私は葵の息抜きの役割を担っている。

 それで良いと思うし、そうあるべきだった。

 

 

 




ファン(の為に描いた)アート。

向日葵

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馬超

【挿絵表示】


実験的に色塗ってみたやつ

【挿絵表示】
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