ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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真央霊術院篇
入学式!


「忘れ物はねぇか?初日からやらかしちまったら笑えねぇぞ。」

「大丈夫です。何度も確認しました。それに何かあっても余裕で帰ってこれる距離なので心配ないですよ。」

「それもそうだな。」

 

 

浦原喜助の隊長就任から3年後。

今日は真央霊術院入学式。

ぶかぶかの真新しい青色の制服を着た隼人は、玄関で拳西と出発前の最後の確認をしていた。

 

合格してからこの日まで、本当に大変な目に遭った。

寮の手続きの紙に白がおはぎの餡子をこぼす、拳西が仕事終わりに出そうとした入学手続き書類を白が間違えて捨ててしまう、などの主に白の不注意によって何度も霊術院に頭を下げて紙を貰うことになってしまったのだ。

採寸したはずの制服も向こうのミスで違う丈のものが届き、そのために霊術院に赴くこともあったため、仕事よりもむしろ手続きの方が大変だった。

 

 

「本当にこの一月ほど大変でしたね・・・。」

「全くだ!白がやらかすせいで俺は何度も何度も・・・!」

「何とかなったからいいじゃないですか。本当にありがとうございます。」

 

 

この感謝は一月の苦労に対する労いだけではなく、今まで自分を育ててくれたことへの感謝の気持ちがこもっていた。

言われなくとも察した拳西は成長に対する感慨深い思いと共に、少し寂しさを感じていた。

 

 

「最初にべそかいてやがったガキがこんなに大きくなるんだもんな。」

「もうべそかきませんよ!強くなるんですから!」

「わーったよ。たまにはここに帰って来いよ。」

「成績見せに帰るつもりです。それにほとんどの物はここに置いてくつもりなんで僕の家は相変わらずここですよ。・・・・・・それじゃあ先に行ってますね!」

「おう。」

 

 

駆け出して行った隼人は新品の慣れない草履のせいで転びそうになり不安になったが、何とか転ばずにそのまま走っていった。

 

真央霊術院の入学式、卒業式は護廷十三隊各隊長・鬼道衆総帥が出席する中々に豪華な式典である。

だが毎回総隊長の挨拶がえらく長く、しかもかなりつまらないため新入生は早速試練が待ち構えていると死神たちの間では言われているのだ。

寝てしまった院生はその場で総隊長から喝を入れられ、新入生でも容赦がない。

ちなみに隊長でもたまに寝る者がおり(京楽)、相当恥ずかしい思いをしたと彼は語っていた。

 

 

まず式典の前に、最初は各自の学級に入り、担任と院生各自が皆の前で自己紹介することとなっていた。

今回は名前順の席ではなく、無作為に割り振られており、窓際の一番後ろであった。

 

 

「えーーー私はこの学級の担任を務める桐ケ谷(きりがや)(いさお)だ。諸君らは今年の新入生の中でもとりわけ優秀な生徒である!そのためゆくゆくは護廷十三隊では席官以上、鬼道衆なら幹部格になれるよう授業内、授業外ともに修練を積んでもらいたい。」

 

 

なかなかに声のでかい先生だ。それに一言一言しっかり話すため、見た目は若々しいが並々ならぬ威厳を感じた。

おぉ・・・かっこいい・・・。と感じ入っている所で先生の挨拶は終わり、院生の自己紹介が始まった。

 

最初は通路側の一番前の生徒から始まった。

 

 

「儂は射場(いば)鉄左衛門(てつざえもん)と申しやす。仁義を重んじるけえよろしゅうお願いします!」

 

 

あ・・・こいつだ・・・。何か黒い眼鏡かけてる。

ローズや浮竹に言われていた子どもが初めて判明した。

正直お母さんよりも強烈な個性を持っていそうである。

こりゃ仲良くなれるかな・・・。と不安になってしまった。

 

 

「中々に熱い男だな。何だか男ってよりも侠って感じの奴だな。はい拍手~~!」

 

 

いや先生一人ひとりに感想言うんかい!

これは下手なことを言ったら黒歴史確定だ。

 

そしてそれからもウケ狙いにいって玉砕した男子院生に容赦のない感想を何度か言っており、これは無難に行こうと隼人は決めた。

 

大体真ん中くらいに来た辺りで、隼人はまた聞き覚えのある名前の生徒の挨拶を聞いた。

 

 

「あの・・・。虎徹(こてつ)勇音(いさね)です・・・。背高くて怖がらせるかもしれませんが皆さん仲良くしてくださいっ!よろしくお願いします!」

 

 

あっ!あの時の女の子だ!一緒の学級にいるんだ!安心!

心優しそうな女の子だったので、折角だし仲良くなれたらいいなと隼人は考えていたのだ。

一緒の学級なら必然的に話す機会も多くなるので、仲良くなれそうで良かった。

ちなみに彼女に対する担任の感想は、

 

 

「たしかにほとんどの男共よりは背が高いがこういう女子は心優しいのが相場故皆仲良くするんだぞ。」

 

 

意外にも優しいものだった。

それからも男女で色んな生徒が挨拶をし、担任の滑稽とも辛辣ともいえる感想が続いた。

そしてついに自分の番がやってきてしまった。

 

 

「よし、次で最後だな。最後だから期待しているぞ。じゃあよろしく!」

 

 

やってくれたな担任!余計なこと言いやがって一生恨むぞコラ!

だが、この際どうでも良かった。何せ初日からやらかしたら笑えないと拳西に言われたのだ。

焦るな。無難にいけ。よし!!

 

 

「口囃子隼人っていいます。あの、漢字の書き方が特殊なので知りたい方は聞きに来て下さい。よろしくお願いします。」

 

 

お辞儀をした後、前の人と同じように皆拍手し、つつがなく終えることができた。

これなら大丈夫だろうと思ったが、担任の感想は辛辣だった。

 

 

「地味だな。最後だからこそ面白いことを言ってほしかったが。これでは存在感無いまま六年間終わるぞ。」

「そっそうでしたかすいませんね・・・。」

 

 

きっと拳西ならブチギレているだろうが、反面教師にして何とかこらえた。

挨拶が終わり、式典の準備が終わるまでは休憩時間となっていた。

 

皆近くの者と会話をして互いを知り始めている中、完全に隼人は置いて行かれ、一人で隅っこに座っていた。

基本的に誰かが話しかけてくれるだろうと呑気に考え座っていたら、誰も話しかけてこなかったのである。

虎徹さんも女子と話していた。しかも学級の中でかなり顔の整った女の子達とだ。

まずい出遅れた・・・こんなんじゃ友達できないかも・・・。と顔を青ざめていると、最初に挨拶をしており、先ほどまで男集団の中心に立って話していた男が気付いたら目の前にいた。

 

 

「わぁっ!!!!・・・何・・・・・・?」

「ほう・・・。おどれが口囃子隼人か・・・。」

 

 

凄い眼力だ・・・。実際はサングラスで見えないけど。

そして改めてその容姿を見ると、中々に強烈なものであった。

射場(いば)鉄左衛門(てつざえもん)

綺麗な角刈りに子どもとは思えない渋い顔。

漆黒のサングラスも相まって泣く子も黙るを体現したかのような顔をしていた。

 

だが、凶悪な顔をした拳西に比べると正直屁でもなかったので、最初はびっくりしたが怖がることなく普通に会話できた。

 

 

「そうだけど・・・。何か用?」

「あの九番隊隊長の育てた子どもじゃけぇ、どがいな奴かと恐れとったが大したことのない奴じゃ。」

「は・・・?何だよそれ。馬鹿にしてんのかよ。」

「いんやぁ・・・。周りに置いてかれて仲間も作れん情けない奴じゃと思うと面白うてのお!!!」

 

 

図星だった。しかもここまで痛い所を突いてきた射場に尋常ではなく腹立ってしまった。

がっはっはっはと笑う射場に対し悔しさや恥ずかしさで危うく本気で怒りそうになったが、その後の射場の言葉は予想もしないものだった。

 

 

「儂らの仲間に入れちゃる。おどれは儂のお袋から話聞いとるけぇ仲良うしてくれ!これからよろしゅう!」

 

 

机に両手と額を付け深々と土下座のようにお辞儀をする射場は、それまでの憎たらしい奴ではなく、まさしく仁義を重んじる極道者であった。なるほど有言実行してやがる。

握りこぶしを胸の前に差し出し、「ほれ!おどれもせえ!」と言われたので同じようにすると、そのこぶしを合わせてきた。

 

あれ・・・何かすっごい嬉しいかも・・・。

 

友情というものを実感した隼人は心に今までとは違った形の温かいものを感じた。

第一印象は最悪という言葉では済まされないほど酷いものであった。

だが、ローズや浮竹が仲良くするといいよと言っていた意味が何となく理解できる人柄でもあったので、これからも何かとお世話になってもらおうかなと軽く考えることにした。

 

 

「儂の仲間を紹介するけぇついて来い!」

「うん!よろしく射場くん!」

 

 

そして射場が作り出した『派閥』に隼人も加わることとなった。

もっとも射場だけが派閥と言っており派閥抗争がどったらこったらと騒いでいたが、他の者達は単なる仲良し集団的なものとしか考えておらず、皆普通に優しかった。

彼らにさっきよりも詳しい自己紹介をした後は、もっぱら隊長についての話題でもちきりだった。

 

 

「六車隊長に拾われて育てられたんだって?羨ましいなぁー。」

「あの人の始解すげぇカッコいいらしいぞ!」

「そしてめちゃくちゃ部下思いらしいよな~~いいなぁ俺九番隊入ろっかな~~?」

 

 

噂が先行し、美化されすぎている。

自分は隊長格の方々の性格を知っているため実力は凄いが変わり者集団にしか見えなくなっているが、これから死神になろうとしている院生たちの多くはかなり隊長格に幻想を抱いていることが分かった。

 

そういうところで空気の読めなかった隼人は普通に幻想をぶち壊した。

 

 

「拳西さんはすーーーっごい恐いし僕何回も怒鳴られたよ?」

「そうなのか!?」

「うん。頭ぐりぐりされたら軽く意識失うよ。あとよく仕事サボる副隊長に怒ってるね。まぁあれは副隊長が悪いんだけど・・・。」

「副隊長なのに仕事サボるのか!!」

 

 

副隊長どころか隊長でも平気でサボりますよ・・・。と思った隼人は平子や京楽などの悪い例を引き合いに出して懇切丁寧に説明した。

もちろん浮竹や卯ノ花などのいい例も出したが、完全に派閥の仲間たちは幻想を無くしていた。

 

 

「何か・・・。隊長ってめちゃくちゃ真面目な人しかいないと思ってたぜ・・・。」

「でも真面目じゃないからこそ強いのかもなー。」

 

 

あぁその考えはなかった。なるほどたしかにそれはありえるかもしれない。

とぼんやり考えていたら、担任が再び教室に入り、準備が出来たため大講堂に行くよう促された。

 

 

学級ごとに区切られるがその中で席は自由だったので、射場は前がいいと言ったが多数決で後ろの方に座ることになった。射場は早速面目丸潰れで落ち込んでいた。

 

 

「何故じゃ・・・何故儂の意見は採用されんのじゃ・・・。」

「まぁ今回はダメだっただけだよ。また次回があるから。」

 

 

と自分でもよくわからない慰めをしていたら、左にやけに背の高い女生徒が座ってきた。

 

 

「こんにちは!お久しぶりですね!」

「あっ虎徹さん!お久しぶりです!」

 

 

虎徹(こてつ)勇音(いさね)

彼女は先ほどの挨拶では気弱そうな性格をしていたが、男子をも上回る並外れた身長の高さやすらりとした体型、中性的で整った顔立ちのために既に院内でも注目の的となっており、彼女と知り合った女生徒たちは皆華やかな容貌をしている子であった。

やはり美女に集まるのは美女なのだろう。

 

物凄い早さで新入生の間でこの才色兼備集団が評判になり、射場が「派閥抗争じゃ~~!」と騒いでいた。

もちろんそんな野蛮なのは射場だけだが、自分たちの集団の中にも既に集団の中の別の女の子に目をつけている奴もいた。お前は何しにここに来たんだ。

 

本人は背の高さをかなり悩みにしていたが、周りと比べるとそこまで身長が高くない隼人にとって非常に羨ましい悩みであった。

後ろから男達の殺意、羨望のこもった目で射抜かれたが気にせず話を続けることにした。

 

 

「虎徹さんも同じクラスで安心したよ~。僕知り合いいなかったからさっきまで一人だったし。」

「私もですよ!皆さんが話しかけてくれてようやく輪に入れて本当に嬉しかったですよ。」

 

どうやら意外と共通点があるらしい。さらに話を進めていくと、得意分野も似ていると分かった。

 

 

「でも虎徹さんも優秀なんだね。何か周りの皆優秀だから置いて行かれそうで不安なんだよね・・・。」

「私もそうです・・・。たまたま試験のくじで得意な鬼道に当たったのでこのクラスに入れたんですよ・・・。」

 

 

おお鬼道が得意とは!これはまた話が合いそうだと嬉しく思い勇音にも話すと、今度は右から威勢のいい声が聞こえてきた。

 

 

「おどれらは鬼道が得意なんか。儂は斬術が得意でのう・・・。副隊長なるんは斬拳走鬼全て揃えるとええんじゃ。そうじゃけぇ是非教えんさい!!」

「はい。一緒に頑張りましょうね!」

 

 

射場はにこっと笑った勇音の返事に完全に顔を赤くしていた。さっきまで派閥抗争って騒いでた奴はどこへ行った。あんた相当惚れっぽいのな・・・。

 

ちなみに会話を見ていた他の男連中も勇音の笑顔にやられていたようだ。皆目を泳がせてほんのりと顔を赤くしている。

あれれーーー自分何とも思わなかったけどおかしいの?と思ったが、それを誰かに言うのは憚られた。あんなに話していた以上絶対皆から怒られるだろうし。

 

 

そんな形で三人で話していたら、「静粛に!!!」と声が聞こえ、式典が始まろうとしていた。

 

まず、来賓の登場ですという司会の言葉と共に各隊長と握菱鉄裁が入場した。

話を聞かないと評判の十一番隊隊長と、空位の十番隊以外の隊長全員がいた。

総隊長を筆頭に並んで歩くその姿は、いつも見慣れている隼人にとっても壮観であった。

 

しっかりその中に拳西もおり、横目で見ていた隼人とちらっと目線が合ったが特に何かがあるわけでもなかった。

 

 

入学式が始まり、学長の挨拶や中央四十六室代表の式辞、六回生代表からの歓迎の言葉、入学試験首席の男子生徒(射場派閥の院生)の挨拶などがつつがなく終わったところで、ついに試練が始まった。

 

 

「それでは最後に護廷十三隊総隊長並びに真央霊術院名誉学長である山本元柳斎重國より式辞を頂きます。」

 

杖を持ちつつ重みのある足取りで歩き、皆の前に立った総隊長は厳粛な雰囲気のもと式辞の言葉を綴り始めた。

 

京楽から噂を聞いていた隼人は一体どういう意味でつまらないのだろうと思っていたが、話し始めて数分が経ったあたりであぁ成程と納得することになった。

 

何度も同じ話をするのだ。典型的なおじいちゃんのお話である。

しかもよりによって原稿を持たず、その場で内容を考え話すスタイルをとっているため(式辞を話す立場として失格だろ・・・。)、もう何回も同じ話をループしていた。

 

 

もちろん耐え切れず寝てしまう院生がおり、「そこの童!目を覚まして話を聞け!!」と怒鳴ることもしばしばあった。

そしてついに隊長にも我慢の限界が来た者が出てきてしまった。

 

 

「それ故、儂が統学院を建てた頃は・・・春水!!!!おぬしまで寝おって!!!浦原喜助も!!!!いい加減にせい!!!!」

「ほげっ。あぁ寝ちゃったよ。ごめんね山じい。」

「スミマセン総隊長・・・。すっかり子守唄にしてしまったっス。」

 

 

あ~あ・・・やっちゃった・・・。しかもよりによって二人だ。そりゃあ総隊長(おじいちゃん)も怒るよ・・・。

間に挟まれた拳西の苛立ちと呆れの混じった顔を見て不覚にも笑いそうになったが、何とかこらえた。

 

さすがにこんな失態をさらしたからか、隊長に幻想を抱いていた層はちょっぴり失望の目をしていた。お前ら、これが本当の姿だぞ。と隼人は心で彼らに言葉を投げかけた。

 

あれから隼人自身も眠りそうになったが持ちこたえ、入学式の式典は終わった。

寮の部屋には既に荷物を持ち込んでいるので、あとは寮に帰るだけだが、新たにできた仲間と談笑しつつ帰ろうとしたところで急に夜一に体を掻っ攫われた。

ぐえっと情けない呻き声をあげてしまい非常に恥ずかしい。

 

 

「少々此奴を借りていくぞ。仲良くしてやってくれ!」

 

 

突然現れた夜一に対し、興奮を隠しきれない者もいた。

 

 

「あ・・・あなたは四楓院隊長ですね!俺二番隊に入りたいんです!非常に尊敬しています!!」

「ほう・・・。お主の顔、覚えておくぞ。六年後が楽しみじゃ!じゃあの!」

 

 

瞬歩で消えた夜一に対し、仲間たちはカッコいい・・・!と完全に陶酔しきっていた。

 

 

「・・・・・・あんなこと言って、ほんとに覚えておくんですか?」

「無理に決まっておろう。もう忘れたわ。」

「あいつきっと泣くな・・・。」

 

 

あまりにも夜一を尊敬していた彼にとって非常に残酷な事実なので、黙っておくことにした。

しかしなぜ急にこんな強引な方法で連れられたのかと思ったが、連れられた場所は霊術院の貴賓室であった。

 

 

「鳳橋!!連れてきたぞ!!」

「サンキュー夜一サン。」

 

 

えっ何故にローズが?

拳西ならまだわかるが、時々程度の関わりであるローズにわざわざ呼ばれる意味が分からなかった。

だが実際は彼からの話ではなく、この場にいないローズの副隊長からの質問のようなものだった。

 

 

「千鉄の子どもと仲良くなれたかい?多分学級同じだと思うんだけど。」

「あぁはい!最初小バカにされて怒りそうになったんですけど集団の輪に入れてくれました。」

「へぇ~~よかったね!千鉄から聞くよう頼まれたからさ。いい報告ができそうだよ。」

 

 

ウィンク込みの決め顔をしながら言っていたためあぁそうですか・・・。と冷淡な反応をしたが、かなり嬉しかったのは事実である。

居合わせた浮竹からも「いや~~本当によかった!」と安心された。何か友達できないキャラになってない?まぁ実際かなり危なかったけど。

 

ともかく貴賓室には拳西もまだいたのでしっかり世間話をすることにした。

 

 

「お疲れ様です拳西さん。」

「お前もな。ダチ出来たんならとりあえず心配いらねぇな。」

「はい。明日から早速授業ですよ!もう楽しみで楽しみで!」

「楽しみなのはいいがな、遊びじゃねぇぞ。気ぃ引き締めて明日から頑張れよ!」

「もちろんです!頑張りますよ!」

 

 

心の支えとなっていた拳西たちに会うことも少なくなるだろう。

だが、そんな環境だからこそ自分の心身の修練の場としてふさわしいと思っていた。

 

それに、戦いはもう始まっていた。

 

 

「何だよあいつ。貴族でもないくせに隊長格と馴れ馴れしくしやがって。」

「聞き捨てなりませんわね。それに彼は私たちを差し置いて特進学級に入学なさったとか。」

「卒業する前に使い物にならないくらいに潰してやろうか。脚でも壊せばいいんじゃねぇの?最悪殺してしまえばいいか。」

 

 

このような感じの下卑た陰口を特進学級に入れなかった貴族の子弟たちから今日だけで何度も言われた。

殺害予告までされるとは思ってなかったので少し驚いたが、拳西に怒られるのに比べたらこんな陰口もとりとめのないものだ。

この調子では以前にローズが言っていた通り嫌がらせを受けることになるだろうが、その対処法も少しずつ考えていた。

 

 

「じゃあまた今度。夏の長期休暇に一回帰ると思います。」

「わーったぜ。成績期待してっからな。卒業は首席じゃねぇと許さねぇぞ・・・!」

「それは・・・考えておきます・・・。」

 

 

最後に軽い脅しを入れられたが、実際首席を狙うつもりだ。

 

 

今日から6年間、真央霊術院での日々が幕を開ける。

 

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