艦隊これくしょん 鋼鉄の水平線で ~ウィルキア解放軍、艦これ世界を征く~ 作:R.H.N
次はもう少し早めたいなぁ。
後、本作でシュルツ達が歩んだ道のりは、ゲーム版とは色々と違うところが多いため、どこかしらで解説を挟む予定です。
(…………………とく…)
「………うーん……」
(………提督)
「………うーん……」
「……提督!しっかりしてください!提督!」
「( ゚д゚)ハッ!!?……ここはいったい?」
「やっとお気づきになりましたか?」
…何で私はこんなところにいるんだ?
確か、さっきまでは観艦式のため、暫くぶりに戦艦【シュヴァンブルグ】に乗ってシェルドハーフェンに向かっていた筈……そうだ、確かシェルドハーフェンにたどり着くあたりでノイズ反応があって……僚艦ごと光に飲まれて………
「……ナギ少佐?これは一体…?」
取り敢えず、この場にいるのは私とナギ少佐と……あれは……まさかな?
「私も先程起きたばかりで詳しくは……」
先に起きていた少佐に一応何があったか聞いてみるが、やはり少佐もよく分からないようだ。
しかし、幸運なことに、私は取り敢えず此処がどこなのかを簡単に知ることが出来た、そして気がついたことが一つあった。
「そうか…そうだよな、しかし、取り敢えず一言言わせてくれ………【何故我々はこんなに小さく】…………?」
「え?………あっ!」
少佐もすぐに気がついたが、私と少佐が立っているのは今となっては懐かしき超巨大ドック艦「スギズブラズニル」の埠頭部分にあたる場所なのだ。
戦後、戦中に担った役目のあまりの重大さにより、戦後に再建された国連の管理下となることとなり、祖国ウィルキアの軍籍を離れることになったスギズブラズニル。
あの闘いの最初の頃こそ、【世界でも唯一の超巨大浮きドック付き工作艦】程度の存在であった本艦は、戦中、クーデターによって祖国を奪い取ったかつてのウィルキア国防軍…当時の【ウィルキア帝国軍】と、それらが繰り出した既存の常識を破壊する兵器…超常兵器……【超兵器】と呼ばれたそれらに対抗するために、世界の技術力の全てを集め、保管し、活用する役割を担うこととなり、幾度かの改装を経てその規模を急速に増大させていった。
結果、戦争が終わって暫くに世界各国が多少落ち着きを取り戻してから改めてこの艦を評価してみれば、それこそ「洋上の万能母港」と言われる程になり、アメリカ海軍をして【ハワイ海軍基地とアメリカ海軍の研究機構と工廠が全部まとめてセットになったようなモノ】とまで言わせるほどの存在へと成長を遂げていたのだ。
閑話休題、前述の通りスギズブラズニルはとにもかくにも巨大なのだが、私や少佐のように戦中この船にずっと世話になっている人物はその大きさに慣れてしまっている。
なので艦の埠頭部分の距離感等はよく覚えており、その距離感の記憶と現在の実態とが合わないと思ったのが違和感の始まりだが、そんな事を抜きにしても流石に埠頭に佇む物資輸送、人員短距離移動用トラックを立ったまま見上げる事になれば我々の方が背が縮んでいることを疑わなければならない。
トラック含め、スギズブラズニルその物が巨大化している可能性もあるが、どちらかと言われれば此方が小さくなってることの方が自然に感じたため、取り敢えず背が縮んだと考え、話を進めようと考えた。
「スギズブラズニル……でもいったいどうして私たちだけがここにいるんでしょう?乗っていた筈のシュヴァンブルグは?僚艦含めた他の参加艦艇は?…わからないことが多すぎますね」
「取り敢えずスギズブラズニルの司令船部分に向かえれば状況の掴みようはあるんだが、この体ではな…」
取りあえず、他に何かしらの情報が無いか、あわよくば誰か居ないかを探るため、軍事的な情報が統括されているスギズブラズニル司令船「ヴェルダンディ」に向かいたいのだが、ここでこのスギズブラズニルの大きな欠点が壁になる。
普通の頃でさえ埠頭……正確には現在地であるスギズブラズニル浮きドック船「ウルド」の埠頭部分から指令船の情報保管部分に向かうのにはどうしても手間がかかってしまうのだ。
(と言うかウルドからヴェルダンディ、ひいては開発生産船スクルドに向かうためにはとも言う)
各船から別の船へと向かうには各艦艦尾に備え付けられている大型内火艇停泊スペースから内火艇を用いるか、停泊している自分の艦から内火艇を下ろして行き先艦の艦尾内火艇停泊スペースに向かい、そこから更に艦内の現地に移動する…といった具合に手間をかける必要があり、そのため只徒歩を用いるにはあまりにも時間がかかるので移動には基本相乗りでトラックを用いるのに、トラックと不釣り合いの体格である現状ではトラックを使えない、おまけに体が小さくなっている分徒歩としても普通より時間がかかるのは明白で、挙げ句の果てに、縮んだ体では内火艇を動かすことなど出来るわけでもなく、ともなればこの場から移動する方法を失っているも同然だったのだ。
「取り敢えず、内火艇が使えないと移動もままなりませんしね……せめて一時的にでも元の体格に戻れれば……ん?ヘリコプターの音?」
どうにかならないかと思案にくれる中、少佐が遠くからの音を聞き、そうつぶやく、そして。
「せんぱ~~い!」
「……この声は…ヴェルナー!!」
「提督!あれを!」
懐かしい後輩の声が聞こえたと同時に、少佐の指した方を見ると、輸送ヘリコプターに乗っているヴェルナーの姿が見えた。
しかも、よくよく見ればそのサイズは今の我々に合わせたかのように縮んでいるのが見てとれる。
クラウス・ヴェルナー。
軍大学時代における私の頼れる後輩であり、大戦においては私の副官として大戦に従軍、しかし地中海における作戦の最中、それまでその内面に秘めていたある事実を苦にし拳銃自殺を図り、再起の後は己の成した【罪】と向き合い、最後まで贖罪の道を進むと決め、戦後外交官の道へと進んでいた男である。
ただ、戦後、彼は大戦中の彼とはまた違った方向での葛藤を抱えた帝国軍のとある女性士官と心を通わせ、戦後その道を共にしていたのだが、その女性の姿は見えなかった。
「こちらオーディエンス6、本部聞こえますか?遊撃艦隊司令部は健在、繰り返します、遊撃艦隊司令部は健在………はいそうです、二人とも無事です、これより回収して帰投します」
「機長は海野さんですか、さりげなく彼女とも数年ぶりですね」
「だな、最近すっかり教官が板についてしまったと手紙に書いていたが、お元気そうで何よりだ」
その代わりに、彼が乗るヘリコプターの操縦席にはこれまた懐かしい日本海軍のーーーー今は組織が改名され「海上自衛隊」になっている制服を身に纏った藍色の髪をした女性士官、海野碧海(うみの あおみ)1佐がいた。
海野 碧海、
彼女は元々日本脱出時に近衛海軍共々脱出した多数の日本艦艇のうちの一つ、特務航空母艦「龍飛」に航空隊長として所属していた当時としては非常に珍しい女性パイロットであり、戦争初頭は「龍飛」にて、途中から「龍飛」が解放軍日本艦隊本隊の所管に移ってからは、最後の最後まで、龍飛に変わって解放軍航空部隊の中枢を担った空母「エンタープライズ」の航空偵察、哨戒部隊の隊長として活動していた。
その活躍は本来は複数人どころか10人近くの運用人員が必要な事の多かった数々の哨戒、偵察機体を、スキズブラズニルによる当人監修の改修を経るだけでたった一人で運用してみせ、大戦中解放軍が交戦した潜水艦型超兵器のほぼすべての撃沈に大きく貢献し、他にも【マニューバキル限定で撃墜総数3ケタ】、【自機体単独で超兵器潜水艦撃沈】、【大戦中の被撃墜数3位なのに大した怪我なく全て生還、そしてその被撃墜が全て敵潜水艦による対空攻撃のもの】等々、化け物染みた幾つもの伝説を保持している。
余りに濃い伝説ゆえか、戦後の講和条約締結の交渉において、ウィルキア帝国軍へ大いに協力していた日本への各国からの賠償請求の実質的取り下げの条件の一つとして、彼女を航空教官として世界各地に派遣し、対潜作戦、航空偵察のノウハウの伝授することを要求されると言うエピソードを残している。
そんな具合で戦中戦後を通して不動の対潜水艦最強パイロットとして君臨しており、また大戦中呼ばれ始めた遊撃艦隊における4大パイロット、「4翼」の一人に
数えられている。
んで、そんなわけで現在も教えを乞いたい各国のパイロット達の争奪戦が続き、未だに教官として世界中に引っ張りだこの彼女なのだが、本人は教官職を辞めて前線に戻りたがっており、しかし祖国への賠償請求を盾に取られてはそれも叶わず、今回の観艦式でも戦友と会えることを除いて不満たらたらで参加する羽目になっていたのだ。
ただ、彼女の同行する艦隊は舞鶴方面から北上する形でシェルドハーフェンに向かうルートでやって来る予定だったため、数日前からシェルドハーフェンに先行していたヴェルナーやシュヴァンブルグ港から現地に赴いた我々とは別の所にいたはずなのだが………
「シュルツ提督、仰りたいことはこちらもよーく把握しています、先に結論だけ述べれば、あの時シェルドハーフェンに向かっていた観艦式参加予定艦は
「なんだって!?」
「詳しくはヴェルナー外務次官が説明なされるそうです、説明が長くなりますので、ご婦人共々お早めにご搭乗願います。」
「……了解した」
「艦長………」
「………本当に文字通り全てあの光に飲み込まれてしまったんだな……」
「はい、私の乗っていた【フンディン】もそうですが、最後まで現場に残っていた碧海一佐の報告が正しければ、あの光はシェルドハーフェン近海一帯を完全に飲み込み、先王陛下を乗せていた第一近衛艦隊旗艦【イダヴァル】や、このスキズブラズニルに近衛艦隊傘下の後継艦【ナグルファル】、各国からやって来ていた【新世代艦艇】の数々に【国連海軍総旗艦】以下国連海軍のほぼ全艦艇、更にはかつての【第零遊撃艦隊所属全艦艇】……これら全てが艦長と同様に光に飲み込まれしまい、現状そのほとんどが行方不明のままになっています」
「…やはり、イダヴァルや各国艦艇に乗っていたかつての先王陛下含めた各国首脳部のお歴々の方々もか?」
「……意外な事にそちらは問題ありませんでした、先王陛下以下各国の元首脳部の方々は我々と同様にスキズブラズニル艦内各所に散らばって無事が確認されており、我々同様に会議室へと集合を開始しています、しかしながらイダヴァル以下各国のお歴々が本来乗っていた艦艇……カナダ海軍戦艦【トロント】を初めとしたかつての遊撃艦隊所属艦艇を含む…それらの艦は依然として行方不明のままで、捜索をしようにも乗っていた人員は皆一様にして艦長や私と同じく小型化していて艦内での移動すら難儀する有り様で、おまけに現状がまだ掴めないことから、一部を除いて殆んど動けずにいるのが現状です。」
その後、埠頭に降り立ったヘリコプターに乗った私を歓迎してくれたヴェルナーから聞かされた話は衝撃的と言う次元を遥かに越えてしまっていた。
そしてそんな衝撃は機長の碧海一佐の補足によって、私どころかヴェルナーですら驚くものへと変貌していく。
「……ヴェルナー外務次官、お話中に申し訳ありません、私は本来、ガルトナー元帥閣下らに報告する際に共に報告した方がよかったのでは?と思ったのですが、報告できなかった点がひとつあります」
「報告できなかった点?」
「実はシュルツ提督達を探すために動く前、元帥閣下らにあのときの話を報告する際に私は一つ嘘をついていました…………私は最後に光に飲まれたのでは無いんです、私以外の全てを飲み込み膨張の止まった光を確認したあと【私は自らその光の中へと機を向けて突き進んでいたんです】」
「え?」
「えっ?」
「え……?ちょっと待ってください、それだとしたら光へ突入する前にシェルドハーフェン基地なり何なりに状況を報告することが出来た筈…」
「シェルドハーフェン基地への状況説明は私の頭のなかで勝手に切り捨ててしまっていました、何しろ、突入直前の私は、
「光の先からの通信?」
「はい、何処の物かは解りませんが、何かしらと交戦中と思われる艦隊の艦隊間通信を傍受したものだと考えられる其だったのですが、話に出てきた単語の数々に居てもたっても居られなくなり……ここにその傍受した通信の録音があります、ナギ少佐、申し訳ありませんが機の操作でこちらは手一杯なので、再生の方お願い出来ますか?」
「はいはい、お任せくださいね……っと…これでよし」
そう言って、彼女が片手で機を操作しながら用意したスピーカーと通信機をナギが器用に動かし、目的の録音を再生する。
【…………何だ?何なんだあの巨大艦は!!】
【長門危ない!……きゃあああっ!?】
【陸奥!?】
【陸奥さん!】
【だ…大丈夫よ…ば、爆発なんて……しないんだから! ……もう……】
【陸奥さんが一撃で!?あの戦艦は一体!?】
【長門さん大変です!敵艦がものすごいスピードで接近してきます!】
【何!?】
【ちょっと待って……あのデカイの何でもうこんなにはっきり見えるくらいにまで迫ってるのよ!!さっきまで水平線にぼんやりと見えるくらいだったじゃない!】
【え?……観測員さん、それ本当でありますか?………そんな……長門さん、今こちらの観測機からの目測で敵艦の予測速力が弾き出されたのですが、敵艦は100ノットを優に越えており、推測では140ノット前後だと……】
【140knot!?何かの間違いじゃ無いのか!?】
【で、でももうすぐそこに………………(ザザザッ)】
(録音終了)
「…………アレ、ですね」
「この情報、本当だとして、コレが全速だとすればあの艦以外考えられませんね…」
「しかし、【アレ】は5年ほど前にもう完全に停止した筈……まさか!?」
「そうです、当時の私も今のナギ少佐と同じ事を危惧したため、私はシェルドハーフェン基地に対し、《光の先にノイズ反応あり、ノイズ発生源観測のため、我これより光の中へ突入す》とだけ伝え、私も光の中へ入っていきました」
「成る程……【アレ】が何かしらの形で再び…ともなれば…ではありますね」
「……それよりも機長、その話が本当ならば事態は一刻を争うと言うことに?」
「いえ、もうすでに対処のための手は打ち終えています、スキズブラズニルがここから北に200km程の海域にノイズ反応とそれに紛れた6隻編成の小規模艦隊の反応と、【もう一つの反応】を発見し、1時間ほど前ガルトナー閣下の命令の下、航空隊が現地へと向かいました」
「流石に早いですね、その様子なら取り敢えずは大丈夫そうなので?」
「【アレ】を確実に撃破するためにブラズニルに持ち込まれて一緒に縮小されていた独軍の最新鋭機に乗って【爆撃王】の部隊が嬉々として突っ込んで行きましたからねぇ、アレだったら合掌もの、違ったとしても【爆撃王】の事ですから……」
「ああ、成る程……」
「【爆撃王】さん、もう出撃されていたんですか……さすがとしか……」
一連の録音を聞いてのやり取りから4翼の一人が最新鋭機で出撃した事と、彼女が光の中へと向かった原因の解明に目処がつきそうなことと、もう一つについてを悟りつつ、乗っていた機が司令船ヴェルダンディのブリーフィングルーム(艦首にある部屋)の空いている窓から中へと侵入し、ブリーフィングルームの大机に着陸する………
「ふぅ………シュルツ提督、ナギ少佐、二人とも無事で何よりだ、ヴェルナー外務次官殿もわざわざのご足労、ありがたく」
「いえいえ、私はただ単に先輩を迎えに行きたかっただけですので、」
「元帥閣下もご無事で何よりです、ところで先王陛下らがこちらにいるとのお話だったのですが…?」
「ああ、そのことだが、先王陛下以下各国の元首脳部の方々は、小会議室の方が近かったため、そちらの方に集まって、臨時措置として先に方針を立てるための会議を開かれておられる、我々と同様、背が縮んでおられるが、同じ状態でブラズニルに散在していた王室警察の部隊や即席の陸戦部隊が会議室の警護を担当していると言ったところだ。艦内に不審者がいると言う情報はまだ出てないから一先ずはそこで大丈夫だろうと言う結論でね、また、我々の会議の邪魔にならないようにとの特別の御配慮もあってのことでもある。」
ヘリで机の上の所にたどり着いた我々を待っていたのは、大戦時から解放軍の司令官として対帝国戦線の中枢を担い、一貫して我々の上司として戦線を支え続けたアルベルト・ガルトナー元帥閣下であった。
「成る程、了解しました…ところで閣下、現状、我々はいったいどうなっているのでしょうか?」
「…少将達に色々と伝えねばならないことはあるが……ひとまず言わなければならない事としては、我々は再び【漂泊の艦隊】と化してしまったらしい、という事だろう………」
右も左もわからない、そんな状況に
【コラム】シュルツ達の戦った世界における超兵器解説。
その1
【超高速巡洋戦艦 ヴィルベルヴィント】
【解説】
シュルツ達が最初に交戦した超兵器。
ゲームではシリーズ常連かつ序盤ボス故の宿命か【超兵器の中では雑魚】と言ってもいい本艦だが、彼らが交戦した時にはシュルツ達側も殆んど戦力を有しておらず、機関部に大分致命的な損傷を複数抱えた状態ですら90knot以上を維持していたため、後の米軍による解析、復元の過程でその真の実力が判明した際には、米軍どころかその頃にはもう対超兵器戦に慣れっこになっていた第零遊撃艦隊メンバーすら戦慄させた。
前述の通り戦没後に米軍によって引き揚げられ、復元の後、速力を相当犠牲にして武装を大幅に変更した上で【ワールウィンド】として復活、「運用がヘタクソ過ぎたが故に撃沈された」と言われるほど拙い運用をしたウィルキア帝国に代わり、米海軍太平洋艦隊所属として第二の生を謳歌することとなる。
【武装諸元】
36.5センチ3連装砲
15.5センチ連装砲
40mm機銃
53.3cm酸素魚雷
20cm12連装噴進砲
45cm誘導魚雷
装甲:対12cm級前後(沈んだ要因の4割くらい)
速力、90knot前後(解放軍との交戦時)、325knot(解放軍との交戦前の米太平洋艦隊戦時、及び復元後に判明した最大速力、時速換算でおよそ600キロ前後と、戦艦の癖に零戦より速いバケモノ、比較対象が時速610キロ辺りの彩雲になる)
【戦歴解説】
戦争開始直後に【アルケオプテリクス】とプロトタイプ状態で別動隊として参加した【フォーゲル・シュメーラ】と共に太平洋艦隊撃滅兼、ハワイ基地への強襲揚陸を敢行する【デュアルクレイター】の作戦を援護するための陽動役の任を負って出撃。
敵太平洋艦隊の展開するど真ん中を突っ切って、「撃てば当たる」状況下で敵艦を次々に沈めながら敵艦隊を大混乱させて、その状況下でアルケオプテリクスに爆撃させて撃滅する戦法を展開し、史実よりも数年早く艦隊指揮官となっていた史実米海軍指揮官達を軒並み葬るものの、ペラ紙装甲で計150隻を越える米3個艦隊のど真ん中を単独で突っ切る戦法が仇となり、米軍側のがむしゃらな反撃で機関部に損傷を負って速力が低下し、その後米太平洋第二艦隊必死の時間稼ぎも相まって太平洋艦隊の殆んどを殲滅するものの、ただ一隻、空母【エンタープライズ】を取り逃がす事となる。
その後、弾薬を補充し、船体の修理をほぼ完了させたものの、損傷の激しかった機関部は応急措置で90knotは出せるからと本格的修理を行わず、そのまま米国西海岸カリフォルニア基地への攻撃のため、先行した艦隊と合流すべく再出撃。
結果、海域到達前に先行した艦隊が解放軍に殲滅され、ならばと基地攻撃を後回しにして自艦単独で先に解放軍を撃破するべく解放軍との交戦を開始する。
……が、解放軍参謀長、筑波貴繁の策で逃げに徹する解放軍の空母【龍飛】によって米海軍カリフォルニア基地沿岸部に誘導されて沿岸砲台の攻撃を受け、沿岸砲台に目標を切り替えたタイミングで龍飛航空隊の進路先読みによるいわゆる「置き魚雷」が複数被雷して浸水が発生し、更にカリフォルニア基地沿岸砲台の援護射撃が後部艦橋と主砲にラッキーヒットして前部主砲が使用不可能になった上に速力が40knot前後にまで低下。
流石に限界とみて退却しようとするも、機関の応急修理が完了して戦線に復帰した改アイオワ級【ルイジアナ】とシュルツが乗る【ヴィルク第五号巡洋艦 フレイヤ】に退却ルートを先読みされて待ち伏せされ、噴進砲と魚雷による意地の反撃でルイジアナを中破させるも敢闘そこまで、ルイジアナの41cm砲とフレイヤの20.3cm砲、さらに追い付いた龍飛航空隊による総攻撃に遭い、敢えなく轟沈、帝国軍最初の損失超兵器となった。
因みに、当艦戦没時点で当時の帝国では既に本艦の派生型としての「ヴィント」級高速戦艦系列の超兵器が幾つか建造中になっていたのだが、その全てが本艦撃沈に伴い建造優先度が大きく下げられてしまうなど、「ヴィント」の系譜は帝国から冷遇を受けることになるのだが、戦中、解放軍含めた各国海軍全般を最も苦しめる事になった超兵器は、この際に建造優先度を一番大きく下げられ、就役が予定より半年近く先送りになった「ヴィント」の系譜の一隻であったのは皮肉と言う他に無いのだろう。