次に向かった先では、朽木兄妹が砂像を作っているところだった。
「六車隊長!お疲れ様です!」
「おーお疲れ。って何作ってんだ?」
「うさぎのチャッピーです!それはそれはとても可愛く・・・。」
だが、砂を扱うことがあまり得意ではないのか、全体の形がいびつであり、耳もぐちゃっとしており生気のないうさぎが出来上がっている。
それでもルキアは、自分の作品に対して誇りと愛着を持っており、自信を持っているようだった。
「六車隊長!どうでしょうか!?」
「そうだな・・・。とりあえずお前の兄が作ったヤツを見てみたらどうだ。」
「兄様のを・・・?」
自分の作品に集中していたため周りを全く見ていなかったが、改めて白哉の作っている作品を見てみる。
白哉は、これまた大層立派なわかめ大使の砂像を作っていた。
全体のバランス、腕や脚の太さにも並々ならぬこだわりを持っており、その躍動感は生きているようにさえ見えてくる。
ルキアにとっては、目の前にあるわかめ大使は美術館に飾られていてもおかしくない程の名品にしか見えなかった。
(兄様はこれ程までに美しく、素晴らしい作品を制作していながら、私は何故このような作品で満足していたのだ!兄様に追い付かねば・・・!)
せっせと再び集中し始めたルキアは、チャッピーの顔の造形の手直しから始めた。
「(あいつら、義兄妹のクセに美的感覚そっくりなんだな・・・。)」
「(似た者義兄妹だったんですね・・・。)」
数枚写真を撮って一度パラソルの所に戻ると、浮竹が水分をとって休養している所だった。
腰巾着の三席二人と、四番隊の二人、夜一と砕蜂もいた。
日番谷はまた海の家に戻っていったらしい。
「浮竹さん、大丈夫か?」
「ああ!さっきは少しフラッときたが、水分さえとればどうってことないぞ。それよりも皆の様子はどうだ?」
「色々ですよ。危ない作品は六車隊長が止めましたけど。」
「楽しみですね~浮竹隊長。」
ニコニコ笑う卯ノ花の隣で、浮竹は拳西からもらったデジタルカメラの写真を見て楽しそうにしていた。
夜一が左から覗き見していたため、右側を小椿と清音が奪い合って仁義なき戦いを繰り広げている。
「ほう、白哉坊はまだあのよくわからんヤツを気に入っておるのか。」
「わかめ大使だそうですよ。僕もよく分かりませんが。」
「奴の頭は時々不思議な方向に進むからのう。」
右ボタンを押して写真を一周した後、浮竹は満足と共に疑問を投げかけた。
「隼人君の所にはまだ行ってないのかい?」
「おぉ、忘れてた。」
「彼は何を作っているのか、見てきてもらってもいいか?」
再びカメラを預かられた拳西は吉良を連れて隼人の許へ向かって行ったが、吉良は胸騒ぎがした。
何かとんでもない事件が起きるような、しかもその理由がひどくくだらないもののような、何とも言えないドタバタした事件が起きそうな気がしたのだ。
「六車隊長、本当に見に行かれますか?」
「あぁ?何でオメーはそんなに止めるんだよ。さっきも無理やり別んとこ行かせてただろ。」
不機嫌になった拳西を初めて見た吉良は予想以上の雰囲気に僅かな命の危機を感じたため、この際洗いざらい言ってしまおうと決めた。
別に隠しておく必要もない。むしろ何故今まで隠そうとしていたのか不思議な程だ。
事前に伝えておけば拳西も心の準備が出来る筈。
「六車隊長。実は口囃子さんの絵についてなんですが・・・。」
夜一と清音が仲良くなったことに嫉妬で狂いそうになっていた砕蜂は、パラソルの下から出て海辺にいた二人の元に突入しようと画策し立ち上がった。
それと同時に砕蜂は自らの身に降りかかる危険を察知し、瞬時に身を躱す。同時に、キン!という音と共に何かがパラソルの柱に当たって跳ね返った。
それは海の中へと入っていき消えてしまったが、柱には焦げ跡のようなものがついていた。
「なっ・・・何だ急に!」
「跡から推測するに、銃弾のようなものだな・・・。」
「浮竹隊長!ご無事ですか!」
小椿が浮竹の体を気遣い、先を越されたと清音が若干悔しそうな顔をする。
その場にいた四人が銃弾の向かってきた方向に目を向けると、吉良が大慌てで走って来た。
「大変です!口囃子さんが!」
「口囃子さんがブチギレてそれに六車隊長がブチギレ返して大変なことに!!」
「ええっっ!?!?」
「どどどどどうしましょう浮竹隊長!砕蜂隊長!」
浮竹の腰巾着二人と吉良は三人で全く同じようにパニクっていたのだが、浮竹と砕蜂はさも平然とした様相だった。
「あぁ、それなら六車隊長が隼人君をいつかは抑えるから気にしなくていいぞ。」
「えっ・・・でも僕、あの雰囲気はかなりヤバイ気が・・・。」
「貴様らは知らぬだろうが、あの二人の大喧嘩は昔はよくあった。私も何度も見させられたものだ。五月蠅いことこの上ない。虫唾が走る。」
向こうで鬼道打ちっぱなしを行っている隼人の怒りで暴発寸前の霊圧を感知した若者たちは疑わしげだが、やけに隊長達は落ち着いているため、ますます疑問に感じてしまう。
海の家に向かっていて戻ってきた四番隊の二人も、向こうで爆発音が聞こえるにもかかわらず意に介していないようだ。
数分後。
アロハシャツが少し破れ、ほんの少し傷を負った拳西が隼人(と思わしき黒コゲの人間)を引っ張って戻ってきた。
某ゲームの戦闘不能のモンスターのように、目をぐるぐるにしながら気絶していた。
「きゅ~~~・・・・・・。」
「ったく、下手クソだっつっただけでキレんなよ・・・。」
「だから言ったじゃないですか・・・口囃子さんは変に自分の絵に自信持ってるから扱いには気を付けて下さいって・・・。」
「あれで下手クソと言わねぇ奴の方がどうかしてるぞ。」
曰く。
丁度砂絵が完成したと大騒ぎしていた隼人に出くわし腕を引っ張られて拳西は連れられたが、そこに描かれた絵は想像を絶するものだった。
「水族館です!!!どうです?どうです?!」
「――――――・・・。」
一つ一つの動物の絵が酷すぎて、判別がつかない。おまけに無理矢理イルカショーを描こうとしたのだろうが、現物を知らないせいで訳の分からないイルカショーが出来上がっている。原型を留めないイルカが箱の中で吊るされており、これじゃあ博物館の剥製だ。いやまあ水族館も博物館の一種なのだが。というか海に来て描くのが水族館の絵かよ。
しかも室内の絵なのに太陽を描いており、訳のわからなさに拍車がかかっている。サメには何故か脚が生えており、タコの足は本数がおかしい。見ているだけで頭がおかしくなってきた。
写真を一枚撮るだけで、そそくさと帰ることにした。
「じゃあな。修正頑張れよ。」
「えっ感想何も無いんですか?っていうか修正も何もこれで完成なんですけど。」
うっかり口を開けば怒らせる可能性があるため、これ以上は無言を貫く。
「ちょっとちょっと、感想言って下さいよ!せっかくの自信作なのに何か言って下さいよ。つまんないじゃないですか。」
無言だ、無言。
「あっ!ひょっとして!」
「拳西さん絵描けないんですか!だから何も言えないんだ!ははーーん!やっぱ僕の絵が凄いから何も言えなくなっちゃったんですね!それならそのままそう言って下さいよ~!素直じゃないですねホント!」
久々に(久々じゃないぞ)堪忍袋の緒がきれてしまった。
振り返った拳西は恐らく隼人が使ったと思われる枝を持ち、簡単にイルカショーの絵を描いた。
そこまで上手いとは言えないが、イルカショーだとは十分に理解できる程度の絵だ。
「イルカショーはこれだぞ!!お前のイルカショーは剥製じゃねぇか!」
「この下手クソが!!!!!!」
一瞬で隼人の顔から色が消えた。
それに気づいた吉良は、あわあわと焦り、物凄い勢いで冷や汗をかいている。
「あ、あの、六車隊ちょ「わかったらとっとと俺のヤツ見て修正しろバカ。」
振り向いて皆のもとに戻ろうとした拳西に対し、隼人は指を構える。
その指から、拳西の肩を掠める形で鬼道の弾丸を放ってしまった。
「ッ!!てめぇ!」
「僕の絵が何ですか?え?下手クソ!何言ってるんですか。むしろどこが!?」
「全部下手だ。つーかんなくっだらねぇことで鬼道打ってんじゃねぇ!」
「くだらない!?せっかく時間かけて描いた絵がくだらない!?はぁぁぁぁっっっ!?くだらなくなんかないですよ!!いくら拳西さんでも今の言葉には我慢できません!」
ノーモーションで廃炎を打ってきたため、拳西も短パンのポケットに備えておいた始解状態の断風を取り出し風の糸で爆発させる。全く無駄に実力つけやがって。
怒りで鬼道打ちっぱなしを初めてしまい多種多様な鬼道が襲い掛かるが、何とか全部相殺させる。
「おい隼人!気ィ短すぎるだろ!いきなり鬼道打つなバカ!!」
「あなたにだけは言われたくない!!!飛竜撃賊震天雷砲!!!!」
「バカ!!打った先に八番隊副隊長いるぞ!!!」
「うええっっ!!!!」
そんな、まさか。
やってしまった。
言われた瞬間に手から力を発するのを止めても、一度出てしまったものはどうしようもない。
「けっ拳西さん!避けて!!」
「避けれるわけ無ぇだろ!!」
「え・・・。」
隼人が打った飛竜撃賊震天雷砲に対して避けもせず、むしろ迎撃の構えを取る。
断風で十字を切り下から右回りに一度円を描いた後に、刃の先から超スピードで風の糸が生成され、十字と円は僅か数秒で飛竜撃賊震天雷砲を上回る大きさへと拡大してゆく。
頃合いを見計らって拳西は風の糸で作り上げた防護壁を隼人の方向へ全力で飛ばした。
「風斬十爆陣!!」
二つの力がぶつかり合った途端、大爆発を引き起こし、爆風などの影響で拳西のシャツは少し破れてしまった。
「あ・・・はぁ・・・。」
へたりこんで座った隼人の様子を察知した拳西は、爆炎の熱さなど気にせず猛スピードで隼人の所へ向かい、パーカーのフードを捕まえた。
「ひっ!!!」
「俺がこんなんなってお前がタダで済むなんて・・・思ってねぇよな・・・。」
「――――お手数おかけして、大変申し訳ございませんでした。」
瞬間、霊力の籠った拳で何十発も身体を殴られ、気を失って今に至る。
「そんなに斬新な絵なのかい?」
「あぁ。データは・・・消えて無ぇ。これ見てみろよ。」
そこに写された
「これ、何ですか?」
「水族館だそうだ。」
「うわ~・・・。」
「あっはは・・・、・・・凄いな・・・。」
「まさか隼坊が、ここまで絵が描けぬとは。何じゃこの絵は。」
「これで人前に出せると思ってたのでしょうか・・・。」
辛辣な意見が相次いでいたが、気を失って聞こえない状態でいることが幸いにすら思える。
満を持して出した絵を皆から酷評された場合、最悪怒りで鬼道を暴走させていただろう。
被害が一人で済んでよかった。
パチッと目を覚ました後は拳西に深々と謝罪し、何とか事なきを得た。
他の面々も結局まともに作品を完成させたのは朽木兄妹とやちるたちだけであり、松本たちは飽きて海で遊んでいたそうだった。
優勝は白哉だったが、金一封どうのこうのよりも、自らの芸術的センスが認められたことに対する喜びで、滅多に見せない笑みをこぼしていた。
あっという間に時間は過ぎ、慰安旅行も終わりの時を迎える。
皆で黄昏を見た後、後片付けをしている最中に隼人は吉良に強引に引っ張られた。
何だかんだいって拳西は斬魄刀を使った固有の技が無かった(と思われる)ため、即席ですが一つ作ってみました。
千年血戦篇のためにも色々自分なりに考えてみようと思っています。
ちなみに技名とかは後々変えるかもしれないので悪しからず。
久保帯人さんも枯松の読み仮名試行錯誤してたからね。