ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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蛇尾丸

完聖体となったエス・ノトの目覚めに気付くのに遅れてしまったせいで、ルキアと恋次は恐怖に惑い、形成逆転されてしまう。

視神経を通じて恐怖を捻じ込まれてしまえば、たとえ肉体を殺しても恐怖を避けることはできない。

単純な戦力強化の恋次だけでなく、エス・ノトの恐怖を封じ切ったルキアも、白哉が苦しんだ“恐怖”を体感してしまった。

 

 

しかし、二人を覆う恐怖の帳は、二人の死神によって跡形もなく破壊されてしまう。

 

 

「「双蓮蒼火墜!!」」

 

 

ローズと吉良の合わせ技でエス・ノトの眼は一気に燃え上がり、中にいた二人は恐怖から解放されていく。

 

 

「―――――・・・君ハタシカ、バズビーニ一瞬デ殺サレタ筈。生キ返ッタノカい?」

「死んでいるよ」

「ソウカ、デモソレダケデハ、僕ノ完聖体ハ防ゲナい!」

 

 

今度は吉良を中心に帳を作り上げ、再びエス・ノトは眼を開く。

ローズには抜けられてしまったが、結局一人でも捕らえられれば問題なかった。

 

 

「サあ、僕ノ“恐怖”ニ心ヲ灼キ殺サレルガ良い!!」

 

 

全方位をエス・ノトの眼に覆われ、何処にも逃げ場はない。

目を瞑っても問答無用で、避けてきた筈の恐怖が吉良に降りかかる。

脳の奥底に恐怖が響き渡り、苦しみ、叫び、のたうち回る、

 

 

はずだった。

 

 

「・・・何・・・?」

 

 

眼に覆われた吉良は、自分の目を閉じもせず、エス・ノトの身体をしっかりと見据えている。

それなのに、吉良の顔つきには何の変化も無かった。

完聖体前のルキアと、全く同じ状態だった。

 

 

「こんなものが恐怖か。・・・残念だけど、つまらないよ」

 

 

死人となって身についてしまった精神力のおかげで、吉良にとってエス・ノトの作り出す“恐怖”は、幻想、紛い物の類にしか見えなかった。

奥底に眠っていた恐怖を呼び覚まされても、何の感慨も浮かばなかった。

つまらなく、どうでもいい。

そんな感想しか、浮かばなかった。

 

吉良の言葉と同時に、再びエス・ノトの眼は何者かに破壊されてしまう。

帳の破壊者を見た時の吉良の方が、表情に変化がある程だった。

流れでエス・ノトも振り返ると。

 

 

「――――――・・・・・・君ハ・・・・・・、朽木白哉・・・!!!」

 

 

ある意味、満を持して現れた白哉の隣には、ローズとルキア、恋次がいた。

待ち望んでいた男が現れ、エス・ノトはじわじわと数的不利に陥っているにもかかわらず、一瞬で切り替えて表情を明るくする。

 

 

「良ク来た。待チカネタよ。ドウダい?僕ノ抉ッタ臓物ノ調子は」

 

 

厳かに地に降りた白哉は何も言わないが、以前やられた敵を見ても、取り乱すようなことはなかった。

 

 

「胃袋、肝臓、腎臓。肺、小腸、大腸、膵臓。胆ノウヤ睾丸モ、心臓以外ホボ全テの臓器ヲ抉リ出サレテ、苦シカッタロう?ツイデニ全身ノ骨モ斬リ刻ンデ粉々ニシテヤッタカラ、動クコトモ出来ナカッタロう?少シ、痩セタンジャナイか?」

 

 

揺さぶる中で、エス・ノトは最後の帳を展開していった。

落ち着いた様子を見せていても、最初の戦いで恐怖に歪められたのなら、今回の力も同じように効く。

だが、その望みは千本桜によって打ち砕かれた。

 

ルキアと恋次、さらにローズの取り計らいで白哉はごく簡単な裏工作を行い、周囲に大量の千本桜を置いたことで、帳の因子そのものを破壊し尽くした。

 

 

完聖体の恐怖の力が通用しない死人の存在に加え、眼を破壊し尽くされたエス・ノトには、最終手段しか残っていなかった。

だが、更なる形態でできる技には、副作用もあることを懸念していると、白哉が口を開いた。

 

 

「兄が私の卍解を奪ったことに、感謝せねばなるまい。私は霊王宮にいる間に、千本桜の真髄を見極めることができた。千本桜と一度離れることで、改めて真の姿を知ることができた。礼を言うぞ、エス・ノト」

「・・・・・・・・・・・・、」

 

 

嘲るどころか、よりによってお礼まで言い放った白哉に、怒りを抑えられず我慢の限界を迎えてしまった。

調子に乗る白哉を、無限の恐怖の海に陥れて、心も身体も破壊し尽くして、白哉の尊厳、誇り、精神を余すところなく殺し尽くし、死んだ方が幸せだと思わせながら永久に生き永らえさせる。

万が一殺してくれと言われようが、絶対に殺さない。

更なる恐怖で絶望の淵に落としつつ、尚も恐怖の追撃を続ける。

 

身体が縦一直線に裂け、流れ出た大量の血液が眼となり肉となり、エス・ノトに肉襦袢のように身体を付け加えていく。

 

 

「殺サナイ殺サナイ殺サナイ殺サナイ殺サナイ!!オ前ハ絶対ニ殺シテヤルモノか!!!」

「・・・そうか・・・。私を殺さずにいてくれるか・・・、感謝するぞ」

「フザケルノモ大概ニシろ!!!オ前ダケジャナい!!ソコノ死人モ金髪モ、朽木ルキアモ阿散井恋次モ、全員ガぁっ―――――――」

 

 

巨大化の最中にいたエス・ノトの言葉は、最後まで続かなかった。

 

 

背中から、蛇腹剣の形をした斬魄刀が突き刺さる。

 

 

「―――――・・・・・・コレは・・・・・・、」

「双王蛇尾丸!!蛇牙(さが)鉄炮!!」

 

 

オロチ王に集約した力が一気に炸裂すると同時に、霊圧で生まれた巨大な蛇がエス・ノトの身体を完全に嚙み潰す。

白哉以外の四人が条件反射で顔に手を翳す程の爆風が舞い、巨大化しかけていたエス・ノトの身体は一気に炭化して塵となってしまった。

 

 

「・・・燃え尽きたか・・・、お前が恐怖を感じることなく死んだのが、残念でならねえよ」

 

 

しっかりエス・ノトの死を確認してから卍解を解いてようやく周囲を見てみると、丁度夜が明けたところだった。

四人の所へ瞬歩で向かうと、ローズから労いの言葉がかけられた。

 

 

「皆、本当に強くなったね。ボクなんか隊長でいていいのか困っちゃうよ」

「あっ、ありがとうございます!!」

 

 

素直に恋次がお礼を言うのとは対照的に、ルキアは少し自信無さげだ。

だが、扱いづらい力であまり活躍できなかったことを考えると、歯痒い思いをするのも仕方ないだろう。

 

 

「・・・私は、敵が復活してから、何も出来ませんでした。霊王宮で修行したにもかかわらず、情けない思いで・・・・・・」

「ルキア」

「・・・はい」

 

 

言葉を詰まらせるルキアに、白哉は最大限の賛辞を贈った。

 

 

「此処へ降りてくる途中、ずっと、お前の霊圧を感じていた」

 

 

「強くなったな、ルキア」

 

 

霊術院にいた時に、白哉に義妹として迎えられたこと。

それにもかかわらず冷遇され、兄弟としての絆を深められず、戸惑い、寂しさを覚えていたこと。

一護との出会いをきっかけとして、白哉の様々な思いに触れ、ようやく白哉のことを少しずつ理解できてとても嬉しかったこと。

 

朽木家に来てからのの様々な記憶が一気に脳内で駆け巡った。

そして、白哉から貰った言葉に、嬉しさのあまり目を閉じて万感の思いを噛みしめていた。

 

 

「兄様・・・!」

「行くぞ、ルキア」

 

 

「尸魂界を護ろう」

「―――――――はい!兄様!!」

 

 

威勢のいい返事に、隣にいた恋次が肩をこづいてニヤニヤ笑う。

一緒に喜んでくれる恋次も、ルキアにとっては十分心の支えになっていた。

 

 

 

*****

 

 

 

しかし、安寧は一瞬にして終焉を迎えた。

 

 

「隊長・・・あれは・・・」

「・・・まさか、隕石かい・・・?」

 

 

ローズの一言で、一気に緊張が走る。

 

 

「わっ、私達でどうにかするぞ恋次!」

「馬鹿言ってんじゃねえ!!いくら何でも無理だ!」

「しかし・・・!このままでは瀞霊廷が・・・!」

 

 

と、押し問答を続けていると、遠くから小さな影が隕石へと臆することなく向かって行く。

霊圧の主は、更木剣八だ。

 

 

「・・・更木か・・・、なら、私達は動く必要無かろう。余波に備えろ」

「ですが朽木隊長、あのような巨大隕石に隊長一人で対処できるのでしょうか?」

「問題無い。兄が蘇って強化されたように、更木も修行を経て強くなっている。霊王宮で修行した私達の他にも皆、独自の術で強くなっているのだ」

 

 

未だに更木一人では大丈夫なのかと訝しむ吉良に対して、白哉は更木を高く評価することで諭していく。

その白哉の読みは、見事に的中した。

一閃。

ゴアッ!!と轟音が木霊すると同時に、空間ごと霊圧で軋むような錯覚を覚える。

太陽並の眩しさで煌めくと同時に隕石は粉々に砕け、流星群のような小さなサイズの小型隕石となって瀞霊廷中に降り注いだ。

 

 

「うおおおおっっ!!落ちてくる落ちてくるぜ!!」

「たわけっ!焦らず避けろ恋次!」

「さっきまであの隕石を自分(テメー)でどうにかしようとしていた奴に言われたくねえー!!!」

 

 

このように、流星群を避けるのに手一杯な中。

唯一、これを利用してやろうというぶっ飛んだ考えの持ち主がいた。

 

 

 

*****

 

 

 

「えーーーー!!防げないんじゃ建物壊れちゃうじゃん!院の子たち皆怪我しちゃうよ!」

「桃が院のセンセイの治療行っとるさかいどうしようもないわ。避難させるしかあれへん」

「じゃあシンジの力でどうにかしてよ~!」

「アホぬかせ!!隕石相手に『ほれ逆様の世界やァ~!』って出来るか!」

「じゃあ白がどうにかするっ!!」

「オイどないするつもりや!」

 

 

霊術院(だった場所)で聖兵相手に雑魚散らしをしていた白は、正直言って退屈だった。

いつまで経っても来るのは一般兵だけで、星十字騎士団と思しき滅却師は気配すら感じない。

それどころか、聖兵だけがワラワラと烏合の衆みたいに沢山押し寄せてくるのだ。

 

はっきり言って、拳西に騙されたと言っても過言ではない。

スーパー副隊長なんだろ?とか言っといてこの仕打ちは、白にとってイライラが募るばかりだ。

それでも白は、与えられた役割は投げ出さない。

未来の死神を護るため、院の先生と共にしっかり院生達を護ってきた。

その証拠に、今まで院生全員が無傷だった。

 

その単調な流れの中、途中で五番隊の二人が様子見に駆け付けてきた。

雛森は怪我をした先生の治療に集中させて、基本的に平子と二人で聖兵に対処する。

先生達は、主に二人のフォローに回っていた。

お互いに背中を預け、華麗に敵をいなしていく姿は、院生達の目に強く焼き付く。

二人に護られていた院生は居てもたってもいられず、雛森の手伝いを始めていた。

 

こうして、今の隕石騒動にまで時は流れる。

更木剣八が斬った巨大隕石は小さな流星となり、瀞霊廷のあちこちに墜ちていく。

その一つが、まさに院生の隠れている建物に直撃しそうになっていたのだ。

 

今までの努力を全て無駄にする訳になどいくものか。

白は虚化を()()()、斬魄刀の力を使って問題を解決することにした。

 

 

杏麗(きょうれい)!」

 

 

始解して斬魄刀を鉄扇に変化させ、さらに分裂させて双扇に姿を変えた。

空中へと跳躍し、流星の落下線とは少し離れたところで足場を固定し、双扇をブーメランのように前方へ腕をクロスさせて投擲する。

一度扇を手放してから再び虚化した白は自分流ではなく、正統な方法で虚閃のエネルギーを溜めていき、自身の前に緑色の光球を発生させた。

手元に二つの扇が返ってくると、風を受けて扇に溜まった力を使い、虚閃の力を増大させた。

 

ブンブンと双扇を振り回す大振りな動きをしていたが、白は心の中で少しばかり祈っていた。

 

 

「上手くいってね。虚閃と始解、組み合わせるの初めてだから」

 

 

限界まで虚閃の力を強めてから、白は院生の隠れる建物に墜落しそうになっている流星目がけて、緑色のエネルギー弾を双扇から発射させた。

 

 

白流(ましろりゅう)!スーパーキャノン虚閃!!」

 

 

何も考えずにふと出た技名は、恐らく忘れられて二度と日の目を浴びることは無い。

だが、一度限りに名前を付けられたこの技は、見事に流星に当たって軌道を逸らすことに成功した。

そして軌道を捻じ曲げられた流星は、何と聖兵の固まっていた場所へと墜落していった。

 

 

「アイツ・・・やりおったな・・・」

 

 

かと思えば、白は猛スピードで平子の許へ戻っていき、どうだと言わんばかりにふんぞり返る。

100年前からずっと我流の自己鍛錬を続けてきたのは平子も知っているので、こればかりは正直に褒めてやった。

 

 

「はァ~~けったいな技何時の間に編み出しとんねんな~」

「今日初めてだよ!久々にちゃんと虚閃使ったから変な感覚~」

 

 

白は少し険しい顔をしているが、わざとだろう。上手い事いった達成感で、キラキラオーラがプンプン漂っている。

隕石を上手く使って大量の聖兵を一気に戦闘不能にも出来たので、十分な成果も挙げられた。

残ってた聖兵も殆ど二人で仕留めたため、院生を狙う敵の攻勢は一時完全に止んだのだった。

 




更木VSグレミィは、あまりの原作展開の素晴らしさ+原作以上のものを生み出せる勇気が無かったため、本作では舞台裏(特に隕石の件の)を書くことにしました。基本的にあそこの戦闘は、完全原作準拠だと思っていて下さい。
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