爆発によって更地となった現場にようやくたどり着くと、すぐに隼人は力を使用する。
霊圧の残滓の測定から、戦闘状況の割り出しを始めた。
「僕が遠くにいた時の隊長と射場ちゃんの霊圧に比べると、他の席官の霊圧反応は段違いに弱いですね・・・。」
「・・・早々に退場しちまったってことか。」
「そういう事ですね。僕が行けば何か変わったのかな・・・。」
そもそも敵の残した霊圧が強すぎるというのもあるだろうが、席官が無意識に残した霊圧は普段のものに比べるとほんのごく僅かで、かなり集中しないと感知できないレベルだった。
何も出来なかった悔しさから、自然に言葉尻が揺れていく。
「・・・隊長と、射場ちゃんの、霊圧を探します。」
「おう。」
再び集中して検索対象を切り替える。
毎日七番隊で感じていた、日常の一部にさえなっていた霊圧を測定する。
「・・・・・・霊圧、ありましたよ。」
しかし見つけたのは、
藍染が鏡花水月で偽造した死体が放つ霊圧と、根本の構造こそ違うが中身はほぼ同じ。
岩陰に一つ、それと少し離れただだっ広い更地に一つ、死後放たれる霊圧の特徴と一致する霊圧が存在した。
「七番隊隊長、副隊長、両名共に、死亡が確定しました。」
「・・・。」
自分の言葉で二人の死亡を改めて実感した隼人は、再び俯き体を震わせる。
泣いてしまうのは時間の問題。必死に抑えているが、今にも視界が揺らいでしまいそうだ。
隣で立っていた拳西は、震える隼人の左肩にポンと触れ、次の指示をする。
「残った敵の霊圧を解析しろ。俺でも感じるぐらいだから簡単に出来んだろ。」
「・・・・・・。」
返事こそしないが、言われた通りにすぐに行動を移す。
目視では辺り一帯が更地になっているが、霊圧方面から解析するとでたらめにばら撒かれた爆撃が象徴的だ。
一人の滅却師が空中から放った爆弾がここまで無尽蔵な被害をもたらすことに強いショックを覚える程だ。
もう一人滅却師がいた痕跡を確認できたが、その滅却師は一切の攻撃行為をしていない。
とにかく爆弾をばらまいた滅却師の霊圧解析は完了した。
「・・・・・・許せん・・・。許せません・・・。こんな形で、隊長達がいなくなるなんて・・・!」
「・・・これが戦争だ。お前の事情なんか関係なしに、奪われるモンは奪われるんだよ。」
雨に紛れて傍目には分からないが、声音からして我慢できなくなったのは明らか。
手で目を擦り涙を拭うが、それでは追いつかないぐらいに涙が溢れてしまう。
「嫌だよ・・・行かないでよ。何で全部、無くなっちゃうんだよ・・・。何で・・・」
いつも一人置いて行かれるんだろう。
いつも置き去りにされるんだろう。
こういう時に限って、隊内で過ごした日常と思い出が一気にフラッシュバックする。
四苦八苦しながらも、新隊長となった狛村と隊の運営を頑張っていた昔。
副隊長として射場が加入し、隊全体が盛り上がった時のこと。
旅禍騒動や藍染の乱が終わってから、ようやく取り戻した日常。
これからも積み重ねられる日常は全て消え、今までの日常も過去の思い出でしかなくなる。
また独りで苦しまないといけないのだろうか。
瀞霊廷もボロボロになって、こんな状況で自分は護廷十三隊の務めを果たせるのか。
そんな事を口に出せば、絶望の重圧で無理やりにでも押し潰されて、進むことができなくなってしまいそうだ。
恐怖で言葉が出てこない隼人に、隣の拳西から繰り返し同じように何度も奮起の言葉がかけられる。
「だから言ったんだよ、強くなれって。どんな理由でも構わねえ。復讐だろうが何だろうが関係ねえ。お前の上司を殺した奴等に、お前が仕返ししろ。それでいいだろ。」
「・・・・・・。」
尚も黙る隼人に、再び喝を入れる。手を出す必要などない。
乱暴に胸倉を強く掴んで目を合わせる。
「お前はこのままでいいのかよ!!!口囃子隼人!!!!!!」
「・・・・・・嫌です・・・。絶対に嫌ですよ!!強くなるためなら何だってやってやる!厳しい修行だろうが何だろうが、隊長と射場ちゃんがどんな思いしていなくなったかに比べたら何のことも無い!!絶対絶対復讐してやる!!!じゃないと、じゃないと・・・。」
「もう、生きてるのも辛いよ・・・・・・。」
タガが外れたかのように、隼人は大声で泣き始め、遂に立つこともままならなくなってしまった。
子どものように大声で泣きじゃくるが、いつも泣くなと言ってきた拳西も今回は何も言わなかった。
ちょっと無理矢理に隼人を背負い、四番隊にまで連れて行く。
その間もずっと言葉にならない慟哭を上げ、隊長羽織の肩の部分をグショグショにしていたが、そもそもこの羽織自体が前の戦闘でボロボロなので拳西にとってはどうでもよかった。
*****
「こちらです。先ほどの虚圏の浦原喜助より送信された霊打信号によれば、浦原喜助、井上織姫、茶渡泰虎、3名共に無事とのこと。まだ音声での連絡はついていませんが、つき次第追ってご報告致します。」
「・・・そうか・・・、良かった・・・。」
四番隊隊舎の入り口の広間で十二番隊隊員からのお知らせを聞いた一護はホッと一息ついたが、外から入って来た死神の大きな泣き声に、思わず顔を向けてしまう。
拳西がおぶってきた隼人が、大号泣していた。
怪我を負った死神が無傷の死神を背負っているのは中々異様な光景である。
理由は既に治療の済んだ京楽から聞かされていた。
七番隊の壊滅。
残った隊員は、三席の隼人と、重傷を負った数名の一般隊士だけ。
一般隊士は奇跡的な生還だったらしい。
「彼だけは、そっとしておいてくれないかい?・・・ボクも、かけられる言葉がみつからないんだ・・・。」
瀞霊廷の状況がどうなっているのかを聞きに行った時に、最後に京楽が一護に伝えた言葉だった。
四番隊舎で廷内の霊圧を探っていた時に、狛村と射場のいた場所から一切の霊圧が消えていることで、京楽はその場にいた七番隊が全滅したことに気付いたのだ。
遠からず近からずの距離で隼人を見ていたが、子どものように大声を上げて泣いている姿から、一護が何の役にも立てないことはすぐに分かる。
「六車隊長!すぐに処置を行います!」
「とりあえず隼人に鎮静剤打っといてくれ。強い睡眠薬でもいい。一旦落ち着かせてやってくれねえか。」
「了解しました。」
別の隊員が持ってきた睡眠薬を隼人に打って一旦寝かせ、そのまま小部屋の病室に運んでいく。。広間の椅子で拳西も処置を受けた。
雛森からある程度の治療をしてもらったこともあり、四番隊では主に怪我の止血など簡単な処置で済んだ。
「やっと戻ってきたね、拳西。」
「ああ、参ったなほんと。」
他の隊長格に比べると何とか軽い傷で済んだローズが、処置の真っ只中の拳西の隣に座って話を続ける。
「お前も・・・いや、悪い、言うべきじゃなかったな。」
「イヅルのために強くならないとって思ってるよ。・・・ハヤトの状況と比べたら、皆何も言えなくなるよ。」
「あいつのあんな顔、初めて見たぞ。無理もねえが、よっぽど堪えてただろうな・・・。」
総隊長の死によって一番隊は隊長、副隊長両方ともいなくなってしまったが、奇跡的に一番隊は生き残った隊員が最も多く、皆もちろん総隊長の死にショックは受けるが、新たな総隊長を迎える心の準備も同時並行で行っていた。さすがはエリート集団とでも言うべきか。
当然、人の心が無いというわけではなかった。
六番隊も隊長副隊長両方とも瀕死だが、絶命せずまだ生きている以上、隊士達の士気が極端に落ちることは無かった。
十番隊も、日番谷の怪我は吹き飛んだ体の縫合など、大手術を現在敢行中ではあるが、隊員達は皆生きて帰ってくると信じていた。
十一番隊でも、既に手術を終えた斑目一角だけでなく、今しがた更木剣八の手術が終わり、二人とも一命を取り留めたという四番隊の言葉に皆雄叫びを上げて泣いて喜んでいた。
それに比べると。
隊長副隊長どころか、自分以外の席官全員を失い、殆どの隊員も失い、一人取り残された形となった隼人の気持ちなど、どう推し量ればいいものか。
ローズには到底考えが及ばなかった。
絶望的な状況に、ため息をつくしかなかった。
「なぁ、口囃子さん、大丈夫・・・なワケねえよな・・・。」
隊員からの話も終わって手持無沙汰になった一護が、二人の会話に入ってくる。
「俺も京楽さんから聞いたぜ。何か形見のモンとか持ってねえのかよ?」
「何も持ってなかったな・・・。向こうは完全に更地だったし、探しても何も残ってねえよ。」
「そうか・・・。」
「とにかく、一護が来てくれなかったら、七番隊みたいに壊滅的被害を受ける隊が増えていた筈だからね。来てくれてありがとう一護。」
「やめろよ。今回俺何も出来なかったぞ。」
呟くかのように喋った一護が、何かを押し込めようとしているようにローズは見えたが、少し訝しみつつ特段気にせずにいると、平子が来たことでその会話は終わりを告げる。
ルキアと阿散井の治療が終わり、一護は真っ先にそっちに向かって行った。
これで第一次侵攻は終わりです。
17話・・・結構長くなりましたね・・・。
こちらで戦績をまとめます。
一番隊隊長・山本元柳斎重國、副隊長・雀部長次郎忠息 両名共に死亡
二番隊隊長・砕蜂 重傷 副隊長・大前田希千代 砕蜂よりも若干怪我は少なめ
三番隊隊長・鳳橋楼十郎 軽傷 副隊長・吉良イヅル 死亡
五番隊隊長・平子真子 全体の平均的な傷の量 副隊長・雛森桃 軽傷
六番隊隊長・朽木白哉、副隊長・阿散井恋次 両名共に瀕死
七番隊隊長・狛村左陣、副隊長・射場鉄左衛門 両名共に死亡
八番隊隊長・京楽春水 平子以上、砕蜂以下の怪我
九番隊隊長・六車拳西 京楽以上、砕蜂以下の怪我 副隊長・檜佐木修兵 拳西以上、砕蜂以下の怪我
十番隊隊長・日番谷冬獅郎 瀕死 副隊長・松本乱菊 大前田と同程度の怪我
十一番隊隊長・更木剣八 瀕死 副隊長・草鹿やちる 無傷 三席・斑目一角 瀕死 五席・綾瀬川弓親 軽傷
十三番隊隊長・浮竹十四郎 大前田と同程度の怪我 副隊長・朽木ルキア 砕蜂と阿散井の間の怪我
怪我量としてはざっくりまとめると、白哉=日番谷=剣八=一角=阿散井>ルキア>>>>>>>>砕蜂>大前田=松本=浮竹>修兵>拳西≧京楽>平子>>ローズ≧弓親>雛森>>>>>>やちる
です。正直この中でも白哉とシロちゃんはかなりヤバめですが・・・。
※一護は、拳西や京楽さんと同じくらいの怪我の想定でいます。
また、隊別の被害状況では、七番隊が最も甚大な物になっています。
隊長副隊長の死亡だけでなく、主人公以外の席官全員死亡、隊員もほぼ全員死亡で、隊自体の存続すら危ぶまれるような状況です。
滅却師の破壊活動は瀞霊廷の中心地で行われましたが、七番隊はまさにその中心地と言っても過言ではなく、隊舎も現時点で唯一爆発しており、住む場所すら失いました。
原作以上にかなり絶望的になってしまいましたが、立て直せるのでしょうか。
次篇ですが、奇跡的に間に合ったのでこのまま連載します。
ただ、場合によっては途中で一旦更新停止になるかもしれません。色々調整したため、消したはずの部分が残ってとんでもないネタバレになってしまったら大変なので・・・。