ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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恐怖

「くっ・・・何だコイツ・・・!」

「ッハッハァ!!!愉快愉快、非常に愉快だ!!」

 

 

九番隊副隊長・檜佐木修兵は、滅却師相手に一度も攻撃することが出来ていない。

それどころか、何故か躱すことも出来ないのだ。

 

 

「俺の聖文字(シュリフト)は”Q”、”The Question”だ。お前は俺に攻撃しようとした瞬間、俺は“お前が俺を攻撃する事”に異議を唱える。異議を唱えられた以上、考えるのは必至。だからこそ攻撃が鈍り、お前は俺に攻撃を当てることは出来ない。」

 

 

それからも長々とベレニケ・ガブリエリは自らの能力について事細かにひけらかす。

 

 

「逆に俺がお前を攻撃した時、お前は防ぐ、もしくは躱す、といった行動を普通ならとる筈だ、普通ならな!!!だが、俺はお前のそういった防衛行動にも異議を唱える。異議を唱えられ行動のリズムを崩したお前は、俺の神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)に対し十分に体を守ることが出来ない!!」

 

 

狂気の口調、表情を前面に浮かべ、ニヤリと黄色い歯を眼前に零す。

 

 

「だからこそ、お前は俺に攻撃できず、お前は俺の攻撃を防御出来ない!お前に待っているのは死だ!お前の人生のラストは俺に殺される運命だったのだ!!」

「お前に殺される・・・運命・・・だと・・・!」

 

 

風死を再び投げつけようとするものの、ベレニケの力が発動して攻撃に力が入らない。

結果、ベレニケが自ら作り出す神聖弓(ハイリッヒ・ボーゲン)に風死は弾かれ、逆にベレニケが撃つ神聖滅矢は避けきれず数発喰らってしまう。そんな状態が数回続き、修兵の体力はかなり消耗していた。

 

実際、この滅却師は地力では修兵と拮抗する程度のあまり強いとは言えない滅却師なのだが、何せ能力が厄介なことこの上ない。最初優勢だとしても、攻撃が上手く通らず、相手の攻撃が通りやすい状況に作り変えられてしまえば、誰だって苦戦を強いられるのだ。

 

 

「ちっ・・・俺には一撃必殺の技なんて無えからな・・・。どうすれば・・・。」

 

 

こんな時、今の上官の拳西だったらどう言うか。

 

『んなモン、オメーの実力が足りてねえだけだ。顔洗って出直せバカ。』

 

(ダメだ、俺の実力不足で情けねえ!!)

 

だったら、自分を可愛がってくれる先輩の隼人ならどう言うか。

 

『黒棺でドドーンとやっちゃえよ!えっ修兵まだ黒棺できな』

 

(ダメだ、あの人自分中心にしか考えねえから参考にならん!!)

 

だったら、その先輩の上官なら何と言うか。

 

『隙を突け、檜佐木。東仙と分かり合えた時の貴公がそうだったではないか。』

 

(もう、これしかねえ!!)

 

 

こうして、修兵は単純ではあるがベレニケの隙を作り出すため、斬魄刀中心の攻撃から、鉄裁の講習会から鍛錬を重ねた鬼道を中心にした戦闘へとシフトしたのだった。

 

 

 

*****

 

 

 

そんな中、突然隊長格の間に吉報が伝令される。

壷府リンが代表して、阿近が入手した情報と共に隊長格へと伝えられる。

通伝刀が、各戦場付近の足元に突き刺さった。

 

 

「死神代行 黒崎一護が現在尸魂界へと向かっています!彼の卍解は、滅却師には奪えません!これは技術開発局が先ほど確認した確定事項です!」

「何と・・・・・・!」

「すぐに・・・口囃子にも伝えやす・・・!」

 

 

伝令神機を取り出して、射場は隼人と通信を繋ぐ。

 

 

「一護が向かってるのか・・・!」

 

 

少なくない傷を負いながらも、拳西は良い知らせにさらに奮起する。

 

 

「へぇ~。阿近のヤツ、なかなかやるやないか。」

「何とか、持ちこたえないといけないですね。」

「あァ。気ィ引き締めていくで!」

「はいっ!」

 

 

廷内を移動する五番隊の二人も、一護の話を聞いて自然と速度が上がる。

 

 

「一護・・・、一護・・・!」

 

 

滅却師にやられたルキアはその知らせを聞き、麻痺でボロボロになった体を叩いて、がくがくと全身震わせながら必死の思いで立ち上がろうとした。

 

 

 

 

射場から電話で一護の来訪の可能性、そして卍解奪略が不可能という確定事項を聞いた隼人は、後者についてどうしても気になってしまった。

 

何故一護の卍解奪略が不可能なのか。

一護の居場所は現在黒腔の中であり、虚圏に元々いたことも射場から聞いていた。

 

一度瀞霊廷から移って虚圏にいる人間、死神の霊圧を探索すると、茶渡、井上、浦原を確認できた。

 

浦原がいるならば何かを見ている筈であり、彼の推測から自分なりに結果を出せるかも・・・と期待したのだが、

 

 

「~~!!こういう時に限って繋がらねえのかよ!!」

 

 

苛立って危うく伝令神機をぶん投げそうになったが、ギリギリの所で抑え込む。

まず一護を尸魂界に送った時点で尸魂界側から誰でも電話があった場合、浦原なら普通出る筈だ。

事情は既に浦原も分かっている筈である。

恐らく、今浦原は電話に()()()()()状況だ。

 

戦闘の真っ最中か、あまり想像したくないが深手を負っているか。

 

ならば夜一に電話・・・と思い電話帳から彼女の名前を探したが、虚圏にいない夜一に電話して何になるのか。

焦って徒な時間を使ってしまうところだった。

 

こうなった以上、自分で考える必要がある。

卍解を奪われた隊長格と、奪われなかった一護との違い。

 

それはすぐに見つけることが出来た。

 

 

 

*****

 

 

 

「流石隊長、良ク耐エた。」

 

 

エス・ノトの矢を受けた一般隊士達は皆、矢がもたらす恐怖によって絶叫、発狂し、皆心が灼き切れて絶命する。

あらゆる可能性が頭を駆け巡り、そのせいで思考がままならず精神が崩壊する。

普通ならその筈だった。

 

白哉は、意思だけで恐怖をねじ伏せ、矢を受けていようとエス・ノトと戦闘している。

これをエス・ノトは、驚異と評した。

 

しかし。

 

 

「オ前ノ心ノ芯ハ既ニ、僕ヘノ恐怖ニ取リ憑カレテヰる。」

 

 

上手く力の入らない腕を使って、静血装を展開する滅却師を斬りつけることなど出来はしない。

そこで初めて、白哉は“本能から来る恐怖”を感じることになった。

 

眼前にいたエス・ノトに、直接鏃を腹へ撃ち込まれる。

 

 

「ッ・・・!」

「足ガ止マッテヰる。」

 

 

喀血する白哉は、理由の無く、際限の無い、体の奥底に眠る心の根源から強引に引き出される恐怖を感じずにはいられない。

それを感じながら発狂せずにいられるのは、現朽木家当主であり、六番隊隊長の矜持を持っているから、何とか持ちこたえているのだ。

 

だが、エス・ノトのもたらす恐怖は、既に白哉の理性を破壊していた。

 

 

「真の恐怖トハ、只々体ヲ這イ上ル夥シイ羽虫ノ様ナモノ、」

 

 

「我々ハ本能カラハ逃レラレナヰ。」

 

 

聖文字(シュリフト)の力を強化したエス・ノトは、白哉により強力な恐怖を植え付ける。

 

体全身を這い回る羽虫。

大量の雀蜂に真正面から襲撃される恐怖。

刺された痛み、雀蜂がもたらす毒が全身を駆け巡る感覚がし、恐怖によってついに白哉も発狂してしまった。

 

 

「う・・・・・・おおおおおオオオオオオ!!!!!」

「隊長!!」

 

 

見境なく振るった斬魄刀の刃はエス・ノトに届く筈もない。

恐怖を十分に植え付けたと感じ取ったエス・ノトは、絶望を与えることに舵を切る。

先ほど奪った白哉の千本桜(せんぼんざくら)景巌(かげよし)で、無残にも全身を斬りつけていく。

 

浮竹や平子が今までに受けた傷とは、比べ物にならない程の深手だった。

 

*****

 

「兄様・・・?兄様・・・!」

 

 

白哉の怪我、霊圧の弱体化を感じたルキアは、自身の怪我をおして立ち上がり、白哉の許へ向かおうとするが、バランスを崩して倒れてから、再び起き上がることは無かった。

 

 

「・・・・・・にい、さ・・・ま・・・・・・。」

 

 

ルキアは再び意識を失い、暗い闇へと呑まれていった。

 

*****

 

全身斬られ地に膝をつくものの、白哉は何とか両手を使って支えにして倒れ込むことはなかった。

その仕打ちに我慢ならず、阿散井は特攻をかける。

 

 

「止めろ・・・恋次・・・!」

「てめえ如きが・・・千本桜を使うんじゃねえ!!!」

 

 

蛇尾丸を再び展開させるも、全く効果を見せない。

滅却師の静血装の力が上回っており、鋼鉄のように皮膚が堅くなっているのだ。

 

 

「弱ヰね。」

「ぐっ!!」

 

 

エス・ノトは解放した卍解を再び操作し、阿散井の体を何百回も斬りつける。

 

 

「がぁぁぁああ!!」

「情ケナヰ、隊長共ガ揃イモ揃ッテ卍解ニ蹂躙サレルトは。」

 

 

しかし、エス・ノトが扱う卍解の通りが白哉に当てた時よりも悪い事に気付く。

白哉の始解がエス・ノトの卍解を僅かながら防いでいるのだ。

 

 

「始解ノ姿デ自分ノ卍解ニ、勝テル筈モ(ナイ)。サッキモ言ッタ。」

 

 

荒い息を吐く白哉に、エス・ノトの全力の卍解が刃を振るう。

千本桜景巌の圧倒的な物量の刃を一身に受けた白哉は、大量の血を流し斬魄刀も握れなくなってしまった。

だが、それだけでは止まらない。

さらなる速さで千本桜景巌は白哉を真正面から貫き、白哉を壁へと縫いとめる。

そこからエス・ノトは、精密な操作で白哉の臓物を一つずつ卍解を使って抉り出していく。

 

胃、肝臓、肺、膵臓、腎臓。

主要な臓器は全て千本桜でグチャグチャに痛めつけて破裂させ、体を支える骨までも木っ端微塵に打ち砕いて抉り出す。

 

それだけでは飽き足らず、エス・ノトは壁に縫い付けられた白哉を千本桜の勢いだけで空中に浮かせ、全方位から刃の奔流を浴びせる。

 

体の方向が絶対に曲がらない向きに曲がり、ボキボキボキ!!と複数の骨が同時に折れる音がした。

残酷などという言葉では足りない程の凄惨な滅却師の仕打ちに、副官の阿散井は終に我慢の限界を迎える。

 

 

「やめろオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!」

 

 

「卍解!!狒狒王蛇尾ィッ・・・!!!」

 

 

卍解の名を口に出そうとした瞬間、阿散井に突然横槍が入る。

その拳打はたった一発浴びるだけで阿散井の体の骨もベキベキ!と砕き、数km先まで途轍もない速度で飛ばされていった。

 

 

「あぁ!?アイツ卍解持ちかよ!だったら奪ってやりゃあ良かったぜ・・・。まあ弱ぇ卍解なんざ奪った所でしゃあねえしなぁ!!」

「オ前ハ既ニ卍解奪ッテイルダロウ。一人ノ滅却師ガ二ツ卍解ヲ奪ウコトハ出来ナい。他ノ奴ニ奪ワセレバ良カッタモノを。」

 

 

今日の戦闘だけで合計300人程一般隊士を殺したドリスコールは、たった一発軽く殴るだけで阿散井を剛速で吹き飛ばす程に力をつけていた。

殴られた阿散井の霊圧は、二人に感知することは出来なかった。

 

 

「つーかオメーいつまで卍解ぶつけてんだよ。もうコイツ死んでんだろ?」

「Overkillノ力ヲ持ツオ前ガソンナ事ヲ言ウトハな。皮肉。」

 

 

とは言うものの、エス・ノトはそのまま卍解をメダリオンにしまいこむ。

空中で斬りつけられていた白哉はそのまま自由落下し、受け身もとらずぐちゃっと肉塊の落ちる音がした。

 

(・・・恋次・・・ルキア・・・・・・、・・・済まぬ・・・。)

 

地にうつ伏せに倒れ込んだ白哉から少し離れたところで、白哉の斬魄刀は砕け散っていった。

 

 

「へぇー、斬魄刀って持ち主が死んぢまえば消えんのか。」

「マダ死ンデナイゾ。肉体ノ損傷ガ激シイカラダロウ。時間ノ問題だガ。」

 

 

その姿を見た滅却師の二人は絶命間近の白哉を気にも留めず、飛廉脚で次の敵を探しに向かった。

 




原作よりも圧倒的重傷です。
一護と話す前から既に斬魄刀が散っています。
藍染戦時の主人公が体に孔を開けられた奴よりも酷い怪我でしょう。

あとエスノトの台詞はまあ読みづらく書きづらいですね。間違いあったら指摘お願いします。さっきチェックしたら白哉と恋次の表記が逆になってる所があって心底焦りました。無意識って怖い・・・。
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