ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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Burner Finger

「深水縛。」

「ちっ!水かよ!!」

 

 

浮竹が設置した巨大な水の直方体に対し、炎を操るバズビーは瞬時に嫌な顔をする。

しかしそれもほんの一瞬。

穴を見抜いたバズビーはボウガンの神聖滅矢を取り出して、直方体の角に矢を集中砲火する。

 

 

「へっ!これで俺が今の水より強い力で炎をぶつけりゃあ・・・ってオイオイオイ!マジかよ!!」

「俺の狙いはさっきの水塊の崩壊だ。出てきた物を手あたり次第に壊してばかりでは、俺を倒すことなど出来ないぞ。そもそも俺は卍解していないしな。」

「クッ・・・!!ナメた真似しやがって!!バーナーフィンガー 4!!」

(!!)

 

 

炎で生み出した巨大な剣を右腕に纏い、浮竹めがけて圧倒的な熱をぶつける。

分散した水を全て再び霊力でかき集めた浮竹は、さらに自身の霊圧も水に混合させてバズビーの剣に対抗する。

 

炎と水のぶつかり合い。

どちらも質量が常識の範囲外であるため、衝突した瞬間水蒸気の大爆発が巻き起こり、周囲一帯の建物、瓦礫を全て吹き飛ばす。

縛道の障壁で防いだ浮竹、静血装(ブルート・ヴェーネ)で持ちこたえたバズビーだけが更地の中立ち尽くす。

 

 

「これでテメェは逃げも隠れも出来ねえ。とっとと俺に殺されてろ優男。」

「・・・やはり、君は俺を倒すことは出来ないだろうな。」

「はぁ?」

 

 

唐突に、雨が降り出してきた。

もちろん空は今まで同様、青空が普通に出ている。にわかの天気雨でもない。

 

水蒸気爆発で分散した水が、雨となって降り注ぎ始めたのだ。

 

 

「これで君は、暫くの間炎を十二分に生かすことが出来なくなった。そもそも特大の質量の水と炎がぶつかり合って爆発したら、こうなる事など誰だって分かる筈だ。見通しが甘いな。ここからは俺の持ち場で戦わせてもらうぞ。」

「ちっ・・・!!クソ野郎が!!!」

 

瞬時に完聖体を使い、能力の底上げを行う。

 

 

「だったら技を使うまでもねえ!神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)でブッ殺してやるぜ!!」

(!!)

 

 

浮竹の双魚理では、滅却師の神聖滅矢を吸収することは出来ない。

それは、言うなれば直接攻撃系の始解と全く同じだから。

なので、弾幕を張られた場合、浮竹は防御に徹する、躱すしか出来なくなってしまうのだ。

 

(やはりこの手の相手には工夫が必要か・・・。)

 

断空を使っていても、ずっと矢を受けていれば自然と壁は脆くなってしまう。

一度ヒビが入ってしまえばその瞬間すぐに壁は壊れてしまい、次の壁を作り出すまでに少なくない傷を負ってしまう。

 

浮竹が最も苦手とする長期戦、持久戦に入ってしまった。

戦いの場で突然発作が起きてしまえば、敵の実力を考えるに殺されてもおかしくないのだ。

 

 

「くっ・・・どうすれば・・・。・・・!」

 

 

この匂い。ひょっとして。

感じ取った瞬間、浮竹は瞬歩を使って傷を受けながらも矢の有効範囲外へと強引に逃げ込む。

 

 

「逃げてもムダだぜ!さっき言っただろ!!逃げも隠れも出来ねえってよォ!!!」

 

 

意気揚々と叫んだバズビーは、浮竹とは真逆の方向に矢を撃ち始めた。

興奮しているのか、全く浮竹に当たっていないことに気付いていない。

挑発が虚空に響き渡っている。虚しい。

この調子では、匂いも感じていないだろう。

 

 

「コイツ、全く気付いてへんわ。拳西以上に脳筋やな・・・。」

 

 

上空にいた平子も、口をあんぐり開けて未確認生命体を見るかのような眼で見ていた。

 

 

「平子隊長!感謝するよ。」

「気ィつけてな、浮竹サン。あんたもう結構ボロボロや。オレも他人んコト言えへんけどな・・・。」

「周りの状況はどうだ?」

「アカンわ。卍解奪われた隊長共は浮竹サン以上にボロボロや。」

「何だと・・・。」

 

 

体中至る所に矢で射抜かれた傷があるため、かなりの傷を負っていると浮竹は自覚していたのだが、今は持ち前の霊圧の高さのおかげで何とか持ちこたえている部分があった。

これ以上の傷を負っていれば、平均的な霊圧を持った隊長格ならば立ち上がるのがやっとかもしれない。

 

 

「京楽サンも怪我こそ少ないけどなァ、片目潰されとる。ローズも苦戦しとったわ。」

「・・・そうか・・・。分かった。」

「じゃ、オレはまた別ん奴とこ行ってくるで。」

「頼む。」

 

 

未だに明後日の方向に矢を撃ち続けているバズビーに雛森までも呆れの目を向けていた所で、五番隊の二人は再び戦場の攪乱に出向いた。

 

 

「さて、気付かれるまでに色々と仕込むとしようか。」

 

 

匂いの効果がなくなるまで、浮竹は霊圧を消して更地でも出来るいくつかの罠を作り始めた。

 

 

 

*****

 

 

 

「次の舞 白漣!!」

「だからぁ、弱っちいんだってアンタの攻撃は!!」

「ぐっ!」

 

 

地面を八箇所斬魄刀で突いて今までルキア自身が発動した中でも最大級の巨大な凍気を放出したものの、キャンディスが掌から投げつけた雷撃が事も無げに全て焼き切ってしまう。

最初から防戦一方。相手の方が格上だと認識を改めたルキアは、ずっと苦しい戦いを強いられていた。

追われる身として様々な工夫を凝らしはするが、それら全てを目の前の滅却師は受け流す、焼き切るなどして無効化する。

 

 

「弱いクセに逃げ足だけは速いのかよ!ったく、とんだハズレ引いちまったな!」

「破道の六十二 百歩欄干!!」

「!」

 

 

しかしルキアも黙っているわけにはいかない。

護廷十三隊の副隊長として迎える2度目の本格的な実戦で、実力を出さずのうのうと死ぬ訳にはいかない。

前の完現術者との戦いでは思うように力を振るえなかったのだ。

今回こそ、自分のペースで戦いを進めたかった。

 

相手の詰めの甘さのおかげで百歩欄干は当たり、建物に体を縫い付けることが出来た。

 

 

「ぐぅっ・・・!!こんな小細工であたしを「止められるなど考えていない!!」

「!」

 

 

空中から壁に縫い付けられているキャンディスは、突如下から聞こえてきた声の方向を見て、思わず自分の身に迫る危険を口に出す。

 

 

「あたしもろとも・・・全部凍らせるつもりかよ!」

「氷漬けにすれば貴様もしばらくは身動きを取れぬ。壁の高い建物が近くにある場所に誘導していたのだ。」

 

 

初の舞・月白でキャンディスの真下に円を描き、天地全てを凍らせようとする。

氷漬けにさえなれば眼球含め全て動かすことが出来なくなり、死んだも同然だ。

以前破面相手に成功させることの出来た技であり、更に鍛錬を積んで氷の出力を増大させることによって、今回の滅却師にも有効打となる筈だった。

 

だが。

 

 

「こんな最初っから、やられてたまるかよ!!」

「なっ!」

 

 

全身から発した雷がけたたましい轟音を響かせ、ルキアの百歩欄干、氷だけでなく、張り付いていた建物など全てを爆発させる。

 

 

「そんな・・・・・・。・・・!!ぐっ!!」

 

 

煙の中から出てきたガルヴァノ・ブラストをもろに受けたルキアは、矢で射抜かれた傷と共に、電気製の矢である影響だからか僅かながらの麻痺を抱える羽目になってしまう。

 

白哉から賜った白の手甲がみるみるうちに赤く染まってゆく。

 

 

「へぇ~、5ギガジュールの矢喰らって麻痺程度で済むのかよ。意外とあんた力あんだな。」

「その麻痺が・・・いずれ私の足元を掬うことなど・・・分かっているぞ・・・。」

「当ったり前っしょ!あたしを氷漬けにしようとした仕返しだ。あんたを痺れさせて動けなくしてやるよ!!」

 

 

満足に動かない体を気力で引き摺ってガルヴァノ・ブラストを躱し、再び追われる身となりつつも逃走と攻撃を組み合わせた戦術を展開していく。

 

 

「双蓮蒼火墜!」

 

 

敢えて地面に向けて放つことでジェットエンジンのような役回りを鬼道が果たし、ルキアの体は霊力を使わずとも空中に跳ね上がった。

 

追われる身であろうとも、上さえとれば攻撃面では圧倒的に有利だ。

 

 

だが、そんなことは格上のキャンディスも分かっていた。

先回りしたキャンディスは、更に上へと既に移動していた。

 

 

「あんたバカかよ!?上とろうとすることなんて今の動きですぐ分かるっつーの!」

「後ろだとっ!?ぐあっ!!!」

 

 

キャンディスが掌に籠めた雷の力を直接ルキアに打ち込み、勢いそのまま地面へと叩き落す。

全身に高圧電流が流されたため、受け身も取れず地面に叩きつけられてしまった。

 

 

「・・・んだよ。副隊長だからコレ使いもしなかったし、全然骨の無え敵だったな。完聖体持ってないあたしでも余裕だったぞ。しょーがねえし、別の奴探しに行くか。いや、バンビの様子でも見に行くか・・・。」

 

 

メダリオンをポケットから取り出して手で弄りつつ、キャンディスは意識を失ったルキアの様子を確認して独り言ちる。

これからどうしようか、と考えた所で、自分でも直情的なのは分かっていたが、それ以上にバンビエッタが直情的であり、悪癖すら持っているので軽んじてはいるが一応様子見しに行くことにした。

 

飛廉脚も一切使わず地上に降りて徒歩で移動するあたり、ほぼ興味なしと言っても過言ではない。

 

 

 

*****

 

 

 

「いつまで俺のいない方向に矢を撃っているんだ?」

「!?・・・どういう事・・・、!!!」

 

 

浮竹が言葉を発したと同時に平子の逆撫の効果が切れ、バズビーはようやく正しい視覚情報を手に入れることが出来た。

今までずっと浮竹に対して打ち込んできたのが全て空振りだったと知り、バズビーの脳内では屈辱、恥、怒りが高速で循環し、浮竹に怒号を放つ。

 

 

「俺をコケにしやがったな!!!!指を使わずに殺してやろうと考えていたが、もう我慢ならねえ!!」

「コケって・・・。ひょっとして、ニワトリか?その髪型もニワトリみたいだな。トサカを生やして、いいじゃないか。似合っているぞ。」

「・・・・・・・・・テメェ・・・!!!!」

 

 

「ブッ殺す!!!!!」

「なっ!心外だな!褒めたつもりなんだが・・・。」

「うるせえ!!ニワトリってバカにしやがって!!絶ッ対許さねえ!!!!!バーナーフィンガー 4!!!!」

 

 

既に一時的に降っていた雨は止んでいるため、バズビーは臆することなくバーナーフィンガーを行使する。

 

 

「見てたぜ!!バーナーフィンガーでも3と4はテメェの力じゃ吸収出来ねえ!だったらテメェが対処出来ねえ奴を立て続けに打ち込みゃあ、テメェはマグマに呑まれて骨すら残らねえ!さっきも言ったが、俺とお前の勝負なんざ、ハナっからついてんだよ三下!!」

 

 

「誰が吸収出来ないと言った?」

「何・・・?」

 

 

立て続けに放ったバーナーフィンガー3と4に対し、バズビー同様浮竹も臆することなく双魚理の切っ先を向ける。

襲い掛かる莫大な物量の炎を、浮竹は一切表情を変えることなく全て吸収、反射し尽くした。

 

 

「なっ!ふざけてんのかテメェは!!俺の炎全部反射しやがって「悠長に喋っている場合か?」

「!!」

 

 

油断したバズビーは、浮竹が反射した炎が僅かに速度を上げていることに気付かなかった。

躱すタイミングを見誤り動けなかったバズビーは、自分の炎で全身が炙られていくのを感じる。

 

決死の思いで炎から抜け出し地面に着地したが、浮竹の攻撃はまだ終わらない。

 

バズビーの神聖滅矢で崩れた僅かな瓦礫と地中から生み出した砂鉄を磁力で操って超振動を起こし、バズビーの脚を斬りつくす。

 

炎を防ぐ時に使った静血装は弱まっており、それを砂鉄は易々と貫いていく。

 

 

「ぐうううううぉぉぉおおおおおお!!!!」

「お前は今、電動のこぎりで直接脚を斬られているようなものだ。いや、チェーンソーと言えばわかるかな?」

「クソがああああああ!!!バーナーフィンガー 4!!!」

 

 

巨大な炎の剣を地面に叩きつけて周囲に炎をマグマを生み出したバズビーは、完聖体の力を使って撤退せざるを得なかった。

 

卍解をしなくとも自らを圧倒する死神に出くわしたバズビーは、炎に炙られてボロボロの中、死神に苦戦する筈が無いという自負を崩されて怒りに震えていた。

 

 

「今に見てろよ・・・今度こそあんな白髪野郎なんかブチ殺してやる・・・!いや!!この際誰でもいい!!今度は死神連中をバンバンブッ殺して、俺の力を見せつけてやる!!!」

 

 

脚を使えず完聖体で飛行しながら、バズビーは名前もよく知らない死神の男だけでなく、死神全体に強い殺意を抱いていた。

 

 

 

「まだ罠は色々仕掛けていたが、一つで済んだか・・・。」

 

 

余裕を見せる言葉を呟くが、実際浮竹はかなりの傷を負っていた。

一つ一つの傷こそ小さいが、それも大量であれば十分大怪我だと言えるだろう。

 

 

「援軍に・・・くっ!・・・行ける程力が余っていないか・・・。」

 

 

ルキアの霊圧が弱まっているのを察知し、救援に向かいたいと思っていたが、長距離の移動は厳しい。

脚を押さえつつ、浮竹は手近な味方の許に駆け付けようと歩み始めた。

 




浮竹さんは当社比でかなーーり強くなってます。
原作であんな最期遂げられちゃあ強くしてあげたくなっちゃうじゃん・・・。
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