ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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危機

「・・・直撃は免れたようだな・・・」

 

 

突如真上に生じた隕石にどうすることもできない己の不甲斐なさを呪っていた修兵は、更木剣八が隕石を真っ二つにしたのを目の当たりにし、隊長と副隊長との大きな隔たりを痛感する。

しかしそうやって思い悩む暇もなく、今度は流星群が己の真上から沢山降り注いできたため、それらを瞬歩で何とか躱すのが精一杯だった。

 

花太郎に頼まれた勇音達別動隊の捜索。

むしろそっちが本隊である可能性の方が高かったが、合流できれば一大治療拠点としてより盤石な体制を築くことが出来る。

敵に気を付けつつあちこち捜索していたが、手掛かりの一つも掴めずにいた。

だが、ある一画を通り過ぎようとした瞬間、妙な違和感を感知した。

 

(あの建物、何で俺は忘れているんだ・・・?)

 

()()()()()()()()()()()()()

ひょっとしたら敵の居城か?と思い近付いてみると、結界が張られている。

 

(死神が作った結界・・・!虎徹副隊長の結界か!?)

 

漸く見つけることが出来たことに安堵するが、もし本当なら結界を壊してはいけない。

人から存在そのものを消す結界であるため、解除反応などで霊圧の動きがあれば、それだけで敵に見つかってしまうのだ。

周りを目で確認したが、誰もいない。結界の霊圧を調整し、維持したまま中に入っていくと、思ったよりも静かだった。

 

だが、結界の中に入った瞬間、修兵は何とも言えない微妙な気持ちになってしまった。

建物の中には二つの霊圧。

 

覚えがありすぎる、あの親子の霊圧が2階の建物に所在していた。

 

 

「・・・お前、何ここに来てんだよ」

「あ・・・すんません、隊長。虎徹副隊長を探していたら、妙な結界を感知したのでつい・・・」

「・・・・・・やっぱ俺じゃ意味ねえか・・・」

 

 

心底悔しそうな顔でイライラしながらも、拳西はのこのこ人払いの結界に入って来た修兵を睨みつけるだけで特段叱ったりはしなかった。

拳西が腰かけているベッドにもう一人の死神が眠っているのもあるからだろう。

 

 

「コイツ、隕石墜ちそうになっても眠りこけてやがったんだぜ?ったく末恐ろしいな・・・」

「俺、ピンチの時口囃子さんに助けられたんすけど、この人今まで寝てたんすか・・・」

「あ゛?テメェ修行の成果出せなかったのか?」

「すっ・・・すんません・・・」

 

 

言わなきゃよかったと思わず手で口を塞いだが、後の祭り。更に鋭い眼で睨まれる様は、完全に蛇に睨まれた蛙だ。

卍解習得出来なかった時点で仕方ない話なので、反論する余地は無かった。

ちょっと強引だが、話を変える。

 

 

「・・・つーか、隊長はずっとこの中にいたんすか?」

「隕石墜ちそうになる前はな。さすがにあの時は屋根に上ったぞ。」

 

 

流星の一つが今現在身を隠していた建物に当たる危険性を踏まえて、拳西はいつでも迎撃できるように始解していたが、結局近くに墜ちただけで心配は杞憂に終わった。

 

 

「それ以外はずっと中だ。コイツの卍解の副作用もあって迂闊に動けなかったんだよ。・・・結局朝までずっと寝ちまってたがな」

 

 

そうやって悪態を吐くにもかかわらず、眉間に皺が寄っていなかった。

トレードマークと言っても差し支えない(そんなこと本人の前では口が裂けても言えない)眉間の皺を無くし、だらしなく眠る隼人の姿を穏やかともとれる顔で見る拳西に、ああ、この人も親なんだな、と心の中で納得する。

 

そして、眠れる護廷の新隊長はようやく目を覚ました。

 

 

「ん~~~~~・・・・・・、ここ何処・・・」

「隼人、お前いつまで寝てんだよ」

「おはようございます。無事熟睡したおかげで拳西さんの霊圧をちゃんと感じることができます」

「そうか、よかったな」

「そしてしゅうへ・・・・・・修兵!?」

 

 

寝起きの目が3の形になった絶不調な顔でありながら、腹筋をフル活用して瞬間的に身体を起こす。

家族以外の人に寝起きすぐの顔を見られるのが物凄く嫌な隼人にとっては、最悪の状況だ。

別に化粧とかはしていないが、昔から寝起きの顔つきの酷さに自分でびっくりしてきたこともあり、駐在任務の時は人一倍早起きして顔を洗ったりしてきたのだ。院の時は、人相の悪さに同室の友達から別人かと思われる程だった。

 

わぁぁぁぁとバタバタしていると、偶然建物の中にあった洗面台を案内されて水で一通り顔を洗い流す。ご丁寧に高級な洗顔もあった。きっと誰か富裕層の滅却師が暮らしていたのだろう。

ふんだんに洗顔料を使ってしっかり顔を洗い流し、いつも通りの人前で見せる姿に戻っていった。

 

 

「おはよう修兵!!」

「・・・・・・おはようございます」

「今日も修兵はカッコいいね!かわいいね!」

「何を言っても時は戻りませんよ」

「――――――・・・・・・」

 

 

ずーーんと改めて深く落ち込んでいたが、「分かったよ、もういい」とぶつぶつ呟いてからは、平常運転に戻った。

霊力は完全に回復し、副作用も綺麗さっぱり無くなった。

これなら問題なく戦場に出られる。

 

 

「おし、問題無えなら行くぞ」

「はいっ!了解です!修兵も行くしょ?」

「俺は――――」

 

 

と、言葉を続けようとした所で、遠くに巨大な雷が落ちた。

 

 

「・・・あれ、()()()雷ですね。あそこにいるのは・・・更木隊長!?何で!?しかも霊圧が弱まってる!」

「急ぐぞ。どうせ更木が力使って弱ったのを見計らって殺しに行ったんだ」

「うわっ、あくどい手だな・・・修兵も行こ!数多いに越したことは無いからさ!」

「そうっすね!俺も行きます!」

 

 

眠っていた隼人は状況はよく分かっていないものの、更木が瀕死になるなど余程のことなので、上手い事空気を読んで加勢に向かう準備をする。

修兵も本当は花太郎の頼みを聞かねばならない所だが、更木剣八の身の安全を確保することが火急だと判断し、先に加勢することに決めた。

 

 

 

*****

 

 

 

「くっ・・・!お前達!皆無事か!」

「大丈夫です!最初の数から減ってません!」

 

 

砕蜂を中心にした四番隊中心の席官部隊は、やちるを見送った後治療活動をしていると、突然滅却師からの襲撃を受けた。

立て続けに矢が遠くから放たれたため敵の正体は掴めなかったが、それに加えて流星が自分達の所へ墜ちてきそうになったため、全く起き上がれない重傷患者を置いて逃げるしかなかった。

 

だが、多くの死神が固まっていたせいで、逃げ延びた後も霊圧を察知した聖兵(ゾルダート)によって囲まれてしまう。

勿論一人なら砕蜂にとって雑魚でしかないが、四番隊を守りながらとなると話は違う。

自身の怪我を完治していない中敵の数も多く、ジリ貧になってしまえば数の暴力でいつか全滅しかねない。

 

一体どうしたものかと次の行動に迷っていると、上から砕蜂にとってはこの上なく憎い声がシャワーとして降ってきた。

 

 

「なんや、余所の隊士引き連れてよう持ちこたえとんな」

「!お前は・・・!」

 

 

上を向こうとした瞬間、目の前にいた聖兵が全員爆撃によって跡形もなく姿を消す。

砕蜂にとって浦原並みに毛嫌いしている、平子率いる五番隊が救援に駆け付けてきた。

 

 

「オレんこと嫌っとるみたいやけどな、しょーがないから助けたるわ」

「大丈夫です!隊長が見て見ぬフリしてもあたしが引っ張り出します!」

「えっ!やめてえな桃!さっきまで白と雑魚相手に戦うてオレへとへとやねんで!」

「知りません!」

 

 

飛梅で雑魚の群れを一気に倒してから、二人は改めて砕蜂たちの抱える事情を確認する。

 

 

「はァ!?瀕死の奴ら置いて来たんかいな!?」

「奴らを守ろうとして四番隊の一般隊士を失ってしまう方が痛手だ。あの時動けた隊士は全員無事だ」

「一応重傷者は雨とかに当たらないよう、瓦礫の影に移動しておいたので、大丈夫かと・・・・・・、あまり意味ないでしょうけど・・・」

 

 

花太郎の弱気な発言のせいで、益々不安が募っていく。

更木剣八の許へ加勢に行きたかったが、四番隊士を連れてきても大して戦力にはならない。

こうなれば、重傷者を探し出して彼らに治療させることが得策かもしれない。

 

 

「しゃあない!そいつらんトコ戻るで!どんぐらい移動してきたんや」

「ここからそう遠くないはずだ。大所帯だったから、人員を確認しながら確実に移動してきた」

「分かったで。桃もまた治療に回ってもらってええか?」

「大丈夫です!」

 

 

周囲を軽く確認し、一行は別の意味で更木剣八のいた場所の方向へと向かって行く。

せっかく息を吹き返した大前田を、死なせるわけにはいかない。

嫌な部分の方が圧倒的に目立つが、己の副官にふさわしい人物が大前田しかいないことを分かっていた砕蜂は、必死に彼の存命を祈っていた。

 

 

 

*****

 

 

 

更木剣八の救援、加勢に向かう部隊はもう一つあった。

三番隊、六番隊+ルキアは、雷の位置からかなり離れた場所にいたが、全速力で走ることで距離をものともしない速度で到着すると思われた。

 

 

「急ぎましょう。滅却師の目的は消耗して弱った隙に更木隊長を殺すことです」

「更木隊長が死んだら、形勢不利って所じゃ無くなるね・・・」

「まずいじゃねえか!つっても・・・」

 

 

恋次が言葉を続けようとした所で、再び当の場所に雷が落ちる。

さらに上空から矢の雨が降り注ぎ、何故か建造物自体が空中に浮遊してそのまま投げられもしている。

 

 

「何だよあれ!すげぇ怪力だな・・・」

「凄まじい攻撃だ・・・!急がねば!」

 

 

逸る気持ちで瞬歩の速度を徒に上げようとした恋次とルキアに、今一度冷静になるよう白哉が釘を刺す。

 

 

「恐らく向こうに着けば、指折りの力を持つ滅却師が沢山居るだろう。油断大敵、己が力量の中で行動しろ。兄らは先の戦いの消耗が癒えておらぬ故、無茶は禁物だ」

「あっ、ありがとうございます朽木隊長・・・」

 

 

加えて白哉は、二人と同様程度に消耗していた三番隊の二人にも声を掛けた。

 

 

「鳳橋、吉良、兄らも逸ってはならぬ」

「そうかい?ボクはまだまだイケるけどね!」

「すみません朽木隊長、お気遣いをこんなテキトーな形で返してしまって」

「・・・・・・構わぬ・・・」

 

 

むしろ吉良の返しの方が色々とまずいのではないかと白哉は心配したのだが、どこ吹く風のローズは鼻歌を歌いながら足並みを揃えている。

遅れたりしていない以上、皆と同じくらい力は余っているのだろう。

 

目的地は近付いていき、あと数分走れば着くだろうと考えていると、先頭にいた吉良とルキアが二人して足を止める。

 

 

「「どうした(んだい)、ルキア(イヅル)」」

 

 

声を揃えて二人の上司が尋ねると同時に、彼らも瞬時に立ち止まった意味を察した。

(?、?、?)と意味が分からず後ろで僅かにきょろきょろしていた恋次も、数秒後に身体で感じ取る。

 

同じ霊圧をたくさんの死神が感じ取り、皆して一旦立ち止まり天を仰ぐ。

一番隊の二人も、同じ霊圧を感じていた。

 

 

「真打は最後にやって来るってよく言うものだけど、本当にそうなっちゃったね」

「そうですね。ですが、彼の帰還で、私達には希望の光が差してくるように思えます」

「あれ七緒ちゃん、一護クンのことそんな目で見てたの?」

「別にいいじゃないですか!変な言い方しないで下さい!!」

 

 

 

「ほう・・・あの霊圧は、一護くんか・・・!」

 

 

瀞霊廷の中へと戻る途上で、後ろを歩く小椿と清音は互いに顔を見合わせて頭にクエスチョンマークを浮かべている。

瀞霊廷の外から上空にいる一個体の霊圧判別など、隊長でも相当力のある死神でないと出来ない。

 

 

「朽木も阿散井くんも、隼人くんも、みんなの霊圧を感じる・・・強くなっただろうなあ・・・!!」

 

 

子の成長を喜ぶように、浮竹は破顔して満面の笑みを浮かべる。

一体どんな卍解を手に入れたのか。一体どんな技を使うのか。

小さな頃から見てきた死神達が修業を経て成長し、どう活躍するのかが、浮竹にとっては楽しみでならない。

 

 

「のんびりしてはいられないな!少し急いでもいいかい?」

「浮竹隊長の望む通りで!」

「あっ!あたしが言おうとしてたのに!空気読め小椿!」

「なぁにぃうをぉ!!!!」

 

 

ひと悶着を微笑ましく見守り、浮竹はその光景をしっかりと目に焼き付けていた。

 

 

 

「一護くんだ!!」

「危ねえよ!!前走るなら急に立ち止まんなバカ!」

 

 

すみませーんと言いながらも決して悪びれない姿は、白そっくりだ。

修兵の予想通り拳西は蟀谷に青筋を浮かべるが、同様に九番隊の二人も一護の霊圧を感じ取り、隼人のように天を仰ぎ見る。

 

 

「・・・感謝しなきゃな」

「は?何でお前が一護に感謝すんだよ?あれじゃあ物足りねえってか、いよいよ引かれるぞ」

「違いますよ!・・・でも、あれは斬魄刀の中でのことだから、言われても困るか」

 

 

最後の呟きは二人にも聞こえなかったが、こんな所で色々考えて無駄に立ち止まっても意味は無い。

行くぞと拳西に言われてなすがままに足並みを揃えていく。

更に歩を進めていくと、隼人は別の霊圧を感じ取った。

 

 

「朽木隊長とか、鳳橋隊長とかが一つの集団になって同じところに向かっていますよ」

「合流、しますか?」

「そうだな。出来るなら合流してアイツらと作戦立ててえ。間に合うか?」

「余裕です。修兵ちょっと吉良くんに電話して」

「分かりました!」

 

 

更木剣八の激闘と、黒崎一護の帰還をきっかけに、新たなる乱戦の火蓋が切られようとしていた。

 

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