十文字涼花は勇者である   作:裸の錬金術師

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Pixivに載せていたものの改修版です。
稚拙な文章ですが、宜しかったら是非。


第1話 -九州の勇者-

 

 

 

その日、一つの流れ星が落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まいったな…体が動かないや…」

ふと視線を下におとすと身体中が自分の血で紅く染まっている。

「手も足にも…力が入らない…」

周りに人の声は聞こえない。おそらく、共に戦っていた相棒は先に逝ってしまったのだろう。

「気合いも…根性も…尽き果てた…」

意識がだんだんと遠のいていくのを感じる。

 

彼女の"生命の花"が散る、その刹那…

 

 

 

 

西暦2018年 5月末。

 

その日十文字涼花は、中学校の屋上から甘城の町を見渡していた。 この学校は小高い山の麓にあり、町中を見渡すことが出来るのだ。

 

涼花は、福岡県にある甘城中学校の2年生で剣道部に所属している。といっても今まで優れた成績を残したことがあるわけではない。せいぜい、地区大会ベスト8ぐらいだ。しかし、小学校低学年の頃からずっと続けている"忍耐力"と"根性"だけが取り柄の平凡な14歳の少女だった。

 

 

ーーあの日までは。

 

 

 

2015年7月30日、夜。

 

 

 

当時小学6年生の涼花は、甘城中学校のすぐそばにあるこの街を代表する大きな公園に、剣道の夏合宿も近くなっているということで、体力増強のための走り込みにきていた。弓道をやっている妹の椿は、どうやら他の場所に走り込みにいっているようだ。

公園内を一周走り終えた時、地面が激しく揺れ始めた。

 

「何!?地震!?」

立っているのさえ困難なほどの揺れだ。思わず小さな悲鳴をあげて地面に尻もちをついてしまう。

揺れは十数秒ほど続いた後、次第に収まっていく。

「すごい揺れだった……椿、大丈夫かな…?」

自分と同じように一人で出かけている妹の身を案じる。

ふと、涼花は空を見上げる。

それは、一見、なんの変哲もない星空のようだった。

だが、違う。

無数の星々は、まるで水面を漂うように蠢いていた。

星々の幾つかが次第に大きくなっていき…

 

絶望が空から降ってきた。

 

無数の白い「それ」が町に降りてゆくのが見える。

 

星のようにも見えたその一つが、目の前の広場に落下した。それは全身が不自然なほど白く、人間よりも遥かに巨大で、不気味な口のような器官を持つモノ。それは明らかに人が知るあらゆる生物と異なっていた。ゆえに最も単純にして適切な名称をつけるなら、「化け物」という名前こそが相応しい。

その化け物がこちらめがけて迫ってくる。

咄嗟に足が動く。今すぐ逃げなければと心が警鐘を鳴らす。

全速力で今来た道を走る。

一体、どれほど走ったのだろうか気づけば公園内にひっそりと佇む神社に辿り着いていた。

この神社は「金刀比羅神社」といい、かの大国主神の和魂である大物主神と大己貴神を祀ってある神社だ。

何かに導かれるように社への階段を上っていく。普段は開かれていないであろう社の扉の中から何かが顔を覗かせていた。

 

それは日本人馴染みのある片刃の刀ではなく、錆びついた両刃の剣だった。

(これは・・・剣・・・?なんでこんなところに・・・?)

引き寄せられるように涼花は剣の柄を握る。その時だった。

全身に温かいものが広がっていくのを感じる。

身体が熱い。

同時に、今まで感じたことのないような力が身体の奥底からみなぎってきた。

 

古の時代、仲間の神と共に、自らの国を守ろうとした地の神の王がいた。

彼の王の持ちし3つの神器。

 

それはなんらかの理由で"剣"へと改造された「生弓矢」と呼ばれるその神器の内の一つだった。

 

握った剣をもう一度見てみると錆びついていた剣はいつの間にかかつてのような輝きを取り戻していた。

すると、後ろの方から木々をなぎ倒したような音が聴こえた。慌てて後ろを振り向くと、先程の白い異形の化け物が襲いかかろうとしていた。

 

自然に体が動く。一瞬で迫りくる白い巨体を両断した。

その後も次から次へと現れる同じ化け物を切り捨てながら、町へと下りていく。

 

「こ、こんなにいるの!?」

 

 涼花は襲い来る異形を斬って斬って斬り続けた。しかし、その戦いは一向に終わる気配がない。

 

桁外れの破壊力を持ち、無数に出現する敵に、どうやって勝てばいいのか。

涼花は眼前から迫る敵に集中し、背後から迫る白い巨体の気配に気づくのに一歩遅れてしまい・・・

 

「しまっ・・・!?」

 

 

自分の死を感じ、咄嗟に身を竦める彼女の身体が砕かれることはなかった。

 

背後の怪物を投合された"薙刀"と呼ばれる武器が貫き、消滅させたのだ。

「涼花!怪我はないか!?」

 

「椿!?なんで!?」

そこに現れた、その"薙刀"の主はなんと自身の妹の椿だった。

 

「話は後!まずはこいつらを!!」

 

「わ、わかった!」

 

そこからは無我夢中だった。敵を何体倒した頃だっただろうか?市内の幾つかの神社から結界が発生し、甘城の町を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いは終わった。崩壊してしまった建物、生存を確認し合い喜ぶ人々、涙を流し嘆き悲しむ人々、あの化け物に食い殺されたのであろう無数の死体が目についた。

その中には父と母のモノもあった。

市役所勤めの父と正義感の強かった母のことだ、他の人々を避難させている間に殺されたのだろう。

 

 

 

涼花は死臭に満ちた黒い空を見上げることしか出来なかった。

 

 

 

 

あれから三年の時が過ぎ、涼花と椿は中学二年生になった。

涼花は、中学校の屋上から甘城の町を眺める。彼女たちが守るべきこの町を。

 

 

 

 

西暦2018年

十文字涼花と十文字椿の二人は、神の力を使う「勇者」としての御役目を担っている。

 

 

 

 

 




物語の舞台は乃木若葉は勇者であるより、少し前ぐらい(ほぼ同時期)の
福岡県の南部辺りです。
涼花の武器は越王勾践剣のイメージです。
椿の薙刀は、名もなき土地神たちの力が宿ったものという設定です。
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