スオミさんはお困りです   作:Tico Ruzel

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スオミさんが水着でプールバカンス!?
幼女のお守りを命じられた〔指輪の乙女〕たちが
ひととき楽しむ、ゆったりした時間。

恥じらいながらも水着姿を指揮官に披露する、雪の妖精。
だけど、指揮官が「先輩」と交わす通信はどこか不穏な内容で……?

今回はサービス回! サービス回ですからね?


ep.6 スオミさんは慣れない水着姿にお困りです

 歓声と共に水飛沫が舞って、カラフルなボールが宙に上がります。

 普段とはまったく異なる環境に戸惑いながらも、わたしはボールを視覚素子で捉えて予測演算をしました。軌道がこう来るなら、あそこへ落ちるはず……です。

 水をかきわけながら、なんとか受け止めようと急ぎました。

 ですが。思ったよりも水中は動きにくいのか、はたまた躯体の反応が遅いのか。

「……あっ」

 わたしの目の前で、ボールがぼちゃんとプールの水面に落ちました。

「お姉ちゃーん、ちゃんと取ってよぉ」

 〔リトルミス〕があどけなく愛らしい声をあげます。

 わたしは愛想笑いを浮かべてボールを拾うと、ぽんと投げてみせました。

 ボールが大きく宙を飛んで――ちっちゃな女の子の頭上を素通りしていきます。

「お姉ちゃーん、へたっぴぃー」

 今度はさすがに不満そうな〔リトルミス〕。

 失敗した――思わず、ため息が出てしまいます。

 その矢先、ほとんどむき出しの背中を不意につつかれました。

「ひゃうっ!?」

 びくっと躯体が震えて、あわてて振り返ってみると、

「ほーら、そんな顔しないの。せっかくの艶姿が台無しよ」

 案の定、こんな時には保護者になりたがるFALでした。

「せっかく似合ってるんだから、その白ビキニ」

 わたしの胸元をじいっと見ながら、彼女はうなってみせました。

「……やっぱり、あなたって着やせするタイプよね」

「い、いいじゃないですかっ。作られた時からこうなんですから」

 思わずバストを腕で隠して、恨みがましい目になってしまいます。

「わたしなんかより、あなたの方がよほど着やせしてるじゃないですか。なんですかそのわがままボディ。なんですかその派手な水着っ」

 わたしがそう言うと、FALはウィンクしてしなを作ってみせました。

「ふふん、いいでしょ?」

 いくらスタイルがいいといっても、所詮は人形です。作り物です。

 表面の肌は疑似生体、その下は炭素繊維で編まれた灰色の人工筋肉。

 でもそんな事実は、この魅惑的な姿をみればぶっとんじゃいます。

 バストもヒップもふっくらとした、いかにも男好きしそうな身体。その豊満な肢体にまとった、鮮やかな真紅のビキニ。アンダーのサイド部分には大き目のリボンがついていて、いまは水中でゆらゆらと揺れていました。まるで鑑賞魚の優雅なひれのようです。

 ただでさえモデル顔負けの華やかな外見が、魅惑度倍増しになっていました。

 いまの彼女なら、銃なしで一個大隊の男どもをノックアウト確実でしょう。

 私がそんな胡乱なことを考えていると、FALがにこやかに言いました。

「あなたも似合ってるわよ。性格的にワンピースを選ぶと思ったんだけど」

「……胸が上手く収まらなくて……」

 小さな声で答えてみせると、FALはひとしきり嘆息して、

「清楚な顔してるくせに、脱いだらすごいなんて。やっぱりムッツリさん?」

「――あなた、最近、指揮官に毒されてません!?」

 あんまりな評価に、思わずわたしが気色ばんだ時です。

「おーい、二人とも何やってんの? お嬢様がご不満そうよぉ?」

 離れた場所からヴィーフリが声をかけてきます。彼女はといえば、ネイビーブルーの一見おとなしめなワンピースでしたが――どうもジュニアスクールの生徒が着ているものに酷似しているように見えるのは、はたして気のせいでしょうか。

 そして、そのかたわらにいる、むすっとした表情の〔リトルミス〕。

 まだあどけなさの抜けない、ちっちゃくて愛らしい人間の女の子。

 年齢はジュニアスクールにあがるかどうかの、少女というよりも幼女。

 この子のお相手が、本日のわたし達の主要な任務となっていました。

 ええ、そうです。これはわたし達のバカンスじゃありません。

 一種の作戦行動であり、そして接待なのですから。

 そのはずですよね……指揮官?

 

 

 

「ンンン、水着姿の乙女たち! 幼女とキャッキャウフフと戯れる姿! 眩しい水飛沫、天井から燦燦と輝く、人工でも日光! 黄色い嬌声が私を誘ってやまない! そしていまこのプールは乙女だけの園! いけすかないアダムを追放したエデンだネ!」

 熱っぽい口調で口走ってから、指揮官はがくりと首をうなだれた。

「なのに、なんで私は仕事抱えたままなのかなー」

「……その割に状況を満喫されておられるようですが」

 メイドをもって自らの役目と任じるG36があきれた声で言うと、

「フフ、わたしだけ野暮な恰好は失礼だろう?」

 彼女――指揮官はそう答えて、額にあげたサングラスをくいと動かした。

 肉付きの薄いスレンダーな肢体にまとった、きわどいカッティングのハイレグワンピース。プラムパープルを基調とする色合いは、身動きするたびに微妙にグラデーションをさざめかせる。派手といえば、相当に派手で、手の込んだ代物である。

 だが、プールサイドでビーチチェアに寝そべってくつろいでいるわけでなく、場にふさわしい瀟洒なテーブルと椅子を持ってきて、そこで武骨な端末をカタカタと鳴らしているのである。

「ああ……遊びたい……」

 ぼやきを口から洩らす彼女に、G36がすっとグラスを差し出す。

「一息入れられては。リクエスト通り、トロピカル仕様のアイスティーです」

 メイドが差し出した大ぶりなグラスには琥珀色の紅茶がなみなみとは入っており、そこにいくつものフルーツが浮き沈みしている。グラスの縁にはパイナップルが差し込まれ、日光を切り取って飾ったかのような鮮やかさだった。

「へえ。こんなものも作れるとは驚きだネ」

「本日の作戦に指揮官も同行されると聞いたので、ライブラリに追加を――」

 そう答えたG36は、指揮官が熱心な視線を向けているのに気付いた。

「ご主人さま? なにか……?」

「ふむ、なかなかどうして。G36も水着姿が決まっているじゃない」

 にんまり笑んでみせる主に、メイドは微かに頬を染めて身をよじった。

「わ、わたしはいつものメイド姿でまいりますと申し上げましたのに。ご主人様じゃないですか、水着じゃないと参加は認めないとか言っていたのは」

 G36の水着は黒を基調に白いフリルのついたセパレートだった。腰には橙色の長いパレオを巻いてスカートのようにしている。メイドらしい風合いは残しながらも、水際の美女にふさわしい華やかさとなっていた。

 満足気に何度もうなずきながら、指揮官が弾んだ声で言う。

「きみにも、ちょっとリラックスしてほしかったんだよ。部隊のリーダーはスオミで、副隊長はFALだけどサ。影で全体をサポートしているのはきみだからネ。気づかないうちに色々と溜まっているんじゃないかな、と」

 その言葉にG36が額に手を当てて、軽くかぶりを振ってみせる。

「ご主人様は……本当に度し難いですね。メンタルモデルが負荷を感じても、デフラグしてしまえば、さっぱり消えます。メモリに記録として残っても、それが思考に影響するはずが……」

「ない、と思うかい? 私はそうは思わないな」

 座ったままの指揮官が、立って控えるG36に上目遣いで見つめた。

 視覚素子を透かして、認識領域の奥に瞬く思考パルスを読み取るがごとき眼差し。

 興味と知性が光となって煌めく、パープルタイガーアイの瞳。

 彼女の双眸の輝きに、メイドは不意に感情パラメータが跳ねるのを感じた。

「メモリは消えても思考の癖は残る。それが幾重にも重なると、いつしかメンタルモデルに刻まれてしまうものさ。それはきみだけに宿る個性だ。無下に否定しちゃいけない。きみがきみでいる証。他の誰にもけがされない、そう、たとえるなら――」

 熱を帯びて語りだした指揮官だったが、

「――お話し中、すみません。ひと通りの見回り、完了しました」

 不意にかけられた涼やかな声。

 その声の主を認めて、指揮官が破顔してみせた。

「ご苦労さま、コンテンダー。ごめんね、面倒な役まかせちゃってサ」

「とんでもない。『現在行っている仕事に全神経を注ぎなさい。太陽光線も、焦点が合わないと発火させることはできない』ですよ。部隊ではわたしのセンサが一番鋭敏でしょうから、自然な役割分担です……と、ところで」

 そこまで言った麗人の顔に、照れ笑いが浮かぶ。

「あの……指揮官? そんなに視線を上下に往復されるのは、ちょっと」

「ふむ、さすがコンテンダー。自分の資質をよく把握してるネ」

 得心したようにあごをさすりながら、指揮官がにまと微笑んだ。

 コンテンダーが身に着けているのは、ターコイズブルーのホルターネックワンピースだった。ハイレグにカットされていて、しなやかな脚がすらりと伸びている。露出は少ないが、そのぶんしなやかな肢体の輪郭がよく映えて見える。しかし、単純な見た目のよしあしでなく、動きやすさを考えた機能的なものだということが、そのシンプルさから窺い知ることができた。

「は、はは。ありがとうございます。あの、そろそろ見つめるのを止めていただけると」

「いやいや、これはこれはなかなか味わい深い。もうちょいじっくり……」

 浮かれ気味の指揮官に、G36が大きく咳ばらいをしてみせた。

「こほんっ。指揮官? 一応、これ作戦中なのでしょう?」

「そうですよ、あのお嬢様の護衛が任務なんですから」

 二人からたしなめられると、指揮官はむすっと顔をしかめてみせた。

「……いや、完全にバカンスのつもりだったんだけど、議会のエライさんが横やり入れてきてサ。上の方でシャンシャンと話がまとめられて、あの〔リトルミス〕のお守りというか遊び相手というか、ついでに護衛というか……」

 ひとしきりぼやいてから、彼女は肩をすくめてみせた。

 ついでに出た大きなため息は、諦め半分納得半分のようだった。

「まあ、結果的にはよかったかも。遊びってのは誰か誘ってくれる相手がいないと始まらない。きみ達だけでは盛り上がらなかったかも……案外、あのお嬢さんとつきあうのは、スオミにとっても、きみ達にとっても、いい気晴らしになるかもネ」

「……気になさっておられたのですね」

 申し訳なさそうなメイドの声に、主はあっけらかんと答えた。

「きみ達があんな顔で帰ってきたら、そりゃあね」

 そう言うと、指揮官はグラスを手に取り、ストローで一口吸ってから、

「しかし、〔リトルミス〕か。懐かしい響きだな……」

「懐かしい、ですか?」

「なんでもないヨ。さーあ、お仕事お仕事ッ」

 飄々とはぐらかす指揮官に、人形二人はそろって顔を見合わせるのだった。

 

 

 

「……こういうのは苦手ですよ……」

 プールの端に腰かけながら、スオミはぼやいた。

 水中から出てビキニ姿をあらわにするのがなんだかはばかられて、FALが持ってきたヨットパーカーを借りて羽織っていた。白い薄地のヨットパーカーは少女の躯体には少し大きいようで、袖が余ってぶかぶかしている。裾が長めになって腰あたりも隠せるのはありがたかったが。

「ヴィーフリったら、あんなになつかれてるなんて……」

 スオミは悔しそうにつぶやいた。

 視線の先、ヴィーフリと〔リトルミス〕が黄色い声をあげながら賑やかしくしている。護衛、もとい遊び相手をまかされた人間の女の子。メンタルモデルの年齢が近いのか、あるいは意外と面倒見がいいのか、ヴィーフリは上手く話題をあわせて、お嬢様を楽しませているようだった。

 自分の本来の任務はこんなところではないはずだ。

 鉄血と銃弾を撃ち合う、鋼色と灰色の戦場。そこがいるべき場所ではないか。

 そんな思いと同時に、「どんなことでも任務はこなすべきでは」とも思う。

 つまるところ、自分は生真面目すぎるのだろう……

 スオミは、いまの状況にしっくりこない原因に思い至ってしまい、顔をうつむけた。

 ――あの地下の暗闇で遭遇した異形の敵、ワイルドハント。

 ちょっとしたためらいを衝かれて、データリンクを強いられたことが、少女の思考回路に暗い影を落としていた。自分の中の大事なメモリに土足で踏み込まれ、大切な人への想いを覗き見られてしまったのだ。

 そして、スオミのメモリを覗き込んだ骸の主は、こう告げた。

『キミの想い人が消えたら、キミはどうするのか』

 あのざらざらした哄笑が、いまだに聴覚素子の奥に残っているようだ。

 本当ならこんな不用心な場所で、このような浮かれた姿をして幼女と戯れてなどいたくない。安全な基地にあって、愛用の銃を携えながら、指揮官のそばに張り付いていたい。仲間たちは「あまり気にしない方がいい」と言ってくれたが――ワイルドハントが少女の深奥を覗き込んだとき、少女もまた骸の主の心の闇を垣間見たのだ。

 灼けるような妬みと羨望。そして、荒野に吹く風塵のような寂しさ。

 ワイルドハントはとても飢えていて、それが満たされるならどんなことでもやりかねない危うさを感じさせた。あの時の言葉は単なる捨て台詞ではない。あちらからの断固たる襲撃宣言だ。そのことは指揮官にもさんざん訴えた。

 なのに――あの人は。

 少女はプールを挟んだ向こう側にいる彼女に、目をやった。

 指揮官はかなり気合の入った水着をお召しだが、椅子に座って、テーブルに置いた端末を前になにやら忙しいそうだった。いまはどうやら通信中らしいのだが、普通に声を出している様子なのに、会話がまったく聞こえてこないのはどういうことか。

 それに、いま目にしている指揮官は、普段とは少し違って見える。

 つかみどころがなくて、へらへらした態度。それがいつもの彼女だ。

 それが、いまは普段の軽やかさが少しぎこちなく、どこかこわばった顔に見えた。

 見慣れない彼女の表情は、見ている少女の感情パラメータもざわめかせた。

(……あの人も、あんな顔をするんですね……)

 少女はプールに下ろしていた脚を上げると、膝を抱いて身体を丸めた。

 立てた膝に顔を半ばうずめ、話し込んでいる指揮官をじっと見つめる。

 そんな益体もないことを始めて、どれだけぼうっとしていたのか――

「――お姉ちゃん! ねえ、スオミさん!」

 幼い声がそばで響き、少女は思わずびくりと躯体を震わせた。

 いつのまにか思考回路がアイドリングになっていたらしい。

 あわててセンサを認識領域に戻して顔を向けると、〔リトルミス〕がすぐそばまでやってきていた。チェリーピンクの可愛らしい水着を身に着けた、まだまだ幼い女の子。スオミをじっと見ている彼女の両手には、コーンに盛られたアイスクリームが握られていた。

「あのね、コンテンダーさんがアイス持ってきてくれたの。そしたら、ヴィーフリちゃんがね、スオミさんへもっていってあげたら、って――はい、どうぞ!」

 満面の笑みで差し出されたアイス。

 スオミは愛想笑いを浮かべながら、受け取った。

「あの――ありがとうございます」

「いしし。どういたしまして」

 幼女は照れ笑いを浮かべてみせたが。

 しかし、ヴィーフリたちのもとへは戻らず、なぜかスオミの隣に腰をおろした。

「え、あの……?」

「あなたとおはなししたいのっ」

 無邪気に幼女はそう言った。スオミが戸惑って向こうをみると、クーラーボックスの傍らに立つコンテンダーとヴィーフリがこちらに向けて、苦笑いを浮かべているように見えた。コンテンダーは親指を立ててうなずき、ヴィーフリは軽く目配せしてみせる。

 途方に暮れたスオミが、自身のかたわらへ視線を戻すと、

「えへへ……おいしいね」

 アイスにかぶりつきながら、喜色満面の幼女。

 スオミは軽くため息をついた。どうやら相手にしなくてはいけないらしい。

 この子を見ていると、感情パラメータがふわふわ変動して落ち着かない。

 だが、難敵相手に理由なく逃げ出したことがないのは、スオミの矜持だった。

「お話、ってなにをですか?」

 城門の守りを固めつつ、おずおずと発したスオミの問いに。

「うん、あのね。お姉ちゃんってすきなひといるの? いるよね?」

 いきなり城門を破城槌でノックされたかのような言葉。

 質問ではなく、あからさまな確認に、

「な、ななななな……」

 スオミは自分の顔が赤くなるのを感じていた。熱を帯びた疑似生体を冷やそうと循環液の放散が始まりかけ、ほんのりと頭から湯気が立つ。

 いけない、いつもの悪い癖が。

 少女はあわててぶんぶんと頭を振って空冷させると、

「えっと――ど、どうしてそんなこと聞くんですか?」

 精一杯の作り笑いで返してみせた。

 それに対して幼女は満面に笑みを浮かべて、

「だって、さっきからあそこのひとをずっとみてるんだもん!」

 幼女が指さした先。

 きわどい水着姿の少女の主が、端然と座している姿があった。

「は、はわわわわ……」

 ノックどころではない。ものの二撃めで城門が破られた。

 スオミの感情パラメータが仔鹿のように跳ねまわり、たちまち頬は朱にそまった。

 ぼしゅっとかすかな音がして、少女の頭から湯気が立ち昇る。

 手にまで伝わった熱が、受け取ったアイスクリームをとろとろと溶かしていく。

「あ、あ、あのですね、違うんです、そんなんじゃないですよ。あの人はわたし達の上官なのに、いつもちゃらんぽらんなので、仕事してるか見張って――」

「ひはは、うっそだぁ!」

 必死の弁解は、幼女のこともなげな言葉で完璧に迎撃された。

「だって、あなたのめ、パパがママをみるときのめにすっごくにてるもん!」

 迎撃されたどころでなく、追い打ちとまでに城内に大砲が撃ち込まれる。

 ぐぬぬとスオミは口を曲げたが――ここは作戦を変えるべきだろう。

 軽く咳払いして、表情を整えると、〔リトルミス〕に訊ねた。

「お父様とお母様、仲がよろしいんですね」

 さりげなく向けた言葉のつもりだったのだが、

「うん……」

 スオミの発した問いに、幼女はしょんぼりとしてしまった。

「え、あ、あの? 違いましたか? す、すみませ――」

「ううん、そうじゃないの」

 幼女はふるふるとかぶりを振ってみせる。

「ママ、いつもあたしにやさしいけど、なんだか、ちょっとズレてるの。パパのおはなしだと、ちょっとびょうきなんだって。『二人でママを元気にしような』ってパパのくちぐせなの。ときどき、ママはおにわのベンチにすわって、となりをさすりながらないてるの。そのときのパパのめが――とてもやさしくて、ちょっとくるしいような……うん、そう」

 幼女がこくんとうなずいて、言った。

「あなたが、あのひとをみるときのめが、パパにそっくりなの」

 言われて、スオミは虚を衝かれた思いだった。

 話を聞く限り、完全に幸せな家庭とは言えないらしい。

 ただ、母親に対する、〔リトルミス〕と、父親の愛情は深く伝わってくるようだった。

 しかし、自分も同じように、指揮官を見ているのだろうか?

 あの、困らせてばかりの、迷惑しか知らない人に?

 そこまで考えて、スオミの思考パルスが不意に駆け抜けた。

 もしも――あの道化師めいた行動に、裏付けがあるとしたら。

 自分をはじめ人形たちに、いつもちょっかいを出すのに動機があるとしたら。

「……あの人は……かまってほしいんでしょうか」

 そうつぶやいた時、スオミの認識領域に、不意にあるイメージが浮かんだ。

 床に座り込み、顔を手で覆って泣きじゃくる、小さな小さな女の子。

(――いまのは?)

 はっと気づいた矢先には、イメージはたちまち消え失せていた。

 ただの想像? それにしては、あまりにも……

「――お姉ちゃんのみずぎ、とってもかわいいいよね!」

 不意に〔リトルミス〕からそんな言葉がかけられる。

 物思いに沈んでいた少女は、またも奇襲をうけて面食らった。

 アイスクリームを持っていた手が思わず傾く。

 放熱でだいぶゆるくなっていたアイスが、ぽたぽたとプールサイドに落ちた。

「あ、は、はい……ありがとうございます」

「まっしろなビキニって、お姉さんすごくにあってる!」

 幼女が屈託のない笑みで称賛する。

 なんだか気恥ずかしくて、スオミは体を小さくして、パーカーの裾を手でつまんだ。

 ぐい、と少し引っ張って、隠そうとする。

 その様子に、〔リトルミス〕が、むうと顔をしかめてみせる。

「だめだよ、もったいないよ! おんなのこの〔かわいい〕はつよいんだから!」

 謎理屈だが、その言葉は強烈な圧だった。

「それに、きになるひとに、ちゃんとみずぎをみせていないでしょ?」

 今度は思わぬ伏兵。スオミの城砦はもう陥落間近だった。

「うぐ……そ、そうですけど……」

 少女は言葉に詰まった。更衣室では部隊の皆に見られたものの、そこまで気にはならかなったのだ。水着もあくまで機能性重視、色もカラフルよりはホワイトがなんとなく好みにあったまで。

 だが――指揮官の姿を視界に認めた途端、なんだか気恥ずかしくなった。

 ビキニなんて、自分の肢体を見せつけるようではないか。

 純白だなんて、いかにも指揮官が好みそうではないか。

 そして、ふと気づいてガラスにかすかに映った自分の身体は――

 清楚で真面目というには、ちょっと艶めきすぎるように見えた。

 だから、なるべくあの人から距離を取って、見られないようにした。

 何を言われるか、怖かったから。何を言われても、恥ずかしいから。

 人形が恥ずかしいなんて、本当にどうかしているとは思っていても。

「~~~~ッ」

 スオミはもごもごしながら、顔を真っ赤にしていた。

 頭から湯気が立ち昇りっぱなしだ。

 これは躯体の欠陥ではなかろうかというぐらいに。

 その時、パーカーの袖がくいと引っ張られた。

 小さな手で袖をつかんだ〔リトルミス〕が、にぱっと笑う。

「みせてあげたら? よろこぶとおもうなあ」

 幼女の提案に、少女はしばしためらい。

 ややあって、自分の胸に手を当てると、大きく息をついた。

 もやもやするのなら、いっそ思い切った方がいいのかもしれない。

「……うん、そうですね。ありがとう……あの人に見せてきます」

 スオミは〔リトルミス〕に微笑み、すっと立ち上がった。

 その拍子に、すっかり忘れていたアイスがぼたっと、

「あ、おちちゃった……」

「わわわ、ごめんなさい! せっかく持ってきてもらったのに」

「いいのいいの。スオミお姉ちゃんって」

 幼女がこましゃくれた笑みを満面に浮かべた。

「アイスをわすれるぐらい、あのひとのことがすきなんだね!」

 少女は顔を真っ赤に染めて――幼女に白旗をあげたのだった。

 

 

 

 少し時間はさかのぼって。

 スオミが悶々としながら、プールの向い側からこちらを窺っていたとき。

 指揮官はといえば、端末に指を踊らせつつ、時折わしゃわしゃと白っぽい癖毛を指でかき回していた。人形たちが見れば、いつになく真面目な様子に驚いただろう。それが気づかれないのは、普段の行いと、いま着ているきわどい水着のせいだったが。

 不意に、端末で電子音が鳴った。奏でる旋律はショパンの〔子猫のワルツ〕である。

 指揮官が応答のボタンを押すと、端末のモニタに、一人の女性の姿が映った。

 薄い赤銅色の髪、不健康に白い肌、隈のできた目。

 そして頭に謎のケモミミ。何かを警戒するかのようにぴこぴこ動いている。

 指揮官が手を振ってにぱっと笑ってみせると、その女性は不機嫌きわまる声で、

「――回線、切るわ」

 その言葉に指揮官は、笑顔半分困り顔半分で表情をひきつらせた。

「だーっ、ペルシカ先輩! それはつれない! だいたい、通信入れてきた方が回線つないだ瞬間に切っちゃうなんてちょっとありえないですよッ」

「わたし、あなたの先輩じゃないわ。アカデミーでも繋がりないでしょう」

 むすっとした声で、ペルシカ博士――16LABが誇る奇才は続けた。

「わざわざヘリアンから丁寧にことづてされたら、よりによって貴女の持ち込みネタだなんて。とりあえず解析だけはしてあげて、午前中ずっと、話した方がいいかメール撃ち込んで済ますか、悩みに悩んで。お昼に猫ちゃんに相談したら『にゃあ』と上機嫌だったから、猫に免じて話してやるかと思ったら」

 ペルシカの頭のケモミミがぴくぴくっと震えた。

「通話相手がキレッキレの派手な水着姿で、どう見てもプールサイドにいるなんて。予想の斜め上すぎて頭が痛くなるじゃない。どこのブランドよ、そのアブナイの」

「かの有名な〔ハニー・アンド・ディア〕ですが」

「……それアパレルじゃないわ。アダルト系のショップブランドじゃない」

「ふむ、そんなに目の毒なら、音声オンリーにしますか?」

「ダメ。貴女と話すときは表情をモニタしておかないと。そのペルソナから、平気で人をだまくらかす言葉が出るんだから」

 そう言うと、ペルシカは手元に置いていたマグカップに口を付けた。

 一口すすると、ほうと息をつき、表情を改める。

「言うだけ言ったら落ち着いた。それより、そこで話して大丈夫なの?」

「秘匿性なら問題なく。このプール、夜は紳士淑女の社交場になっていて、プールサイドはスポットごとに遮音フィールドを張れるんです。ちょっと大きな声であえいでも平気な仕様でして」

 指揮官がちろっと舌を出して笑んでみせると、ペルシカのケモミミがしょげた。

「……実地で経験済みってわけか。相手はまた可愛い女の子?」

「とても愛らしい声で啼く、しなやかな身体つきの子猫ちゃんでした」

「猫に例えないで。次やったら貴女の端末に蹂躙型ウイルスぶちこむわ」

「はいはい」

「――じゃあ、本題に入りましょうか。ええ、さっさと済ませましょう」

「どうぞ」

 指揮官もまた表情を改める。紫の瞳に真剣な光が宿っていた。

「といっても、あなたが後から送ってきた〔二つめの資料映像〕と〔あくまでも個人的見解〕ってやつの添削だけどね――あなたの人形たちが見たっていう、悪趣味なオブジェだけど」

 ペルシカがすっと目を細める。

「つくりは粗雑だけど、人形のメンタルモデルのインストールシステムだと思う」

「あー、やっぱりそうですか」

「ほら、なにが〔個人的見解〕よ。自分でわかっているんじゃない」

「いやあ……先輩なら、別の可能性を見つけてくれるかと」

「ご期待にそえず、おあいにくさま。つけくわえるなら、コレ」

 じっとりした目つきのまま、彼女のケモミミがぴんと立った。

「どこかの誰かさんがアカデミーの夏休みにこっそりこしらえて、界隈で問題になったやつにとっても構造が似ているんだけど、どう思う?」

 質問の姿を借りた、詰問。

 指揮官が顔を手で覆って、軽くうめいた。

「ああ、先輩もご存じでしたか。そっかー、やっぱりそっかー」

「そっち界隈じゃ『スラノーヴァヤ・コーシチのアカデミーにヤバイやつがいる』って有名だったもの。てっきりIOPに来て研究所入りするんだと思っていたら、よりによってグリフィンの現場指揮官とか。研究所のどの部門に入るのかってオッズまで出ていたのに、とんでもない予想外で大負けしたヤツが多かったわ、あの時は」

 ペルシカの言葉に、にっと指揮官は笑ってみせた。

「で、先輩はその勝負で大勝ちしたわけですネ」

「ええ。貴女の熱意がどこから来るのか、ちょっと古いニュースを漁れば容易にわかるじゃないの。フィールドワーク――いえ、〔実地実験〕がやりかったんでしょう?」

 指揮官がすっと目を細める。

 それまでのどこかおどけた調子が消え失せ、平板な声で言う。

「さすが先輩、ご慧眼ですね。そこまで分かっていて止めなかったんですか」

 画面の向こうでペルシカが肩をすくめた。ケモミミがぴくぴくと揺れる。

「ほーら、その顔よ。貴女の正体はそれ。『人間なんてだーれも信じてやしない』っていう、ただの駄々っ子。いまだにちゃんとした〔人間の友人〕なんて一人もいないんでしょう?」

「仕事の同僚ならいますが」

 さらっと答えた指揮官に、ペルシカはふんと鼻を鳴らした。

「職場仲間は所詮、仕事のつきあいよ。会社を離れたら関係なんて切れるわ。そうじゃなくて、貴女がどこに行ってどんな目に遭っても、手助けしてくれたり話に乗ってくれる友人がいるのかって言ってるの。いないんでしょ? 作りなさい。貴女が本格的にダメになる前に」

「ははっ」

 紫の瞳がきらりと光る。一瞬、照明を反射したのか。

 それとも、かすかに涙で潤んだのか。

「いまさら、できるわけありませんヨ。それにわたしには可愛いあの子たちがいます」

「人形は人間関係の代わりになんてならないわ。現に――」

「――なりますッ……私は知ってるんだっ」

 指揮官の声は、小さく、低かったが、明らかに怒気を含んでいる。

 そんな彼女を見るペルシカのまなざしは、どこか冷ややかだった。

「ほら、本音が出た。結局、貴女はあの日の証明がしたいだけなのよ」

「私の人生をどう使おうと私の勝手です」

「そんな言葉、あんたの記憶の中の〔彼女〕が聞いたら悲しむと思うわよ」

 ペルシカがさらっと言うと、指揮官はがくっと顔をうつむけた。

 小さな声でぶつぶつとつぶやく様子に、モニタ越しの博士がため息をつく。

「言い過ぎた。悪かったわ」

「先輩はすぐそうやって私をいじめる……」

「貴女の弱点に詳しいだけ。それより話題を変えたいけどいい?」

 ペルシカがコンソールに指を踊らせると、ある画像がモニタの一画に表示された。

 継ぎはぎだらけの顔。つなぎ合わされた異形の躯体。

 ワイルドハント――そう名乗る〔敵〕。

「コンテンダーだっけ、その子が引いた〔レギオン〕の例えはいい線行ってると思う。貴女の薫陶のおかげ?」

「どうでしょうね。彼女との普段の会話は、ちょっと意識して話していたのは確かですが」

「たいしたものね」

「おほめに預かりまして」

「ほめてない、あきれているの――まあ、聖書の〔レギオン〕は群れとなって蠢く悪霊だけど、あながち間違いでないと思う。ワイルドハントと名乗ったやつは、自分の躯体はあるけど、それはあくまでもマニュピレーターやスピーカーでしかない。たぶん、これの本体は有象無象のダイナゲートの群れにあまねく遍在しているんだと思う」

 ペルシカの見立てに、指揮官がこめかみを指で押さえた。

「なるほど――じゃあ、完全に駆除するには、ヤツが潜んでいるダイナゲートを一網打尽にするしかないわけか……」

「そう、そして一匹でも残っている限りは、時間をかけて再生する。ただ……」

「なんです?」

 目をぱちくりさせる指揮官に、ペルシカは指摘してみせた。

「……ワイルドハントがやっていたことって、たぶん他の人形のメンタルモデルの強奪だと思うのよ。でも、別人格を自分の中に取り込むって、どう考えてもまともじゃない。こいつが何を目的としているか分からないけど、たぶん普通の人形ならあと三体ほど。特別な人形なら――そうね、まるっと一体ぶん取り込めば、自我を保てなくて、ほどなく自壊するんじゃない?」

「……なにが言いたいんですか」

「簡単な話よ。ワイルドハントはスオミにご執心なんでしょう? 彼女をいったん引き渡して食べさせれば、勝手に滅ぶわ。あとはバックアップからスオミを復元すれば一件落着よ」

 それを聞いた指揮官が目をつり上げた。

 拳が白くなるほど固く握りしめ、震える声を抑えながら言う。

「先輩……いくらなんでも言っていいことと悪いことがありますよッ」

「まともな価値判断ならそれが合理的っていう、一般論よ。命を失ってもバックアップからメモリとパーソナリティを復元すれば蘇る。それが人形だもの。命の替えがいくらでも効くのが、いまの社会で人形がここまで普及した理由。でしょう?」

「――――ッ」

「まあ、貴女にはできない相談よね。メモリとか、パーソナリティの雛形とか、そういうところを見ているわけじゃないだろうし……でもね」

 ペルシカはモニタ越しに指揮官をじっと見つめて、言った。

「それならなおのこと、貴女はIOPの研究所に入るべきだった。そうしたら、こんな厄介な亡霊なんかに手を焼かなくて済んだのよ」

「亡霊……ですか」

「ええ。気づいているんでしょう? 貴女の夏休みの工作を真似っこして、貴女があの時ためらってやらなかったことを平気でやってみせて、貴女が手塩にかけている人形に執着するなんて――どこからどうみても、過去の貴女がどこかで落とした種が、いまになってグロテスクに花開いたようにしか見えないじゃないの」

 指揮官は何も答えない。ただ、白い顔で口を一文字にぎゅっと結んでいた。

「まあ、専門家と〔一応先輩〕の意見はここまで――ところで聞き損ねたけど、なんでまたプールなんかにいるわけ?」

 ペルシカがケモミミをひょこひょこ動かしながら訊ねる。

 指揮官はひとつ大きなため息をつくと、答えた。

「議会でIOPの代理人になっている有力な議員さんがいるでしょう? その娘さんのお守り役と護衛役をねじ込まれたんですよ。もともとうちの休暇で使うつもりが、俺の娘にも使わせろーって。あとは基地司令なんぞの及ばぬところでまとまって、休暇がとんだ接待になっている次第で」

「ふうん……議員さんの娘さん、ね。うーん……」

「どうしました?」

「ああ、なんでもない……なんかラボで聞いた話がひっかかって。なんだったかしらアレ」

「補助金とか、予算取りがどうのじゃないんですか」

「……そうかも。議員の娘さんへの贈り物とかの話だったような……」

 言いながら首をかしげるペルシカに、指揮官はにやっと笑ってみせた。

「――なんだ、IOPの研究所だって、割と世知辛いじゃないですか」

「当の子守りになってる貴女に言われたくないわ……それより、用心なさい」

 モニタの向こうで、ケモミミがぴんと立ってみせる。

「ワイルドハントがダイナゲートに遍在してるなら、同水準のドローンならクラッキングも容易でしょうよ。思いもしない形で、貴女たちに危害がおよぶかも――それじゃね」

 最後にぴょこっとケモミミを立てて、ペルシカの姿はモニタから消えた。

 指揮官はどこか胡乱な視線で、そのまあモニタをみつめていたが――

「……あれかな。『蒔いた種はいずれ刈り取らねば』ってやつなのか」

 自嘲気味の声でひとりごちた。

 その時である。

 指揮官の視界の端に、白いパーカーと、むっちりした少女の脚が見えたのは。

 

 

 

「あの……おじゃまではなかったですか?」

 左手でパーカーの裾を引っ張りつつ、右手は胸元に当てながら。

 スオミはおそるおそるといった感じで声をかけた。

 唐突な訪問を予期してなかったのか、指揮官は目をぱちくりさせていたが、

「――いや、大丈夫。ちょうどいま終わったところだから」

 そう言うと、少女に向かってにこやかに微笑んでみせた。

「それで? いったいどうしたのサ?」

「……いえ、お仕事忙しいようなら、お手伝いしようかと思ったんですけど、終わったらもういいですよね。うん、はい、それでは――」

 愛想笑いを浮かべながらきびすを返して少女が立ち去ろうとした時、

「ちょい待ち、スオミちゃん!」

 指揮官がひょいと手を伸ばして、指でパーカーをつまんだ。

「ひゃあ!? 何するんですか!? めくらないでください!」

「いや、その気はないけど、めくってほしかったの?」

「ちがいますっ! なんなんですか、もう!」

「ああ、いや。せっかく来たんだから、別の任務をと思って」

 任務、という言葉を聞いて、スオミがハッと表情を改める。

「――なんでしょうか? なにか〔リトルミス〕に危険でも……」

「ああ、うん、まずそこのビーチチェアに腰かけて」

「はい」

「そうそう、それでこっち向いて」

「……はい?」

「うんうん、それでにっこり笑って~」

「なんですか? なんなんですか!?」

 スオミは別の意味で頬が真っ赤になっていた。

「ああ、ほらまた湯気が立っちゃうよ――えっと、さ」

 指揮官が少しはにかみながら、言った。

「仕事かたづいたし、潤いの時間としておしゃべりとかどうかな――」

 それを聞いた少女の目つきが剣呑なものになる。

「……わたし、指揮官との会話って、おちょくられてるメモリしかないんですけど」

「えーっ、そんなことないよ? 楽しい会話もいっぱいしたよ?」

「……そうですか?」

「あ。さてはまるっとアーカイブ層に放り込んでるな、きみ」

 指揮官の指摘に、スオミはぷうと頬をふくらませた。

「こうでもしないと整理がつかないんです。指揮官はちょっかいばかり出すし、恥ずかしいことしか言わないんですから。放置しておくとメモリの中がぐちゃぐちゃになって、メンタルモデルがおかしくなりそうなんですよ」

「……それっていつからなの?」

 急に振られた質問に、少女は眉をひそめた。

「ええと――半年ぐらい前からでしょうか。感情パラメータが落ち着かないと思ったら、メモリが思考パルスに干渉していて、なにかトラブルになってる感じでしたから――ややこしそうなのは全部アーカイブ層に入れたんです」

 そこまで言って、少女の目つきがまた剣呑になる。

「ただ、最近デフラグ中にアーカイブ層のメモリがあぶくみたいに浮かんでくることがあって、ちょっと困ってるんですよ。過去の恥ずかしいことが、認識領域へ不意に出てきて、すごく面食らうんですから」

「……それはそれは。嬉しいような、申し訳ないような」

「喜んでどうするんですかっ、わたしは困ってるんです」

「そっかー。じゃあ、スオミにひとつ教えておこう」

 指揮官はスオミをじっと見つめた。煌めくパープルタイガーアイの瞳が、スオミの視覚素子を透かして、思考回路に直接呼びかけるようだった。

「もし、きみが本当に困ったとき――誰かにきみの命や尊厳をおびやかされそうなときは、アーカイブに溜まってるメモリを全部解放しなさい。わたしとのキャッキャウフフな記憶が、勇気と奇蹟を授けてくれると思うよ……って、なんだい! その疑わしげな目は?」

 はたして少女は上目遣いのまま、自分の主をにらみつけていた。

「……鉄血との戦闘中で、いきなりこんな羞恥満載のメモリで認識領域をぱんぱんにしたら、呆けている隙にたやすく撃ち殺されるじゃないですか……」

「ンンン、そうかな? 想いは力になるものだよ?」

「指揮官を呪いながら銃を撃ちまくりそうなんですけど」

「はは、それはそれで頼もしそうだネ」

 そこまで指揮官は言うと、すっと目を細めて少女のパーカー姿を眺めた。

「それより、ほんとは別の用があったんじゃない?」

 にんまりした笑みに、スオミはたちまち頬を染めた。

「な、ななな……どうしてわかるんですか?」

「はははー。そりゃ長いつきあいだもの」

「くぅ……」

 スオミは悔しそうな呻きを漏らすと、恥じらい気味にささやいた。

「えっと――水着姿、ちゃんと見せてなかったな、と思ってですね」

「ああ、うん、そだね。スオミちゃん、明らかに恥ずかしがっていたから、あんまりじろじろ見ない方がいいかなと思って……」

「なんでこういう時は気づかいするんですかッ」

「いや、視界の端でちらちらと盗み見てはいたヨ?」

「結局見てるんじゃないですか!」

「でも、近くでちゃんと見たいのは、もちろんある」

 ふわっと優しく微笑んでみせる指揮官。

 少女はうつむくと、立ち上がり――ぷいと彼女に背を向けた。

「え、なんでそっち向くのサ」

「目の前でパーカー脱ぐとか、恥ずかしいじゃないですか……」

「いや、結局見てもらうために脱ぐのに?」

「ジッパーとかに目線が留まりそうで恥ずかしいんですっ」

 スオミは声をあげると、そっとパーカーを脱ぎ始めた。

 

 白い薄手の布地がふわっと空気をはらみ、徐々に少女の肢体をあらわにする。首で結ぶタイプのトップのため、背中はほぼ開いている。なめらかな白皙の肌が、しっとりと水分を含んで艶めかしく光る。ふぁさと下がった羽衣のようなパーカーを、床に落ちないように少女がそっとビーチチェアに置いた。少し突き出す形になったヒップは、大地の恵みを存分に受けた桃のような、柔らかでみずみずしい張りをしている。そして、そこから伸びた脚はすらりと伸びつつも、ふわふわした感触を思わせる豊かな肉づきで、精悍さを芯に蠱惑の色合いが包んでいるようだった。

 そして、ややためらいがちに、少女が向き直る。

 決して高いとはいえない背丈。すらりとしているというには、全体的に豊満さの方が目立つだろうか。体の輪郭はゆるやかに弧を描いて、頭の先から足の先まで丸みがつきることはない。ふかふかとやわらかそうな、あるいはむっちりと張りのありそうな肢体は、白皙の肌でなめらかに覆われている。しかし、磁器人形のような冷たさはない。丸みを帯びた身体はあるいは光に反射し、あるいは影を作り、それが多様な肌色を生み出すかのように見えて、艶めかしい輝きをしている。

 羞恥で頬を軽く染めて、少女は少し顔をそむけていた。

 左腕はだらんとさげて、それを右手でつかんでいる。ちょうど右腕がバストを隠すような形になっていたが、少女の腕ではその豊かな双丘を隠すことはかなわず、むしろ腕に圧迫されて胸の谷間が強調されていた。

 それを見た指揮官は――見入られたように、スオミから目を離そうとしない。

 一言も発さずに、スオミの肢体を隅から隅まで何度も視線でなぞっていく。舐めるようにじっとりとしたものでなく、むしろ奇蹟の出来栄えの雪像を溶かすまいとするように、傷つけないように羽毛でそっと撫でるかのごとく、柔らかく優しいまなざしだった。

 

 どのくらい、そうしていたのか。

 時間が止まったかのような空気を先に破ったのは、少女の方だった。

「あの……どこか、変でしょうか?」

 おずおずと発せられた言葉に、指揮官がハッとした顔で目をぱちぱちさせ、

「あ、いや、ごめん……つい、見入っちゃった。ありがとう」

 感謝の言葉を聞いて、少女は大きく息をつき、ビーチチェアに座り込んだ。

「もう……そんなに楽しかったですか?」

 恨みがましそうな声だったが、当の指揮官は熱心にうなずき、

「うん、楽しかった。いや、飽きなかった。見ていて本当に綺麗だと感じたし、可愛いと思ったし――こう言うとなんだけど、自分の身体の貧相を思い知らされたようで。正直、羨ましかったし、ちょっと妬ましくさえある」

 指揮官は、紫の瞳を煌めかせながら、言った。

「だからさ、こんな麗しいスタイルの女の子が、それに似合うようなオシャレをしたら、どんな服がいいかなとかちょっと考えて……思わずときめいちゃった」

 少女に向かって、彼女は莞爾として笑ってみせた。

 その言葉を聞いて、少女が小首をかしげてみせる。

「あの――それ、何かのお誘いですか? もしかして」

「うん。今度、街へ服を見に行こうか。スオミに合いそうなのを探そうよ」

「……その水着みたいな、きわどいのじゃないでしょうね……」

「ははは、お望みならそういうお店でもイイけど」

「よくありません! ちゃんとしたショップにしてくださいっ」

「冗談だよ、冗談。そうだな、セオリーから行くと――」

 いつのまにか自然に話し合う二人を、ほのかに甘やかな空気が包んでいた。

 

 

 

「ねえコンテンダ―? あれは何なのかしらねえ?」

 会話が弾む様子の二人を見ながら、FALが棘を含んだ声で言った。

「なんですかねえ。『愛されるだけでは物足りない。愛の言葉もかけてほしい。静寂の世界は、お墓の中で十分に味わえるのだから』というところでしょうか」

「……いや、愛の言葉がほしいのは、わたし達だって同じでしょうよ」

「ええ、もちろん。おじゃまでなければ、いますぐスオミの隣に立ちたいです」

 コンテンダーが腰に手を当てながら、眼光を鋭く光らせる。

 その傍らで、目つきを険しくしてるのはG36である。

 険のあるまなざしは遠視ゆえに見づらい、というだけではないだろう。

「なんというか――あの二人の周囲に花園が見えるようです」

 メイドはどこか憮然とした声である。FALが唇の片端で笑ってみせた。

「愛の証明の薔薇かしら。麗しの祝福の百合かしら」

「恋を囁くチューリップかもしれません。赤かピンクあたりの」

 メイドはそう言うと、周囲を見回した。

「ヴィーフリはどうしました? あんな雰囲気には真っ先に噛みつきそうですが」

「あっちよ。〔リトルミス〕と遊んでるわ」

 FALが手で示してみせると、プールの中でキャッキャと遊ぶ幼い姿があった。

「お嬢様の相手をして気を紛らわせてるみたい。その証拠にほら……」

「……ときどきスオミと指揮官をちら見してますね」

 G36が目をぱちくりさせると、FALがため息をついた。

「まあ、あのヴィーフリでさえ割って入るのがためらわれる空気だもの。わたし達なら、それはもう気遣っちゃって、二の足踏んじゃうわよねえ」

 そう言って肩をすくめるFALに、コンテンダーが言った。

「『自分を元気づける一番良い方法は、誰か他の人を元気づけてあげることだ』ですか? たしかに、この部隊――いや、この仲間の重い空気を軽くするなら、まずスオミの不安をぬぐってあげないといけませんから」

 麗人がすっと目を細めて笑うと、FALもG36もうなずいた。

 地の底で遭遇したワイルドハント。

 あれにメモリを覗かれたスオミは、かなりメンタルモデルが不安定になっていた。「いったんIOPに送ってメモリのエラーチェックをした方が」とはカリーナの提案であったが――それを不機嫌な一瞥で即座に却下したのは、あの指揮官なのだ。

 代わりにセッティングしたのが、このプールバカンス。

 結果としてバカンスではなく接待になってしまったが、あれだけ幼い少女の相手なら、普段ない刺激だけにポジティブな影響を与えているのは、人形たちも認めざるを得ないところだった。

「あの人も本当に変わってるわよね。人形に、こんな手間暇かけるなんて」

「まったく。ご主人様のお気遣いは嬉しいのですが、戸惑うことも多いです」

「たまにフォーラムで他の基地の人形と交流しますが、たいてい驚かれますよ」

 コンテンダーの言葉に、FALがウィンクしてみせる。

「それ、驚かれたあとのオチが読めたわ」

「おや、おわかりになりますか」

「ええ、『あなたの基地の指揮官ってバカなの?』でしょ」

 FALの回答にコンテンダーは答えない。

 ただ、ふっと口元で笑んでみせただけだった。

 そこへ、あの聞きなれた飄々とした声がかけられた。

「おーい、みんな。ちょっとおいで!」

 指揮官が手を振って呼んでいる。

「そろそろお昼時だ、なにかデリバリー頼もう!」

 スオミもこちらを向いて、軽く手を振っている。

「デリバリー!? アタシ、ボルシチ! それにピロシキ!」

 ヴィーフリが声をあげて、〔リトルミス〕の手を引きながら、泳いでくる。

 FALたちも顔を見合わせ、くすりと笑んで、指揮官のもとへ一歩踏み出す。

 その時だった。

 施錠されているプールの扉に、何かが衝突する音が響いたのは。

 

 

 

「各員武装! FALとコンテンダーは〔表口〕警戒! G36は〔裏口〕へ! ヴィーフリはお嬢様を連れてプールからあがったら遊撃配置! スオミ、お嬢様を守れ!」

 指揮官の指示が矢継ぎ早に飛ぶ。

「頼むよ! 私の可愛いきみ達!」

 コンテンダーが大振りのボストンバックを開けて、次々と仲間に銃を手渡していった。

 十秒もかからずに各自が配置につく。

 おびえた様子の〔リトルミス〕を守るようにスオミが身を寄せ、指揮官が携帯してきた拳銃を構えながら、幼女をそっと片腕で軽く抱く。

「心配ないですよ、お嬢様。わたしの自慢の乙女たちが守ってくれます」

 指揮官がそうささやいた矢先。扉の錠が破られ、襲撃者が姿を現した。

「へっ!? ちょっと、なによアレ!」

 ヴィーフリが素頓狂な声をあげる。

 侵入してきたのは、警備人形でもダイナゲートでもない。

 街中や施設ではめずらしくもない、清掃用の自律ドローンだ。

 それが数体、爆走しながらなだれこんできた。

 全速力で走行しながら、〔リトルミス〕を狙って突進する。

「このォ! 止まりなさい!」

 FALが銃を撃つが、ドローンは穴だらけになりながらも止まらない。

 シンプルな構造ゆえに頑丈なのだ。

 と、FALが仕損じたドローンが急に迷走するや、横転した。

 拳銃から硝煙をただよわせたコンテンダーが叫ぶ。

「車輪です! 車輪を撃って転ばせて!」

「心得た!」

 うなずいてFALが狙い撃って、ドローンを次々転ばせていく。

 悲鳴のようなスリップ音を立てながら、あるものは壁に激突して火花を散らせ、またあるものはプールへ突っ込んで、溺れもがくような異音を立てる。

 その阿鼻叫喚に、〔リトルミス〕が小さく悲鳴をあげた。

 指揮官が彼女をくるむように、ぎゅっと抱きしめる。

「こちらからも来てます。ヴィーフリ、援護を!」

 G36が鋭く叫びながら、小気味良い射撃音をさせて、裏口から侵入してくる新たなドローンを撃退していく。その彼女の隣にヴィーフリが躍り出て、

「ホラホラ、突っ込んでくるだけなの!?」

 短機関銃の斉射で、しぶとく走っているドローンの車輪を次々粉みじんに変えていく。

 スオミはといえば、油断なく銃を構えながら、周囲の状況を見守っていた。

 普段の戦闘なら少女が先陣を駆けるところだが、いまはそうでもない。

 仲間たちの迎撃に任せて、〔リトルミス〕と指揮官を守る。

 迎撃の網を抜けたドローンがもしいれば――そのときこそ、少女の出番だ。

 短機関銃の制圧力で押しとどめ、最悪、戦術反応回路を使って、身を挺して二人をかばう。人形なら、腕がもげるとか脚がつぶれる程度は、パーツ交換で直せる。

 だが、生身の人間が同じ目にあえば、確実に命の危機だ。

 いくつも響いていた銃声は、やがて頻度が少なくなった。

 プールサイドがあっという間にジャンク置き場になった有様を見回しながら、

「終わった……かしら?」

 FALがひとりごちた矢先、頭上から異音がした。

 天井の照明を突き破って、清掃用ドローンが数体落下してきた。

「くっ――また上からとは芸がないこと!」

 G36がいまいましげに叫びながら、しかし、回避行動をとる。

 ダイナゲートならいざ知らず、清掃用ドローンは大きすぎ、重すぎる。

 撃ったところで落下軌道を変えようもない。

 人形たちがあわてて逃げ出す中、スオミは目にした。

 落下中のドローンで、一番〔リトルミス〕と指揮官に近い機体。

 そいつが、なにかの発射筒を二人へ狙って向けるのを。

「――あぶない!」

 スオミが叫ぶ。

 指揮官も気づいて、〔リトルミス〕をかばって抱きすくめる。

 考えるまでもない――戦術反応回路、オン。

 瞬間的な高機動を手に入れた少女が、一気に駆けて、二人の盾となった。

 そして、立ちはだかるスオミに向かって放たれたのは――

「ぶはっ――ちょ……なんですかコレ!」

 白く濁った、ぬるぬるした水。ほんのりと漂うフローラルな香り。

 そして舞い上がる、無数のシャボン玉。

 全身に洗浄液をかけられて、スオミはびっしょりぬるぬるになってしまった。

「ぷ、ぷはははは!」

 その様子を目の当たりにして、ヴィーフリが笑い出すや、

「くくく、ちょっとぉ、台無し!」

「ふふ。汚れを落とす手間が省けますね」

「ははは、まあ実弾じゃなくてよかったですよ」

 他の面々も笑い出した。

 泣き出しそうな顔で、スオミが指揮官を見ると。

 彼女は満足げな顔で親指を立てて、

「ナイスぬるぬる、いただきました!」

 まったくフォローになっていなかった。

 少女が目を潤ませながら座り込んでしまった途端、あどけない声がかけられた。

「お姉ちゃん、ありがとう。あたしをまもってくれたのね!」

 〔リトルミス〕が顔いっぱいに笑みを浮かべてみせる。

 そのあまりに無垢な表情に、スオミが照れ笑いで答えようとした時。

「だからね、お姉ちゃん……」

 その言葉と共に〔リトルミス〕の顔が、悪夢のようにぐにゃりと歪んだ。

 

『……この想い人を失ったら、キミはどうするのかなァ……』

 

 地下の闇で聞いたざらざらした声が、幼女の口から発せられた。

 その目から、耳から、青黒いどろりとした液体がこぼれると共に。

 少女の眼前で。抱きすくめた指揮官の細い腕の中で。

 〔リトルミス〕は、はじけるように「炸裂」した。

 

 

 

 ……その時のことは。

 感情パラメータがひどく波打ってしまって。

 メモリの整理が、正直よくできていません。

 なんとかおぼえていることは三つだけ。

 

「スオミ、近寄っちゃいけないッ……“Stay Down.”」

 指揮官が強制認識ワードを使ってまで、わたしを止めたこと。

 なにかの毒物であることはまちがいありませんでした。

 液体をあびた箇所から、指揮官の白い肌に何かが浮かんでいきます。

 六角形の網の目のような模様は、彼女を捉えた蜘蛛の巣のようで。

 まるで、あの人の命まで絡めとってしまうように思えました。

 

「なによ、この子! 人間じゃないわ! 人形じゃないのよ!」

 惨劇の現場に近寄ってきたときに、FALが叫んだ言葉。

 わたしは動転して、ちらりとしか見れなかったのですけれど。

 それまで活き活きと話して、屈託なく笑っていた幼女の頭蓋は――

 ――まぎれもなく、金属の光沢でした。

 

 そして、どのタイミングで聞いたんでしょうか。

 指揮官が息も絶え絶えに出した指示は、明確に覚えてます。

 あの人が強制認識ワードを使ったからでしょうけれど。

「“Memory Order.” ヘリアンさんに連絡……『薬物はIbn-G。スラノーヴァヤ・コーシチの医療カルテRR4434番――あとは任せます』と……あと……〔交換日記〕のアドレス88番……どうしてもダメなら、それを……」

 そこまで言って、あの人はぐったりして、一言も発しなくなりました。

 

 ――ええ。ごめんなさい。

 あの時おぼえてるのは、ここまでなんです。

 人形なのに、おかしいですよね。

 でも、あとから仲間に聞いた話だと――この時のわたしは……

 ……半狂乱で、泣きじゃくっていたそうなんです。

 

 

〔つづく〕 

 

〔つづく〕 




【次回予告】

ワイルドハントの罠に斃れた指揮官。
生死の境をさまよう彼女を案じるスオミさん。
駆け付けたヘリアンから語られる、指揮官の過去。

そして、指揮官がスオミに託したメッセージ。
「どうして……どうしてあなたは、困らせてばかりなんですかッ」
涙を浮かべた妖精の決意とは?

戦う妖精スオミさんの細腕奮戦記、次回は明日0時に公開予定です。
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