ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

146 / 182
再戦

「ほう・・・もしや貴様、あの時の悪党か。ワガハイが岩で押しつぶしたはずだが、何故生きておる?」

「ンなモン適当に考えとけよ。どうせ関係なしに殺すんだろ?」

「悪党の癖に正義のヒーローであるワガハイのことを分かっておるではないか!」

「どのツラ下げてヒーローぶってんだよ・・・」

 

 

その呆れ混じりの発言に、マスクは強い嫌悪感を示した。

 

 

「悪口確認!!断じて許さぬ!!!ワガハイの強い怒りに打ち払われるがいい!!」

 

 

レスラーマスクに描かれた星の紋章が色を失うと同時に、マスクの右手拳に星の紋章が浮かび上がる。

浮き出た血管を伝って霊圧が増幅されていき、マスクの右腕は巨大なものへと変化を遂げた。

 

 

「この星の紋章はまさしく悪をくじくヒーローが持つべきものである!スターの力を浴びて灰と化せ!!」

 

「スター・殺人パンチ!!」

 

 

十分な手応えを感じたマスクは、拳西の身体に手の甲を当てつつ、莫大な霊圧を流し込む。

星の紋章の力を受け、通常の10倍まで跳ね上がったパンチは、まさしく正義の鉄槌と言うべきか。

だが技を受けた拳西は、衝撃の一言を放った。

 

 

「おいどうした、()()()()()()()()()()()()()()()()

「なっ・・・!何だと!!悪党が正義の鉄槌を受けて無傷とはあってはならないことだ!!」

「おとぎ話かよ。人生そんな単純にいかねえぞ」

「認められぬ!ワガハイのルールに従わない悪党など、即刻排除してやろう!!」

 

 

瞬間、拳西の頭の下に移動したマスクは、肘に星の紋章を浮かびあげて次の攻撃に移る。

 

 

「スター・エルボースマッシュ!!」

 

 

一点に霊圧を集中させたため、油断して躱さなければ下からの肘打ちで首が吹っ飛んでもおかしくない。

しかし運が悪い事に、この一撃に限って拳西はしっかり回避行動をとった。

攻撃全振りにしていたマスクは、思わず態勢を崩してよろけてしまう。

その隙を見逃さなかった拳西は、よろけたマスクに掌底打ち、肩を掴んで腹に膝蹴り、無理矢理な背負い投げの三連発を一瞬で流れるように行い、更にマスクの怒りを買うことになった。

 

 

「貴様ァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!卑怯にも躱しやがって!ヒーローの拳を躱すなどルール違反も甚だしい!」

「ここは子供向けアニメの世界じゃねえぞ。どんな思考回路してんだよ」

「そのすました態度も妙に腹が立つ!!ジェイムズ!ワガハイに力を・・・、???」

 

 

と辺りを見渡すが、さっきまで一緒にいたジェイムズは何処にも見当たらない。

懸命に探していると、血の海が広がっている場所があった。

 

 

「まさか、貴様・・・」

「そこにいた奴ならお前を投げたのと同時に爆発させといたぜ」

「許し難い・・・許し難い男だ・・・・・・、」

 

 

「大切なジェイムズを適当な流れで殺すとは、到底許せん!!ワガハイの怒りは、凄まじいスピードで膨れ上がっているぞ!!!」

 

 

膨れ上がった怒りは、マスクの両腕全体に星の紋章が浮かび上がることで具現化されていく。

もはや人体構造を無視するかのように不気味な程巨大となった両腕は、圧倒的な霊圧を携えて拳西に襲い掛かった。

 

 

「スター・ミラクル・殺人パンチ!!」

「おいマジかよ!」

 

 

巨体にもかかわらず猛烈な速度で襲い掛かる両腕のパンチに、タイミングを合わせて何とか後ろに下がって躱しきる。そのままだったら拳に挟まれてただの肉塊となっていただろう。

腕だけが巨大化して非常に不釣り合いな身体になっているにもかかわらず、マスクは巧妙に操作して拳西を追い詰めていく。

 

 

「スター・ガトリングチョップ!!!殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺こここここここここkkkkkkkk殺殺殺殺殺殺殺殺殺!!!!」

 

 

ドドドドドドド!!!!!とマシンガンのように何度も巨大な腕でチョップを繰り広げるせいで、周囲の建物も余波で見る見るうちに崩壊していく。

最初の一発に手応えを覚えてからもう100発程殴っているため、身体もグチャグチャになっているかもしれないが、マスクにとっては見慣れた光景だ。

自らの力で敵の肉体の原型を留めない程にさせたことは、何度もある。

 

ひとしきりチョップを撃ち終え、満足して死体を眺めようと煙が立ち込める中注意深く目を凝らそうとした。

だが。

 

 

「よそ見は感心しねえなあ?ヒーローだろ?」

「!!」

 

 

マスクの背後から、悪党の声が耳に入ってくる。

そして今まで殴っていた身体を見てみると、滅却師の聖兵であることが分かった。

最後に血を吐き、今まさにぐったりと絶命した所だ。

 

 

「スターを騙すとは何たる悪行!!後悔しても知らんぞ!!」

 

 

とは言うものの、死体とはいえ味方の滅却師の身体をポイッと雑に投げとばし、飛廉脚で距離を詰めながら足を高く前に突き出して拳西の頭を狙う。

 

 

「スター・フロント・ハイキック!!!」

 

 

しっかり狙いを定めたマスクの蹴りは見事に頭部に命中し、二人を中心に生まれた霊圧の衝撃波が周囲の建物を更に崩壊させていく。

マスクの足にもしっかり星の紋章が浮かび上がっており、蹴りの力は10倍にまで跳ね上がっている。

 

それでも、この技をしっかり決めたマスクは焦りの表情を浮かべた。

吹っ飛ぶ筈の拳西の身体が、未だにマスクの足と接触していたからだ。

 

 

「何故だ・・・、何故ワガハイの思う通りに吹っ飛ばないのだ悪党!!!」

 

 

その質問に対して、拳西は自分の左蟀谷に接触している右足を、本気の力で一気に上へと掴み上げた。

左足は地面についていたため強引に股を裂かれたに等しく、マスクの股関節が一瞬にして崩壊する。どうやら身体の柔軟性は低いようだった。

 

 

「のっ、のわぁぁぁぁああああああ!!!!!!!ワガハイの脚が!脚が!!!!!」

 

 

後ろに転んだマスクは痛みで思わず股を押さえようとしたが、すかさず拳西が両脚の大腿を踏みつけ、更なる痛みを与える。

 

 

「ぎぃゃやぁっぁぁあああああああ!!!!!!!!」

「うるせえ奴だな」

 

 

「とっとと死んでろ、自称(エセ)ヒーロー」

 

 

大腿を踏みつけた拳西は、マスクの上に立って虚化をする。

やはりこの仮面を見た滅却師は強い動揺を見せた。以前の戦いで見たのは偶然では無かったのだ。

だが、ここで変に事情を問い質した所で相手に戦略を練る猶予を与えてしまうだけなので、すぐさま虚閃を放って腹に大穴をあけた。

 

一気にここまでやってしまえば、完全回復は厳しいだろう。

お付きの子どももしっかり殺しているので、万が一息があっても手負いのままで戦うことになるはずだ。

 

だが、安心するにはまだ早かった。

 

 

「ふん!!!」

 

 

マスクが力を籠めると、腹にあいた穴は完全に塞がり、かっ開いていた股関節も全て元通り。

慌てて拳西は距離を取ったが、それが失敗だと気付くのはすぐだった。

 

 

「死な~~~~~~~~ぬ・・・死な~~~ぬぅぅ・・・、スターが悪党にィ~~~~、やられて死ぬわけには~~~いかぬぅ~~~~~~~♪そうッ、思わんか!!!ジェイム~~~~~~~~~ズ!!!!!」

「はぁ~~~~~~~~い!!!!」

 

 

想像を絶する光景だった。

爆散した肉片一つ一つから、複製されたジェイムズが大量に発生していく。

ぐじゅぐじゅと肉が再組成されていき、全員がマスクに声援を送るため、多重音声となって耳をつんざく予期せぬ不協和音を奏でていく。

断風で処理するには数が多すぎると判断したのも、失敗だった。

 

 

「エナジイイイイイイイイイ!!!!!!!!みなぎるうううううううううううううううう!!!!!!!!!!!」

 

 

身に着けていた軍服は全て破れ、星の紋章がついたチャンピオンベルトとプロレスパンツ、さらに頭に身に着けていたマスクの模様も変化していた。

 

 

「スター・パワーアップ、完了・・・・・・!悪党よ!見せ場は終わりだ!!」

「今までを俺の見せ場だと思ってたのかよ・・・、もうちょっとちゃんと戦えばよかったかもな・・・」

 

 

拳西の独り言など耳に入れず、マスクは踏み込んですぐに霊圧を籠め始めた。

 

 

「ぬうううううううんっ!」

「!」

「喰らうがいい・・・ワガハイの真の力を、そしてワガハイの必殺技を・・・!!」

 

 

「スター・ラリアット!!!(セイ)ッ!!」

 

 

極大の霊圧は、さっきまでびくともしなかった拳西を一気に遠くまで吹き飛ばす。

ただの断風程度では相殺することなど不可能なので、虚化に頼ろうとしたが、マスクが見逃す筈など無かった。

 

 

「虚の仮面を被ることなど、絶対にさせぬわ!!!1マイル離れてようが、貴様をどこまでも吹き飛ばしてやる!!!!」

 

「星ッ!!星星星星星星星星星星星星星星星星星星☆☆☆☆☆☆!!!!!!」

 

 

大量の拳打になす術もなく、態勢を立て直すこともできない拳西はマスクの言う通りどこまでも吹き飛ばされている。

 

 

「ぶははははははっっ!!スーパースターともなれば全てワガハイの思い通り!!悪党のルールなど全てワガハイが断ち切ってやるのだ!!空中で何も出来なくなった貴様は・・・」

 

 

上空へと飛んだマスクの頭に星の光輪、背中に翼を携え、遂に完聖体を発動させた。

 

 

「我が完聖体(フォルシュテンディッヒ)、『神の威光(ディニタス)』の裁きを受けて、地に戻ることもなく塵となって死ぬのだ!!」

「かっこいいよーーーーーー!!スーパースター!!!!」

 

 

そのままマスクはマントと翼を使って空中に巨大な五芒星を描き、ジェイムズの存在を考えずに渾身の一撃を放った。

 

 

「さあ、喰らうがいい、ワガハイの本物の必殺技を!!!」

 

「スター・フラッシュ・スーパー・ノヴァ!!!」

 

 

拳西を狙った星の光が地面に落ちるや否や、綺麗に星型の大爆発を引き起こし、ジェイムズ含めた有象無象を燃やし尽くした。

 

 

「ぶははははははは!!!二度目の正直だ!!悪党よ、さら――――」

 

 

言葉を言い切る前に、不自然な感触を覚えた。

 

 

「・・・・・・む・・・?」

 

 

爆発で生まれたものではない、奇妙な風を感じ取る。

思わず燃え盛る爆心地に目を向ける。

現在進行形で垂直に生まれている星の光と爆炎が、僅かに歪みを見せた。

 

(!?)

 

だが、マスクの顔は少しの困惑から恐怖へと塗り替えられる。

 

 

歪んだ星の光と爆炎が一挙に線状に捩れていき、マスクに襲い掛かって来た。

速度がそれ程速くなかったので容易に躱せたが、スーパー・ノヴァの力は全て消えてしまった。

 

 

「何だ・・・?今の力は・・・!?」

 

 

形を変えて消えてしまった自身の力に目を向けて動きを止めてしまう中で、再び風を感じ取る。

 

(風・・・?何だこの風は・・・!)

 

後ろ、それも遠くから感じ取った奇妙な風は、マスクがスーパー・ノヴァの五芒星を落とした場所から伝わってきた。

 

 

「何だそれは・・・!ワガハイの力を奪うとは、一体何だそれは!!」

 

 

空中から見下ろした拳西の姿は、僅かながら変化している。

 

 

「お前らが前に奪った卍解だよ」

「成程・・・、ワガハイの力を乗っ取るとは!!危険すぎる卍解だ!!この悪党はいよいよ生かしておけぬ!」

「乗っ取ってねえぞ。丁度いいから()()()()()()()()()。・・・いい機会だ。見せてやるよ、俺の卍解を」

 

 

今まで卍解で纏っていた鋼鉄の羽衣に、握り懐剣、背中の装甲、これら全てを失い、拳西の身体には白い羽衣だけが纏われていた。

僅かに水色の光を放つ羽衣に、以前の面影は見られない。

 

 

 

 

 

 

 

「卍解  天廉断風(てんれんのたちかぜ)

 

 

何百年を経て、本物の力が目覚める時が遂に来た。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。