「イイ感じで慣れてきたよ~~!!力使っても苦しくなくなってきたし、出来そうな気がしてきたぜ!」
同時干渉も最初の頃は失敗ばかりして何度も勝たせる側の死体を作り出してしまったのだが、コツを掴んでからは複数回の味方への強化、敵の弱体化をチーム単位(それも3人ちょっと)でならできるようになった。
心許ないが始解ではそれが限界らしく、その先は卍解になるらしい。
今まで使っていた力プラスαで考えるなら、無理矢理納得できる範囲だ。
曰く、戦況に応じた使い方次第で強くも弱くもなるらしい。
「ならさ、始解はタイマン向けってこと?」
「うん。でも卍解は使い方次第で一対一でも乱戦でも戦える」
「そっちも使い方次第?じゃあ瞬時に戦略練らないと厳しいな」
多くの隊長格のように、ただ卍解を出して当てただけで絶大な効果を発揮するようなタイプではなく、かといって卍解自体に自己強化がなされているものでもない。
全て自分で考える必要があり、力を行使するまでの一瞬の隙を突かれてしまえば、防御する間もなくお陀仏になってしまう可能性もあるのだ。
夜一のような俊敏な動きをする相手には一方的な攻撃を許してしまい、かなり分が悪くなるだろう。闇討ちにも対応できない。簡単に暗殺されてしまう。対策が必要だ。
慣れないうちは、最大効果が出てくるタイミングで力を使わないと霊力が切れてしまう。
故に桃明呪は、いつ力を使うべきかを隼人自身に考えさせていたのだ。
「戦い方、早く慣れてね」
「うん、続けよう。時間がもったいない」
席官VS破面ゾンビ軍団の戦いでは、阿散井の舎弟の霊力を強化しただけで彼の鬼道が猛威を振るい、勝たせることができた。
月島VS更木剣八は、30秒戦いを持続させるというものだったが、相当苦労した。
更木剣八を弱体化させても、すぐに順応してしまってその力の中で最も効率的かつ攻撃力の高い立ち振る舞いが出来ちゃうので、何度も月島が殺されてしまった。
月島の実力では更木に過去を挟むことは出来ない(というより挟んでも意味ない)ので、月島の力そのものを乗っ取る方向で調整した。
無機物にも過去を挟めるという特性を生かし、月島自身が地面に罠を仕掛けるだけでなく、隼人が力に干渉して
一方的かつ勝手に干渉したので月島本人も驚いた顔をしていたが、闘技場の空気全てを味方につけた月島は無限に生み出した鎌鼬などで更木の足を止め、更に罠を使って時間を稼いだことで、何とか30秒持たせられたのだ。大変だったよ・・・。
その後チーム戦などをやったりしたが、月島と更木剣八の戦いに勝る激しく難しい戦いではなかった。
やっぱり規格外だよ更木剣八は。
これで始解の訓練に目処がついたと言われたため、いよいよ卍解の訓練に入ることになった。
*****
卍解の訓練では実際に隼人も闘技場に立って戦いに参加するらしく、さっきの部屋から下の階にエレベーターで移動し、無機質な壁の暗い廊下を歩いていく。
他の死神達は死んでも別の素体が準備されているのだが、隼人の場合死んだらそれで終わりだ。
否が応でも緊張感が高まる。
自動ドアの前で先導する桃明呪が止まり、隅に立てかけてあった物体を隼人に渡す。
「これが卍解。持って行って」
「これって・・・杖?」
たった一本の何の装飾も無い杖だった。隼人の足から胸くらいまでの長さだ。
シルバーピンクの煌めきが暗い廊下でも伝わってくる。
他の死神に比べると、随分とシンプルだった。
マユリのように巨大な赤子を生み出すわけでもなく、日番谷のように氷の翼が生えて巨大な龍と戦うものでもない。
斬月が小型化した天鎖斬月を扱う一護ですら、死覇装の変化があった。
「何か、ちょっと残念・・・」
「残念?」
「だって、始解みたいだよコレ。卍解ならもっとこう、派手な武器が出てきたり、巨大な何かを召喚し「折るよ、こばやしの卍解」
「ダメダメダメダメダメ!!」
有無を言わさず、つまらない卍解を持たされる羽目になってしまった。
*****
卍解の名は修行を全て完遂すれば教えると言われたため、しばらくの隼人はずっと卍解状態になるらしい。これも修行の一つと言われた。
闘技場は、さっきのものと別物だった。
ドアの数が6つに増えて隼人と同時にぞろぞろと死神、仮面の軍勢が入ってくる。
空座町に藍染の迎撃に向かった隊長格が中心になっていた。
敵は、
桃明呪の指示は単純明快。
「皆を護って」
脳内に響いた彼女の声に、声を出さずに頷いた。
*****
戦いが始まると同時に、タイマーが作動してカウントダウンが始まった。
1分以内に戦闘不能者0で持ちこたえたら、次の段階に進めるらしい。
まずは自分の防御の為、虚の力へと完全に変貌した破面の霊圧を読み、5人全員の攻撃を弱められる障壁を瞬時に形成する。
始解状態ではそんな離れ業など不可能だったが、卍解を使えば余裕でできた。
卍解には、解析または干渉した霊圧を応用する力も備わっていたのだ。
それから障壁を作り出す時に、若干ながら卍解の形状が変化した。
無味乾燥で模様も無い杖だったのが、片方の先端に輪が生まれ、6つの
上手い事隠れながら動き回っているため、未だに刀剣解放した破面に狙いを定められることは無いが、味方の死神達は上手く対処できている者もいれば、破面の初撃を喰らって大きく負傷している者もいた。
僅か10秒足らずだが、この惨状だ。このままでは持たない。
そこで考えたのは、これまた普通の死神なら信じ難い離れ業。
鬼道の優れた七緒や、浦原、ましてや卯ノ花でも出来ると聞いたことは無い。
藍染クラスになれば出来そうだが、そんな情けをかけるような技を使うようには思えない。
未知の領域に足を踏み入れる。
(いけるか・・・頼む!)
始解の訓練の時はピンと来てなかったが、何度も力を使ううちに祈ることに慣れてきた。
というより、普段斬魄刀に願掛けをするかのように祈っていたことを思い出したかのような感覚が体中に浸透しているようだった。
昔から祈りを捧げていたことが、今卍解の力として発現することが少し嬉しくもあったのだ。
その祈りは、無事に死神達に届く。
戦場にいる死神、仮面の軍勢全員に、虚の力に対する障壁が形成された。
死神全員に攻撃の通りが悪くなったところで、再び隼人は新たな補助を仕掛ける。
次は、さっきと同様のことを回道で行おうとした。
そもそも回道は遠隔で出来るものではないし、複数人同時に効果を与えることは出来ない。
井上織姫の双天帰盾も、結界の中にいれば複数人に効果を発揮できるが、大きさ的に2人が限界だろう。
そうした既存の常識を、隼人の卍解は易々と飛び越えてしまう。
頭で祈りを捧げ、杖に回道の力を強く籠めると、錫杖の頭部から出てきた緑の波導が分散して味方全員の傷を癒した。
「でっ、出来た!!やった!」
だが、問題もあった。
分散させたせいで一人単位の回復効果が激減し、大きな傷を負った副隊長などには不十分な回復量となってしまった。
間に合わせにすぎない回復では思うように体を動かせず、却って動き全体が鈍くなってしまうだろう。
戦闘不能を回避できただけマシだが、それはこの修行の話であって実戦では危険なので、しっかり調整する必要がある。
そして目下の問題は、十刃の一人に自分の存在を気取られてしまったことだった。
障壁の霊圧を読まれてしまったのだろう。そこまでの対策を怠ったことを自責する。
碧色の無数の
事前に作っていた障壁のおかげでダメージは無かったが、壊れてしまった。
あと30秒。どのようにしてこの破面からの攻撃を防ぎつつ、皆を護れるか。
それを考える隙すら、ウルキオラは与えなかった。
無口は破面は、一切の無駄口を叩かずに指先から虚閃を放つ。
その速度は、他の破面に比べると圧倒的に速かった。
(!!まずいぞこれは!)
虚弾の時点でかなり危険だとは思っていたが、正直4番の地位にいることすら疑問に感じる強さだ。
空座町にいたらもっと早い段階で尸魂界への侵入を許していただろう。
直撃は避けて右側に移動する。
しかし、避けた先には既にウルキオラの姿があった。
「はっ、速すぎだぞオイ!!!」
思わずツッコミを入れる程の俊敏すぎる動きは、砕蜂の速さを彷彿とさせる。ひょっとしたら夜一並みかも。
再びウルキオラは最も射出速度の速い虚弾を使い、次こそはと隼人の体を吹き飛ばしにかかる。
咄嗟の判断で隼人は右腕を前に伸ばし、最初に自分にかけた術を注ぎながら錫杖を右回転させる。
無意識の行動だったが、錫杖を回転させている間は壁の耐久力が跳ね上がり、虚弾如きで傷つかない壁が隼人の前に出現した。
壁を作りながら集中力を高めて空間移動を行って距離を取り、ほんの少しの時間を作る。
ウルキオラの霊覚を騙すために霊圧を置いて来たため、ヒビの入った壁の先に未だウルキオラは虚弾を放っていた。
一目で戦況を確認し、回復の必要な複数の死神に回道を届ける準備をする。
5人程度で、思ったより少なかった。
残り15秒。この回復さえ間に合えば、あとは自分の防御に専念して目標達成だ。
ところが、隼人が錫杖に力を注ぎこむと同時に、ウルキオラの虚弾が止まった。
探査能力に優れたウルキオラは、すぐに隼人の居場所を特定する。
(気付かれたか・・・!)
ウルキオラの行動を察知したが、回道の力から即座に防御に切り替えるのは今の時点で厳しい。
卍解が持ちこたえられない予感がするのだ。
それに、ここで回復させないと最後の最後に戦闘不能者が出てしまう。
対するウルキオラは、霊圧で光の槍・フルゴールを作り出す。
1秒も経たずに槍を形成し、虚弾よりも速い速度で隼人に向けて投げ放たれた。
着弾と同時に、隼人のいる場所はウルキオラが仕込んだ槍の効果で大爆発を引き起こす。
霊圧は確認出来なかったが、何の感慨も持たずに即座に切り替え、ウルキオラは他の十刃の戦いに乱入、
しようとしたが。
(!!)
フルゴールと同じぐらいの速度で襲い掛かる嘴突三閃によって、ウルキオラの身体はそのまま壁に縫い付けられてしまった。
「九死に一生を得た気分~~・・・・・・」
ウルキオラがフルゴールを形成し、投げる動作を取った時、丁度隼人も回道を錫杖から放った所だった。
フルゴールの投擲速後が異常な程速かったためにかなり危なかったが、回道の回復も間に合い、ウルキオラのフルゴールも避けることが出来たのだ。
ウルキオラの行動を少しでも止める為、再び隙を突く。
縛道の力を錫杖に籠めると再び杖の形状が変化したが、気にせず杖から霊圧を生成し、嘴に杖を軽く当てて飛ばすことでウルキオラを捕らえることに成功した。
この時、今までにない速度で発射されたのにちょっとびっくりしてしまった。
ウルキオラが難なく自身を縫い付けた嘴を消し去った所で、長かった1分の終わりのブザーが鳴り響いた。
周りを見ると、倒れた死神はいなかった。何とか戦闘不能者を出さずに済んだ。
「はぁ・・・終わった~・・・・・・」
思わず安堵の声が漏れたが、隼人の声など気にせず死神も仮面の軍勢も破面も全員自動ドアに向けて戻っていった。
入れ替わりに白衣を着た研究員が闘技場に入ってきているため、邪魔にならないよう隼人もすぐに戻る。
さっきは存在しなかったベンチに桃明呪は座ってくつろいでいた。
「お疲れ。怪我してない?」
「あぁ、う~ん・・・、脚怪我してるな。さっきの破面の槍かなぁ。めっちゃ痛え・・・」
「ここに座ってれば治るから、こばやしはしばらく休憩してて」
「マジ?そんなベンチあるんか・・・」
彼女に杖を渡しつつ座ってみると、ほんの一瞬で脚の傷も霊圧も全部回復した。
まるでゲームみたいだ。これも斬魄刀の中だから出来るのだろう。
休憩がてら、卍解の杖について気になったことを桃明呪に訊くことにした。
「ねえ、力使う時って杖の形変わんの?何か壁作ろうとしたり回復させようとしたら錫杖になったんだけど」
「あと二つあるよ」
「えっ、やっぱ変わるんだ」
「こばやしの力を引き出しやすくする為。使い方で3つの変化がある」
つまり、防御したり回復したりする時は、錫杖になるという事か。
つまらない卍解だと思っていたが、杖の形状変化などまるで現世のゲームみたいでわくわくしてしまう。
だとすれば、あとは攻撃する時と、もう一つは何だろうか。そしてどんな形状なのか。
訊いてみたが、これから分かるから気にしなくていいと回答拒否されてしまった。
たまにはぐらかす部分があるのが少し気に入らないが、彼女がはぐらかすのは後で分かる事ばかりなのでお楽しみとして取っておくことにする。
「次は何の戦い?」
「滅却師を護りながら、滅却師の手で虚を倒すように援護して」
「虚を?滅却師じゃなくて?」
修行後戦うのは滅却師なのに、このタイミングで滅却師と協力する手順を踏む意図が分からない。
そもそも虚と戦う程度なら別に卍解修行の中に入れなくてもいいのではないか。
どうせ答えてくれないだろうと半ば諦めつつ訊こうとしたが、逆に彼女から注文をつけられた。
「こばやしが補助する滅却師には、傷一つ負わせないで。少しでも虚に傷付けられたら失格。やり直しだよ」
「ええっ!・・・難しくない?」
「卍解修行だから当たり前。でも相手は一人だから、こばやしなら大丈夫」
強引に押し切られた所で、自動ドアが開いて闘技場の準備が整った。
「大丈夫だよこばやし。必ず達成して帰ってくるこばやしを、私は応援してる」
桃明呪が預かっていた杖を再び手にし、ベンチから立ち上がって闘技場の中に入る。
隼人の通った自動ドアが閉まると同時に、真正面の自動ドアが開いた。
「――何だよ、あれ・・・」
出てきたのは、黒い虚だった。
孔が塞がっているのだ。いや、何かによって無理矢理塞いでいると見た方がいいか。
両腕は、鋭利な刃物となっているが、何となく見覚えがある。
頭部の折れ曲がった触覚や、何故か存在する長髪の後ろ髪など、理解出来ない事象だらけの存在だった。
初めて相対する異形の霊圧を読むために意識を集中させていると。
「あれっ!もしかして、口囃子くん!?」
能天気な女の子の声が隼人の耳に突き刺さった。
この声は、まさか・・・・・・。
恐る恐る振り返ると。
高校生の黒崎真咲が、斜め後ろの自動ドアから駆け足で入って来た。
ウルキオラも原作で虚圏に残っていたため出す気は無かったのですが、このタイミングで出すことにしました。
フルゴールの能力を少し改変しました。爆発面で強化してます。
何だか、死んでしまった破面の出血大サービス感出てますね。
次はホワイト戦です。真咲フォーエバーさんカムバックです。