エス・ノトとルキア、恋次の交戦が始まったのとほぼ時を同じくして、残っていた三番隊とBG9の戦闘も幕を開ける。
ガトリングガンを機械仕掛けの身体から生成して連射したため、二手に分かれてすぐに無効化させる。
一人に集中すればもう一人ががら空きになるので、BG9はすぐに武器を変えた。
身体から作り出されたのは、握りこぶし程度の二つのスピーカーだ。
力の性質上、何が来るか察知したローズはすぐに耳を塞いだ。
「イヅル!!耳を塞いで!!!」
「!」
耳の穴に指を突っ込んでいても僅かに音が聞こえてきたが、音の性質から身体を麻痺させるものだと分析する。
さっきと比べて僅かに身体に重さを感じるため、高速のミサイルが来た場合に反応が遅れてしまいそうだ。
だが問題は、若干遅れた吉良だった。
「うぐぅッ・・・!!」
耳を塞ぐ寸前に一瞬音を聞いてしまったため、全身麻痺して空中で動きを止めてしまった。
身動きのとれない吉良を確認し次第すぐにスピーカーを引っ込め、鞭のような柔軟性を持った槍で吉良を射抜く。
「!金沙羅!!」
寸での所でローズの始解がBG9の槍に絡みつき、僅かに引っ張ることで吉良の身体が貫かれることはなかった。
そしてローズは、藍染戦での反省を活かしてすぐに始解を解き、瞬歩で一気に距離を詰めた。
(技を解いたか・・・)
絡みついた鞭を掴んで強引にBG9の近くに引き入れようとしたが、始解を解かれたせいで行動を先読みする手間が増える。
瞬時に二刀の近接戦用サーベルを取り出し、ローズと打ち合いになった。
(ッ・・・!機械仕掛けの身体には、簡単に刃は通らないかな・・・)
サーベルを普段使い慣れていないからか、打ち合いではローズの方が優位に立っている。だが、相手の身体が鋼鉄でできているため、生半可な力では表面に傷をつける程度で留まってしまう。
むしろ、斬られる前提で受け流しているようにも見える。
斬魄刀の一太刀など意に介さないということなら、鬼道を使うしかない。
「双蓮蒼火墜!」
態勢を立て直すために一度放ち、間合いをとって周囲を確認する。
ミサイルの残骸や、戦闘の痕跡が少なからず残っているため、それなりに瓦礫もあった。
「破道の五十八 闐嵐!」
先に撃ち込んだ双蓮蒼火墜と合わせて炎の竜巻を作り上げ、少しでも敵の足止めに使う。
同時に巻き上げられたたくさんの瓦礫を風で寄せ集め、土星の円環のように瓦礫で竜巻とBG9を囲い込む。
そして再び始解し、鞭の先端の薔薇を瓦礫の塊に突き刺して自慢の技を発動させた。
「金沙羅奏曲第十一番 『
たった一つの瓦礫の爆発は炎の竜巻とBG9をしっかり巻き込み、一瞬にして暗闇の中に太陽が現れる程の大爆発を引き起こす。
突然の煌々とした閃光に耐えられず、ローズは防衛反応として目を瞑ってしまう。
吉良の様子を確認したい所だが、爆発の光で霊圧でしか所在を確認できなかった。
(巻き込んだらゴメンよ、イヅル・・・)
モロに喰らってしまえば後でまくし立てられるだろうなと考えつつ、始解を解いたその瞬間。
一筋のレーザーが、ローズの右肩を貫いた。
「ぐッ!!!」
その追撃として、爆炎の中からローズに向けて火炎放射が飛んでくる。
色が同化してわかりづらく、動きが遅れてしまえば全身を焼かれていただろう。
「ッ・・・!小癪な真似だね!」
動きの悪くなった右腕を使う攻撃を真っ先に捨て、再びローズは鬼道を中心に攻撃を組み立てる。
「破道の四十六
まずは無尽蔵に放射される火炎に氷の光線をぶつけて相殺し、左手に斬魄刀を持ち替えて金沙羅を注意深く操作する。
慣れない左手での操作のため、少々思い通りにいかなくても大丈夫なよう大振りの攻撃を考えていた。
対してBG9は一撃を与えることに成功したため、このまま距離をとって適当にミサイルなりガトリングガンなりをぶっ放すのではなく、ローズを捕縛して手っ取り早く殺す方針へとシフトした。
槍状の鞭を体内から発射し、霊圧探査で正確に捕らえて串刺し。
BG9にとっての常套手段だ。
ところが。
「―――!?」
発射されるはずの鞭が、何度体内で起動させても一向に発射されない。
身体のシステム接続は問題をきたしていない。
何故、と思い今一度目視で身体を見てみると、想定外の出来事が起きていた。
(身体が・・・熔けてるだと・・・!?)
熔けた鉄が変形してミサイルや鞭を発射させるための噴射口を塞いでしまい、自身のシステムでは今まで感知しなかった異常事態が起きているのだ。
しかし、最初の爆発にここまでの火力は無かった。
やろうと思えば簡単に吹き飛ばせるほどの炎だったので、逆に炎を利用して遠距離から攻めようとしていた。
いつの間に鉄を熔かすまでの温度まで上昇したのか。答えは至極簡単だった。
麻痺から復活した吉良が、廃炎を生成する力を応用し、ローズに気を取られている間中ずっと炎の温度を上昇させていた。
吉良の存在を完全に失念していたのは落ち度であるのだが、それ以上に麻痺からの回復スピードの速さの方がBG9にとっては眉唾だ。
ローズもいるため、隊長を想定した麻痺の持続時間を設定したにもかかわらず、半分以下の時間で回復しているのだ。
「・・・ならば、使うしかあるまい」
二対一の上、二人とも隊長クラスの力の持ち主ともあれば、今までの戦い方を変えるしかない。
出し惜しみなどするつもりはなかった。
身を熔かす程の温度まで跳ね上がった爆炎は、光柱によって完全に吹き飛ばされる。
「!」
「イヅル!」
危険を感じた吉良はすぐにローズの隣へと瞬歩で移動する。
「これは・・・?」
「あの光、待機中にボクは何度か見たよ。
「完聖体・・・?」
瞬殺された吉良は何も知らず、頭に?が浮かぶのも無理はない。
卍解みたいなものと言うと、すぐに理解できる頭があるだけローズは苦労しないが。
そして説明しながらローズが虚化したのを見ただけで、吉良は更に警戒心を強める。
光の中から現れたBG9は、熔けた身体が治り、背にはブロックでできた翼、頭には星形の光輪がある。
「
姿を現した時には、身体の中心に緑色のエネルギーが充填されている最中だった。
真っ先に吉良が瞬歩で距離を詰めてエネルギーに刺激を与え、自壊させようと斬魄刀を構えたが、
「ぐああっ・・・!」
「!」
死角にスピーカーが備えられており、近づいてきた敵の動きを止める仕様ができるようになっていた。
聖文字の段階では使えなかった複数兵器の同時使用が、完聖体ではできるようだ。
いまにもエネルギー砲が発射するところで、吉良の許に駆け寄ったローズはすぐさま強引に横へと押しのける。
「虚閃!!」
ローズの虚閃とBG9のエネルギー砲が同時に発射されてぶつかり合ったが、瞬間的に発動した虚閃としっかり溜めた砲撃では明らかに分が悪かった。
緑色のキャノン砲は赤い虚閃を圧倒し、ローズの身体を呑み込んでいった。
「隊長!!」
ローズに叩き押されたことで身体の麻痺をある程度回復させた吉良は、吹き飛ばされたローズを受け止めるために走ったが、間に合いそうもない。
(まずい、このままでは・・・!)
受け身も取れずに建物にぶつかるのではと危惧してしまったが、その心配は杞憂に終わった。
遠くから見た所、仮面はヒビが入っているようだが破壊されてない。
空中で態勢を立て直したローズは、ぶつかる所だった建物に足をつけ、一度空中へと跳躍した後、難なく地上に着地した。
「隊長!無事ですか!」
「ギリギリだよ・・・何とか仮面、割れずに済んでよかった・・・」
仮面が割れた場合は大いに霊力が弱まってしまうが、ヒビ程度なら大したことは無い。一回仮面を戻せば元に戻る。
しかし仮面を取ったローズは、頭からかなりの血を流していた。
思わず吉良は身を竦ませて動揺してしまったが、それに対してローズが嫌な顔などすることはない。
一度は死んだ吉良が死んだままでもこうして動き、共闘してくれるだけで、
「・・・隊長、しばらくは僕が相手します。」
「気遣ってくれてありがとうイヅル。でもいいんだ。ボクは今をすごい楽しんでいるからね。わざわざ無理して前出なくても大丈夫だよ」
「そういう訳にはいきません。死人の僕は、体が欠けようが何も問題ありません。涅隊長が治してくれるので、僕は臆することなく戦えます」
「涅隊長が・・・、そうか・・・」
吉良が蘇った背景に納得したローズは、そこまで言うならと吉良の心意気を買う。
わざわざマユリの手を煩わせた以上、活躍せねば何を言われるか分からないだろう。
「だったら、頼みを聞いてもらおうかな?」
*****
特大のビームキャノン砲はエネルギー消費が激しく、一度発射してしまうとしばらく身体を動かせなくなってしまう。
リスクに見合う程の広範囲を補えるため完聖体後すぐの敵が油断した時に使うよう心掛けているが、この動けない時間にはいつまで経っても慣れずにいた。
おまけに直後は集音機の感度も自動低下しているため、相手の話す内容も理解出来ずにいた。
じわじわと集音機の性能も回復し、身体もしっかり動かせるようになったため、次は核弾頭かと準備を始めようとした所で、血で顔を濡らした敵の死神がのこのこと歩いてきた。
「作戦会議は済んだか」
「済んだよ。イヅルは頭がいいから、ボクの作戦なんかよりずっといいモノを出してくれたさ」
「そうか、だがお前達の作戦など叩き潰してやろう」
表情の読み取れないBG9に対して不敵にほほ笑んだローズの周りに、金色の鞭が大量に生成されていく。
キュルキュルと一本の鞭が撚れてたくさんの人形がローズの前で列をなし、空中には巨大な両手が生まれた。右手親指と人差し指で指揮棒をつまんでいる。
「卍解 金沙羅舞踏団」
「!!」
僅かにピクリとBG9が動いたため、卍解が
確信したローズは舞踏団の頭部を花開かせ、演目の披露を始める。
「金沙羅舞踏団は死の舞踏団。お代はキミの命だよ」
「金沙羅第一交響楽章 本日第一の演目 『
演目を唱えた瞬間、金色の人形はBG9を取り囲み、高速の水流によって閉じ込められる。
始解とは全く違う技の性質に大いに戸惑い、BG9は思わず技の分析をしてしまう。
しかし彼が分析した所で、一体何が起きているのか全く結論付けられなかった。
この卍解は、所詮まやかしだから。
「第二の演目 『
次に繰り出した技は、正反対の炎。
吉良が作り上げた数千度の高温には程遠いが、海流に閉じ込められた影響で思い通りに身動きが取れずにいた。さっき身体を熔かされた嫌な記憶がフラッシュバックする。
「第三の演目 『
三つ目は風の性質を持った技だ。
ピルエットを始めた舞踏団の周囲に大量の鎌鼬が生まれ、水と炎でダメージを受けた身体を斬り刻んでいく。
最初のローズの一太刀ではちょっとした傷しかつかなかったにもかかわらず、卍解の風の刃はしっかり通っていた。腕と脚の比較的強度の低い部位はたくさん斬られている。
やはり、分析しようとしても何も掴めない。
「第四の演目 『
少し距離をとった舞踏団が地面を足で強く踏みつけると同時に、地中から幾つもの土柱が同時に生まれてBG9目がけて高速で倒れ込んだ。
一つ一つはそこまで重くはないが、打撃の数の多さで体内の接続が大いに乱れてしまう。
「くっ・・・!何なんだこの卍解は・・・!氷の奴とは全く違う・・・!」
「そうか、キミ、日番谷隊長の卍解奪ったんだね。でもボクの卍解は彼のとは全く違うよ。ボクの操るものは『音楽』。キミの耳に鳴り響くそのまやかしの旋律が、キミの心を奪ってゆく。まやかしに心奪われれば、怪我をしてそのうち、息も絶えるさ。」
「第一楽章最終演目 『
しかし、今の言葉からBG9はこの卍解の弱点を見抜いた。
それも、普通の滅却師や人間、そして死神には痛みが伴うことであっても、自分にはノーリスクで対処することができる。
つまり、集音機が一切の音を感知しないように設定を変えるだけでいいのだ。
そして設定を変えた瞬間、ローズの卍解は霧が晴れるかのように一瞬で消え去った。
「!?卍解が消えた・・・!?」
「簡単な話だ・・・。ここまで苦しめようと・・・、音を、拾いさえしなければ、お前の卍解は効果を発揮しない・・・!」
卍解を封じた以上、ローズは打つ手なし。
日番谷のようにバズビーから横取りする形ではなく、一から勝利を掴めるのだ。
隊長さえ殺してしまえば、副隊長は何度か麻痺を喰らう程には迂闊なので、多少気を付ければ難なく勝てる。
「卍解を潰してしまえば、死神など取るに足らん!!この完聖体で創り出す兵器を以てすれば、死神など滅却師の足元にも及ばな―――――」
しかし、BG9の言葉は最後まで続けることは出来なかった。
突如、直径1mにも満たない丸い岩がBG9の上から頭に直撃して落ちていったが、その岩はBG9を
圧砕されたBG9は一瞬でスクラップとなり、ただのガラクタへと化していた。
「・・・音が聴こえなくなると、普段に比べたら周囲を把握するのに苦労する筈だけど、キミはそれを計算できなかった。機械でも、耳・・・とは言わないか。音の情報には結構頼ってしまうようだね。
立役者の吉良が、始解した状態のまま上空から地上に戻ってきた。
「単純ですが、引っ掛かってくれて良かったです」
「侘助で何回斬りつけたんだい?」
「ざっと30回程度です」
「・・・よく空中で持続させられたね・・・」
30回も斬ってしまえば、恐らくあの岩は下手な重機や宮殿など比べ物にならない重さだ。恐らく一瞬で何度も斬りつけたのだろうが、到底鬼道で支えきれる重さじゃない。
落としながら斬っていったのだろう。感服するしかなかった。
「ボクの卍解を囮だなんて最初は驚いたけど、やっぱりイヅルに頼って正解だったね。インスピレーションが湧いてくるよ!!」
「知りませんよ」
相変わらず冷淡というか噛み合わない会話になっていたが、最後にローズは穏やかな口ぶりで吉良に告げた。
「お帰り、イヅル」
「・・・・・・、朽木さんと阿散井くんの援護に向かいましょう」
「恥ずかしがらなくていいんだよ、イヅル!」
「うるさいなあ!」
吉良は最初のようなとっぷりと暗い闇に浸かった姿から、肩の力が抜けて段々と普段の性格に戻ってきたのだった。
金沙羅舞踏団、原作だけじゃどうも物足りないので、二つ程技を付け足しました。
地水火風、四大元素です。
また、舞踏団と言うからにはオーケストラに限らずもう少し総合芸術だと思うので、バレエの要素も入れました。
ちなみに最後の技は、皆さんのご想像にお任せします笑