よくよく考えてみると、刀に霊圧を籠めるのを許してくれたあたり、マユリもかなり丸くなった気がした。
以前であれば問答無用で薬品漬けかつミンチにされていたかもしれないが(盛りすぎ)、猶予を与えてくれたことから、彼なりの優しさが垣間見えたように思ったのだ。
会議場に向かう途中で霊圧を注入し終えて帰っている途中の隊長、副隊長の面々ともすれ違ったが、挨拶を軽く済ませるだけで、駆け足で進んでいく。
中に入ると、丁度京楽が霊圧を籠め終わった所だった。
「おや、どうしたんだい?」
「外で待っていたら涅隊長から霊圧を籠める許可が下りたと伺ったので、すぐに参上いたしました!これから十二番隊に招集がかけられたので、順番とかあるのかもしれませんが、今すぐに霊圧を籠めてもよろしいでしょうか!」
「七緒ちゃんは先に霊圧籠め終わってるし、次は九番隊だから君のお父さんに聞かないと。」
「拳西さん!いいですか!」
「お前どうせダメっつっても聞かねぇからな。先にやっとけ。」
「ありがとうございます!浦原さんお願いしまーす!」
「はーい!何なら、時間短縮も踏まえて数人同時にやってみましょうか!」
ということで、隼人の他に拳西と修兵が加わって同時に刀に霊圧を籠めることになった。
「六車サンと檜佐木サンはお二人とも風の力を扱うため、同時に霊圧を注入しても問題ない筈っス。あと、口囃子サンは六車サンと長らく一緒に居りましたし、檜佐木サンとも仲良いと伺っているので、きっと霊圧を合わせることも問題ないと思います。」
「そんな雑でいいのかよ。」
「どうせ皆サンの霊圧が混じっちゃうので問題ないっスよん♪さささ、やってみましょう!」
刀の柄を三人の右手が覆い被っていく。九番隊の二人の手が大きいため、必然的に隼人が先に柄を握ることになったが、大の男三人の手が完全にかさばっている。
「これ、本当に大丈夫なんすか?」
「ちょっとでも触れていれば刀に力入りますよ。ではアタシが声をかけるのでそれに合わせて霊圧を籠めて下さい!はい、せ~~のっ!!」
グン!と地響きがする程には力を籠めたのだが、刀はびくともせず、壊れる気配もない。
そして、手から出した自分の力は確かに白い刀に残らず吸い込まれていった。
「ありがとうございます!これなら問題ないっスね。隊長格が複数名力を籠めても損傷が見られなかったので、一般隊士ならもっと多くの方が同時に霊圧を籠められるでしょう。時間は限られているので皆サン早く霊圧籠めちゃって下さいね~~!」
そして浦原は十番隊の二人を同時に霊圧を注入させ、ひっきりなしに働いているようだった。
「じゃあ俺は八番隊に行ってきます。あとは京楽隊長の原稿だけなんで。」
「済まんな、檜佐木君。俺がいつも早く書いてやれって注意してるんだが・・・。」
「伊勢副隊長も注意しているようですけど、むしろ怒られ待ちしてるようにしか見えないんすよね。」
京楽の代わりに浮竹や七緒が謝るのもいつものお決まりだ。
「じゃあ僕は十二番隊に行ってきます。拳西さんは仕事ですか?」
「俺は今日の分終わってるからな。隼人んトコついてってもいいか。」
「え~~・・・。付いてくるんですか・・・。」
「どうせウチ帰ってもヒマなんだよ。飯作って風呂入って寝るだけだ。」
「じゃあ送ってってください。力省エネしないと。」
そう話していると伝令神機が鳴り、マユリから「早くするんだヨ!!何ぐずぐずしているんだ貴様は!!!」とお怒りの催促電話がかかってきた。
拳西の瞬歩の方が速いので、担がれてそのまま十二番隊へと向かって行った。
十二番隊に拳西と共に入って来た時に、やっぱり嫌そうな顔をされる。
「・・・何故貴様もここにいる?」
「一応俺のガキの仕事ぶり見ときてぇからな。」
「そんな下らない事などいつでも出来るではないか!何故この大事な今に限って「分かりましたから!時間ないならすぐやっちゃいましょう!」
「ぐぬぬぬ・・・!仕方ない。だが私の実験の邪魔は一切してはいけないヨ。もし邪魔をすれば・・・分かっているだろうネ?」
「前もコイツ使ってたんだろ?同じようにやってれば問題ねぇよ。」
拳西にとっては隼人が始解を使うところを見たことが無かったため、一体どんな様子になるのかに少なからず興味を抱いていた。
夜一からは能力についてしか聞かされていなかったため、斬魄刀がどう変形するのかとかも知らないのだ。
「では、口囃子三席には以前の破面霊圧調査における功績を踏まえ、今回は
「麻酔無し!?何て地獄だ!!それだけはやめてください!」
押し黙った隼人に対し、マユリは更に説明を続ける。
どうやら破面の霊圧を読んだ際にマユリに提出したデータが色々と役立ったらしく、十二番隊の機械よりもマユリは信用してデータを扱ったようだ。
破面との対決においても、隼人の知らない所でデータがお世話になっていたらしい。
説明は手短に済まし、早速作業に入る。
「場所はどちらですか?」
「空座町、うなぎ屋という店を出たこの男の霊圧を捕捉し、読んでくれ。」
「了解しました。」
うなぎ屋ということは食べ物屋さんだろうか。それにしてはあまり豪華そうな雰囲気ではないのが少々気にかかったが、仕事には関係ないので特にツッコんだりはしない。
「ではいきますね。―――――――――読み取れ、『桃明呪』」
いつも通りの解号を唱え、いつも通り始解する。
斬魄刀の柄含めて全てが光に変化して体内に吸収され、いつも通り霊圧を解析する力が格段に上昇した。
始解の様子を横で見ていた拳西は、今までにない始解の変化に驚きを隠せずにいた。
(体内に斬魄刀を吸収か・・・?見たことねぇ始解だな・・・。)
だがそれ以上に驚いたのは隼人の眼の変化だった。
霊圧を読み始めた途端、カッと瞳孔が極限まで開き、画面を見る眼球が震えているのだ。
一瞬で、とんでもなく危険な始解だと認識した。
(マジかよ・・・!俺のなんか比べモンになんねぇ力じゃねぇか!卍解手にしたらどうなるんだ・・・?)
浦原が成長を危惧していたこと、藍染が力の片鱗を垣間見ただけで、その力を狙おうとしたことが、ここに来てようやく理解することが出来た。
「対象の居場所を確認。空座町西 百五十三、東 三百六十、現在対象、銀城空吾は単独で行動しています。」
「解析を続けてくれ。」
「了解しました。対象の霊圧を記憶完了。完現術者特有と思われる新たな霊圧パターンを確認。記憶完了しました。同時に死神としての霊圧も確認。初代死神代行の銀城空吾に間違いないと推測できます。」
「素晴らしい。2年前に比べて格段に特定の速度が上がっているヨ。」
「えっ、あ、ありがとうございます。」
滅多に、というか一度も人を褒めたことのないような相手に突然褒められ、さすがに面食らってしまう。
それからもずっとマユリは他の死神達に指示を出して縦横無尽に動かし、出されたデータを総隊長と浮竹に逐一報告する。
銀城空吾がXCUTIONのアジトに戻った時には、近くに似たような霊圧パターンの人間の存在を確認した。
アジトの中には、一護らと共に尸魂界に乗り込み、京楽に倒された高校生の人間もいた。
そして、去年焼きそばの注文で困っていた時に助けてくれたツインテールの女の子と、その隣にいたと思われる背の小さい黒ずくめの少年もいた。
少し動揺するも、素知らぬふりをして霊圧を記憶する。
「全員の霊圧を記憶しました。これでいつでも彼らの居場所を探査・捕捉出来ますよ。」
「今日はもう十分だヨ。夜になった以上奴らもこれ以上行動することは無いだろう。明日に備えて早く帰るといい。」
「分かりました。では失礼します。拳西さん、帰りましょう。」
「あ、ああ。じゃあな。」
以前と全く同じように、帰り際に壷府リンからお礼の洋菓子を貰った。安心安全の見た目と味だった。隊舎を出てからは、何故か拳西に心配の言葉を向けられてしまった。
「お前力使ってた時ヤバかったぞ。大丈夫かよアレ。」
「大丈夫ですよ。以前もそうやって一ヶ月程力使い続けてましたし、前も他の人に心配されましたけど、その時は体に一切異常無かったので。」
「・・・・・・。」
恐らく、隼人の力はこれだけではない気がするのだ。
拳西は自らの卍解が完成しているとは考えておらず、まだ自らの力には先があると推測している。現在卍解の修行を積み重ねても真の力の片鱗すら掴めていないことに歯痒い思いをしているのだが、隼人の場合、始解の力ですら何かが隠されているようにしか思えてならないのだ。
卍解習得と同時に、始解の性質も大幅に変化するタイプの斬魄刀。
卍解の戦闘スタイルが始解と大幅に違うことは多々あるのだが、卍解習得と同時に始解の変化というのは、近年ではあまり話を聞かない。
というように非常に珍しいタイプではあるが、拳西が平隊士、席官であった当時、新たに就任した昔の隊長が卍解習得後、大きく始解の性質が変わったと話してくれたのを覚えていた。
そして隼人が卍解を習得したならば、現在の己の卍解など霞んで見えてしまう程に凄まじい力を手にすることになるのでは、と今の隼人の力を見て、親ながら拳西はそう考えずにはいられなかった。
「でも新たなパターンの霊圧を覚えられて、経験値が上がった気がします!死神に虚、破面に完現術者。あと石田くんの霊圧も読んだから、滅却師もか。それでも頭ごっちゃにならずに済んでますよ!」
「わーったから、無茶だけはすんなよ。」
「了解しました!」
それから数日間、銀城空吾らの敵として現れた、月島とかいう男と、彼に付き従うすし河原
数日後、読み取った霊圧データ、映像越しに見た戦いぶり、そこから予測する力から、彼らの戦力について何と隊主会で報告することになってしまった。
(何でこんな目に・・・。緊張しかしないよ・・・。)
前回はマユリや阿近が報告に参じたのだが、今回は一応他隊所属ではあるものの、敵戦力把握の責任者であるため、マユリから直接指名されて現在一番隊の会議場前で待機している。
「・・・詳しいデータ、調査報告は臨時責任者の七番隊第三席・口囃子隼人からの報告に代えさせて頂きます。入り給え。」
一番隊の下位席官が巨大なドアを開き、ちょっとビクビクしながらも中に歩み入っていく。
(ええい!こうなったらもう何か失敗しても気にすんな!堂々と発表すればいいんだ!)
隊長全員の視線が隼人に向かい、緊張が高まっていく。
察した平子やローズ、京楽、浮竹は落ち着かせるよう少し笑みを浮かべてくれたので、ちょっとは安心するのだが、やはり真ん前の総隊長の迫力はすごい。
こんな状況でよく報告できるものだと阿近に関心すらする程だった。
「・・・では、報告します。」
「今回僕が調査をした完現術者について、彼らの霊圧調査と共に、大霊書回廊に集積された事象を基に調査を進めたところ、彼らは母親の胎内にいる間に母親が虚に襲われた経験があるそうです。」
そこから淡々と説明を続けていき、完現術者のありようについて、一部調べられなかった部分こそあれど、しっかり報告することが出来た。
「では今回の完現術者について、説明を致します。現在XCUTIONという団体と、月島秀九郎らが対立している状況にありますが、その中で最も危険な能力は、月島の完現術、『ブック・オブ・ジ・エンド』と、すし河原の『ジャックポット・ナックル』です。月島の力は端的に言えば
他の人間の能力についても焦らず説明を続け、何とか最後までこぎつけることができた。
「以上が今日までの僕の調査報告全文です。質問などがあれば隊主会終了後に受け付けます。」
「御苦労。退がってくれ。」
「はい。失礼します。」
会議場から出て、ようやく安心することが出来た。
「ふへぇ~~・・・疲れたぁー・・・。」
調査報告を持って一度十二番隊に返してから七番隊に戻ると、狛村から隊主会で決まった内容に関する報告を受けた。
朽木ルキア、朽木白哉、阿散井恋次、日番谷冬獅郎、更木剣八、斑目一角の六名が現世に向かい、一護に力を取り戻させ、今回の件に始末をつけることとなった。
一応言っておきますが、主人公は獅子河原くんの名前を、間違えて覚えてしまっています。