異世界転生したら、三国志だから、アレッと思って、美少女だっけ、性転換しちゃって、もうゴールインさ   作:にゃあたいぷ。

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第七話.

 退屈だった。山暮らしの私にとって、城都での暮らしは暇を持て余した。

 まだ太陽も昇らぬ内から小屋を出て、半日以上も狩りに費やす毎日、時に村から人食い虎や熊の情報を得て、僅かな作物と対価に討伐する。時間が余った時にだけ、水浴びとか、洗濯とか、兎に角、生きているだけで時間は浪費された。しかし城都では生きるだけでは時間を浪費し切れない。馬騰から定期的に与えられた金銭で食料は手に入るし、料理はさておき掃除や洗濯は毎日する程の事でもない。日がなぼんやりと部屋で待機している事が多く、窓から差し込む日光の温もりに包まれながらぽけっと、時間を浪費する。山に居た時はもっと、いや、のんびりとはしていた気がする。少なくとも時間を気にした記憶はあんまりない。此処の人達は皆、せっかちだ。まるで時間に追われるように日々を過ごしている。何かをしなくては生きていられない、そんな風にこの街は作られている、気がする。

 此処の暮らしは私の肌には合わない。ただ積極的に何か行動を起こす気も起きない。

 だからまあ気まぐれに散歩する。家に籠っていると駄目になる、外に出ると頭がすっきりする。ぽかぽかの太陽を肌に晒して、ふりふりっと全身を揺する。そして釣り具を片手に近場の川まで出向いた。川辺は涼しくて心地良い。釣りは良い。大きな岩の上から糸を吊るすだけで何かをしている気分になる。ふわっと欠伸をしている時も生産的なことをしている気持ちになるからお買い得だ。

 時折、見知らぬ方に話しかけられるけども、それもお話をして黙らせている。

 

大蛇(龐徳)、こんな所に……ん? んんっ?」

 

 馬上より私の真名を呼ぶのは御主人様、私は彼女に養われている。

 岩陰に適当に積み重ねた不躾な方々を見て、言葉を詰まらせた。別に殺してはいない、身包みは這い出るけど。山での暮らしの時から私の武器は拳だ。斧とかも得意だけど、熊師匠が素手だったから対等に私も素手で武芸を学んだ。弱肉強食という自然の摂理を教えてくれたのも熊師匠だ。言葉は通じなくとも拳で語り合える仲だった。そんな大恩ある熊師匠は私の御腹に収まっている、美味しかった。山賊先輩ともよく手合わせした。男と戦う時は股間を蹴り上げれば良いと教えてくれた相手だ。御行儀良く頭を殴りつけるよりも簡単に無力化できる。足先にグチュッと潰れる感覚があったら尚良い、効果的だ。威圧効果もある。

 少し引き攣った笑みを浮かべる御主人様は、馬を降りると二振りの木の棒を取り出した。

 

「いや、なに。武芸の心得があるようだったからな。その力を確かめたくてな」

 

 ほれっ、と木の棒を手渡される。

 先は尖っていない。どうやら殺し合いが目当てではなさそうだ。御主人様が構えたのを見て、とりあえず棒を放り投げた。無造作に投げられた棒を驚きつつも打ち払う、その間隙を縫って間合いを詰める。相手の懐に大きく踏み込んで、残った足を引き寄せる。その勢いを拳に乗せて、鳩尾に叩き込んだ。熊師匠を一撃で倒し得るまで頑張った一撃だ。ぐふっ、と御主人様はくぐもった声を吐き出して、地面に両膝を着いた。……大丈夫、死んでない? 前髪を掴んで顔を引っ張り上げる。良かった、死んでなさそうだ。そのまま、パッと手を離す。地面に蹲る御主人様を見やり、思っていたよりも弱かったな。と思いつつも、まあ無事そうだからいっか。とか思いながら、岩の上に座り直す。釣りは良い、座っているだけで生産的と見做されるのだ。戦いなんかよりも、ずっと良い。

 尚、狩りは生産的な行動に含みます。

 

 

 待って、ちょっと待って欲しい。

 龐徳、つまり大蛇(おろち)の実力を推し量ろうとしたら一撃で倒された。これでも涼州の勇、英傑の一人として、数えられている。少なくとも娘の(馬超)が頭角を現すまで、私の武勇は涼州では一番だった。なるほど、これは確かに別格だ。翠と同格というのも頷ける。寄る年波に衰えを感じているが、それでもまだ(馬休)(馬鉄)に負ける程ではない。事務仕事が増えて鍛錬を怠っているとはいえ、いや、しかしだ。私にも武人としての矜持がある、この結果は看過できない。肺に溜まった空気を全て吐き出し、無理やりに呼吸を整える。そして、ゆっくりと身を起こせば、在ろう事か、大蛇は釣りを嗜んでいた。武力に申し分はない。しかし、これは余りにもあんまりだ。彼女には教育が必要だ、文字の読み書きはできないと聞いている。しかし、それ以前に彼女には教養が必要だ。特に道徳とか、倫理とか、さておき、大蛇にはその辺りの教養が必要だ。暫く、大蛇の方の屋敷に泊まり込むか。そして、あちこちに連れ回さなくてはならない。あと私自身も肉体を鍛え直す必要がありそうだ。

 お腹を擦りながら決意する。

 

 

 不思議な蜂蜜。男性が使えば絶倫の精力を得て、女性が使えば男性器を生やすことができる不思議な蜂蜜だ。

 屋敷を空けるということで翡から手渡された秘薬を前に、私、葵は溜息を零す。覚悟もまだ決まっていないのに、こんなものを渡されても困るというものだ。まだ息子への未練も断ち切れていないし、私の体が如何に女として開発されようとも、私の目に映る義姉妹達は依然として女性のままだ。女の身になったとしても、やはり、恋愛的な意味合いで愛せるのは女だけなのだろうと思う。

 そういえば、目の前にある不思議な蜂蜜。飲めば、誰でも男性器を生やせるという話だったっけ?

 ごくり、と唾を飲み込んだ。正直、性欲は溜まっていた。女性として発散させらているが、体は昂ぶるばかりで男性特有の射精感を得られない。それに義姉妹達との行為は快感を一方的に与えられているだけで、まあ、それはそれで気持ちいいのだけども、しんどいって気持ちもあって、気持ちいいけども辛かった。だから慣れ親しんだ息子での自慰、それも自分のペースで行いたかった。あとついでに云うならば、こんな危険物を持って義姉妹の部屋に行くとか、鴨が葱を背負うに等しい行いだ。何処かに隠す必要があるのだが、私室を持たない私に安心して隠せる場所なんて何処にもない。そ、それにこんな怪しい薬とか毒味が必要だ。そうだ、そうに決まっている。肉体を変えてしまう薬なんて、どんな副作用があるのか分からない。そんな危険な代物を義姉妹達に実験もなしに扱わせる訳にはいかないのだ。上手く生やすことができたら、それはそれ。万が一にも義姉妹達を妊娠させる訳にもいかないし? その時はまあ今夜、義姉妹達の部屋には行けなくなるなとか。なんとか、かんとか。

 そんな言い訳染みた想いから、私は蜂蜜を自ら舐めることにした。

 

 

 部屋に戻ると泣きながら自慰に耽る葵の姿があった。

 蒲公英、と私の枕に顔を埋めながら股間から生やした何かを手で擦っている。うん、これは、うん、どうしたら良いのか。とりあえず部屋に入り、カチャリと鍵を閉める。すると流石の葵も、その音に気付いたのか顔だけを私の方に向けた。目が合った。未だに男性器を握り締めており、完全に硬直してしまっている。どうして部屋に入ってしまったのか、どうして閉じ込めるような真似をしてしまったのか。いっそ怒鳴り散らしてしまえば、どれだけ楽なことだったか。しかし自分もまた彼女の枕や私物で自慰に耽っていた経験があり、強く言うことができなかった。そして葵の痴態から目を離すことができず、凝視してしまっている。そんな私を葵もまた見つめ返してくる。重たい沈黙、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 こんなのどう対処すれば良いのか分からない。

 

「……どうして、私のところなの?」

 

 思っていたよりも静かで、低い声が出た。葵は気恥ずかしそうに目を逸らし、そして私の枕に顔を埋めながら呻くように答える。

 

「生やしたままだと、何してんだって話だし……義姉妹には万が一も起こせないし……そもそも犯されそうだし……蒲公英の部屋しか行くとこなかったし……蒲公英、好きだし……」

 

 言い訳を並び立てるようにうじうじと告げられる。

 本当に、どう対応するのが正解なのか分からない。翡叔母様が出掛けた当日に葵が私の部屋に居るっていうだけでも拙いのに、私の部屋で自慰をしていたなんていう事実を知られてしまったら、その時はもうおしまいだ。完全に従姉妹達との関係が壊れる、少なくとも拗れることは間違いない。かといって、この状態の葵を外に出すのも危険だ。間違いなく従姉妹達の餌食になる。そもそもだ、翡叔母様が不思議な蜂蜜を葵に預けたことは皆に知られていたりする。そのせいか今日は皆、分かりやすくそわそわしていた。従姉妹達は皆、葵の貞操を狙っている。そんな猛獣の檻に葵を入れるとかあり得なかった。あり得ない、と考えている時点でもう、色々と私の中でも何かが壊れ始めている。元から壊れていたのかも知れない、箍が外れかけているだけかも知れない。それはもうよく分からなくなっていた。分かるのは葵の痴態から目を離せないで居ること、瞼に焼き付けるように肢体の隅々までを凝視する。胸の高鳴りの意味は何か、ただ単に欲情しているだけなのか。もし仮にそうだったのだとしたら、なんか嫌だなと思った。そういう目で葵を見る自分が穢らわしく感じられた。でも、少し冷静に考えてみると今、穢らわしいことをしているのは葵の方だ。だから葵のことを怒鳴り散らす権利が私にはある。だけど、それをしてしまうと、もう二度と私に好機が巡って来ないかも知れない。何を考えているのだろうか。最初から、私には機会なんて与えられていなかったはずだ。だから彼女をそういう目で見ることは、誰も幸せにすることはない。葵がじっと私を見つめている、何かを期待するように私のことを見つめてくる。やめて欲しい、そんな目で見つめられると意識してしまうから、自分が抱いている劣情を嫌でも意識するからやめて欲しい。期待、してしまうからやめて欲しい。……喉が渇いて、声が出ない。だから、おずおずと片手で何か棒状のものを握る仕草をして、軽く上下に振った。すると葵はパアッと明るく目を輝かせてみせた。ゴクリと唾を飲み込んだ。もう引き返せない、と自らに言い聞かせる。今までの関係が終わる、と自らに忠告する。勘当されるかも知れない、と自らに警告する。もう引き返せない、と自らに決意を問い掛ける。何が正しいとか、間違っているとか、関係ない。もう我慢ができない。私のせいじゃない。ずっと、ずぅっと、私を誘惑してきた葵が悪いのだ。彼女にはお仕置きが必要だ、調教が必要だ。こんなふしだらな犬は躾けないといけない。歩み寄る、ふらふらと、歩み寄る。視線だけは確と葵を捉えている。彼女の頰を両手で掴んで上半身を持ち上げる。そして上から押し付けるように口付けを交わした。葵がうっとりと目を蕩けさせる。

 そのまま、押し倒した。もうどうにでもなれって。

 

 

 御主人様が屋敷に来た、暫く一緒に住むようだ。

 礼節が大事だって言われた。御飯を食べる時はいただきます、食べた後はごちそうさま。両手を合わせてお辞儀する。

 今日の御飯は特別だった、腸の肉詰めは美味しかった。パリッとした皮に、ポキッと折れる食感の心地良さ。城都に来て、退屈は増えた。しかし食事の質は確実に上昇した。私にとって食事とは塩で焼くか、塩で煮るか。そのどちらかしかない。それでも食べられるなら十分だって思っていた。けど、そんなの嘘だ。御飯は美味しい。美味しいって、こういうものを言うんだって思い知らされた。料理って塩で焼いて煮るものを言うんじゃないんだって思い知らされた。腸の肉詰めから滴る肉汁はキラキラに輝いていて、まるでそれが美味しさが流れ落ちているような気がして、先端を咥えてチュッと吸い取る。美味しすぎて死にそうだ。もう山暮らしできない。私、一生、此処で暮らす。故郷の未練なんて消し飛んだ。美味しいは正義、美味しいは幸福、美味しいは人生だ。きっと料理とは幸せを作る御仕事のことをいうに違いない。人間が幸せを享受するのに難しいことを考える必要はないのだ。ただ美味しい料理をお腹いっぱいに食べられれば良い。その為にみんな一生懸命、汗水を流して働いているのだと思った。美味しい料理があるから城都の人達は、時間に追われるように働き続けている。

 翌日から社会勉強ってのをするんだって、外に出て、色んなところを見て回る。それから勉強もするらしい。そうすると美味しい料理の作り方だって分かると言っていた。だから頑張ろうと思う、世の中みんな美味しさでいっぱいになれば良い。

 今から明日が楽しみだ。

 

 

 翌日、ドンドンと扉を叩かれている。

 私の隣には汗だくで全裸になった葵が寝転がっており、荒い息を零すだけで身動ぎひとつ取らない。部屋は異臭で充満している。布団はもう色んな体液でぐっちょぐちょでもう駄目だ。買い換えるしかない。床に転がる蜂蜜の瓶は空だった。御姉様が扉を叩きながら私達のことを読んでいる。部屋の前では鶸と蒼も待ち構えているようだ。逃げ場はない。「蹴破るぞ!」と怒鳴り声が聞こえてくる。もうどうしようもない、と両手で顔を覆って現実から目を逸らす。ドンドンと扉を叩く音が少しずつ強くなって来ている。結論を云えば、葵の貞操は守られている。しかし、今ある部屋の惨状は、下手な行為よりも酷いことになっていた。本当に、もう、どうしようもない。「蒲公英! 蹴破るぞ、良いな!?」と声が上がる。「いいよ、やっちゃおう!」と蒼の声も聞こえてくる。もうどうしようもないから葵の体を抱きしめて、その小さな胸に顔を押し付ける。これが最後になるかも知れない。だから目一杯に味わおう、と。

 程なくして、扉が蹴破られる。さあ修羅場の幕開けだ。皆、包丁は持ったな?

 

 

 

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