ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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電子書簡!

とある天気のいい日。

小姑射場が非番のため伸び伸びと仕事が出来る上、瀞霊廷通信の連載の原稿も丁度書き終わったこともあり、さらに天気も良く、何だか気分がいい日だった。

 

隼人の連載は霊圧に敏感な体質を利用したものであり、三ヶ月の間に体験した面白い霊圧に関する出来事を紹介するものであった。最初は月一連載だったものの、思ったよりもネタが集まらないことや、かなり抽象的かつスピリチュアルな内容のため好みが大きく別れてしまい、三ヶ月に一回と連載スパンを伸ばされてしまった。

自分では全く知らないが、近いうちに打ち切りが決まっているとかいう噂もあるらしい。

修兵の連載みたいに三回で打ち切られるよりはマシなのだが。

 

 

「隊長、九番隊に原稿届けに行って参ります。何か持っていくものとかございますか?」

「構わぬ。大丈夫だ。儂は今月の連載は無いからな。」

 

 

狛村の連載は五郎の成長日記なのだが、二月に一回の連載にもかかわらず読者アンケートでは毎回高評価を受けている。

ちょっと悔しいが、仕方ない。

 

 

「了解しました。では、行って参ります。」

「鉄左衛門がいないからといって、あまり長居するなよ。」

「大丈夫です・・・。多分。」

 

 

最早狛村が苦笑いを浮かべる程度には、射場の行いがすさまじいものだと周りからも認識されているのだが、射場さえいなければ七番隊には怒る人はいないので、そこまで気にする必要もない。

春と夏の間の瑞々しい空気を体感しつつ、原稿を届けにいつもの九番隊へと赴いた。

 

 

 

そこは、戦場だった。

 

 

「何だよこの見出し!もうちょっとマトモなの誰か作ってくれ!」

「あー!この写真ダメね!撮り直すわよ!」「今からですか!?編集長の許可を・・・」

「誰か京楽隊長のところに原稿取りに行ってこい!」

「ページ数が・・・足りない・・・だと!?」

 

 

編集部の入り口から現在修兵がいることを確認して、瀞霊廷通信編集所に入ってみると、校了日が近いからか編集部員全員が血相を変えて作業を行っていた。

この光景を見て、安易に九番隊を選ばないでよかったと隼人は何度も心からホッとするのだ。

こんな地獄みたいな時期が毎月あるのは、到底耐えられない。

 

邪魔にならないように壁際を歩き、最奥の編集長室へと進んでいく。

一応形式上ノックをして名乗り、ドアを開けてみると、血眼で原稿をチェックしていた修兵がバッと顔を上げた。

 

 

「これ、原稿。」

「口囃子さん!もう!遅いっすよ!!ただでさえ口囃子さんのはチェックに時間がかかるのに・・・。」

「悪かったよ遅くて・・・。」

 

 

いつもはもっとギリギリに渡すため隼人の原稿は悩みの種なのだが、今回は修兵にとってはまだ遅いものの、隼人にとっては大分早く渡したため、そこまで負担にならないはずだ。

それに今回は、時間があったので自分でもしっかり誤字脱字はチェックしたのだ。

 

 

「大丈夫っすね。あとは多少文章変えたりすることもあるんすけど、大丈夫ですか?」

「うん。頑張って!一生編集長!」

「ははっ・・・・・・一生・・・そうっすね・・・。」

 

 

これ以上邪魔するのも忍びないため、そそくさと編集所を出ておなじみの九番隊隊主室に向かう。

霊圧から拳西がいるのは明らかなので、ノックもせずに隊主室のドアを開けた。

 

 

「お邪魔しま~す。」

「お前なぁ、せめてノックはしろよ。俺の家じゃねぇんだぞここは。お前ぐらいだぞここノックしねぇの。」

「えへへ~~。それ程でも。」

「・・・・・・。」

 

 

イラァァァァッとしたものの、朝っぱらから怒鳴ってしまうと隊士達をびっくりさせかねないため何とか我慢する。

昔みたいにストッパー役の席官がいるわけでもないため、不用意にキレればそれだけで止まらなくなってしまうのだ。

いつもよりやや高めに積まれた書類を見て、無駄な時間を過ごさないよう拳西は仕事に集中する。

 

 

「しっかし、拳西さんも瀞霊廷通信やればいいじゃないですか。わざわざ修兵の副隊長業務代わってまでやらないって、よっぽどやりたくないんですね。」

「オメーなら昔の俺見てたし分かるだろ。」

「まぁそうですけど。昔から頑なに編集には関わりませんでしたよね。」

 

 

来客用に机の上に置かれていた現世のお菓子を無遠慮に手に取り、勝手に食べて好き放題やる姿も拳西にとっては見慣れたものだった。

いつも美味しそうに食べる姿が妙に鼻につく。今日は白が現世から取り寄せたチョコレートドーナツを食べていた。

 

 

「お前仕事無ぇのかよ。」

「ありますよ。でも射場ちゃんいないからそこまで焦って帰る必要ないんで。それにちょっとぐらいお喋りしてもいいじゃないですか。」

「お前と違って俺は忙しいんだよ。わーったらとっとと帰れ。」

「何ですか、その結婚数年後に育児疲れした奥さんに言いそうな言葉。」

「フラれたお前にゃ『()()』言う機会無ぇんだろうな。」

「あーー!!!そうやって古傷抉るーーーー!!!!」

 

 

実際拳西も全くそういった噂は流れないためそういった言葉を言ってしまうことは無いのだろうが、一度頭に血が上ってしまった隼人にそこまで考える余力は残っていない。

机に座る拳西にまるで若手芸人のように立ち上がって詰め寄る隼人は、短気と悪名高い目の前の父親の性格をガッツリ受け継いでいた。

 

 

「性格悪いから席官時代の彼女にもすぐフラれちゃうんですよ!」

「テメェ!!どっから聞いた!!!俺が前話したのはヒラの頃の話だぞ!!」

「平子隊長から聞きました~~!自分から告白しといて一週間でフラれるとかダッサ!」

「フラれてメソメソ泣くなっさけねぇ男はどこのどいつだ!!」

 

 

いくら拳西が我慢しようとも、結局こうなってしまうのだ。

とりあえず後で平子のことはシメるとして。

余計な己の過去を知ってしまった隼人がそれを京楽などに言いふらしそうな予感がしたため、毎度のように隼人も豪快にシメ上げることにした。

 

うず高く積まれた書類などお構いなしに拳西は隼人の背後を一瞬でとり、首をシメ上げて気を失わせる。

こういう時周りが見えなくなるのは日常では救いなのだが、戦闘時は危険でしかないため、早急に改善を願うばかりだった。

前はギャーギャー騒ぐと隊士達が心配してぞろぞろ来てしまい、少々恥ずかしかったりしたのだが、もうお馴染みのイベントと化しているため今は特に誰も気にしていない。

 

修兵が隊主室にいる時も、呆れながら見ることが殆どだった。

 

 

「力が強すぎるんですよ、いっつもいっつも。」

「知るか。」

「シメられると首痛くなるんで何か別の方法にしてくれません?」

「これが一番手っ取り早いからダメだ。」

「・・・もういいです。時間なので帰ります。」

「おーおー早く帰って仕事しろ。」

 

 

捨て台詞に隼人は若干イラつきつつ隊主室のドアノブをひねろうとしたところで、ピロリン、と着信音が鳴り響いた。

隼人のは設定で音を切っているため、拳西のが鳴ったと推測する。

 

 

「何ですか?今の着信。」

「俺のだ。メールメール。」

「メール?」

「書簡だ。いい加減覚えろバカ。」

 

 

悪かったですね、と悪態を吐きつつ拳西の隣に駆け寄って画面を横から覗き見せてもらった瞬間、隼人は目を見開いた。

平子から送られたメールは、ルキアが送ったメールを転送したものだった。

 

そこに書かれていたのは。

 

 

浦原喜助が一護の力を取り戻させる術を完成させたこと。

特殊な刀に複数名の死神が霊圧を籠め、一護を貫いて力を注ぎこむこ「行く!!!行きます!!!」

「お前はどこに行くんだよ・・・。ちゃんと最後まで読め。」

 

 

最後まできっちり読むと、今日の夕方に志波空鶴邸で希望の死神は刀に力を籠めることのできるイベントが行われることを知った。

 

 

「それでも僕は行きます!」

「力の譲渡が重罪だって分かってんだろうな?」

「勿論分かってますよ。でも、それ以上に恩返しをしないといけません。井上さんにはこの前お礼を言ったんですけど、一護くんにはまだお礼言えてないし。ずっと恩義受けたままじゃ、何かもう、ん~~~~!!って感じになるんですよ。」

「そうだな・・・。一護がいなけりゃお前死んでたようなモンだしな。」

「拳西さんは隊長なので色々あると思われますが、僕は三席なので行っちゃいます!まさかここに来て階級の低さが役立つとは!」

 

 

狛村にも知らせるため危うくそのまま拳西の伝令神機を掴んで持っていきかけたのだが、同じ書簡を転送してもらうことで隼人から狛村にも即座に転送した。

 

 

「では狛村隊長とちょっと話してきます!じゃあ!」

 

 

ドタバタとうるさい足音を立てながら、隼人は九番隊を後にして大急ぎで七番隊へと向かう。

一先ず拳西は、件のメールについて白に電話したが、一向に出ないので忙しいだろう修兵の許に確認を取りに行った。

 

 

 

 

【口囃子です。こちらの書簡の件に関して至急お話をしたいので、お時間を貰えませんか。早急に隊舎に戻ります。《転送:朽木ルキアです》】

 

隊舎裏の五郎の犬小屋辺りから狛村の霊圧を感じ取ったため即座にそちらへ向かい、事前に転送した書簡に関する話はスムーズに進められた。

 

 

「隊長~~!」

「あの書簡のことだな、隼人。」

「はい!」

 

 

駆け足で狛村の許に辿り着いた時、狛村は電子書簡の画面を開いたまま、ずっと考え込んでいる様子だった。

 

 

「隊長は・・・山本総隊長次第、ですよね。」

「ああ、儂の行動原理は全て元柳斎殿の恩義に報いるためであることは、貴公も承知のことだろう。()()の元柳斎殿であれば、書簡に書かれた行いは重罪として認められることなどない筈だ。」

 

 

一拍呼吸を置き、狛村は考え込んで編み出した結論を丁寧に述べていく。

 

 

「だが、儂は()()元柳斎殿が、人間の少年から受けた多大な恩義に報いることを拒むようには思えぬ。掟に背く行為であってもな・・・。それに、黒崎一護から恩義を受けたのは、貴公だけではない。儂ら護廷十三隊、いや、尸魂界全体だ。これ程の行いをした少年に何もしないなど、護廷十三隊の名が廃るではないか。」

「じゃ、じゃあ、狛村隊長は、」

「今のままでは儂は黒崎一護に霊圧を分けることは叶わぬ。だが、元柳斎殿が是とすれば、儂も存分に力を注ぐことが出来るのだ。・・・お前と同じだ。儂も、あの少年の力になってやりたい。」

 

 

狛村の眼は、真摯さと優しさの混ざったものであり、胸が一杯で何だか泣きそうになる。

やはり、あの戦いがあってから護廷十三隊は大きく変わったのだ。

いや、昔に戻ったのかもしれない。

黒崎一護の存在が、護廷十三隊を大きく変え、死神達の在り方をも根底から変えてしまった。

 

たった一人の少年の為に死神総出で動き出すという、数年前ならありえなかったことが今日これから現実に起きようとしている。

 

歴史が変わる瞬間を、目の当たりにしているような気分になった。

 

 

「・・・仕事が終わったら、行ってこい。お前は何度も黒崎一護に力を戻してあげたいと言っていたではないか。ようやく行動に移せるのだ。これ程嬉しいことはないぞ。」

「はい!じゃあ今日の仕事、頑張っちゃいます!貴重な時間を割いて頂き、ありがとうございました!失礼します!」

「ああ。」

 

 

隼人が隊舎に入り仕事を再開するのと入れ違いに、今度は非番の射場がぜえぜえ息を吐きながら狛村の許へやってきた。

 

 

「隊長・・・・・・どうっ・・・しても・・・ご報告・・・したいことがっ、ありまして・・・。」

「これか?」

 

 

そう言って射場に隼人から転送された書簡を見た瞬間、せっかく走ってきた労力が全部無駄になってしまったような気がして、少しだけ落ち込んでしまった。

 

 

「隊長・・・既に御耳にしてやしたか・・・。」

「済まんな鉄左衛門。・・・儂は今日、終業時刻近くにここを出る。」

 

 

「元柳斎殿に、進言をするつもりだ。素晴らしい決断をして下さることを、儂は信じておる。」

 

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