ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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手柄

「がッ・・・!!」

 

 

熱線で身体を斬り裂かれたが、一瞬で首を射抜かれて意識を失った松本の保護のために急繕いで氷の結界を張り、日番谷はバズビーを引き付けて松本との距離を取る。

 

 

「オイオイオイオイ!!逃げんじゃねーよ隊長だろうが!!」

 

 

大量の血が流れ、大いに力も乱れている中で小さな氷塊を飛ばすものの、完聖体のバズビーには適当に手を振り払うだけで全て融けてしまう程のクソみたいな技に見えている。

あえて後ろから追跡する形をとって自然と日番谷を追い詰め、時々熱線を当てることで徐々に日番谷の能力を弱めていく。

 

 

「つまんねえなァ!!結局隊長だろうと俺が完聖体使えばどうってことねえじゃねえか!!まさか、さっきのが必殺技だったのかよ!もう一回やってみろ!!俺が全部砕いてやっからよォ!!!」

 

 

入念な下準備が必要なさっきの技は、簡単に放つことなどできない。

中々の大きさの傷を負っている状況なら尚更。

一度態勢を立て直すために、退くしかなかった。

そして、形勢逆転した瞬間に消極的な戦闘しかしない日番谷に対して、バズビーは早々に見切りをつけた。

 

 

「チッ、挑発にも乗る気力もねえってか。追いかけっこするだけのくだらん遊びなんかもう終わりにしてやるよ」

 

 

走る事をやめたバズビーは立ち止まり、バーナーフィンガー1を二発撃ち込んだ。

熱線は、日番谷の背に浮かぶ氷の華を射抜き、強制的に散らせた。

 

 

「!」

「バーナーフィンガー!!ッ――――!」

 

 

だがそこに、予期せぬ客がやってくる。

 

 

「があッ、ああああ゛あ゛アアア゛ア゛アアあああアア゛ッッッッッ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

卍解を奪った当の本人である、BG9が天から日番谷の身体を貫き、高圧電流を数十秒間流した。

そのまま日番谷の身体を蹴り飛ばして地面に叩きつけ、再び掌に仕込んだ刃を日番谷に突き刺して大量の電流を流す。

断末魔の叫びを上げる日番谷に対し、まるで人体実験をするかのような口ぶりでBG9は観察を続ける。

 

 

「やはり隊長ともなれば高圧電流に対してもある程度耐性はあるようだ」

「何だよ、横取りしやがって」

「奪った卍解で殺すことが出来なくとも、一時は我が所有していた故、殺す必要があるだろう」

「関係ねえだろ。死神に卍解戻ったなら」

 

 

その後も何度か高圧電流を日番谷の身体に流したが、いよいよ反応が無くなったところでBG9は掌の刃を日番谷から抜き取った。

 

 

「最後だけいいトコ取りしやがって、クソ野郎が」

「殺したのはお前ではないが、手柄はお前にやるぞ」

「要らねえよバカが。こんな汚ねえ死体手柄にするくらいなら骨まで全部焼き切ってやる方がマシだ」

 

 

許容量を優に超えた電圧を全身に流された日番谷は、身体のあちこちから噴水のように出血し、全身血まみれでぐったりしていた。

ずっと見ていると胸が悪くなるので、バズビーも直視しないよう若干目を逸らしている。これからの晩餐に、肉は少々厳しいかもしれない。

嫌な臭いも漂ってきそうなので、バズビーは手柄うんぬん全て置いてその場から立ち去ってしまった。

 

残ったBG9は日番谷の身体に端子を繋いでくまなくデータを採取し、数十分も経てば死亡する試算を立ててから再び新たな敵を探しに行った。

 

 

 

*****

 

 

 

見えざる帝国の中にある小ぢんまりとした一軒家の中に、五人の女性滅却師は身を潜めていた。

最初はバンビエッタの指示で特攻をかますつもりだったが、卍解が死神の手に戻ったことを聞いたリルトットが止まり、様子見をすることになり、今に至る。

 

 

「ねぇまだなのーー!!!あたし早く死神殺しに行きたいんだけど!!」

「もう少し待てビッチ。蒼都みたいになってもいいのかよ」

「・・・!!嫌よ!!あたし絶対死にたくない!」

 

 

一応参謀的ポジションにいるリルトットが実質5人をまとめているため、苦労が絶えない。何もしないリーダーに嫌気も差す。

適当にお菓子を広げているため今は留まってくれているが、お菓子が無くなってしまえばいよいよバンビエッタは我慢できず飛び出してしまうかもしれない。

それならそれで別にいいのだが、夜まで待ってくれた方が色々と都合がいい(役に立つ)

 

 

「前の戦いで隊長を殺したあたしが、あんた達より先に負けるワケにはいかないもの!」

「バンビちゃんの爆弾、すっごいもんねぇ」

「ジジのゾンビみたいなしょぼい力よりあたしの方が役に立つのは当然でしょ!皆あたしがブッ壊してやるわ!」

「バンビちゃんすごーーーい!」

 

 

見え透いた友情ごっこにキャンディスが辟易した顔を浮かべるものの、ふんぞり返ったバンビエッタの目には入らない。

静かにお菓子を食べていたミニーニャは、隣で思案するリルトットに今後の予定を尋ねた。

 

 

「これから、どうしましょうかねぇ」

「あまり使いたくはねえが、完聖体でブッ飛ばすしか考えられねえな」

「疲れますねぇ・・・」

「本気で言ってんのかよ。オレ達は一応新入りだが、星十字騎士団の中では力はある方だぞ?紳士ぶったジーさんとか出歯亀野郎に比べたらな」

「私は機械人形程度なら殴って壊せますよぅ」

「オレも嚙み千切っちまえば余裕だな。クソ不味そうだが」

 

 

と、最終的にどうでもいい味方の貶し合いに花を咲かせていたところで、通信が5人の許に届いた。

 

“BG9とバズビーによる、十番隊隊長格の撃破”

 

この知らせを聞いたバンビエッタはやはり外に出たがってしまう。

 

 

「何であたしが今ここにヒソヒソ隠れてないといけないのよ!!」

「夜暗くなってから瀞霊廷中を爆撃すれば簡単に敵見つけられるだろ。夜は身を隠しやすい分、バンビの爆撃が灯り代わりになって役に立つんだ。だからもう少し待ってろ。日が暮れたら好き放題爆撃していいぞ」

「納得いかないわよ!明るかろうが暗かろうが全部爆発させちゃえばいいのよ!そうすれば全部あたしの手柄に・・・!」

 

 

ちょっと無理がある理由なのはリルトットも分かっていたが、折角戦力として役立たせるなら、自分の思い通りに動いて欲しい。

夜は死神の服装のせいで暗闇に紛れやすく、奇襲される危険度が高くなることまで頭が及ばないバンビエッタは、尚も駄々をこねる。

だが何よりも、無尽蔵な爆撃に巻き込まれるのが嫌というのが一番の理由で今回集団行動を取ったのだ。

いざとなれば、止められる。

日没までもう少し。何とかバンビエッタを引き留めようと新たにお菓子を広げてバンビエッタの気を引くことにした。

 

 

 

*****

 

 

 

「朽木隊長も、恋次さんもいない中、俺が頑張らないと!」

「良い心構えじゃねえか!さすがアイツの舎弟なだけあるな!」

「でも、無茶だけはしちゃダメだよ。さっきみたいに二人一気に運べる体格じゃないでしょキミ」

「すみません・・・、三席である以上、俺も口囃子三席みたいに強くならないと!」

「あの人参考にするのはよくないよ、格の違いで絶望するだけだから」

 

 

斑目、綾瀬川、行木理吉の三名は、たまたま発見した重体の砕蜂と大前田を伊江村と花太郎が指揮をとっている臨時救護詰所に運んでから、再び敵を探すために行動していた。

重傷者の運び屋みたいな扱いになっているのは少し納得いかないが、そんな不満など言ってられない程に、戦況は不利であるように思われた。

 

 

「戦える俺達が戦況を持たせねえと、一護たちが来る前に瀞霊廷が落とされちまう。」

「修行から、いつ戻ってくるんだろうね」

「恋次さんなら、きっと――――」

 

 

と行木が言葉を発したその時に、天から二つの光が降りてきた。

そこから感じ取った霊圧は、阿散井と朽木ルキアのものだ。

 

 

「恋次さんが戻ってきた!合流しましょう!!」

「いや、もう少し時間置いてからにしよう」

「あの光見た滅却師が寄ってくるかもしれねえしな」

「あぁー・・・、そうですね、じゃ―――――」

 

 

言葉を言い切るまでもなく、行木の首に横から凄まじい殴打がぶち当たる。

 

(!!)

 

それに反応した瞬間には、既に斑目の身体にボディプレスを炸裂させており、意識を失った斑目の頭部に一発殴っただけで首が真横に一気に折れた。

 

 

「ヘイONE!TWO!!THREEEEEEEE!!!」

 

 

最後は、綾瀬川の身体に纏わりついた滅却師が、強引な締め技を使って綾瀬川の全身の骨を一気に打ち砕く。

バキバキバキ!!と骨が一気に折れる音が響き渡った。

 

 

「あああああああああ!!!!!!!!!!」

「ふん!」

 

 

締めた綾瀬川を投げ飛ばし、瓦礫の中にくたくたの身体を埋める。

 

 

「決まった!決まったぞジェイムズ!!」

「ヘエ!素晴らしいですミスター!」

 

 

どこかから取り出したゴングをカンカンと鳴らし、その音に反応してマスク・ド・マスキュリンは筋肉アピールを盛大に見せつけていた。

まさに一瞬で高等席官3名を何もさせず瀕死にさせたその力は、第一次侵攻の頃よりも高まっているようだ。

しかし、力を誇示したくとも誰も味方がいない以上、閑古鳥の鳴くプロレス会場みたいに寂しい状況となってしまう。

 

 

「ム・・・さっきの光があった場所から死神のパワーを感じるぞ・・・!それならワガハイの力で殺してやろう!ジェイムズ、行く・・・」

 

 

ところが、近辺から一つの霊圧がまだ残っているのを感じる。

辿ってみると、最初に殴り飛ばした死神が最後の力を振り絞って斬魄刀に触れ、立ち上がろうとしている所だった。

すぐに死神の所へ向かい、今度こそトドメの一発を当てねばならない。

討ち損じた己をいたく恥じ入る。

 

 

「何と!!まだ生きていたか悪党め!」

「!・・・ッ、・・・、」

 

 

対する行木理吉も、油断してなす術もなくやられた自分を大いに悔やんでいた。

これでは前回の戦いで不覚を取ってしまったのと全く変わらない。

しかもよりによって、恋次が瀞霊廷に戻ってきたのに浮かれてしまったせいでこのザマだ。

席官として失格と言われても、否定する材料は無い。

 

立ち上がろうとすると、口から大量の血がドバドバと流れて再び膝をついてしまう。

 

 

「フム・・・、苦しいのは辛いか?悪党よ」

「ううっ・・・、・・・・・・」

「反応無しか、ならば時間の無駄だ。死ね!!」

 

 

そんな絶望的状況にもかかわらず、再び行木には奇跡が舞い降りる。

行木の頭を吹き飛ばそうとしたマスクの右手拳は、死神の隊長によって左手の甲で弾き飛ばされた。

2年前に戻ってきた、一人の隊長。

見るからに恐そうで、回覧資料を届けに行った時は目も合わせずにそそくさと帰った。

 

 

「あ・・・、あ、な、・・・」

「喋ったらアカンわ、無理せんで寝とけ」

 

 

後ろから聞こえてきた関西弁も、2年前に戻ってきた隊長のものだ。

救援としてやって来たのは、色眼鏡で見て怖がっていた昔の隊長の二人、平子真子と六車拳西だった。

 

 

「真子、コイツとあっちの十一番隊の席官任せていいか?」

「はァ!?オレ一人で三人運べっちゅうんかアホ!!」

「副隊長の雛森がいるだろうが!あとコイツは前にも戦ってるからある程度やり方は分かる。一人でやれるから大丈夫だ」

 

 

隊長二人の瞬歩に少し遅れてやってきた雛森は、行木に駆け寄ってすぐに肩に担ぐ。

雛森の力だけでは太刀打ちできない程の重傷なので、すぐに四番隊へ運ぶ必要があった。

しかめっ面をしていた平子もすぐに納得し、全部任せることにした。

 

 

「何や、前にそいつと戦っとるんか。なら後は任せたで。桃は行木くん運び。オレはあっちの十一番隊二人担いでいくわ」

「了解です!」

 

 

平子に名前を知られていることも気付かぬまま、行木は既に意識を失っていた。

隊長が来てくれたことに安心して体力を使い切ってしまったのだろう。

 

だが、三人も隊長格がいる格好の状況は、マスクにとっては喉から手が出る程求めていたものだった。

 

 

「ムムムム!逃がすと思うか小悪党共!!」

「あァ!?オマエはあそこの土器みたいな奴の相手しとれハゲ!」

「誰が土器だ!!」

 

 

ツッコミを入れつつ、ヘッドバッドで突撃してきたマスクの頭を拳西が横から鷲掴みにし、全くもって明後日の方向に勢いそのまま投げ飛ばす。

しかしマスクは投げ飛ばされた状態のまま空中で態勢を立て直し、高い塔をバネにして再びヘッドバッドで拳西めがけて更に早いスピードで突進してきた。

 

 

「スター・ヘッドバッド!!」

 

 

その速度をしっかり目で追いつつ、拳西は()()()()()ままでいた。

 

 

「ワガハイの頭突きで、打ち砕かれてしまうがいい!!」

 

 

そして拳西の身体に頭が触れた途端、マスクから放たれた霊力全てが一瞬で相殺されてしまった。

 

(・・・?)

 

状況を理解できなかったマスクの身体に、高速で何重にも風の糸が巻きつけられる。

 

 

「効かねえよ、全く」

「なっ!何だこれは!悪党よ一体これは「言う訳ねえだろ」

 

 

「お前が以前殺した筈の死神でも思い出してろバカが」

 

 

マスクが相手の正体を思い出したその時、巻き付いた太刀筋全てが炸裂し、身体ごと大爆発してしまった。

 

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