ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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Robert Accutrone

「・・・恋次。私の卍解が封じられたら、兄の卍解で倒せ。」

「隊長・・・!」

 

 

白哉から事前に雀部からの遺言を聞かされていた恋次は、矛盾している白哉の発言に驚きを隠せない。

そんな事をすれば本末転倒ではないか。

それを進言しようとするも、再び白哉に遮られる。

 

 

「そうだとしてもだ。この卑劣の輩は卍解を使わずして倒せる相手ではない。その位のことは分かっている筈だ。」

 

 

 

また別の場所では、あわあわしながら焦る大前田を叱る砕蜂がいた。

 

 

「ですが隊長!俺は卍解使えないのに、どうすればいいんすか!」

「騒ぐな大前田。それならば私の卍解が如何にして封じられたかを見ておけ。第三者からの目が必要だ。封印を破る術を私と貴様で見つけ出せばいい。癪な話だが、お前と私が共に戦って、封印を破る方法を見つければいいのだ。」

「隊長・・・。」

 

 

五月頭では、目の前の滅却師相手に戦力として物足りないことは重々承知しているのだが、それでもそこまで言われたからには、大前田も戦うしかないのだ。

 

 

 

また別の場所では、甲冑を着込んだ不気味な滅却師相手に、十番隊隊長・日番谷冬獅郎が余裕の表情を見せる。

 

 

「まあ、大丈夫だろう。封印されるより早く、滅却師共を殺してしまえば、何の問題も無い筈だぜ!」

「了解しました!頼みますよ、隊長!」

「ああ、分かった。」

 

 

三者は卍解の封印という恐怖をひしひしと感じつつ、覚悟を決める。

 

 

「「「――――卍解」」」

 

千本桜(せんぼんざくら)景巌(かげよし)

雀蜂(じゃくほう)雷公鞭(らいこうべん)!!!」

大紅蓮(だいぐれん)氷輪丸(ひょうりんまる)!!!」

 

 

その卍解の様子をみた三人の滅却師は、ドリスコール、そして一護と戦った破面と同じ道具を懐から取り出す。

 

卍解の前に翳した途端、黒い光がメダリオンから裂けて出現し、隊長の周りを囲い込む。

 

その光に吸い取られるように。

 

 

 

 

三名の卍解は所有者の手から離れていき、光と共にメダリオンの中に吸い込まれてしまった。

 

 

「―――――これは・・・封印ではない・・・!!」

 

 

「「「卍解を、奪われた・・・!!!!!」」」

 

 

三者同時に驚愕の表情を浮かべ、同伴していた副隊長も全員、開いた口が塞がらない。

 

 

「・・・何してる、松本・・・!!」

「天挺空羅だ!!早くしろ!!!卍解できる奴全員に伝えるんだ!!絶対に卍解を使うな!!奴等に奪われる!!」

 

 

即座に松本が天挺空羅を発動して隊長全員に件の危険性を伝える。

 

 

「奪われた・・・!?そんな!」

「何だと!!!やはり隼人の意見を聞いて正解だったと見るべきか・・・。」

「隊長、これじゃあ・・・。」

「ああ。」

 

 

「卍解を使わずして、戦うしかない・・・!」

「ッ・・・!!」

 

 

通信を聞いたローズ、七番隊は驚愕、諦めの言葉を呟く。

 

 

「――――――・・・・・・、」

「何を・・・してんねんボケがァ・・・ッ!!!」

「ちっ・・・馬鹿が・・・!!!」

 

 

驚きと呆れで何の言葉も出ない浮竹とは対照的に、平子と拳西はみすみす卍解を奪われた三人の隊長格に怒りの言葉をぶつける。

 

 

「霊圧を見る限り・・・二、六、十番隊の卍解が奪われたのですね・・・。」

「馬鹿がッ!!!何故こちらの解析が済むまで待てなかった!!信じられん馬鹿共だヨ!!!」

 

 

苦しい表情を浮かべる卯ノ花とも対照的に、マユリは自らの出す情報を聞きもしないどころか、考えもしなかった隊長格の大失態に、途轍もない程の怒りを浮かべた。

 

やはり、マユリからの情報を直接聞いた京楽や平子、それを又聞きした数名の隊長格は、卍解の封印を最大限に警戒し、卍解することを止めた。

同じように、情報を聞いていなくとも度々マユリの下で働いてきた隼人がマユリの発言を重要視し、警戒したおかげで卍解を避けた狛村も、奪われることなく済んだ。

 

卍解を奪われた三名の隊長格は、更に大きな影響を受ける。

 

 

「大紅蓮氷輪丸。有意義なデータとして受け取った。」

((!))

 

 

BG9の背中に氷の翼が生み出され、腕を振るうと同時に巨大な龍が日番谷に襲い掛かる。

鍛錬を重ねた卍解は藍染との戦いの時よりも高い質となり、攻撃力も段違い。

だが、その卍解が自らに襲い掛かって来たとしたら。

 

 

「隊長!!」

(!!)

 

 

動揺して松本の声すら頭に入らなかった日番谷は寸での所で氷輪丸の力を引き出すが。

 

 

「始解も上手く操作出来ねえ・・・!破道の七十三! 双蓮蒼火墜!」

(・・・!)

 

 

日番谷は単純に卍解の喪失によって始解にも影響を及ぼしていると考えていたのだが、隣にいた松本は今までの長い死神としての経験からより危険な別の推測をしていた。

 

霊圧、霊力など、日番谷が振るう力全てが、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

日番谷が振るう氷輪丸の氷は彼が席官をしていた頃以上に脆く、手数で何とか防いでいるもののいずれ耐えられなくなるのは、長年日番谷を見てきた松本には目に見えていた。

 

 

「灰猫!!」

 

 

だからこそ、松本は上官の指示を受けずに日番谷の補助に回らざるをえなかった。

 

 

 

 

 

そして、天挺空羅を直接受信していなくとも、今の霊圧の動きから卍解の奪略が行われたことは、隊長格の霊圧を確認していた隼人に筒抜けであった。

 

不謹慎だが、狛村の卍解が奪われなかったことに安心してしまった。

二、六、十番隊の卍解を犠牲に、狛村の卍解は守られたのだ。

これで、マユリの調査、解析の結果解決の糸口を見いだせれば、圧倒的出力を持つ狛村の卍解を思う存分振るうことが出来る。

 

しかし、卍解を奪われた隊長格の霊圧が目に見えて弱くなっていることには、警戒せざるを得ない。

始解だけでは限界があるが、それ以上に霊力が弱まっていることを細かな霊圧から読み取り、注意してもらうことを祈るしかなかった。

 

更に近くで何らかの戦闘があり、雷が直撃したことで隊舎寮が破壊されてしまったのが窓越しに見えた。

 

 

「あっ・・・。家無くなっちゃった・・・どうしよ・・・。」

 

 

近くではルキアが戦っており、その相手が振るった雷撃がたまたま隊舎寮にぶつかってしまったのだろう。ここの存在には気付かれていないため、一瞬警戒するも安心して滅却師の霊圧調査を行う。

 

(特段霊圧の高い二人はまだ戦闘行動に出ていない・・・。)

 

にもかかわらず、三名の死神の卍解は奪われ、副隊長一人が既に死亡している。

 

数名隊士がいたものの、何だか皆うずうずして浮足立っていたため、他隊の編成に加えさせて隊舎は現在一人しかいない。

静寂の中、時折聞こえる爆発音、風圧が戦いの凄惨さを物語っている。

 

(何か・・・何か弱点がある筈だ・・・。何か・・・。)

 

勝利の糸口を探すため、隼人はたった一人で戦闘中の滅却師全員の霊圧解析を行っていた。

 

 

 

*****

 

 

 

「くっ・・・卍解を奪われるワケにはいかないケド・・・。左腕と右足が動かせないのはちょっとキツイかな・・・。」

「いやーそこまでやられて動けるとはな、お前なかなかやると思うぜ?」

 

 

とは言うものの、ナジャークープもローズの始解の力で少なくはない傷を受けている。

最初はナジャークープが優勢だったものの、突然の平子の介入で視覚、聴覚全て狂わされ、動けなくなった所をローズの鬼道で撃ち抜かれたのだ。

 

ローズは今も不用意な動きを避けるため、金沙羅で破壊した瓦礫を大地転踊で操っているのだが、やはりこちらが自由に動けないのは大きなハンデだ。

 

何とか拮抗状態に保っている。

 

 

「お前の卍解はデータに無いから興味あったんだが・・・。やってくれねえんじゃ仕方ねえ。そのまま全身動けなくなっちまえ。」

「言っただろう、生きて帰さないって!金沙羅!!」

(!)

 

 

縦横無尽に動くローズの鞭の動きが、ナジャークープには読み切れない。

神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)で応戦するも、全て宙に浮いた瓦礫が防いでしまう。

 

 

「全く、卍解さえ出来れば、遅れを取らずに済むんだけどなぁっ!!」

「おいおい、霊圧揺らいでるぞ!いいのかよそれで!」

 

 

更に数を増やした神聖滅矢に対し、ローズも瓦礫に加え、鬼道をぶつけて応戦することにした。

 

 

 

*****

 

 

 

「・・・おかしいねェ。思うように君に刃が向いてない。何でかな・・・。」

「さあ。何故だと思うかな。」

 

 

“The Negotiation”

 

 

ロバート・アキュトロンの持つ力は、「交渉」。

力の発動と共に、戦闘が終わるまで、ある事象に関して回数を選ばず好きなだけ敵と交渉することが出来る能力だ。

そしてその交渉は、必ずこちらの有利な形で締結される。

実態は交渉などではなく、宣告とも呼べるものだった。

 

今回京楽と交渉したのは、「互いの心の距離」。

 

ロバートの任意の距離としてお互いの心の距離を設定することで、京楽は今のロバートに対して思うような攻撃を行えなくなっていたのだ。

 

今、京楽にはロバートが“自分を慕ってくる後輩”に見えている。

本来はもっと有利な形で締結される筈だったが、京楽の企図で若干交渉が乱されてしまったのだ。

しかし、今の心の距離は、京楽にとって、口囃子隼人の距離感と同じだった。

 

だが、それでも「思うように刃が向かない」とのたまう京楽にロバートは警戒を崩さない。

慕ってくる後輩にも刃を向ける目の前の男に対する心の距離の匙加減を、注視しなければならない。

既に片目を潰しているものの、動きはさほど変わらないこの男が、指折りの実力者であることはロバートもすぐに察していた。

 

 

「刃が向いていないというより、戦いづらい、と言えばいいのかな・・・?君、ボクに何かしたかい?」

「戦闘中に種明かしなどという、酔狂な真似など私はするつもりない。」

「そうだよね。だから。」

 

 

ロバートは自らの影からほんの一瞬風を感じ、現れた斬魄刀の一閃を寸での所で躱す。

霊子でできた弾丸をぶつけようとするも、京楽は首を横に振って見切る。

 

 

「生憎、影は()()()()()故、気配には敏感なのだ。」

「あれっ、ボクの影鬼効いてない?困ったな・・・。」

 

 

という言葉を呟きながら、京楽は再び新たに作られた影からロバートの脚を斬りつけようと斬魄刀を振るう。

避ける動作をする以上、効いてない筈はない。

再びロバートは弾丸を撃ち込んだが、今度はその弾丸も斬魄刀で一刀両断されてしまった。

 

 

(!)

「それぐらい様子見しなくても、斬れるのは分かってたよ。」

「・・・私は、貴方を慕っている。慕っていようと、斬るのか。」

「斬るさ。」

 

 

一片の曇りの無い表情で、京楽はロバートの言葉をもあしらう。

 

 

「後輩だろうと、血迷ってボクのことを斬ろうとしたら、ボクは殺すよ。だってボクは、修行の手伝いでも本気出すからね。」

「・・・。」

「前に稽古つけた子がいたんだけどさ。彼は最初嫌々だったけど、強くなるためってなら、本気でボクにかかってきたんだ。だったらボクも本気でかからなきゃ、その時点で勝負には勝ってても、ボクは負けてるでしょ。」

「・・・成程。」

 

 

京楽は確かに目の前の男が自分を慕う後輩であるようには見えているものの、薄々違うことには感づいていた。

実際に相手が隼人であった場合、今の言葉を相手にかけるような真似は絶対にしない。

慕ってくれているからこそ、言わないことだってある。

京楽なりの照れ隠しだった。

 

ロバートは瞬時に、今の心の距離では制圧しきれないと判断する。

 

 

「第三の交渉を行う。」

「!みすみす力使わせると思うかい!!」

「思う筈が無い!」

 

 

弾丸を連射するも全て京楽は躱すか斬り払うかで無効化し、ロバートとの距離を詰めて拳銃を直接斬り払う。

しかし拳銃を斬り払えどロバートの姿はそこには無い。

星十字騎士団のマントだけをその場に残して完聖体の姿で京楽の斜め後ろに瞬間移動し、新たに霊子から生成した拳銃から再び弾丸を連射する。

 

 

「貴方と私の心の距離は、長年の友と同じ位置へと変更する。」

(!!)

 

 

発動前に斬魄刀で肩を斬り落とそうとしたが、間に合わず軽く斬りつけることしか出来なかった。

 

 

「さて、貴方は私に刃を向けられるかな?」

「やってくれるね・・・。ホント、面倒なことになったよ・・・。」

 

 

今、京楽の目の前にいる人物は、浮竹と同じような付き合いをする人物に見えていた。

 




ロバートの力は今回は精神干渉を行いましたが、実際はもっと汎用性が高いです。
ただし、良くも悪くも自分と相手の霊圧に左右されてしまうため、格上相手には手古摺ることもある能力です。(なのでロバートは段階を踏むことになりました。)
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