「わぁ~~!つるりんよりもつーるつるだ!!」
「・・・。」
「ねぇねぇどうして髪の毛のばさないの?」
「・・・。」
Lのロイド・ロイドは現在十一番隊副隊長と対峙しているのだが、やちるは一向に戦うつもりなどなく、斑目一角以上に光沢感のあるつるつるの頭に興味津々だ。
「どうやって、頭、ツルピカにしているの?」
「・・・。」
何度かロイドがサーベルで斬ろうとしても全て躱してしまうあたり、さすが十一番隊の副隊長なのだが、やちるは戦闘よりも自分の好奇心が勝っており、会ってからずっとこの調子。
基本的にロイドが聖文字を使う時は、自分よりも力がある特記戦力だけにしようと考えていたのだが、この際やちるにも使うべきか迷っている所だった。
「・・・私と、戦うつもりはないのか。」
「そんなことないよ?でも、今はつるりんよりもつるつるのりゆうが知りたいの!」
「・・・。」
ただ単にバリカンで頭を剃っているだけであり、たまたま剃った日が近いだけでしかないのだが、それを伝えた所でやちるは納得しそうにない。
無言で
いくら相手が子どもだろうと、容赦するつもりは無い。
(!)
自分に向かってくる
「ねぇねぇ教えてよ~~。」
「!!」
さっきまで矢を斬り払っていたやちるは、既にロイドと並走していた。
まさかあの矢を掻い潜って追いかけてくるとは。
ツルピカ頭へのやちるの執念が恐ろしくまで感じてしまう。
しかしやちるの体を見ると、さっきの矢でほんの少し傷を負ったからか死覇装が赤く染まっている箇所も見受けられた。
傷を負って迄知りたがるとは、好奇心旺盛と言うべきか、ただの馬鹿と言うべきか。
一度建物の中に入って距離を取り、態勢を立て直す。
「私が教えれば・・・戦うのか?」
「うん!」
「・・・私が頭を剃っているのは、陛下から聖文字を賜ってからだ。」
「へいか?しゅりふと?」
よく分からない言葉の羅列に、やちるは反芻しつつ考え込むが、結局分からないため考えることをやめる。
「とにかく、第三者から力を貰い受けたのだ。その時から私は、力を効率よく扱うために、頭を剃り始めたのだ。」
実際これは即席の作り話であり真っ赤な嘘だが、やちるは聞き入っていた。
その純粋無垢な瞳が、ロイドに少しの罪悪感を抱かせる。
一連の話を聞いたやちるは、ロイドの話を一刀両断する。
「ふーん。何かかわいそうだね!」
「なっ・・・!可哀想!?」
「だって、本当は剃っていなかったんでしょ?なのに力を貰ってから力のために剃るって、かわいそう!剃らなくてもいいじゃん!」
「陛下から力を賜ったことを私は嬉しく思う!死神風情の子どもに可哀想などと言われる覚えなど、」
「おぅ、ここにいたか、やちる。」
ロイドが瞬時に振り返った先に突然現れたのは、特記戦力の更木剣八。
後ろに二人の若い男性死神もいた。
「弓親、檜佐木、やちるを頼むぜ。」
「了解しました。」
「ゆみちーとひさひさが一緒にいるの、珍しいね!」
「たまたま協力してくれたからな。・・・全部結局更木隊長がやっちまったけど・・・。」
「剣ちゃん、やれやれ~~!」
すぐにロイドは聖文字を発動させて、更木剣八の姿形とともに、力と技術の全てを継承して特記戦力同士の戦闘に入る。
更木の戦いを見るのを楽しみにしていたやちるは、建物から出て始まった更木剣八同士の戦いを、建物の屋上から面白そうに見ていた。
*****
「ぐおっ!!!」
「大前田!!くっ・・・!」
卍解を奪われたことで霊力が著しく落ちた砕蜂は、蒼都相手に完全に後手に回っている。
それに加えて、卍解を奪われた所でテメェみてえなヒョロヒョロ滅却師に砕蜂隊長が負ける訳ねえだろ!なんて挑発を大前田がやってしまったせいで、蒼都は元々発動させるつもりもなかった聖文字を解放し、鋼鉄の体が大前田の体を何度も殴り、蹴り、などすることで大前田は動くのもやっとだ。
大前田に攻撃を重ねる蒼都に不意打ちをかけようとしても、蒼都の体の堅さは砕蜂の攻撃を一切通さない。
瞬閧を使っても、ほぼノーダメージだった。
ただ、砕蜂には鍛え上げた瞬歩の力がある。
蒼都は砕蜂のスピードについて来れているわけではなく、単純に常時展開する聖文字があって砕蜂らの攻撃が通らないのであるため、蒼都の攻撃を躱すこと自体は造作もない。
無口な滅却師は二番隊の二人を相手に何も言葉をかけはしないが、目だけで軽蔑の意思を見せる。
「舐められたものだな、私達も!」
目にも止まらぬ速さで動き始めた砕蜂は、蒼都の目を攪乱させていく。
追いきれていないと確信した砕蜂は、同時に大前田が投擲した
大前田は油せんべいを爆食いするためデブではあるが、砕蜂にとって大前田を持ち上げることなど容易いため、五月頭は一時的に砕蜂の武器と化す。
砕蜂より力自体は弱い大前田の力ではなく、瞬歩の勢いをつけ、さらに瞬閧の力を借りた砕蜂の手で、蒼都に五月頭を直接押し当てる。
こうすれば今までほぼ無傷であっても、ようやくダメージを与えられるのではないかと推測したのだ。
「これなら貴様も唯では済むまい!!」
しかし。
何と、五月頭の方が砕けてしまった。
「なっ・・・!」
「か、堅すぎだろてめえ!」
「
((!))
鉤爪から撃ち出した霊圧が蛇のようにうねり、油断した砕蜂の体を斜めに一刀両断する。
そして蒼都は、鉤爪から数千本の極小の神聖滅矢を後ろに倒れ込む砕蜂目がけて撃ち込み、全身をそのまま蜂の巣のようにした。
「君の名のように、体を蜂の巣にしてあげたよ。二番隊隊長・砕蜂。」
「ぐっ!!」
大前田が後ろに移動して砕蜂の体を支える。
「副官がいないとろくに立つことも出来ないか。その副官も立つのがやっとみたいだけれど。ならばこれを避けることも厳しいだろう。」
「卍解 『
((!!!))
先程まで確かに砕蜂の手元にあった金色の巨大な卍解は、今は滅却師の右腕に装備されている。
「本当に・・・奴等の手に卍解が・・・。」
「呆けている場合ではない!!私の卍解の力を知っている貴様なら分かるだろう!逃げろ!!」
「遅い。」
右腕に巨大な砕蜂の卍解を携えた蒼都は、そのまま躊躇うことなく砕蜂目がけて凶悪な威力のミサイルを撃ち込み、大爆発を引き起こした。
元の霊力の差からか、砕蜂では卍解の使用に3日程間を開ける必要があるのだが、蒼都はそのままもう一度同じ卍解を撃つ余力があったようだった。
「これ程の威力の卍解を受けていれば、生きていることもないだろう。失礼するよ。」
蒼都は砕蜂の霊圧を探るまでもなく、次の獲物を探しに出向いた。
「はっ・・・はっ・・・。何とか、命だけは留められたか。」
「隊長・・・。」
「・・・そんな捨て猫を見る目をするな、虫唾が走る。」
「よかった・・・いつも通りっすね・・・。」
砕蜂と大前田は、あと少し行動のタイミングが遅れていれば、
五月頭の破片を卍解に当てて起爆し、何とか逃げ切ることが出来たのだ。
瞬歩で何とか一定距離まで逃げたお陰で、滅却師の霊圧探査に引っかかることもなく撤退出来た。
完敗し、悔しさしか残らない戦いであったが、命だけは失わずに済んだ。
復讐の機会を得られただけで、御の字としか感じられない程には、敵の強大さをひしひしと感じることとなった。
*****
「あ~~あ!!副隊長でもなけりゃゴミカス以下だなオイ!!辛れぇわほんと!!」
「うっ・・・うぐぅっ・・・。」
六番隊第三席・行木理吉は、トップ二人とは別行動で班を統率していたのだが、突如現れたドリスコールに班員全員殺されてしまい、更に理吉自身も重傷を負い、殺される覚悟を抱かざるを得なかった。
「悪りィ悪りィ、瞬殺してやろうと思ったら、殺し損ねちまったな。苦しませて済まねえ。俺は敵味方獣何だろうと殺せば殺す程強くなる。今日ここまででざっと400人は殺してるな。」
「ううっっ・・・・・・。」
腕、腹に抉られたかのような穴が開き、壁に凭れて座り込むことしか出来ない。喋ろうと思っても、結局うなるだけで言葉として声を出せない。
「この前は200人程だっけな。副隊長一人殺したぜ。今日も副隊長一人やっつけたなァ!赤髪の奴だ。一発軽く殴ってやったらおもしれーぐらい吹っ飛んでったっけなァ!!」
赤髪の副隊長は、一人しかいない。
理吉の尊敬する副隊長が、たったの一撃でやられてしまった。
それにこの前殺したということは、雀部を殺したのもこの滅却師だ。
仇を取らねば。何としても仇を。
しかし、体が全く言う事を聞かなかった。
ドリスコールは両手を構え、再び巨大な矢を形成する。
斑目一角を一撃で戦闘不能に追い込んだ矢とは、霊圧量からして完全に別物だった。
「こんな具合に、なァ!!」
ドリスコールが投擲した矢は、衰弱した理吉には目で追うことも出来ない速さ。
自分も雀部と同様にここで死ぬのかと思えば。
突然目の前に現れた総隊長が、ドリスコールの矢を手で鷲掴みにし、横に払い捨ててしまった。
「そ・・・・・・総、隊、・・・長・・・。」
ようやく意思を言葉として発せられるようになったのと同時に、理吉は意識を失いその場で倒れてしまった。
*****
戦闘中に運ばれてくるのは大体重傷患者であるのだが、外での戦闘の様子に比べて明らかに此処に来る患者は少なかった。
今現在運ばれて来たのは、弓親が運んできた斑目と、清音、仙太郎が運んできたルキアだけだった。
ルキアは四番隊に運ばれる道中で清音が回道を使ったこともあり、あとは未だ強く残る麻痺の治療ぐらいであったのだが、斑目は体の損傷が激しく、護廷十三隊復帰の可否すら危ぶまれる状態だった。
伊江村とつい最近三席に昇進した花太郎、二人の三席が斑目の治療を懸命に行っていたのだが、
「今、私達がやれるのはこれで精一杯だ・・・。」
「ッ・・・!」
「虎徹副隊長を呼ぼう。だが、隊長と副隊長でも治せない傷を負って搬送される隊長格がこれから出てくるやもしれん、覚悟するしかないぞ、山田。」
「・・・はい。」
二人の力で斑目を完全に治すことは出来ず、副隊長に頼むことにした。
しかし、外で隊長格の霊圧を探ると、既に消えている者も複数いるのだ。
伊江村が確認しただけで、六番隊隊長・副隊長、十番隊隊長は既に見つからない。
二番隊隊長・副隊長と、九番隊、十番隊副隊長も、ほんの僅かな霊圧を感じるだけだ。
その他にも隊長格全員・少しずつ皆霊圧が弱まっていた。
呼ばれてやってきた勇音も、回道で斑目を治療するものの、回復の兆しは見られない。
「残念ですが、一度様子見をして、再び治療を行うしかないでしょう。」
「そうですか・・・。」
勇音の言葉を聞いた花太郎は、静かな不安を心の隅に感じるが、仕事に集中することで何とかそれを抑え込む。
(大丈夫だ・・・!一護さんが来てくれる!)
花太郎にとっての希望の光は、最早それしか無かったのだ。