「あたしの小ワザをそんな小ワザでハジき返しやがって!!マジで許さねえ!!覚悟しろ一護ォ!!ブッ殺してやら・・・!」
ガルヴァノ・ブラストをちょっとした月牙天衝で相殺されたキャンディスは、血気盛んに雷撃をまとったまま一護へ特攻をかまそうとした。
だが、バーナーフィンガーによって腹を射抜かれ、他の女性滅却師も同じ目に遭う。
「・・・悪りーな、ちょっと死んでてくれ」
「バズビー・・・てめえ・・・!」
「恨み事言われるスジぁ無えぞ。手柄ってのは奪い合いで、奪うってのは、後から来た奴の特権だぜ。なァ、そう思うだろ?黒崎一護」
だが、同じようにして客は更に招かれる。
「何だよォ!言われてみりゃ確かにそうだ!もうちょい後に来りゃよかったぜ」
「ああ、
「だが、到着してしまったものは仕方あるまい。
バズビーの少し後に一護の霊圧に吸い寄せられたのは、5名の滅却師。
ナナナ・ナジャークープ。
シャズ・ドミノ。
ロバート・アキュトロン。
グエナエル・リー。
ペペ・ワキャブラーダ。
だが、バーナーフィンガーを喰らっただけで、指折りの実力を持つ滅却師が倒れる筈などない。
「6人じゃねーよ、10人だ」
女性滅却師4人も加わり、10対1となった。
数的には圧倒的に不利だが、それでも滅却師は警戒をより強める。
「手柄は山分け?ヌリいこと言うんじゃねえよ。殺した奴が、総取りといこうぜ」
各自が霊子兵装を取り出し、一護目がけて神聖滅矢を撃ち放とうとしたが、とある建物から光柱が立ったのを見た途端、全員が一度矢を下ろす。
命令に忠実に準じる者もいれば、舌打ちして奥歯を噛む者もいた。
「――黒崎一護、私の声が届いているだろう。我等を光の下へと導きし者よ、感謝しよう」
「・・・どういう意味だ」
ユーハバッハが一護に直接繋いだ回線で、彼は衝撃の一言を言い放つ。
「お前のお陰で、私は霊王宮に攻め入る事ができる」
「!?」
一護が現在身に纏っている死覇装は、他の普通の死神や、霊王宮に行かなかった隊長とは違い、「王鍵」を使って作られた特注品だ。並の死覇装には無い強靭な防御力が備わっており、着ているだけで生半可な攻撃を防ぐことが出来る。
霊王宮から瀞霊廷を生身で突破するためには、衣装そのものに防御力を備えなければ、鬼道を使えない一護だと焼け死ぬ可能性がある。
だが、霊王宮と瀞霊廷の間にある七十二層の障壁は、あまりにも強すぎる防御力の代償として、一度突破されると6000秒間、つまり1時間半近く閉ざすことは出来ない。
その穴を、ユーハバッハに突かれてしまった。
一連のユーハバッハからの説明に、一護は目の前の滅却師を忘れて一気に瞬歩でユーハバッハの侵略を阻止しようとしたが、星十字騎士団が指を咥えて黙っているなんて都合のいいことはあり得ない。
最初は、ミニーニャから。
右手で一護の頭を鷲掴みにしたまま身体を押し摺って、いくつもの建物を巻き込んでいき、勢いに任せて左手に力を籠めて一護のお腹へと強烈なパンチを当てていく。
次は、シャズが吹っ飛んだ一護に向かってクナイを投げながら、かかと落としを決めようとする。
「地に堕ちてしまえ!!」
だが、クナイが飛んできたのを察した一護は全て躱し、シャズの攻撃も寸前でしっかりと見切る。
しかし躱した先から、ペペの放つハートの光弾が立て続けに飛んできた。
「簡単には、通さないわよ~~~~ん♡♡」
横に移動していると、今度は無防備なジゼルが立ちはだかる。
「わ~~~~~ッ!!どうしようどうしようボク斬られちゃうよ――――ッ!」
しかし一護は単純にジゼルを右手で押しのけただけで、刀は一切彼女の身体に触れなかった。
つまらなそうに瞼を閉じて、ジゼルは神聖滅矢を適当に一護に向けて撃っていく。
その矢も全て難なく躱すと、
「ここまで全ての攻撃を掻い潜るとは・・・、特記戦力にふさわしい、屈強な人だ」
移動する一護の速度にしっかりペースを揃えたロバートが、一護の左蟀谷に銃口をつける。
身体を右に捻って躱しつつ右手に持った大きい方の刀を振り上げたが、態勢を崩した瞬間に、死覇装の後ろ襟を掴まれてしまった。
僅かに生まれた綻びを、バズビーは見逃さなかった。
「バーナーフィンガー 1!!」
手で身体を掴まれているようなものなので、必中。
指先がどこを狙っているのかもはっきりしないため、下手に動いて頭など当たり所が悪ければ、致命傷となってしまう。
(逃げられねえ・・・くそッ――――!)
指先から一筋の熱線が火を噴いた瞬間。
阿散井恋次の蛇尾丸が間隙を見事に突き、熱線が一護の身体を射抜く前に完全に四散した。
だが、一護の首もかなり危なかった。大雑把というか、大味な操作を何とかしてほしいものだ。
「おう!危ねえ危ねえ!ギリギリ助かったなァ一護!」
「俺の首がな!何だってオメーはいっつもいい加減なんだよ!」
「知るかよ、当たらなかっただけ良しとしろよゴチャゴチャ言うな女々しいぞ」
「人の生死を女々しいで済ましてんじゃねえよ!」
助けたにもかかわらずそんな口ぶりをされてしまえば、恋次も不機嫌な顔をする他ないが、伸ばした刀を一度戻しつつ気を取り直して真剣な顔つきに戻る。
「行けよ。こいつらは通さねえ。詳しい事ァ知らねえが、滅却師の親玉とは因縁があんだろ?ゆずってやるよ、お
小さく頷き一護はすぐにユーハバッハの許へ走り出したが、星十字騎士団は相変わらず置いていくつもりはない。
先陣を切ってバズビーとナジャークープが追いかけたが、突如二人の目線の先に氷壁が生まれたと思えば爆発が起こり、水蒸気の混じった煙が渦を巻いて吹き荒れ、視界を完全に塞ぐ。
更に後ろから二人を包み込むように桜吹雪が襲い掛かり、止まらざるをえなかった。
「おぉ、即席にしては意外と上手くいくモンだな」
「お役に立てて何よりです!」
「ボクと拳西と朽木兄妹の素晴らしいコンビネーション!これだけで楽章1つ仕上がっちゃいそうだよ!!」
「・・・・・・ゴメン、阿散井くん」
フリーダムな死神を代表し、阿散井は滅却師に向けてもう一度力強く言い放つ。
「・・・何度も言わせんじゃねえよ。通さねえって言ったろ」
一護を止めるため、更木剣八を助けるために、隊長格7名が一挙に馳せ参じた。
情報通のリルトット、ロバートはすぐに面子の分析を始めた。
(三番隊の副隊長は命を落とした筈では・・・?だがあの身体を見た所、機械か何かで生き永らえていると読むべきか)
(エス・ノトにフッ飛ばされた奴かよ、だったら大したこと無えな。アイツに至ってはマスク如きに殺されたんじゃねえのか?隊長っつっても雑魚の寄せ集めかよ・・・)
そして、以前にローズと戦ったナジャークープはあからさまに嫌な顔を見せ、ルキアと戦ったキャンディスは「アイツだよアイツ!あたしが完聖体習得前に簡単に倒した奴!」と大声で言う始末。
おまけに7名ともあれば、1対1にもならない。
通さないとかほざいて、戦力不足も甚だしい。
特記戦力が0だと聞いたバズビーも、一気に興味を失った。
「じゃあ用が無えな!どけよ!!」
ボウガンを構えて死神達に撃とうとしたが、それよりも先に鬼道の刃が飛んできたため、適当に身体を左に捻って躱し、ターンしながら再び撃ち込む。
しかしその矢は突如横から飛来してきた鎌によって真っ二つに折られ、飛んできた鎌の動きが読めなかったこともあって防御に徹することになってしまった。
「聞こえなかったのか?俺達はお前達を通さねえっつったんだ。お前達全員を倒して、尸魂界を護るんだよ」
副隊長の修兵が放つ言葉に、実力的に見て上だと感じていたバズビーは強い苛立ちを見せる。
リルトットがバズビーの隣に移動して、短期決戦で終わらせるよう作戦を耳打ちした。
「ここでモタついて黒崎一護を取り逃がすのはゴメンだ。完聖体でコイツら全員フッ飛ばすぞ」
「はっ、当たり
バズビーが完聖体を発動させると同時に、他の滅却師も揃って背に翼を生やしていく。
対する死神も、鬼道の準備をする、卍解を発動させるなど、各自が戦闘準備を一瞬で固めていった。
だが、多種多様の技が入り乱れる乱戦が繰り広げられることはなかった。
開戦すると同時にユーハバッハは霊王宮へと侵攻していく。
爆撃にも似た光が一度目を傷める程の強い輝きを見せたと同時に、凄まじい衝撃波で死神、星十字騎士団を吹き飛ばし、ある程度散り散りとなってしまった。
*****
とは言うものの、瓦礫に隠れて上手い事吹き飛ばされなかった者もいた。
「・・・ボクだけ一人、残っちゃった。ちょっと寂しいな・・・」
その場には滅却師もおらず、遠くからぼやぼやと霊圧を感じる程度だ。
むしろ、倒れていた更木剣八の霊圧の方が強く感じられる。
(こうなったら、手っ取り早く彼を四番隊に引き渡した方がいいかもね・・・)
戦う気満々だったが、ローズは斬魄刀を鞘の中に戻し、近くで倒れていた更木剣八を担いで四番隊を探す旅に出ることにした。
*****
(敵は3人か・・・・・・、ルキアに多くの敵が割り当てられなかっただけ、不幸中の幸いか・・・)
白哉の周りには、妙ちきりんな歯の滅却師と、壮年の滅却師と、クナイ使いの滅却師が立ち塞がっている。
だが、相手の霊圧を探ってみると個々の力はそこまで達者な滅却師はいないようだった。
卍解をしないでも一気に倒せそうだと思い斬魄刀に手を掛けたが、気配を感じて後ろに飛び退く。
白哉がさっきまでいた場所に、雷が落ちてきた。
「あァ!?勝手に躱してんじゃねえよバーカ!」
緑髪の女性滅却師。ルキアは、先の戦であの滅却師相手に全く歯が立たなかったと聞いていた。
その隣には、金髪おかっぱの小柄な女性滅却師。平子みたいな髪型だ。
「落ち着けビッチ、ミニーがカンタンにゃ避けらんねえ事やっから問題無え」
「げっ、逃げよッ!!」
二人が姿を消した瞬間に僅かに上を向くと、巨大な建物が白哉に向かって豪速のスピードで落ちてくるではないか。まるで野球ボールを投げるかのように、小さな洗礼堂と思しき建物が空から落ちてくる。
ここに来る途中で見た建物が空から落ちてくる現象を再び見た白哉は、氷の表情を僅かに崩して少しだけ目を見開く。
それでも、白哉が潰されることは無かった。
空中で、巨大な建物はまるで見えない壁にくっついたかのように一瞬動きをピタリと止めた後、中心から風が吹き荒れて爆発四散し、石ころのような細々とした小さな瓦礫となって一帯に降り注いだ。
石の雨も、風に運ばれて白哉に当たることはなかった。
新たな卍解の白い羽衣を身に纏った拳西が、少し離れた場所から大気を操作して白哉の危機を救ったのだ。
「凄えな、あんな建物投げるとかどんなトレーニングすれば出来るようになんだよ」
「兄の筋肉では、出来ぬのか」
「出来ねえよ流石に、筋肉切れるぞ」
十三隊の中でも筋肉量ではトップと言ってもいい拳西でも、腕力だけで家を鷲掴みにして投げるとかそんな化け物じみた力は持っていない。
というかあれはきっと霊子で力を強化している。
といっても、卍解の力を応用すれば全く同じことを出来るのだが。
そして、何だかんだ言って尸魂界に戻ってから白哉とサシで話したことは無かったため、拳西は数的劣勢の状況下に居ながら昔のことを思い出してしまう。
「俺が現世に逃げても、隼人の遊び相手してやったのか?」
「・・・兄が消えてから、口囃子は私の屋敷を一度も訪れていないはずだ。色々と思い出すのを避けていたのだろう。そもそも口囃子が死神になってから、一時期会うことも無かった」
「夜一も居なくなったから暇じゃなかったのか?」
「四楓院夜一は要らぬ。・・・だが、口囃子が来ないのは、退屈だったな」
流魂街から来た田舎臭さ満載の少年相手にも分け隔てなく接するどころか、かなり仲良くしていた時代を思い出し、白哉はほんのちょっとだけ思い出に浸る。
100年以上前に二人でした約束が、今日遂に実現するのだ。
『僕も、いつかは白哉さんと一緒に戦いたいです!』
子どもなりに希望に満ち溢れた顔つきで将来の夢を楽しそうに語っていた姿を思い出し、白哉も思わず口を緩めた。
「ああ、言い忘れてたが電話来た。
「・・・分かった」
3名の女性滅却師も戻り、2対6という圧倒的不利な状況に立っているのに、隊長2人に絶望の色は見られない。
そして、この形勢不利を完全に覆す強烈な力が、滅却師に襲い掛かる所だった。