『どォーーーーーーも!護廷十三隊隊長、それから副隊長のみなさんこんにちは!』
その声は突如、天挺空羅に乗って全隊長格に響き渡る。
瀞霊廷にいる者だけでなく、霊王宮にいる白哉や、今まさに瀞霊廷に向かっているルキアや阿散井にも。
そしてもちろん、隼人のような卍解習得したて、隊長なりたてほやほやの死神にも。
『コチラは浦原喜助です。』
声の雰囲気からして浦原であることはすぐに推察できたが、初めましての方もいるかもしれないなどと調子を狂わせる発言に、平子は身を隠しつつ小声でツッコミを入れる。
『この通信と同時に皆さんの所に黒い丸薬を転送しました。卍解を持つ人にのみ反応する丸薬です。それに、手、足、刀、何でもいいんで触れて下さい。触れた所から吸収され、丸薬は魂魄の内側まで浸透します。』
建物の中にいた隼人はテーブルに黒い物体があるのを見つけ、恐る恐る右手の人差し指でツンと突くと薬から白い煙が出てきた。
そのままだとすぐに反応が消えたので再び薬に触れると、薬は瞬く間に小さくなり、体の中に吸収されていく感覚を覚える。
浦原から続きの説明が脳内に聞こえてきた。
『この薬はほんの僅かな虚の力を持っています。それを吸収して卍解を一瞬でも虚化させることで、奪った卍解は滅却師にとって毒となります。細かいことを知りたければ後で技術開発局に来て下さい!お待ちしてま~~す!』
「そんな余裕無いっての・・・」
表立った変化は何も無かったが、ある意味卍解奪略を防ぐワクチンが打たれたのに等しいため、これでようやく隠れる必要も無くなった。
周りには相変わらず誰もいないが、もちろん相手に自分の存在を誇示するなんてマネをするつもりは無い。
高濃度の霊子があるせいで索敵も上手く出来ないので、狛村を殺した滅却師と同じ霊圧を探し当てるまで、バレないように移動を始めた。
*****
「・・・!何が起きた・・・!?」
蒼都の雀蜂雷公鞭は、照準が大きくぐらついたと同時に、装着していた筈のミサイルが腕に嵌めた発射台から転落していく。
とてつもない破壊力を持つミサイルは、かなりの高度から落ちたにもかかわらず、爆発せずにカランと空虚な音と共に地面に落ちていった。
地面に落ちたミサイルは、極小の霊子となって瀞霊廷の塵と化す。
ミサイルが霊子になった時には既に、蒼都の腕にあった発射台も完全に消えていた。
「!!!」
大きく動揺する蒼都に、砕蜂は最後の力を振り絞って腕を向ける。
持ち主に帰ってきた、雀蜂雷公鞭を手にして。
「貴様が考えた雀蜂雷公鞭・・・ダサい名だが、そっくりそのまま返してやろう」
「何故僕から君の手に卍解が戻った!!」
「さあな・・・貴様の許にいては、乱発されて嫌になったのだろう」
「斬魄刀に心など無い!理解不能なことを僕に言うな!」
「だったら、」
「自分で喰らって、雀蜂を理解しろ」
その言葉を最後に、砕蜂は雀蜂雷公鞭を発射した余波でいくつもの建物を貫通する程大きく後ろに吹き飛ばされ、蒼都が改良した技を見るまでもなく意識を失った。
改良された雀蜂雷公鞭は、大型ミサイルの中に数十個の小型ミサイルが格納されているもので、小型ミサイルには霊圧追跡機能が備わっていた。
完聖体を使えなくなったことで卍解を主軸に戦闘プランを考えた弊害が出てしまい、さらに混乱、動揺も合わさって蒼都は聖文字の力を上手く引き出せなくなってしまう。
大量のミサイルに呑まれた蒼都は爆炎に呑まれて数百度の熱に身を焦がされ、あっという間に骨と化してしまった。
*****
卍解を奪った残る二人の滅却師は、未だ戦闘行動を起こしていなかったからか、メダリオンから持ち主の許へ戻って行っても大きな反応を見せなかった。
BG9は機械人形であり、氷が融けたら水となって部位によっては機能障害を起こしてしまうため、奪いはしたもののハズレだと考え、前回の戦い以降は一切使おうとしなかった。
エス・ノトは、千本桜景巌の美しさに思わず見惚れる程だったが、強い未練こそ見せるもののいつかはそうなるだろうと予測していた。逆にもう一度奪い返せたらどうなるか見物だとすら頭によぎっていた。
こうした中、BG9に奪われた卍解が戻ってきた日番谷は、丁度バズビーと戦いを始めた所だった。
「あの白髪の優男がいねェのは気に喰わんが、まァいいさ。後でブッ殺してやる。」
「浮竹なら、何処にいるんだろうな「それはそうとォ!!」
「「・・・・・・」」
「BG9に卍解を奪われた氷の隊長サンじゃねーか!俺達相性、バッチしじゃねえの!?」
一体何を根拠に相性バッチリと言っているのかもわからないのでどう返せばいいか困っている中、隣にいた松本が少し痛い所を突く。
自分から話を振っといてぶった切るのは無いだろう。
「あら、アンタ、浮竹隊長から逃げるの?」
「急に論点すり替えたな。お前如きが浮竹に勝てるとは思えねえが」
「・・・んだとォ・・・!」
両手に莫大な炎を携えたバズビーは、既存の霊力だけで生み出した炎を使って日番谷の生み出した氷に対抗する。
しかし卍解を取り戻した日番谷に、
力を取り戻した日番谷の厚い氷はバズビーの炎だけでなく、ボウガンから放たれた
後ろにいた一般隊士を守りつつ、生み出した氷の中から氷塊を発射して反撃もしっかりこなす。
加えて、松本の援護が日番谷の攻撃に変化をもたらした。
「いくわよ!いちご練乳大作戦!!」
「どんな作戦名だ松本!」
日番谷の放つ氷の塊を松本の作り出した灰でコーティングすることで、より殺傷力の高い氷塊を複数発射する。
氷塊の形状や灰の被り方が、練乳をどっぷりつけたいちごに似ているという松本の突飛な考えからこの作戦名になったが、日番谷は全くもって共感できていない。
しかし、バズビーはそんな
神聖滅矢で全て正確に撃ち落し、炎の出力をさらに上げて厚い氷も一気に溶かしにかかる。
「おいおい氷融けちまってンぜ?まだ俺本気出してねえんだけどな!」
「生憎俺もまだ本気は出してねえ。だがその前に、お前の敵はもう一人いるぞ」
「あァ?ンなこと分かって・・・、!!」
顔を斬られた感覚がして左頬に触れると、グローブには僅かばかりの血糊が付いていた。
静血装を全く展開していなかったためにちょっとした傷ができてしまったのだが、たかがこの程度、冬に指を紙で切ってしまったものと変わらない。
こんな弱々しい技を扱う副隊長程度、
「バーニング・ストンプ!」
近くに灰が漂っていたので、体から発する熱波を使って全て一気に吹き飛ばした。
灰が吹き飛ばされたため、松本はすぐに始解を解いて刀をある程度まで戻した後、再び始解して灰に形を変える。
「ったく、こんな雑魚が敵かよ。マジやってらんねえな。とっとと本気出せよ」
「・・・・・・」
バズビーの言葉に何も答えず、日番谷は再びいちご練乳作戦の氷塊を数十個発射する。
相変わらず小技しかぶつけない十番隊の二人に、ますますイライラが募っていく。
右頬や腕の一部に灰による掠り傷がついたが、これも全くもって問題無い。
再びさっきと同じように熱波で吹き飛ばし、同時に日番谷の氷も全て融かした。
むしろ馬鹿にされている気分になってしまう程だった。
「いい加減にしろ!俺との戦いをナメてんのか!!つまんねえ技じゃなくてとっとと本気の大技を俺にぶつけろよ!!」
「・・・そろそろか。大丈夫か、松本」
「問題無いです。十分な量が
「よし、いけ!」
日番谷の号令で松本は刀身の無くなった斬魄刀を振るう。
その瞬間、バズビーの両頬、右腕の皮膚が、ピーラーで剥く人参の皮むきの時のように捲れた。
「!!!!!」
二人の狙いはいちご練乳作戦などではなく、松本の作り出す灰を僅かな切り傷の隙間から少しずつ体内に捻じ込んでいき、皮膚の内側から一気に体を斬りつけることだった。
激痛を与えた松本は、追い打ちとして頬骨を灰猫で斬りつける。
同時に莫大な灰を傷口から体内に捻じ込み、バズビーの体の中で血管を千切り、筋肉を直接切り裂く。
いくら氷で斬って致命傷を与えられないくらい屈強な身体であっても、体内の筋組織まで直接十分に鍛えることはできない。
骨に直接刺激を与えれば、普通の人間なら絶望的な痛みに悶え苦しむ。
事前にそう読んでいた二人は、隊長である日番谷の卍解を本丸にみせかけて囮にし、松本の始解を決定打にするというリスクのある賭けに出た。
松本の技が決まってから、ようやく日番谷は本気を出す。
大量の氷柱を一瞬で発生させてバズビーの周囲を取り囲み、灰猫を氷柱の隙間に捻じ込んで刀身に戻すことで真空多層氷壁の効果を同時に生み出し、融けない大量の緻密な氷柱にバズビーは囲まれてしまう。
その光景を見ながらも、間髪入れず次は斬魄刀を地面に突き刺す。
地中の水分を使って数十本の氷の刃を絶えることなくバズビーの足元から発生させ、遠距離からの攻撃なのに手数でバズビーを圧倒した。
「松本!一旦離れろ!!」
「はい!」
ここからはさらに大規模な攻撃となるため、一旦松本は退いて日番谷を攻撃に専念させる。
日番谷は、同時にいくつもの攻撃を展開した。
千年氷牢で閉じ込めたバズビーの上空に、逆様の巨大円錐型氷塊を作り出しつつ、氷竜旋尾と群鳥氷柱の原形を多数生み出したまま空中で静止させる。
(この辺一帯の水蒸気、全部使ってしまうだろうな・・・)
中に閉じ込められたバズビーは、神聖滅矢や身体から生み出す熱波を使っても全く氷を融かせず、さらに炎で融かしても際限なく生まれる氷の刃に複数の箇所を斬られているため、牢の中で既に虫の息であるように見えた。
常に斬られる恐怖と閉じ込められた環境下が作用し、精神的にバズビーを追い詰める。
中で必死に抵抗しつつ狼狽えるバズビーに哀れな目を向け、日番谷は仕上げにかかった。
「せめて苦しませずに、一気に終わらせてやる」
その言葉と同時に、空中に静止した氷竜旋尾と群鳥氷柱が氷の牢を打ち砕く速度でバズビーの身体を立て続けに貫いた。
「
トドメに、上空に生み出した円錐状の氷塊をバズビーの上から一気に落とす。
氷塊は大きさからして数トンの重さが見込める。氷の落下は、バズビーが一切融かせられなかった堅い氷の牢獄を木っ端微塵に打ち砕く程の圧倒的な力だった。
先端は見事に腹に刺さっており、銀色に輝く氷はどんどん血に染まっている。
遠くから技を見終えた松本も、バズビーの霊圧が弱まっているのを感知して安心して日番谷の許に戻ってきた。
「隊長、お疲れ様です」
「ああ、松本の助けが無ければ千年氷牢から奴を取り逃がしていただろうな。感謝する」
「いや~最後の隊長、とってもカッコよかったですよ~!!あたしこっそり写真撮ればよかったなぁ。言い値で売れるわねアレは」
「他人を商売に使うな松本!とにかく他の隊長の援護に向かうぞ」
「そうですねぇ!それじゃ、近くの霊圧は――――――」
しかしもちろん、バズビーがそのままやられるはずなど無い。
完聖体どころか、
「「!!」」
腹を貫く氷がぐらりと揺れる。
巨大な瓦礫が崩れ始める時に似た音を聞き取った十番隊の二人が再びバズビーに意識を向けた時、氷塊が粉々に砕け散り、熱波で周囲の氷が全て融けた。
「やってくれンじゃねェか・・・俺のイカした顔を削ぎやがってよォ・・・!!!」
「ここまでやって、まだ生きてるの・・・!?」
背中には二本の棒状の翼を生やし、頭には星形の天盤。
京楽などから聞いた
起き上がったバズビーの身体にさっきまでつけた傷は全て消えており、完聖体発動と同時に全ての傷が自動的に回復するようになっているようだ。便利なことこの上ない。
それなりに自信のあった顔を思いっきり斬られたことに強い憤りを見せたバズビーは、松本の処理から始めた。
「まずはテメェからだ!!バーナーフィンガー 1!!」
「松本避けろっ!!!」
「!」
ほんの一瞬で、弾丸状の熱線が松本の首を貫いた。
「松本ォ!!!!」
「遅ぇんだよバーカ。バーナーフィンガー 2!」
「!!」
すぐに日番谷は斬魄刀を上に斬り払って氷の壁を作り出した。
しかし、バズビーのバーナーフィンガーは卍解した日番谷の氷を易々と貫き、体を熱線で斬り払ってしまった。
序盤は、原作とあまり変わらない感じで進みます。