「・・・っぶねえ、マジで死んでたぞ・・・。」
九死に一生を得た拳西は、起きてそのまま立ち上がろうとするが、上手く体が動かず再びその場に座り込んでしまう。
「ホンマ、オレが来んかったらアカンことになってたで、感謝せえよ拳西。」
「悪いな、真子・・・。」
「桃、拳西の手当てしたり。」
「はいっ!」
立役者であった平子の援護によってマスクの視界は上下左右全て真逆のものへと変わり、マスクが投げた大岩は拳西とは真逆の方向に投げられた。
これにより本来死ぬはずだった拳西は岩に潰されることなく生き残り、マスクはそれに気づかずそのまま煙の上がる方向とは真逆の方向に向かって飛んでいった。
「情けねえ・・・全然歯が立たなかった。」
「卍解奪われんかっただけマシや。卍解奪われた六番隊と十番隊の隊長は霊圧消えとる。生きてるんが不思議な程の重傷や。砕蜂ちゃんも意識はあるが大怪我しとるわ。オマエの怪我でもまだマシな方やぞ。」
「おいマジかよ・・・壊滅的だな・・・。」
治療を行っている雛森も、砕蜂の手当てで霊力をそれなりに使ったからか疲れの色が出ており、霊圧に揺らぎも見える。
己の治療に霊力を使い果たされては決まりが悪いのもあり、立ち上がって瞬歩が普通に出来る程度に回復した後は、雛森の治療に感謝しつつ次の行動を考え始める。
瀞霊廷内の霊圧を探ると、現在まともな戦闘を行っているのは七番隊だけだ。
現在地から場所はかなり遠いが、間に合うだろうか。
「お前達はどうするんだ?」
「一先ずローズと合流するわ。あのワンコ隊長の援軍、任せてええか?」
「おう。」
「廷内探ってもマトモに動けるヨソの隊長は砕蜂ちゃんとローズぐらいや。・・・ったく、一護のヤツいつ来るっちゅうねん!」
「確かに、連絡からやけに遅いですね・・・。」
このままでは戦局にカタがついてしまい、尸魂界は文字通り全て崩壊してしまう。
死神代行の救援に頼らざるを得ない現状は非常に悔やまれるが、どんな手でも借りないと尸魂界はさらに酷いことになってしまう。
ローズと合流次第五番隊は先ず十二番隊へと向かい、そこから七番隊の戦闘に介入することに決めた。
二手に分かれ、それぞれの向かう場所へと瞬歩で駆けて行った。
*****
再び時は遡る。
「うーわっ、雨降り始めたし、サイアク・・・。ねぇまだやんの?」
「当ったり前でしょ!!あと少しで全員殺せるってのに、帰るワケにはいかないわよっ!!」
「じゃああたし帰ってもいい?」
「ダメよ!てか
「じゃああんたの戦いに参戦させてよ。」
「それは絶対ダメ!!!!!その場で
「はぁー・・・。ダメだこりゃ。」
バンビエッタの霊圧を探して見つけた時にキャンディスは、一回遠くから様子を見たら適当にどっか行くかと考えていたのだが、逆にバンビエッタに見つかって「あたしの側でリーダーの戦いぶりを見てなさい!」と言われ、渋々付き合わされることになり現在の状況となっている。
その癖手を出そうとするとあたしの戦いだから何もするなと言われてしまい、余計に一緒にいる意味が見いだせなくなってくるのだ。
ワガママの過ぎる支離滅裂な言動にイラっとくるが、何とか抑え込む。
せっかく巻いた髪の毛が雨で濡れて大変なことになるのが嫌なので出来れば早々に退散したい。ちゃちゃっと戦闘を済ませてほしいところだ。
今残っているのは、満身創痍の隊長副隊長しかいないのだから。
二人についていった席官は全員死亡し、残る狛村と射場も数多くの怪我を負っている。
特に射場は重傷で、左腕を吹き飛ばされている。狛村は右耳を吹き飛ばされた。
それでも、二人は決して倒れることは無かった。
現時点で瀞霊廷を震わせている山本総隊長の霊圧が、二人を立ち上がらせる原動力となっているから。
「ぬぅぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!おらぁぁぁぁああああ!!!」
「だーかーらぁー、片腕であたしに張り合おうって魂胆すら馬鹿げてるのよ。」
腕を吹き飛ばされた激痛に耐えながら射場は再び斬魄刀で近接戦闘を始めるが、両手を揃えてほぼ無傷のバンビエッタ相手に張り合える筈もない。
少女相手に鍔競り合いに負ける己の姿があまりにも情けなくて、悔しさのあまり噛んだ唇からも血がでてしまう。
さらにバンビエッタが左手から投げた霊子の球が、鍔競り合いに負けて空中でバランスを崩した射場の左足の指に当たり、左足の指が全て弾け飛ぶ。
「ぐっ・・・はっ・・・はっ・・・、何て奴だ・・・!」
向こうの攻撃を受ける度に自分の体の部位が吹き飛んでしまい、平衡感覚を失う異様な感覚から射場は内心気持ち悪くなってくる。
遠距離から天譴で巨大な剣戟を振るうものの、それらもバンビエッタの技で爆発してしまい、いつまで経っても劣勢なのは変わりなかった。
次にバンビエッタは、バックルから
「これなら弱ったあんた達なんか一網打尽!」
(!)
鏃が原子爆弾を模した形の神聖滅矢を可能な限り連射し、二人もろとも蜂の巣にしようとバンビエッタは画策する。
「鉄左衛門!!」
近接戦闘がメインの射場を守る為狛村は射場の体を天譴の作り出す拳でバリア代わりにするが、無防備となった狛村には矢の雨が降り注ぐ。
「隊長!!」
「構うな!行け!!」
体の至る所に矢で射抜かれた穴が見られる狛村は更に深手を負ってついに膝をつくが、それでも気力で再び立ち上がる。
矢の降りかかる範囲から外れた射場はそのままバンビエッタ目がけて再び斬りかかろうとするも、
「あのさ、何の策も無しにあたしに突っ込んでくるのホントバカでしょ!」
(!)
滅却師の少女が両手に霊圧を籠めているのを見た射場は、思わず斬魄刀を体の前に向けて防御の態勢を取ってしまう。
その行動を読んでいたバンビエッタは迷わず斬魄刀めがけて霊子の球を撃ち込み、射場の斬魄刀を爆散させてしまった。
「なっ・・・!儂の斬魄刀が!」
「今度こそ、避けられないわよっ!!」
再び両手に霊圧を籠めたバンビエッタは、先ほどよりも濃度の高い球を油断した射場に向けて思いっきりぶつけた。
腹と右脚に霊子の球が直撃し、射場の体は爆発してしまった。
「・・・がっ・・・はっ・・・はぁっ・・・。」
「鉄左衛門!!!」
地に落ちていく射場から、みるみるうちに感じられる霊圧が弱まっていく。
精一杯の瞬歩を使って射場の体を寸での所で受け止め、一度岩陰に射場を休ませるようにする。
「隊長・・・すんません。ヘマやらかして・・・。」
「喋るな。儂が何とかする。もう儂らしか残っていない以上、儂も手加減するつもりなど、」
そう、狛村が射場に言葉をかけている途中で、
山本総隊長の霊圧が、瞬く間に瀞霊廷から消失した。
「――――――――」
「た・・・隊、長・・・。」
多大なる恩義を抱いている総隊長の死。
それを感じ取ってしまった狛村は、賊軍の滅却師に対する怒りを遂に爆発させる。
副官の射場ですら、狛村から発せられる霊圧にアテられそうになる程だ。
「鉄左衛門、暫し待っていろ。終わらせてくる。」
その言葉を最後に、狛村は射場の許から離れて空中に浮かぶバンビエッタと対峙する。
「――――卍解 『黒縄天譴明王』!!!!!」
怒りで我を忘れた狛村は、卍解奪略の危険性よりも自らの攻撃を優先し、黒縄天譴明王を召喚して先ほどと比較にならない程の圧倒的な力を使ってバンビエッタを殺しにかかる。
狛村の卍解を見たキャンディスはメダリオンを取り出そうとしたが、
「ダメよ!!こいつはあたしの
「あーはいはい、分かったよ。もうあたし何もしないから。」
その言葉を最後にキャンディスは気付かれないようにその場を離れる。
バンビエッタの完聖体の巻き添えを喰らわないようにするために。
その様子を見るまでもなく、狛村は黒縄天譴明王で縦に二人のいる場所を斬り払う。
藍染戦の時に比べて速度は上昇したものの、滅却師の飛廉脚で躱すことは造作も無かった。
対するバンビエッタは、完聖体によって一度に操作できる霊子の球の数が大幅に増加し、数十個同時に翼から繰り出すことが出来るようになってしまった。
狛村にとって、信じられない程相性の悪い相手に当たっていたことに気付く由も無かった。
様子見を兼ねて最初にバンビエッタは翼からわざと威力を弱めた霊子の球を発射させ、狛村の卍解の刀に当ててみる。
いくら以前より速度が上がったと言えどもバンビエッタにとっては狛村の卍解の動きは鈍重であり、狙いを定めずとも撃ち出した球を当てることが出来た。
爆破させた場所を見たバンビエッタは手応えを感じると共に、この卍解の大きなデメリットにも同時に気付いた。
巨大な卍解を傷付けると、
先程爆破した卍解の刀の一部は砕け散ってしまったのだが、同様に狛村本人が持つ斬魄刀も全く同じ箇所が砕け散っているのをバンビエッタは発見した。
(ナルホドね。こんなのあたしが負けるワケないじゃん。)
バンビエッタがとった行動は至極単純なものだった。
翼から、出しうる限り全て、最大威力の爆撃の球を捻出して狛村の卍解に集中攻撃した。
「バイバイ、ワンちゃん。」
(!!!)
狙いに気付いた狛村は瞬時に卍解を解こうとするが、遅かった。
バンビエッタの爆撃が黒縄天譴明王に降り注ぎ、明王は光に包まれると共に大爆発。
瀞霊廷の外にまで広がる程の爆音、衝撃波が襲い掛かると同時に、狛村の身体も明王と共に爆破されてしまった。
「た・・・隊長・・・!!!!」
岩陰に隠れていた射場は衝撃波で吹き飛ばされることは無かったが、現場を見た射場は言葉を失ってしまう。
見た先に、狛村の霊圧は既に無く、斬魄刀の柄の欠片が残っているのみだった。
そこを中心に血飛沫が広がり、骨や筋肉と思われる物も全てが爆破されて木っ端微塵に吹き飛ばされていた。
ほんの一瞬にして、狛村左陣は絶命してしまった。
隊長の死を実感した射場は身体をがくがくと震わせ、何も行動を起こせなくなってしまった。
数十年上官として付き従ってきた、絶対的な信頼を寄せる男が、滅却師の力で無慈悲にも一切の形を留めることなくその生涯を終えることになったのだ。
自分はどうすればいい。このまま戦うべきか、それとも、逃げるべきか。
しかし、逃げるにしても片足を失っている以上、追いつかれてしまうのではないか。
戦うにしても、斬魄刀が爆発し、もう鬼道しか出来ないのだ。
だったら縛道で滅却師を捕まえて、
「あんたもバイバイ、グラサン男。」
背中に指が触れる感覚がしたところで、射場の意識は暗闇に包まれる。
バンビエッタが指で背中に直接触れて、射場は全身爆発してしまったのだった。
「あーあ、結局あたしが完聖体すれば死神倒すことだって余裕じゃん!やっぱメダリオンキャンディに渡して正解だったわ。」
ユーハバッハ以外に護廷十三隊の隊長を
再び空中に浮かんで周りの様子を見ると、少し離れた所で
「さってと、キャンディと一緒にあたしもあっちに―――――――」
その言葉は、突如空中から響き渡る爆発音によって遮られる。
(!)
爆発の方向を向いたバンビエッタは、そこに何らかの霊圧を感じ取ったものの、その霊圧は一瞬にして再び消え去る。
「何よ今の・・・・・・!?」
しかし自らに襲い掛かってくるわけでもなく、近くを探ってもなにも変化が無い。
別の滅却師の元に向かってくれていればいいのだが、
(まさか霊圧消したままあたしに攻撃してくるってこと!?)
最大まで警戒心を強めたバンビエッタは、再び翼から霊子の球を生成する。
「だったらこの辺全部更地にしてやるわ!!」
最大個数の爆弾を複数回ばら撒き、辺り一帯は度重なる爆炎によって文字通り更地と化してしまい、七番隊の死体含め全てがその場から消失することとなった。