ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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処女作です!よろしくお願いしま~す。


はじまりの物語
恐ろしいおじさんに助けられた!


―西流魂街(るこんがい)一地区 潤林安(じゅんりんあん)

流魂街の中で最も治安のいいと言われている地区で彼はいたって普通の生活を送っていた。

 

口囃子隼人(こばやしはやと)

 

四尺とちょっとほどの身長の小さな子どもの霊体であった彼は周りの自分よりも成長している人間の形をした霊体たちと集団生活を送っていた。

現世でいう「家族」のような彼らが営む雑貨屋は、流魂街の住民だけではなく、死神にも評判だとか。

その商売で得た利益は店の経営の他はある一つのことに使われていた。

その原因は隼人と他の霊体たちを決定的に区別することであった。

 

 

「お腹すいた…。」

 

 

隼人には霊力がある。

そのために他の者には必要のない食料が必要であり、流魂街の者たちにとって食料は買うとなればべらぼうに高い環が必要であった。

 

働き手の彼らに霊力を持つものは誰もいなかったので、お腹が空くという概念は周りの霊たちには存在しない。

そのため食料はすべて隼人に与えられ、不足することはなかったが、いつまでも『大人』たちを頼りにするのも申し訳ないように隼人は思った。

 

 

そこで隼人は、『大人』たちには内緒で、自ら木の実や山菜を採りに行くようになった。

最初は治安のいい地区で採っていたが数の多い地区の方が危険だが多く採れるという噂を聞いた。

『六十四地区 錆面(さびつら)』など治安の良くない地区にも行ったが奇跡的に虚に追われることもなく切り抜けてきた。

だから今回も大丈夫。

そう思い、再び『錆面』で食料探しの探検に今日もこっそりと出掛けた。

 

 

 

「今日は何の木の実を採って帰ろうかな~」

 

 

 

などと独りで喋るくらい呑気でいた。というより一人で森の中を探検していて楽しんでいた。

こんなところを家族たちに見られたら大目玉をくらうだろう。だって治安悪いし。

 

自分たちの住む地区『潤林安』は地区の数字が『一』であり、最も治安がいい。

そのため家族たちは小さい自分が地区の外に出ることすら許さなかった。

 

 

 

「街の外に出たら虚に襲われるぞ!」「こわぁーいこわぁーい怪獣に食われちまうぞー!」

 

 

 

とかなり誇張気味に言われたため、あまり隼人は信じていなかった。つーか怪獣ってどうよ。

 

自分の分の食料にかける環を減らせばもっと商売が捗るのにと思い、負担を減らしたいという思いもあった。

 

あとは、いつまでも子ども扱いしてくる家族を見返してやりたいという思いもあるにはあった。

ただ甘やかされる子どもではもういたくないし。褒められたいし。

 

だからこそ今日もそれなりの数の山菜、木の実を採って帰るつもりだったのだ。

だが今回は予想外の事態が起きてしまった。

浮かれ気分で森を歩いている最中に。

 

 

巨大虚(ヒュージ・ホロウ)と遭遇してしまった。

 

 

「うっううううう嘘だろーーーーー!!!!!!」

 

呑気に山菜採りしてたら巨大虚とばったり遭遇☆シャレにならねえ。

森の中なのに蟹の形をした巨大虚の不気味さも相まって非常に恐ろしい生物に見えた。

 

しかも、『新たな獲物を見つけてやったぜ!』というような顔をしてこちらに近づいてくるではないか!全然怪獣なんて生易しいものじゃないじゃん!

 

こうなったらもうとにかく逃げるしかないのだ。決して速いとはいえない足を必死に動かして逃げる、逃げる、逃げるっ!!

だが事はそう上手くはいかないものであった。

 

 

「わぶっ!!」

 

 

よりによって地表に出た大木の根に足を引っかけて転んでしまったのだ。何てベタな。

そして起き上がり後ろを見ると目の前に巨大虚がすでに追いついていた。足が竦み立ち上がれず、後ろ手に這うような形で距離を取ろうとするも、すぐに背中に木の幹が当たり、動けなくなってしまった。よくある絶体絶命の構図である。

 

 

「(あぁ…僕はここで死んじゃうのかな…。ちゃんと言いつけ守ればよかったよ…。)」

 

 

などと後悔してももうどうしようもないのだ。

蟹のような巨大虚は鋏を尖らせ、隼人を突き刺そうとしたその時。

巨大虚は急に地面が揺れるほどの雄叫びを上げた後に。

 

 

 

 

目の前に現れた死神によって蟹の鋏は細い糸のようなもので切られ、巨大虚は爆発していなくなった。

 

 

 

 

―――数分前―――

 

流魂街治安維持活動(という名目の単なる見回り)をしていた三名の死神が虚の気配を感じ討伐に向かっている最中であった。

 

 

「西流魂街ではあまり巨大虚は出ないと聞いているが…。」

「意外と大捕り物かもしれないぞ。久々に腕が鳴るわ。」

 

 

『六車九番隊』と背中に大きく書かれた特攻服を着た九番隊第四席・衛島忍(えいしましのぶ)と第三席・笠城平蔵(かさきへいぞう)が口々に話す中、

 

 

「お前ら!油断はするなよ。いくら虚とはいえ巨大なヤツが何体もいたらメンドくせぇからな。」

 

 

と九番隊隊長・六車拳西(むぐるまけんせい)が二人の気を引き締めていた。

 

そんな中、衛島は1つのとりとめのない疑問をぶつけた。

 

「しかし久南(くな)副隊長はなぜ今日は来なかったのでしょうか。」

(アイツ)ならほっとけ。今頃おはぎでも食いに行ってんだろ。ったく任務を放り出しやがって…!」

 

と、青筋をビキビキと立てながら苛立ちの表情を浮かべる拳西を見た衛島は、苦笑いをするしかなかった。

 

実際に現場にたどり着くと、巨大虚ではあったものの、1体であり、本来なら始解を使わずとも造作のない程度であった。

が。

 

巨大虚の眼前には今にも殺されそうな少年が怯えて座り込んでいた。

 

 

「あのガキっ…!」

 

 

瞬時に部下二人に指示を出した。

 

 

「笠城は左脚、衛島は右脚を斬って注意を逸らせ!」

「はっ!」

 

 

二人の斬撃は見事に命中し、脚を奪ったものの、巨大虚は雄叫びをあげ、暴れだした。

だが、その雄叫びを聞いた少年はあまりの恐怖で完全にに体が硬直してしまっていた。

 

あまりにも情けない少年の姿を見た拳西は始解をしてすぐに決着をつけ、少年を安心させることにした。

 

 

「吹っ飛ばせ、断風!」

 

 

拳西の始解である『断風(たちかぜ)』――風を糸状にして飛ばし、斬った太刀筋を炸裂させる能力――

が生み出した風の糸は巨大虚に巻き付くと同時に炸裂し、爆発四散した。

 

 

「お前ら!無事か!」

「はい!」

 

 

部下二名とも無傷であることを確認した後、拳西は少年に向けて言葉をかけた。

 

 

「おらぼうず!何固まってんだ!」

「へっ…?僕…助かったの…?」

「そうだ!生きてんだ!嬉しいだろ!」

 

 

といい、未だ怯えが残る少年の腕を引っ張り、無理やり立たせ、「笑え!」と言った。

上手く立てない少年の様子を見た衛島は

 

 

「隊長…さすがに無茶では…。」

 

 

と軽く呆れるがそんなこと知るか。

拳西は(かなりいい加減な方法で)少年を元気づけようとしていた。

 

だが実際動けないほど怯えていた少年は気を取り直し、普通に言葉を発するくらいはできるようになっていた。

 

 

「あの…。ありがとうございます。」

「礼言うくらいならとっとと俺が腕掴まなくてもテメェの足で立てるようになれ。」

「うっ…。はい…。」

「名前は何てんだ?あ?」

 

 

口囃子(こばやし)隼人(はやと)です…。」

 

 

「隼人か!虚如きに怯えるような腑抜けたヤツの名前じゃねえな!いい加減元気出せ!!」

「はっ…!はい…!!!」

 

 

拳西と少年が会話をする中で笠城が心に浮かべた疑問を少年に問いかけた。

 

 

「しかしなぜ治安の良くない地区の森に一人でいたのだ?」

 

 

事情を聞くと、流魂街一地区『潤林安』に住んでいること、家族に内緒で山菜や木の実を採りに来ていたら虚に遭遇したこと、逃げている途中に転び動けなくなったこと、などが少年のまだたどたどしい言葉からざっくりとわかった。

 

 

「一人で木の実採りに危険な地区へ遠足ってか。甘ったれかと思ったら十分肝据わってるじゃねえか。」

「いやそういう問題ですか隊長...。」

「へっ…!?あ、ありがとうございます…!」

「だから礼言うくらいなら早くテメェの足で立てっつってんだろうが…!」

「隊長!落ち着いてください…!」

 

 

正直虚よりも恐ろしいですよ…。とは口が裂けても部下二人は言えなかった。

 

 

「この辺りに虚は今んとこいねぇはずだ。暗くなる前にとっとと帰れよ。」

「えっ…あ、はい!!」

「お前らもそろそろ引き上げるぞ!」

「はっ!」

 

 

威勢の良い部下の返事とともにその場を引き上げようとしたその時。

 

 

「待って!!」

 

 

という声とともにさっきの少年がふらつきながらも小走りで追いかけてきた。

 

 

 

死神という存在は聞いたことがあったが、実際に見るのは初めてであった。

流魂街の住民の間ではあまり死神にいい印象を持たない者が多い。隼人自身も悪い印象こそ無いものの、いい印象も持っておらず、正直な話あまり関わりを持とうとは思わなかった。

 

だが今日目の前に現れた死神はまるで物語に出てくるかっこいい主人公(ヒーロー)のようであった。

 

自分を助け、虚を倒してくれた。かなりぶっきらぼうではあるものの自分を気にかけ、元気を出すよう声をかけてくれた。肝が据わってると褒めてくれた。

 

 

強烈に憧れた。

 

 

死神になりたい。尸魂界を護りたい。それも彼らと共に。

衝動的に強い思いが全身を駆け巡った後、隼人はおぼつかない足取りで動き始めていた。

 

 

「待って!!」

 

 

振り返った3人の死神は少し驚いたような顔でこちらを見ていた。

彼らの前に追い付いた後、考えるよりも先に言葉が出ていた。

 

 

「僕を死神にしてください!!!」

 

 

死神として一人前になった隼人がこの頃の自分に言葉をかけるとしたら、何て陳腐でベタな言葉だとでも言うだろう。だがそれでも言葉は洪水のように溢れ出てきた。

 

 

「霊力があるから虚に襲われるんですよね!?僕周りの人から聞きました!それに流魂街から瀞霊廷(せいれいてい)に来て死神になった人もいるとも聞きました!だったら僕も死神になりたいです!さっきみたいに虚を倒して尸魂界(ソウル・ソサエティ)を護りたいです!だから僕を死神にして下さい!」

 

 

その後も一心不乱に死神になりたいと懇願し続けた。正直彼らを困らせているかもとは思った。現にスキンヘッドの死神は険しい顔をしており、茶髪で長髪の死神も複雑そうな表情を浮かべていた。

 

しかし真ん中の銀髪の死神だけは表情を変えずに聞いていた。

 

最終的に隼人はただのお願いします連呼マシーンと化しており、表情を変えなかった銀髪の死神を怒らせるのも時間の問題だった。

 

 

「うるせぇっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

さすがに状況を把握した隼人は一旦落ち着き、ぺこぺこ上下していた頭をあげた。

すると目の前には、

 

 

 

真顔でいたはずの銀髪の死神が額、こめかみにビキビキと青筋を浮かべ、あの世のものとすら思えないほど凶悪な顔をしていた。

 

 

 

ぶっちゃけさっきの虚の数百倍怖かった。

 

でも諦めるわけにはいかず、その凶悪な顔と向き合った。

 

 

「お前…本気か。」

「本気です!!」

「本気で死神になりたいのか。」

「本気の本気の本気です!!おじさんたちみたいにみたいに強くなりたいです!」

「おじさんじゃねぇ!!!!!六車拳西(むぐるまけんせい)だ!!!!!」

「ひっ!!ごめんなさい!!」

 

 

必死に謝る隼人を見て他の死神は「おじさんって…!」と言いながら思わず吹き出してしまっていた。きっと後でブッ飛ばされるだろう。

より一層苛立ちを浮かべた表情をほんの一瞬見せたが、何とか抑えた後、

 

 

「お前が腑抜けたガキじゃねぇのはわかってる。こんな危険な場所に山菜採りに一人で出向くくらいだからな。だから本気で死神になるならついてこい。」

「えっいいんですか!?」

「立派な死神になりてえんだろ?だったら来い。」

「うん!!」

 

 

この一連のやりとりを見た部下二名は

 

 

「(えっ隊長子育て出来るの!?)」

「(こりゃあ平子隊長や京楽隊長にイジられるだろうな~…)」

 

 

などと各々考えていたが、さすがに確認はとらずにはいられなかった。

 

 

「隊長…いいんですか?流魂街の子ども一人を引き取るなんて。貴族の方々から批判が来たりするかもしれないですし…。」

「そんなもん勝手に言わせとけ。こんな小さなうちから霊力(チカラ)があるって自覚してるヤツは少ねぇしよ。ひょっとしたらコイツすげえ強くなるんじゃねえか?」

「はぁ…。」

「決まりだな。ついてこい。だが来るからには泣いて逃げ出したりするんじゃねえぞ。」

「はい!!!頑張ります!!!」

「それとさっき吹き出したお前ら二人は覚えとけよ…!」

「ひっ…!!わかりました…。」

 

 

 

 

そして、二名の部下が少し怯えた表情をしている中、口囃子隼人は死神の世界―瀞霊廷(せいれいてい)―に足を踏み入れることとなった。

 

 

 

 

九番隊隊長・六車拳西と出会ったこの日から、彼の物語は始まる。




自己満ssになりそうですが頑張って続けたいと思います。

ハーメルン意外と使い方難しい...。
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