ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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千年血戦篇・第二次侵攻
雀蜂雷公鞭


「七緒ちゃん!!すぐに天挺空羅で全隊長格に伝えるんだ!!」

「りょ、了解です!!」

 

 

すぐに鬼道を発動させた七緒の報せが瀞霊廷にいる隊長格全員に届き、さらにその内容が一般隊士にも伝わることで、護廷十三隊全員が一気に臨戦態勢に入る。

だが、相手の位置情報を捕捉した隼人の頭には、未だに理解出来ていないことがあった。

 

今一緒にいる三人のすぐ近くに滅却師が一人いるにもかかわらず、目視でも霊覚でも識別できないのだ。

そしてその答えは、すぐに明らかになる。

 

 

突如、瀞霊廷が全く別の景色に塗り替えられた。

伝令していた七緒も思わず、「瀞霊廷が消えた・・・!?」と困惑してしまう。

景色が変わると同時に、その場にいた一人の滅却師が姿を現した。

 

 

「―――千年前、私達滅却師は、死神との戦いに敗れましたが、その際私達は貴方達が最も警戒を怠った瀞霊廷の中へと逃れました」

「「「!」」」

「瀞霊廷内のあらゆる影の中に霊子による空間を形成し、その由来を以て、我々の国は見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)と名付けられています」

「・・・、成程。つまり君達は、最初から遮魂膜の内側にいたということだね」

「御名答」

「・・・千年間、霊子に溢れた尸魂界にいたが故に、ずっと私達のように力を蓄え続けることが出来たのですね・・・」

 

 

七緒の言葉に、現れた星十字騎士団最高位(シュテルンリッター・グランドマスター)のユーグラム・ハッシュヴァルトは若干の嫌悪を込めて睨めつける。

 

 

()()()()()()とは、見当違いなことをのたまうな。君は一番隊副隊長補佐・伊勢七緒か」

「私のことを御存知ですか。・・・しかし、何故私の見当は外れているのでしょうか。瀞霊廷の影に潜んでいた以上、条件は私達と変わらない筈ですが」

「陛下の存在が、私達を私達たらしめるのです」

「敵さんの首領(うえ)は、余程の力を持っているみたいだ」

 

 

三者のやりとりが繰り広げられる中、一人隼人はこの場からどうすれば上手く立ち去れるか考えていた。

ぐらん・・・なんちゃらと言っていた目の前の滅却師は、霊圧から見て相当の実力者だ。

いざ戦闘になったとしたら加勢する気ではいるが、みだりに卍解を使うのは副作用を考えると得策ではない上、奪われたら元も子もない。

また、最初に倒すのは狛村を殺した滅却師にしようと考えているため、この滅却師相手に変に時間を取られるのは嫌だった。彼の霊圧は、爆心地にあったものとは明らかに違う。

 

しかし、京楽が思いがけない言葉を発したことで、戦いが急速に動き出していく。

 

 

「・・・行きなさい」

「えっ?」

「敵さんはボクと七緒ちゃんで止めるから、隼人クンは時が来るまで身を隠すんだ」

 

 

そして勿論、ハッシュヴァルトも動き出す。

 

 

「一人の()()を容易に逃してしまう程、私の力は浅くない」

 

 

しかし、剣を抜いたハッシュヴァルトは、前に踏み込もうとして即座にその足を止めた。

三人の死神と一人の滅却師の間に、霊子で出来た壁が突然現れた。

 

 

「――――・・・、―――これは・・・、」

「白断結壁。滅却師の力の侵入を一時的にですが完全に断つ防壁です」

「さぁ、行ってらっしゃい。()()()()()()()()()()()

「はい、了解しました」

 

 

そのまま後ろにはけていく隼人を尚も追跡しようとしたが、自らの刀を一切侵入させることができないハッシュヴァルトは、やむを得ず追跡を諦めて二人の隊長格と対峙する。

ただ、この二人が残っているならばハッシュヴァルトにとって何ら問題は無かった。

一番隊の隊長と副隊長を瞬時に殺してしまえば、護廷十三隊という集団としての力を殆どそぎ落とすことができるから。

滅却師の力を使い、まずは壁の霊子を少しずつ奪って薄くすることから始めた。

 

 

 

京楽たちとしっかり距離を取ってから、隼人は建物の中に入って姿をくらませる。

安全地帯で敵の居場所を見つけてから動き出そうと思ったが、新たに塗り替えられた空間には高濃度の霊子が大量にばら撒かれているため、大規模にできる索敵能力が封じられてしまった。

 

(卍解使うのもまだ危険だし、暫くここで隠れるか)

 

以前まで使っていた力を上手く発揮できなくとも、修行で強くなった隼人にとって大きく動揺することではない。

近くの霊圧は探れるし、ありがたいことに近くには誰もいないので、このまま一人待機する。

建物の中にあった椅子に座って窓の外を眺めると、遠くからズドーン!と爆発音が響き渡ってきた。

 

 

 

*****

 

 

 

「父上!希代を頼んます・・・!」

「嫌ですお兄様!希代はずっとずっと、お兄様といっしょにいたいです!!」

 

 

景色が見えざる帝国のものに塗り替えられた時、大前田は妹の希代と一緒にいる中で以前戦った滅却師・蒼都と対峙しかけたが、時を待たずして砕蜂が来たため、彼女の指示で妹をすぐさま父親の許へ預けに行く。こんな指示を出すなど、以前に比べるとかなり丸くなったように思われる。

砕蜂にとって夜一の次に尊敬でき、信頼できる男が大前田の父親・希ノ進であったため、まさにうってつけと言えるだろう。

 

だが、お兄ちゃんっ子(といっても三郎兄様の本はキモい。マジで)の大前田希代(まれよ)は、大前田(にいさま)が戦場に立つことの方が心細く感じてしまう。

大前田の袴の裾をつまんだまま、絶対に離れようとしないのだ。

目をぐずぐずにして、今にも泣きそうになっている。

 

できることなら、大切な妹の希代と一緒にいてやりたい。泣かせたくない。笑顔でいて欲しい。

というかそもそも、戦いに出たくない。

適当に昼寝しているうちに、全部終わっていればいいのだ。

 

しかしそれでも、大前田希千代は護廷十三隊だ。

組織に所属し、きちんとした階級を持っている以上、有事の際にお家を優先するなんて馬鹿げたことをしでかすつもりなど毛頭ない。

 

故に大前田は、裾を掴む妹を抱き上げ、父親の両手の中に強引に預ける。

 

 

「大丈夫だ、希代。兄様といるより父上といる方が安心だ。父上の方が兄様の何倍も強いからな」

「でも希代は、兄様といる方が・・・」

「さっきも言ったろ?」

 

 

「兄様は、護廷十三隊だ。希代だけじゃねえ、瀞霊廷を護ってきてやる」

 

 

その言葉に希代は子どもながらに不満を言おうとしたが、大前田はすぐに瞬歩で姿を消してしまった。

これ以上一緒にいては、悪態をつきつつも妹のことを大事に思う大前田も、我慢できなくなってしまうからだろう。

そんな機微は希代には分からないが、これ以上駄々をこねることは無かった。

 

 

「兄様・・・、無事に、戻ったら、・・・毎日鞠で、遊んで下さいまし・・・」

 

 

父親の胸の中で、希代は声を押し殺しつつ涙を流す。

今まで大前田に突っぱねられた時の希代は大声で涙を流していたが、今の啜り泣く姿は大前田の気持ちを子どもなりに汲み取った結果の、精一杯の強がりだった。

 

 

 

*****

 

 

 

「無窮瞬閧」

 

 

卍解を奪われた砕蜂はもう一つの手段である瞬閧の完成、進化に重点を置き、一度発動させると風の渦のように霊圧を巡らせることで、永続的な瞬閧の使用が出来るようになった。

砕蜂自身はまず夜一に見せたかったが、情勢が情勢なので叶わず、戦いが終われば成果を見せてあわよくば褒められたいなどとさっきまで考えていた。

 

そしてこの一撃は、The Ironの力を持つ蒼都の身体をも容易に吹き飛ばす、凄まじい霊圧のエネルギーを放出する。隼人が身を潜めていた時に聞こえた爆発音はこれだった。

 

十分な手応えを感じた砕蜂は、大前田の霊圧が近づいてくるのを感じたが一切気を緩めることは無い。

こちらが卍解を奪われている以上霊力も格段に落ちているので、今の一撃でも完全に倒したかどうかは危ういから。

 

 

「隊長!やったんスか!!」

「卍解が敵の手にある以上、油断できん。私の力もまだ本調子じゃないからな。油断するな、大前田」

「おっす!!」

 

 

勿論砕蜂の読みは当たっている。

無窮瞬閧で吹き飛ばされたものの、蒼都の身体には傷一つない。

 

 

「凄まじい風圧だった。だが君の作った風でも、僕の皮膚にとってはそよ風に等しいよ」

「テメェ!!姑息な真似して砕蜂隊長の卍解奪いやがって!返せ返せ返せ!!」

「そんな無駄口叩いて卍解が戻ると思っているのか」

「いっ、いいじゃないっすか!上官の卍解が奪われたら俺だってたまったもんじゃないっすよ!」

「五月蠅い黙れ」

「うえぇぇええええーーーーっ!!!」

 

 

余計に五月蠅い反応で砕蜂は更にイラっとした顔になるが、対する蒼都はある言葉に対して関心を寄せる。

情報(ダーテン)をあまり重視していなかった蒼都は、二人が直属の上司と部下であることすら今気付いたようだった。

“共に生きたものとは共に死すべし”

三日月のような細目に、強い殺意が宿っていく。

 

 

「まずは君から、片付けよう」

 

 

「卍解 雀蜂雷公鞭」

「「!!!」」

 

 

いきなりの卍解に、二番隊の二人は思わずたじろぐ。

しかも独自に卍解の訓練を重ねていたからか、名を言葉で発して特大のミサイルが腕にはめられるまでの速度が砕蜂の倍の速さだった。

 

 

「避けろ!!大ま「遅いよ」

 

 

砕蜂が大前田に声をかけた時には、既にミサイルが発射されていた。

たじろいだ一瞬の隙を突かれた大前田は、雀蜂雷公鞭を躱しきれずに右半身を吹き飛ばされてしまった。

さっきまで五月蠅かった大前田は、ほんの一瞬で何も言わぬ死体になってしまう。

 

 

「大前田・・・!!」

「君もすぐ、彼と同じように――――!」

 

 

後ろをとった砕蜂は、再び無窮瞬閧の一撃で蒼都を吹き飛ばす。

速度が上回っていることは以前の戦いで実証されているので、そのまま砕蜂は蒼都が吹き飛ばされる速度以上の速さで回り込み、さらなる打撃を叩き込む。

 

 

しかし蒼都は、何故か()()雀蜂雷公鞭を腕に装着していた。

 

 

「なっ!何だと!!」

 

 

砕蜂でさえこの卍解をこんなに連続で使用したことは一回あるかないか(空座決戦の時)だったが、この滅却師は一発目を撃った後すぐに二発目を撃つ準備が出来ているようだった。

危うくミサイルを直接瞬閧で殴る所だったが踏みとどまって一旦距離を取る。

そして蒼都は砕蜂の位置を見抜いて、二発目の雀蜂雷公鞭を発射する。

 

一撃必殺級の破壊力を持つ卍解をたった数分の間に連射するなど、普通では考えられないだろう。

砕蜂の速度なら問題なく躱しきることができたが、ミサイルを発射した蒼都の身体に何の異常も無いことが分かると、えも知れぬ恐怖感すら覚えてしまいそうだ。

 

そのまま蒼都は、鉤爪から極細の神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)を先の戦いと同様に大量連射する。

空中に避けた砕蜂は華麗な動きで蒼都の矢を全て躱すが、基礎霊力が下がっているため少しずつ動きが鈍くなっていく。

前回は完全に追いきれなかったが、今回蒼都は砕蜂の動きをしっかり目で追っているため、矢で様子見した後は自分の技で本格的な攻撃に入る。

 

 

鋼糸爪(ガンシェツァオ)

 

 

名の通り爪から鋼の糸を射出し、空中にいた砕蜂を縦横の網目状になった糸で拘束する。

矢よりも有効範囲が広く設定されていたため、相手の動きが速かろうと範囲でカバーできた。

 

 

「こんなもので私を止められるとでも?甘いぞ滅却師!!」

 

 

しかし、この技には続きがあった。

 

鋼糸の網は突如、太く鋭い針となって砕蜂の身体の至る所を串刺しにする。

瞬閧を警戒した蒼都が拘束後即座に発動させたため、対処する手段は何も無かった。

 

 

「がァッ゛、あ゛、・・・」

 

 

大前田同様、突如襲い掛かった激痛に叫び声を上げることも出来なかった。

動きを完全にとめた砕蜂に、蒼都は天から鉤爪をドリル状にして突進する。

 

 

輪天爪(ルンティエンツァオ)!」

 

 

ドリルとなった鉤爪は、そのまま砕蜂の腹に突き刺さり、骨を砕き臓物を抉り出す。

天に磔にされた砕蜂は腹を貫かれた勢いで戒めが解かれ、そのまま地面へと何も言わずに墜ちていった。

 

そして蒼都は巧妙に、右半身を吹き飛ばされた大前田の隣に砕蜂を落とす。

 

 

「とどめだ。この技は是非とも君達に見せてあげたかったが、死んでいるなら見ることもできないだろう」

 

 

そう言いながら蒼都は、再び雀蜂雷公鞭を取り出す。

3日に1回使うのが限界であるこの卍解を1日に3回も繰り出そうとする離れ業をやってのける時点で、既に蒼都の方が卍解をモノにしていた。

加えて蒼都は、()()()()()をも行っていた。

 

 

「雀蜂雷公鞭二式・散弾爪(フォウチェンツァオ)

 

 

遠くから二人に照準を定め、蒼都は砕蜂の卍解を使ったオリジナルの技を二人に直撃させ、完膚なきまでに全てを消す。この卍解のデメリットを少しでも改善させようと試行錯誤を重ねた成果がこの技だ。

 

 

 

ところが。

 

突然、卍解の照準が大きくぐらつき始めた。

 




中国語、間違っている可能性大なので正しい読みとか知っている方がいれば教えて下さい・・・。調べはしましたが、授業で選択しなかったので全く分からないです・・・。
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