ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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計略

零番隊と別れた後。

 

 

隊長達がぞろぞろと帰る中で隼人はどうしようと考えた挙句、結局拳西についていこうとしたのだが、拳西の背中を追いかけようとした瞬間、京楽から呼び止められてしまった。

 

 

「隼人クン、今から時間あるかい?」

「はい、大丈夫ですが何か・・・?」

「ちょっと、来てもらえるかな。大事な話があるんだ。」

「・・・?了解しました。」

 

 

七番隊が崩壊し、一切の予定が無くなった隼人にとって言葉は悪いが好都合であったため、京楽の話を聞くことにする。

 

 

一兵衛から貰った本と、京楽からの話をきっかけに、遂に隼人は今までの自分と訣別する時がやって来た。

 

 

 

*****

 

 

 

京楽に連れられて来た場所は、一番隊舎ではなく、八番隊舎だった。

いつも京楽に用がある時に通る道のりと全く同じなのだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことに頭をひねる。

隊首室に入ると、いつもはお菓子が置かれている来客用の机に、文机程の大きさの金庫が置かれていた。

 

 

「そこに座ってもらえるかい?()()()()()()()()()()()()、気にしなくていいよ。」

「えっ。人払い?」

「大事な話だもの。あまり聞かれたくないでしょ。」

「まぁ・・・そうですね。」

 

 

いつもの優しい表情で言われると、違和感があっても不思議と納得してしまう。

京楽が座るのを待っていたが、どうぞ、と手を差し出されてしまったため、少々憚られたが京楽よりも先に席に着く。

いつものソファなのに、何だか落ち着かなかった。

 

 

「じゃあ、単刀直入に言わせてもらうよ。」

「はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君、これから七番隊隊長になってもらうから。ヨロシクね。」

「・・・・・・・・・・・・はい?」

「七番隊隊長は、これから君が務めることになるから。」

「はいいいいいいいい!?!?!?!?!?」

 

 

突然すぎるぶっ飛んだ要求に、ピシャアアアアアン!!!と雷が背後に落ちた漫画の登場人物のような驚き顔をする。

 

 

「ちょっと待って下さい!僕、卍解出来ませんよ!?」

「知ってるさ。だから卍解を使えるようになってもらおうと思って、話をつけるためにここに呼んだんだよ。」

「いや、でも・・・。」

 

 

と否定しようとしたが、京楽の目はそれを許さなかった。

 

 

「ごめんね、拒否権は無いよ。君には今すぐ、卍解修行に入ってもらう。」

「いくら何でも急すぎます!もうちょっと段取りって物が・・・。」

「そんな暇はもうないんだよ。」

 

 

冷ややかな声で、京楽は隼人がこれから反論の為に考えようとする言葉含めた、全ての思考を一蹴する。

一隊長の京楽は、未来の隊長として隼人と対話を続ける。

 

 

「今のままで瀞霊廷が次の侵攻に持ちこたえられるとは思えない。戦力増強の為には、卍解を奪われた隊長の代わりに、卍解を使える死神が必要だ。基礎霊力の底上げになるからね。」

「しかし、何故僕が・・・?」

「君の扱う術の力は、既に並の隊長の域を凌駕している。なのに君は、()()()使()()()()。だったら、分かるよね?」

 

 

「君が卍解出来るようになったら、更木隊長に匹敵する程の死神になるとボクは読んでいるんだ。朽木隊長らが戻ってくるまでの間、空いた穴を埋めてお釣りがくるぐらいには強くなるとボクは思うよ。」

 

 

息を詰まらせる隼人に、更に京楽は続ける。

 

 

「次の侵攻の際の君の役割は、隠れて敵の霊圧を読むことではない。堂々と敵を倒すことだ。君が、()()()()()()()となってボク達は戦闘を行う。それがボクの策の中心的な考えだよ。」

「僕が・・・中心に・・・?」

「うん。今のままでは君は滅却師に勝てない。だから君を強くする。むしろ、勘の鋭い敵さんは君の潜在能力に気付いている筈だよ?」

 

 

京楽の言葉で、あのピエロみたいな振る舞いの滅却師の発言が再び思い出された。

 

 

“本当の力”

 

 

卍解に至ることで、この意味がようやく分かる筈だ。

じわじわと心の中で意思が固まろうとしてくる中で、京楽は懐に手を入れて、一枚の封筒を取り出した。

 

 

「これは七番隊隊首室の引き出しの中に入っていたんだ。」

 

 

差し出されたのは、何の変哲もない茶封筒。中には固形物が入っているようだ。

糊付けは既に剥がされており、京楽から先に見ちゃってごめんねと言われたが、別に怒る程の事でもない。

封筒に手を入れると、金庫用の鍵が出てきた。

 

 

「この金庫、どこに?」

「隊首室の奥の方にあったよ。見つからないのも無理はない。戦後に整理している時に偶然見つけたんだよ。」

「はぁ・・・。」

「開けてみるといい。」

 

 

言われるがままに鍵を差してひねり、カシャンと金庫の中から音が聞こえた。

金庫を開けて中を確認した瞬間、はっと息を呑んで刮目する。

 

 

中に入っていたのは風呂敷包みだが、縛りは緩く、中の物が見えている。

 

 

 

『七』の数字が書かれた新品の隊長羽織が、金庫の中に入っていた。

 

 

畏れ多くて羽織ることは出来なかったが、金庫から取り出して羽織を広げてみると、ピッタリ自分のサイズに合っていた。

白縹(しろきはなだ)の裏地を持った袖付きの羽織。

 

 

「これを・・・隊長が・・・?」

 

 

京楽に答えを求めたが、どうやら隼人が隊長羽織を取り出した後の金庫の中を見ているようだった。

「あの・・・京楽隊長、」と返事を求めたが、代わりに京楽は金庫の中に再び手を入れて中にあったものを取り出した。

 

 

隊長羽織を包んだ風呂敷包みの下に、別の封筒があったのだ。

瀞霊廷にごく普通に売っている、レターセットの封筒だ。中には勿論便箋と思しき紙が入っていて、少し厚くなっている。

 

受け取った隼人は封筒から手紙を取り出し、書かれていた字を見る。

まぎれもない、狛村の筆跡だった。

 

 

「そんな・・・何でこんな、ベタな事・・・。」

 

 

声を震わせ手紙を掴む力が強くなり、少し紙に皺がついてしまうが、それでも必死に文章を目で追った。

 

 

 

 

【貴公がこの手紙を読む時には、儂は既に死んでいるのだろう。儂が七番隊に来て80年程経ったが、貴公にはいつも助けられて来た。仕事では勿論だが、黒崎一護と戦闘した時、儂は貴公の索敵能力を使う事で、あの少年を追い詰めることが出来た。東仙が尸魂界を裏切った時も、貴公は一歩引いた立場で物事を考えてくれた事、改めて感謝する。】

 

 

涙で手紙の字が滲みそうになるが、何とか左手で目を擦りつつ手紙を汚さずに読み進める。

 

 

 

【空座決戦では、貴公が藍染と一人で戦うようにさせてしまい、あのような大怪我を負わせてしまったのは、今でも儂は深く悔やんでおる。部下の命を危険に晒すなど、儂は隊長失格だと考えていた。】

 

 

【だが、それと同時に貴公はその能力をもっと高みに持っていくことが出来るのではないかと考えるようになったのだ。一太刀でやられた儂とは違い、藍染相手に粘りを見せた貴公は、儂をも超える死神になるのではないかと考えた。】

 

 

「・・・・・・隊長・・・。」

 

 

声を震わせながらも、2枚目の便箋に指を伸ばしてめくる。

 

 

【ここからは儂の願いだ。貴公はまず、卍解を習得しろ。貴公の力があれば、既に斬魄刀の具象化には至っている筈だ。斬魄刀を屈服させ、卍解を手にするのだ。そして、儂の跡を継げ。次の七番隊隊長は、お前が務めるのだ。】

 

 

「・・・・・・、」

 

 

狛村からの願いを知らされ、より意思は強くなってゆく。

 

 

【これを着て、儂の跡を継いでもらうのが、儂のささやかな願いだ。ここからは、お前の好きなように動け。儂の部下として身を粉にして働いてくれた分、今度はお前が自由に羽搏くのだ。儂を助けられなかったなどと、気に病む必要など無い。儂の死を踏み台にして強くなるのだ。】

 

 

【何があっても、儂がお前を見守っておる。自分の道を切り開いていけ、隼人。】

 

 

 

「・・・了解しました。」

 

 

決意した隼人は、強い意思を携えて京楽の顔を見据える。

 

 

「卍解を習得し、僕が隊長になります。」

「よく言った。それじゃあ君は、卍解習得後、和尚からもらった鬼道の本をモノにしてくれるかい?」

「はい。」

「七緒ちゃんには鬼道衆と協力して滅却師の力の残滓から対抗できる鬼道を作ってもらってるから、全部終わったら七緒ちゃんにその鬼道を教えさせるよ。」

 

 

「次の侵攻までに、君は自分が強くなる事だけを必死に考えるんだ。」

「はい!」

 

 

威勢よく返事をして隼人はその場を後にしようとしたが、再び京楽に呼び止められた。

 

 

「一応確認しておきたいんだけど、具象化、出来るんだよね?」

「はい。ちょっと待って下さい。」

 

 

言いつつ、隼人はその場で斬魄刀に力を籠めて呼び起し、こちらの世界に桃明呪(彼女)を召喚した。

思ってもみない美少女の出現に、京楽はいつも通りやや鼻の下を伸ばす。

 

 

「あらあらあら、これまた可愛い斬魄刀だこと。七緒ちゃんには敵わないけど。」

「た、隊長・・・さすがにそれはちょっと・・・。」

【・・・・・・気持ち悪い。応援出来ない。】

「あぁ・・・。」

 

 

初対面の女の子にキモイと言われて、流石に男として落ち込まずにはいられなかった。

ため息をついてズーン・・・と負のオーラを漂わせ、しゃがんで俯きそっぽを向く。

総隊長から悲しいおじさんへと一瞬で変貌を遂げた京楽に何とかフォローを入れて回復させた。

 

 

「では気を取り直して、貴女もボクと狛村隊長からの願いを目にしたと思うんだけど、修行の場所として八番隊の屋外演習場を使ってほしいんだ。それで―――――」

 

 

後を続けようとするが、斬魄刀によって遮られた。

 

 

【大丈夫。ここでこばやしを修行させる。】

「えっ?ここ隊首室だよ?さすがにここで暴れられると・・・。」

【大丈夫。問題無い。】

「どういう―――――――」

 

 

隼人が喋ろうとした瞬間、桃明呪は瞬時に隼人の後ろを取って、手刀で気絶させてしまった。

 

 

「ばびゅっ!!」

「あーららら、そんな気絶させちゃってどうするの。」

【卍解の修行は、()()()()でするから。わざわざ場所を取ってもらう必要はない。】

「・・・ってことは、結構キツイ修行しちゃうのかい?」

【それが当然。私の力は、並大抵の死神には使えない。】

「だったらついでに、隊長としての心得とかも、隼人クンに教えてあげてもらってもいいかい?」

 

 

無言で頷き了承の意思を見せた桃明呪は、倒れた隼人をソファに寝かせて、体を痛めないようにする。

 

 

【人払いは続けてもらってもいい?こばやしは暫くの間、無防備になるから。】

「うん。八番隊には誰も来ないようにしておくよ。」

【ありがとう。一生懸命頑張るきょうらくを、私は応援している。】

 

 

その言葉を最後に、桃明呪は隼人の中に消えていった。

 

 

 

*****

 

 

 

四十六室の前に立ち、貴族相手に相対する京楽は、斬魄刀と修行を進める隼人の無事を祈りながら、七番隊の立て直しについての許諾を取ることにも成功した。

 

 

次に議題に上げたのは、現在動くことの出来る隊長の戦力強化についてだ。

砕蜂、ローズ、拳西の戦力強化のために暫くは隊長業務から離れて斬魄刀と修行を行ってもらう。

これについては零番隊が来る前に彼らに話をつけており、既に三名の隊長は各自修行に入っていた。

四十六室も、特に反発せずにつつがなく終わる。

 

だが勿論、彼らにとって到底納得し難い提案も京楽は話術で強引に押し通す。

山本前総隊長に比べて、圧倒的に四十六室にとって京楽は扱いづらかった。

やり辛い相手に、四十六室はまたも悔しそうな表情を御簾越しに浮かべる。

ほぼ京楽の独壇場となっていた四十六室との対話は、さらに幾つかの案を出したが全て京楽が強引に押し切り、納得させるに至った。

 

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