ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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後出し

浦原と夜一の“秘密の”遊び場を使って、一人の隊長が卍解修行を重ねていた。

 

 

「ふぅ・・・一旦、休憩を挟もうかな。金沙羅舞踏団の新曲(新技)も素晴らしい仕上がりになってきたし」

 

 

独り言の多いローズは以前ならラブに、瀞霊廷に戻ってからは吉良にツッコまれることが多く、それがちょっと嬉しかったりした時もあったのだが、ラブは現世だし、吉良は先の戦いで命を落としてしまった。

吉良と仲良くしていた(と勝手に思っている)ローズは、亡くなった吉良の分まで自らが強くなることを誓い、京楽に指示された場所で卍解の新技をいくつか作っていたのだ。

 

 

そんな中、キレの鋭いツッコミをする者が入って来た。

 

 

「こんなトコで何しとんねんローズ」

「リサ!!こっちに来てたんだね!久しぶり」

 

 

浦原に頼まれて瀞霊廷の様子見に来たリサは、双殛の地下から霊圧を感じて向かったところ、ローズが一人で修行をしていた、そんな所だ。

このままではYDMも事業どころじゃなくなるのもあり、その道具の回収という目的もリサにはあったが、拳西は刃禅でガッツリ修行しているため会話など不可能、平子も戦後処理の陣頭指揮を行っているため忙しく、白は今現在平子と一緒に戦後処理で動いているので話せる相手が少なく、ローズを探して見つけたのだ。

京楽と七緒が忙しいのは百も承知なので、顔を出すつもりはない。

 

 

「あんたも修行か。・・・色々あったんやろ」

「イヅルが死んだ。彼の死だけで、ボクはひどく傷ついたよ。復讐の炎で数曲書けそうだ」

「あんたがその部下気に入っとったん、あたしに送られてくる心底ウザいメールでも分かっとったわ」

「ウザいって!酷いなリサ!!」

「ウザいわアホ!!ワケわからん言葉ばっか使ってあたしに送んなや!ラブに送れ!ってあいつローズのメール全部スパムにしとったわ!あとラブに送られて来た迷惑メールにローズのアドレスで登録しとったで!!」

「だから最近ボクの伝令神機に架空請求が沢山来てたのか!」

 

 

話が脱線してとんでもない所に行きそうになったが、珍しくローズが先に話を切り上げて修行に戻ろうとする。

ローズの卍解を見たことが無かったリサは、気になって少し様子見することにしたが・・・。

 

 

「へぇ~。変わった卍解やな」

「音楽を操る卍解だよ。音楽のまやかしが作り出す旋律が、心を奪い尽くすのさ」

「・・・・・・何や。アホくさ」

 

 

()()()()()()()()()()

「!!!!!」

 

 

最近たまたま読んだ漫画で、敵集団全員が自分の鼓膜を破ったことで音を扱う技を使ったキャラが八方塞がりになっていたのを思い出し、本人も気付いていると思い決定的な弱点を何の気なしに言い放つ。

リサの言葉に対し、驚きと絶望が綯い交ぜになった顔を浮かべたローズは、恥も外聞もなく泣きついてしまった。

 

 

「どっどどどどどどどうしようリサ!ボクの卍解に致命的な弱点が!!」

「んなモン自分でどうにかせえ!つーか今まで気付いとらんかったんか!このアホ!鬼道使うなり修行して克服するなりあんたなら出来るやろ!!」

 

 

長くなりそうなので、様子見は諦めてそそくさと退散する。

それでもリサは、心の中で「頑張り。」と珍しく応援の言葉を向ける。

新技の開発だけでなく、決定的な欠陥を克服する必要が生まれたローズは、しょんぼりしつつ諦めず修行を再開することにした。

 

 

 

*****

 

 

 

次の試合が始まる前にガラス窓の前に移動したが、いつも表情に乏しい桃明呪が、隣でほんの少し口元に笑みを浮かべていた。

 

 

「何かあった?」

「・・・ううん。何でもない。修行の最後をどうするか決めた所」

「?そっか。珍しく笑ってたからさ。思い出し笑い?」

「・・・そんな所」

 

 

結局いつもの顔に戻ってしまったが、色々聞く間もなく闘技場内の自動ドアが開いた。

同時に、闘技場内が薄暗くなった。

 

 

次に入って来たのは、銀城空吾と、志波海燕。

 

 

「銀城空吾を勝たせて」

「・・・・・・分かった」

 

 

よりによって死神に復讐をしようとした初代死神代行を勝たせるなど、正直な話嫌だし、海燕を勝たせたかったのだが、指示されたのであれば仕方ない。

完現術の解放と始解を各々がした所で、隼人にとっての試合は始まっていた。

 

銀城の霊圧には別のものが紛れ込んでいたが、覚えがあった隼人はすぐに正体に気付く。

今の銀城は、一護の力が取り込まれていた状態だった。

骸骨のような装甲を身に着け、一護の全ての能力を携えている。

 

(こんな状態の銀城なら、大して干渉しなくても勝てるんじゃ・・・?)

 

様子見のために、一度隼人は銀城に力を使うのを止めて戦況を見守ることにした。

銀城の完現術・クロス・オブ・スキャッフォルドと、海燕の始解の捩花の剣戟を眺めているが、実力は互角か、やや銀城が押しているようにも見えた。

時々海燕は水流を生みだして銀城を潰そうとするが、大剣の持つ部分を変幻自在に変えることで海燕を攪乱し、目測判断を誤らせて海燕の攻撃を巧みに躱していた。

 

その後もしばらく殺陣が続いた所で、戦況に変化が訪れる。

じわじわと押された海燕が、手に持っていた捩花を銀城の剣によって払われてしまった。

そろそろ力を使おうと思っていた所で、まだタイミングが来てないことを瞬時に悟る。

 

しかし、突きの構えを銀城がした瞬間、二人の間の地面が突然陥没し、銀城が態勢を崩した。

海燕の鬼道と思しき術で、二人を中心とした円状に地面がクレーターのように陥没する。

そのまま海燕は、バランスを崩した銀城に立て続けに双蓮蒼火墜をぶつけた。

 

霊圧こそ解析していたものの、この瞬間では銀城の防御力を上げることは不可能だ。

これだけで殺されるとは思えないが、傷を負って動きを制限される可能性は十分にある。

 

だが、銀城の口から、思いがけない技名を発せられる。

 

 

「―――月牙天衝」

 

 

実際の声こそ聞こえなかったが、口の動きとその後出てきた技から明らかにこの技名を発動させていた。

海燕の鬼道を相殺するには十分な威力だった。

少し固まった隙に銀城は再び畳みかけようとする。

それに応じて防御をとる海燕。

 

ならば、海燕の防御を失敗させればいいのではないか。

それなら、少ない負担で戦いを終わらせられる。

方針を定めた隼人はすぐに海燕の霊圧解析にかかる。

 

 

だが。

 

 

 

海燕から、何故か()()()()()を感じ取ってしまった。

 

 

「えっ・・・?」

 

 

距離を詰めようとした銀城を一瞥した海燕は、彼が持つ刀剣解放(レスレクシオン)を唱える。

 

 

「喰いつくせ 喰虚(グロトネリア)!!」

 

 

瞬間、海燕の周囲に紫色の気味悪い物体が生まれ海燕の身体が上昇していく。

同時に、海燕の顔が破裂し、正体が明らかとなった。

藍染戦後、十二番隊の調査資料で見た覚えのある十刃(エスパーダ)

 

第9(ヌベーノ)十刃・アーロニーロ・アルルエリ。

 

ルキアの証言によると、赤いカプセルの中に顔が2つ浮いた姿であるらしい。

その証言通りの見た目をしており、体の下半分は紫色の巨大でグロテスクな触手じみた物体を広げていた。

 

死神の姿から急に異形へと変貌を遂げ、対戦相手の銀城も訳が分からないといった表情だ。

固まった銀城に、アーロニーロは持ちうる中で()()()()()を銀城に放った。

33650体の虚のうち一つの技、敵の行動を完全に止める超音波を銀城に放った。

 

霊力の捻出どころか、眼球一つ動かすことすら不可能になった。

 

 

「なっ、何だよあの力!?」

 

 

それからは、ひどく呆気ない結末だった。

 

 

動きを止めた銀城に、アーロニーロがまた別の虚の技を組み合わせて、至極簡単に銀城の身体を爆発させる。

さっきの拳西よりも悲惨な死体だった。

粉々の肉片と化した銀城は、最早血液しか残っていない。

完現術も、銀城の体と共に爆発してしまっただろう。

 

ビーッ!!というブザー音で、闘いが終了したことが端的に告げられた。

同時に薄暗かった電気が再び完全に点き、研究員とロボットによる戦後処理がすぐさま始められた。

 

 

「失敗。やり直し。・・・眺めているだけじゃ、勝利は手にできないよ。動かなきゃ」

「・・・うん」

 

 

あんな隠し玉を持つなど、後出しじゃんけんもいい所だ。ちょっと酷すぎやしないかと批判したくもなる。

だが、戦闘であるなら様々な手を用意し、隠し玉を持っておく必要があるのは十分理解している。卍解だってホイホイ使えるものじゃない。奥の手だ。

今の闘いだって第三者として見ているから酷いと言えるのであって、実際に戦って死んでしまえばもう負けなのだ。批判もクソも無い。

 

色々と不満はあるが、気を改めてもう一度銀城を勝たせるために次はアーロニーロの解析を中心に行うことにする。

 

ビーッ!とブザー音が鳴ると同時に再び銀城と海燕が入場し、()()()()()()()()()()()()()()()

 

完全に見逃してしまっていたが、さっきの拳西がやっていた闘いとの違いに気付いた隼人は、ひょっとしたら暗いことがアーロニーロにとって有利であるのではと推測した。

既に銀城と海燕の戦闘が始まっていたが、二人の戦闘などそっちのけで隼人は電気を点ける手段を探す。

闘技場の壁に状況を打開できそうな機械は見当たらない。

なら幾つか立っている柱には、と探すと、5本の柱のうち一つにレバーのようなものがあり、それが下がっていた。

 

今現在海燕が捩花の力で水流を生み出しているが、この時点で海燕の力に干渉してしまえば後の計画が破綻してしまう。

そのため、銀城が月牙天衝を使うのを待つ状況になっていた。

それでいて、アーロニーロの刀剣解放を許せばもうおしまいだ。

早く、早く、月牙天衝!と思っていれば、それが届いたのかどうかは分からないが、都合よく銀城が月牙天衝の構えを取る。

さっきとは違って二人は遠距離戦になったため、どうやら銀城も月牙を使う頻度が増えていた様だ。

 

拳西に対して力を使った時と同様、銀城の霊圧を媒介に、霊力に干渉する。

今回は、月牙天衝の照準を、海燕から柱のレバーに強引に捻じ曲げた。

 

干渉を受けた銀城は、技を発動させた直後にモロに違和感を抱き、それは顔にも表れていた。

銀城が向けた方向とは違い、一本の柱に月牙が当たる。

 

一気に闘技場の電気が全て点くと同時に、海燕は苦しみの叫びを上げてアーロニーロへと変貌を遂げた。

 

 

「よし!上手くいったぁ!!」

 

 

その姿を見た銀城はやはり驚愕の表情こそ浮かべるものの、さっきに比べて余裕の表情も持っていた。

 

怒り(と思しき)の感情を剝き出しにしたアーロニーロは、即座に刀剣解放し、さっきも見せた真の姿に変身する。

そして銀城も、更なる変化を遂げた。

 

初代死神代行時代に習得していた卍解。

一護の力とも融合した銀城の卍解により、飛躍的に戦闘力を上昇させる。

 

そして隼人は、最後にアーロニーロの霊力に干渉を始めた。

アーロニーロが繰り出そうとした技を制御不能にし、自爆させる。

 

余裕を無くしたアーロニーロは殺すことしか頭になかったため、さっき銀城を爆散させた技を再びぶつけようとする。

それが制御不能になったらどうなるか。

 

アーロニーロの刀剣解放は見るも無残に大爆発を引き起こし、頭部のカプセルを銀城の卍解で斬られたことで、遂にアーロニーロが倒され、銀城を勝たせることができた。

 

 

カメラ映像越しに映る、カプセルから出て空気にさらされたアーロニーロの本体は、片方が忙しなく口を動かしていたが、もう片方は運命を受け入れているかのように見えた。

 

 

例の如く、ブザー音が鳴り響いて闘いは終わりを告げた。

 




この二人は、対戦カードを考えていて何となく当ててみようと思って書き始めちゃったのですが、二人とも志波家にまつわる誰かさんの力を奪い取った前科持ちということに気付いてから意地でも書き上げたくなって書きました。一護も実質志波家だし・・・。
アーロニーロなんか本ssでは全くもって出すつもりも無かったのですが、原作では30000体以上虚喰ってその能力使えるとかほざくクセにまったくそんな描写無かったので、30000はさすがに無理ですが、幾つかの虚の能力を使わせて一応強くしてみました。個々だけでは役立たなくとも、合わされば脅威になりますしね・・・。
って言っても30000体以上虚喰ってもまともに力使える虚は数十体だけだったりして笑。
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