東方世変物語 〜lay one's own path for the future〜 作:凱奏
交差し相殺する殺気、段々と薄暗くなっていくその周辺、太陽の光は雲に隠れて届かない。
腰が曲がり杖をついてなお威圧感を纏う老人の妖怪に対し、
その背後に、
少しばかりかかった前髪のその隙間から冷徹な眼光を覗かせ、己の背丈より少し大きな漆黒の槍を携える鴉天狗。
そいつの纏う気配には、一切の隙が存在しない。
「見てる限り、貴様はあの道場らしき場所にいたじゃろうが。まずは儂の問いに答えろ天魔。」
老人らしい所々掠れた声で、その老人妖怪は天魔に背を向けながら問いかける。
「さあ?自分の見たもの全てが真実とは限らないんだよ、鉄鼠。」
「相変わらず生意気よのう、小娘。」
空気はまさしく一触即発、片方が少しでも戦闘体制を構えた瞬間、頂上は一瞬にして戦場へと成り変わる。
「で、もう一人は何処にいる?」
「ーーー何じゃと?」
老人の妖怪、、鉄鼠の眉がピクリと動く。
「しらばっくれても無駄だよ。どう考えても、今回の騒動をお前一人で起こせるわけないでしょ?」
「・・・つくづく、癪に触る小娘じゃのう。」
ーーー瞬間、鉄鼠の周りに大小様々な複数の弾幕が生成される。
弾幕は標準を定めた瞬間、一斉に放たれた。
「ったく、黙ってても
弾幕が迫るや否や、天魔は巧みに槍を操りその全てを叩き落とす。
風を切り裂く音、弾幕が地面に落ちる衝撃音が、連続して鳴り響く。
迎撃しきったその瞬間、すかさず天魔は反撃に出る。
体制を低くし、前屈みで地を走り鉄鼠の背中に急接近する。
「・・・フン、丸分かりじゃ。」
鉄鼠は不敵な笑みを浮かべながら、地面に強く杖を突いた。
瞬間、天魔の走行する先の地面に、少し亀裂が入る。
「ーーーチッ、、」
それに反応した天魔は、進行方向とは真逆の方向へ強く蹴り、その地面から離れる。
「ーーフン、まさかそんな単調なことで回避が出来るとな?随分と侮辱してくれるッ!!」
その直後、地面の亀裂から一気に裂ける、、、
「作動『震爆』!!」
瞬間、大地を捲り上げる大爆発が起きる。
まるで土は雪崩のように、木の枝は刃物のように、天魔へと襲い掛かる。
「ーーーこの威力は、!?」
数秒すら経たずに、爆発の粉塵は天魔の身体に覆い被さった、、、
「・・・くッ、それが道場にいたお前の正体か、、。」
鉄鼠から見て右後ろに、何事もなかったかのような天魔の姿が。
粉塵が覆い被さった場所には、特に誰の姿もない。
「何、単なる残像だよ。ただ、かなりの時間はその場に残せるけどね。」
「フン、だが分かってしまえば大したことはない。次で潰すだけじゃからな。」
眉間に皺を寄せて、鉄鼠はそう言い放つ。
が、、
「え?そんなこと言ってる場合かい?」
その直後、鉄鼠の脇腹に強い蹴りが入る。
「ーーーが、ぐはッッ!!!」
「続けてもう一発ッ!!!」
右足で飛び蹴りをした体勢から、天魔は右回りに身体を捻って、鉄鼠の頬にもう一撃左足で叩き込む。
「ーーーガッ、、!!!」
二発打撃を叩き込まれた鉄鼠は、体勢を崩して地面を転がるように吹っ飛んだ。
六回転ほど転がった鉄鼠は、声にならない呻き声を上げながら、ゆっくりと杖を使って立ち上がる。
「改めて質問するけど、中々の妖力を持つ妖怪が、二人揃って何の用だい?」
「ーーーク、クク、二人揃って、じゃと?あんな小僧はただの駒にしか過ぎんわい。
その時、一際邪悪な笑いを漏らした。
「ちょいと褒美をちらつかせるだけで、言った通りに行動をしよる。全く便利な駒じゃのう。」
体勢を立て直して、再び鉄鼠は杖を突く。
天魔の眼光が、更に鋭くその姿を捉えた。
「儂の能力で見たところ、貴様を潰せばもう征服は同然。天魔、貴様に同情はない。大人しく息の根を止めてくれようッ!!」
そう言い放った瞬間、鉄鼠の妖力が一気に増大していく。
その直後、大量の弾幕が鉄鼠の周りに現れる。
次々に現れる、邪悪な弾幕。数、大きさ、妖怪の中では共に一線級。
「残酷に逝けッ!天魔ァ!!!」
次の瞬間、構えられていた弾幕が、一斉に一点目掛けて放たれた、、!!!
「思い上がっていたのは、お前だよ鉄鼠。」
その弾幕は、漆黒の槍の一払いによって全て散った。
「ーーーなッ!?」
間髪入れず、天魔の槍は秒毎に妖気を増していく。
一秒、二秒、、時間が経つたびに上がる出力、少しずつ乱れる空気。
最早先程までの原型が無い、まるで別物の槍。
「私の"必殺技"は、誰一人として見た事が無い。存在を知りもしない。」
更に数秒、天魔の周りに強風が巻き起こる。
森はざわめき出し、頂上に少しばかりの光が刺す。
「理由は至極単純。名前の通り、"必殺"だから。」
瞬間、左足を地面を軽く抉る程度に踏み込む。
漆黒の槍の先を、強風に耐える鉄鼠へ標準を定める。
「ぐ、!わ、儂を殺すか!?ま、待て、儂にはまだ財産がある!それをやろう!儂を殺せば全て消えるぞ!!」
「そんな物要らないよ。私が欲しいのは、山の平和だけさ。」
直後、更に強く黒き妖気を纏う。
風も更に強化さて、軽い木ならば根本から抉り倒れていく。
「その為に、悪いけど鉄鼠、お前はここで始末する。」
「くッ!!よせッ!やめろォォォォ!!!」
漆黒の妖気を纏う槍、その圧倒的な出力を叩き出す必殺の一撃は、最大火力で放たれる、、!!
「必殺『天上射抜く魔天の槍』」
突き出された其の一撃は、老人の姿を消し飛ばし、轟音と共に天すらも突き抜けた、、、
そろそろスペルカードみたいな必殺技名でも考え始めようかな、と思って出来たのが天魔の必殺技。
・・・どう?意外とカッコよくない?
次回が後日談なんで、細かな詳細は次回にします。