ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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The Explode

修兵が振り返った時の隼人は、隊長羽織を着ていて大いにびっくりさせられたが、それ以上に霊圧が異質だった。

 

新たな霊圧を知ろうとすればする程、気持ち悪くなっていく感覚がした。

解読したが最後、恐ろしい呪いにかかってしまいそうにも思える。

味方なのに。信頼する死神の先輩なのに。太刀打ちできない強敵に狙われているような悍ましい悪寒が背筋を伝う。

 

 

「少し離れた所に、四番隊の高等席官が集まって治療してる場所あるから、やられた子運んで、ついでに腕も治してもらいなよ」

 

 

花太郎と伊江村が二人であくせく治療する様子を霊圧で感じ取っていた隼人は、修兵に彼らの許へ行くよう頼む。

応援要請したからか、荻堂も駆け付けたようだ。治療されているのは二番隊のトップ二人と、六、十一番隊の席官だ。5人の霊圧はかなり弱くなっている。

十一番隊の副隊長が出入りしている様子も霊圧ごしに読み取れた。

 

 

「・・・分かりました。腕治したら加勢します」

「いい。というか来ないで。横取りするようで悪いけど、あの滅却師は僕がやる。僕がやらなきゃダメなんだ」

「・・・?―――!」

 

 

珍しく見せた隼人の強いこだわりに、修兵は七番隊隊長と副隊長がどのようにして殺されたかの報告内容を思い出し、すぐに納得した。

恐らくあの滅却師が、狛村、射場コンビと戦ったのだろう。

あの爆撃が、二人の命を奪ったのだ。

だからこそ、強い殺意を霊圧から感じたのだろう。

 

 

「変に加勢するより、今はしっかり傷を治す方がいいよ。それぐらいなら四番隊に軽く処置してもらうだけですぐにもう一回出陣できるから」

「・・・そうっすね。お願いします、()()()()()

 

 

修兵が誉望を抱えて瞬歩でその場を離れた瞬間、思いがけない言葉の響きに思考がフリーズしてしまう。

 

(こっ・・・口囃子、隊長・・・)

 

イヒヒッと気持ち悪い笑いが零れそうになったが、相手の滅却師によって幸運にも漏れることなく遮られた。

 

 

「誰よあんた。新人さん?ホンッット尸魂界って人手不足なんだね!」

 

 

地上に降りてきたバンビエッタは謎の青年の正体を確かめるために、ずいっと近寄って顔を見たが、心当たりはない。前髪を上げておでこを出した短髪の死神は、九番隊の銀髪の男らしい死神しか記憶に無いため、きっとどっかのちょっと力がある死神が急繕いで隊長となったのだろう。

 

だが、近くで見た顔は意外にもバンビエッタの好みのタイプだった。

見えざる帝国に持ち帰ってから己の奴隷にして、心身共に下僕としてやりたいという衝動に駆られる。今まで憂さ晴らしに部屋に呼びつけていた聖兵とは完全に違う。

従順な奴隷像として、ピッタリの見た目だった。

 

 

「でもいいわ。あんたは見えざる帝国(コッチ)に連れ帰って色々と調教(教育)してあげる」

「何それ。誰って聞いといて結局素性に興味なしかよ」

「はぁ?口答えする気?このあたしが殺さずに生かしてやるって言ってんのよ?でも名前を聞かないのはたしかに良くないわね。あんた誰よ」

「教えるわけねえだろバーカ」

 

 

至近距離から爆弾が飛んでくる気配を事前に感じていたため、侮蔑してすぐに瞬歩で距離を取ったのは大正解だった。

さっき立っていた場所は一瞬で火の海となっている。油断していたら死んでいた。

新品の羽織の裾もギリギリ焼けずに済んでなにより。

 

だが、いいように転がされたバンビエッタが黙っている筈など無かった。

 

 

「・・・そんな口利けるのも今のうちよ。あたしの・・・あたしの爆撃で・・・!」

 

 

「頭残してブッ飛んでなさいッ!!!!」

 

 

再び大量の爆弾が飛来してきたため、しっかり球を見て的確に躱していく。

量こそ凄まじいが、一つ一つの球の速さはそれ程でもないため躱すことは難しくなかった。

上空へと飛び上がったバンビエッタが地上を走る隼人に爆弾の雨を落とすが、手応えを全く感じられず、いたずらに爆弾を増やしたせいで爆炎と土煙で視界を奪われてしまい、次の一手にスムーズに繋げられない。

霊圧を隠されたかと舌打ちしそうになったが、黄色の霊圧の衝撃波で炎と煙全てが吹き飛ばされ、隼人は地上から姿を現した。

 

 

「なに?さっきのボサボサ髪みたいに隠れんじゃないの?」

「――みと―、――みょう――」

(・・・?)

 

 

隼人が何か小声で呟いたものの、バンビエッタの耳にははっきりとは届かない。

はっきり言えよ、という苛立ちを込めて適当に爆弾を投げたが、当たらずに周囲の瓦礫が爆発していく。

狙いが逸れたか。今度はしっかり集中して爆弾を放つ。

昔から視力がいいので、遠くからでもしっかり人物を特定できるのが強みだったのだ。

 

しっかり集中し、しっかり力を籠めた爆弾は、個数こそ少なかったが速度は倍に跳ね上がった。

 

(!)

 

躱せないと判断した隼人が目の前に鬼道の障壁を作った所で、バンビエッタは思わずニヤリを不敵な笑みを零した。

爆弾が壁にしっかり触れたのを確認してから、バンビエッタは隼人の許へ飛んで行ってボロボロになった姿を上から眺めようとする。

 

 

「あーーーあ、防ぐからダメなのよ。直前になっても気付かないとかあんたバカなの?」

 

 

何も返答が無いため、きっと()()()()()()()()の爆発をまともに受けて致命傷を負っているのだろう。

既に意識を失っていると仮定し、バンビエッタは尚も独り言を続けた。

 

 

「あたしの爆撃は防げないの。あたしの霊子を撃ち込んだものが全部爆弾になるのよ?だから前の戦いではワンちゃんの卍解を全部爆発させたの。そしたらワンちゃんもまとめて爆発しちゃってさーー!もぉ傑作よね!!・・・って言っても誰も聞いてないのよね。ホンットさぁ、もっと骨のある隊長いな「聞こえてるよ」

「!」

 

 

霊圧までしっかり見なかった自分を軽く呪いつつ、さっきの爆弾は確かな手応えを感じていたので違和感を抱いていた。

 

 

「やっぱりお前か、狛村隊長と射場ちゃん殺したの」

 

 

煙の中から聞こえた声は、さっきバンビエッタを嘲った声とは比にならない程、暗く、鋭い。

鋭利な刃物を突き付けられる感覚よりかは、得体の知れない術に呑まれている気分だった。

謎の空間に突如閉じ込められたような感覚にも似ている。

姿を現さない敵に、足が竦んでしまう。

 

 

「そしてありがとう、親切に力の中身教えてくれて」

「教えたところで変わらないに決まってんでしょ!聞いてなかったの?あたしの爆撃は防げないの!躱そうと思ってもずっと弾幕張り続けてたらいつかは絶対に当たる!変な術で壁作ってもその壁が爆発するのよ!さっきだってあんたが作った壁が爆発したのよ!!」

「うんそうだね、だから()()()()()()()正解だったよ」

「保険・・・?」

 

 

意味が分からず苛立ちが増幅する中、煙の中から人影が見えた。

迷わず爆弾を翼から放とうとしたが、再び霊圧の衝撃波で凄まじい風が吹き荒れ、態勢を保つために爆弾を撃てなかった。

出てきた死神は、無傷だった。

 

 

「無傷・・・!?ちょっと待って、あんた一体――――」

 

 

何をした、そう言う寸前で、バンビエッタは死神の姿を見て固まってしまった。

他の死神と同じように腰に提げていた斬魄刀が、鞘ごと消えている。かといって、両手には何も持っていない。

羽織の中や死覇装の中に隠されているとも思えない。

そして、死神の眼を見た瞬間、驚きで言葉を失った。

 

 

桃色に染まる、震えた眼球。完全に開き切った瞳孔。

七番隊にいる、自分が殺したはずのあの死神の始解の特徴と完全一致していたのだ。

あの時七番隊の中にはいなかったのか、それとも単純に討ち損じただけか。

どちらにせよ、この男が生きていることは許せなかった。

 

 

「あんた、口囃子隼人ね!!!!!!」

 

 

全力を振り絞って、出せる限りの爆弾を一気に翼から撃ち放った。

 

 

 

*****

 

 

 

距離を取っていた時に始解していたため、バンビエッタの霊圧を完全ではないものの少しは読めているため、ついに隼人は実戦で本当の力を使うことになる。

3分の1程度しか霊圧は読めてないが、祈るように霊圧を伝って力に干渉する。

 

(いけるか・・・?)

 

無事に力は届き、バンビエッタの生み出す爆弾の軌道を逸らすことができた。

上手い具合に自分の身体に当たらないように、精密な操作で力に干渉していく。

 

球が当たらなかったことに再び憤り、バンビエッタは連続で大量の霊子爆弾を放っていく。

底が見えない程の爆撃であったが、一度干渉してしまえばもう隼人にとっては何も難しくない。

一度の干渉を持続させ、全ての球が()()()()()()()()()()()よう軌道修正していく。

その場を動いていないのに一つも爆弾に触れていないことに、ますます怒りを増幅させていく。

 

 

「何で、何で当たんないのよッ!!!意味分かんない!!あたしの球は全部しっかりあんたを狙ってる!なのに一つも当たんない!?ふざけんじゃないわよ!!」

 

 

ちゃんと狙いを定めても、バンビエッタの爆弾は隼人に当たらない。

何度爆弾を撃っても、僅かに軌道が逸れて爆弾が当たらない。

 

 

「あたしの爆撃は防げない?ダセェな。爆撃が防げないなら、当たんなければいいだけでしょ」

「だったら・・・!」

 

 

一気に距離を詰めようとしたが、上空から流星群のように氷塊が飛んでくる。

氷を扱う軌道をアレンジした威力の小さい技だったが、凄まじい弾数に動きを止めてしまう。

その一瞬の隙で、隼人はトドメに入った。

 

 

「破道の九十 黒棺!」

 

 

卍解取得によって威力と棺の完成速度が底上げされたおかげで、ちょっと足止めしたバンビエッタを閉じ込めることは難しくなかった。

棺の中の重力の奔流によって、バンビエッタの身体は押し潰されていく。静血装など軽く破る圧倒的な力だった。

抵抗のために翼から爆弾を生み出す余裕も無く、棺が消え去ると中央にバンビエッタは倒れていた。

身体の中を直接圧砕する鬼道にしたため(血が苦手だから)、流血はしていないが相当なダメージを受けている。

 

 

「・・・卍解使うまでも無かったかな・・・?」

 

 

隼人は卍解習得ホヤホヤのため、始解もしてない状況からいきなり卍解をした場合体に大きな負荷がかかると桃明呪に言われているので、最初は始解を使って戦う必要がある。

ある程度身体を慣らせば卍解の負荷も殆ど無くなるそうだが、始解の状態で倒してしまえば意味が無い。

加えて霊圧干渉はタイマンでも十分有用な武器になるので、よほどの強敵、もしくは実力者との乱戦でない限り卍解の出番は無さそうだ。

 

倒れたバンビエッタの身体は、あちこちが圧縮されてまるで骨を失った毛皮のようだ。

 

(・・・ここまでやれば、動けないだろ)

 

あとは適当に野垂れ死ねばいい。

想像以上に力が無かったことに拍子抜けしたが、むしろ力の消費が抑えられたのでありがたい。

狛村とは相性が悪かったのだろう。あの卍解は霊子なので、格好の的だった。

 

別の滅却師に当たれば狛村が死ぬことなど無かったかもしれない。

自分が行けば狛村が生きていた可能性が高まっていただろう。

やはりあの時隊舎に残るべきではなかったのだろうか。

 

色んな思考が頭を巡り悔やんでも悔やみきれないが、一先ず仇を討ててよかった。

 

 

 

*****

 

 

 

こんなこと、許せるはずなどない。

死神相手にやられること。しかもよりによって、傷一つ与えられなかった。

5人の仲間内の中で、最初に敗北してしまうこと。キャンディスが最初にやられ、その次はミニーニャかジゼル、万が一彼女達がやられても最後の二人には残る計算でいた。それも、敗北といってもこんなボロボロになるのではなく、ちょっと傷を負った程度で戦いが流れるくらいの、安全な立場にいるものだと思っていた。

さっきまで天高く飛び上がって自由に力を振るっていたのに、今となっては体内を圧砕され、動くこともできず地に伏しているのだ。

 

ここまで来てしまった以上、使うしかなかった。

今まで一度も使ったことの無い、バンビエッタが最も忌み嫌ってきた滅却師の超高等技術。

死にたくない。このまま殺されたくない。その一心で、乱装天傀を発動した。

 

パキン、という音と共に、霊子の束が全身を包み込んで繋ぎ合わせ、鉛のように重かった身体が軽くなっていく。

何をしても動かなかったのが嘘のように、むしろさっきよりも俊敏な動きで立ち上がり、バンビエッタは再び生み出した翼から霊子の爆弾を大量に放った。

 

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