ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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PSYCHIC STALKER

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼくの役目は あなたの影

ぼくの居場所は あなたの隣

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ参りましたよこれはほんと・・・」

 

 

お気づきの通りだが、隼人は一護を逃がして滅却師を足止めする時に、皆とは別行動を取り少し離れた位置に身を潜めていた。

 

ここから始まる乱戦では、基本的にサポート役に徹することにしたのだ。

白哉、ローズたちと合流し、更木の許へ向かいながらの作戦会議で、どのような戦いを展開していくのかを主に白哉と吉良の頭脳派が中心となって決めていた。

副隊長の動きを議論する中、突如隼人が思い立ったように志願する。

 

 

『はいっ!僕は今回、皆さんの補助に回りたいと思います!いいでしょうかああっ!!』

『・・・別に、口囃子さ、隊長は、前から補助中心に立ち回ってたんでいいんじゃないっスか?』

『あ゛?何言ってんだ、頭数的に『ありがとう阿散井くん!ということで決定です!』

『・・・・・・そうかよ・・・』

 

 

ビキビキと顔中に青筋を立てる拳西などお構いなしに、隼人は強引に後衛として立ち回ることを決めてしまった。

ニコニコしながらどんな術を使うか考えていた隼人に、白哉がちょっとした悪巧みを考えていることは知る由もない。

 

(・・・でも、お陰で一人でいても変に思われないし、これはこれで良かったかもな)

 

準備を終えた隼人は拳西に電話する。

淡白な反応に「もうちょっと、期待してるぜ、とか、僕を奮起させてくれるような言葉かけられないんですか!?」とツッコむと、ブチッと電話が切れてしまった。

拳西にだけ術適用させないでやろうかと思ったが、後で半殺しにされるのでしっかり仕事をこなす。

 

 

「よし・・・やろう!」

 

 

一人になってから始解していたため、身体も十分慣れている。

 

 

「卍解 桃祈(とうき)宝珠杵(ほうじゅしょ)

 

 

再びシルバーピンクの杖を作り上げ、身体を使ってバトントワリングの要領で杖を回していき霊力を溜めていく。

杖を宝珠杵の形に切り替えてから、両手でしっかり握りしめ、眼を閉じて霊力を籠めていく。

 

今までずっと願っていたことが、ようやく叶う時が来た。

一緒に戦いたかった人達と、やっと共闘出来るのだ。

藍染の計略のせいで一時は諦め、絶望した夢が、遂に実現する。

空座決戦の孤独な戦いではない。皆と足並みを揃え、皆を補助して貢献する。

だが、この力を今まで一緒に働いてきた二人に直接見てもらえないのが唯一の悔やまれる点だった。

それでも、死神として一番にやりたかった事を、最大限の実力を以て実行できるのが、嬉しくて嬉しくて体が疼いている。

 

 

「・・・見ていて下さい、狛村隊長。見てて、射場ちゃん」

 

 

 

 

「僕が皆を、護ってみせる」

 

 

杖の形を錫杖に変化させてから、曇りのない、強い意思の籠った目で、隼人は術名を唱えた。

 

 

「白断結壁・聖輪(せいりん)(いやし)

 

 

蒼玉色の煌めきを孕んだ霊圧が、隼人を中心に直径70m程のドームの形となって地面から天に向かって形作られ、完成すると同時に天頂部から7つの小さな流れ星に似た光が様々な方向へ飛んでいく。

 

(霊圧探査した場所に、ちゃんと向かっているな)

 

確認次第、すぐに天挺空羅を発動させた。

 

 

 

*****

 

 

 

既に皆戦いを始めていた最中に、視界の隅にふいに見えた蒼玉色の結界は、嫌でもその場にいた全員の関心を引いてしまう。

三、六、九番隊と、ルキアに報せが届いたのは、流れ星が皆の身体に届いて効果を発揮してからだった。

死神の脳内に、天挺空羅の声が響き渡った。

 

 

【皆さん、これでもう大丈夫です!傷回復させましたし、これから短い間ですが()()()()()()()()()()()()()()()()!無敵ですよ!その間に思う存分力振るって下さい!】

 

 

死神の傷と霊力の完全回復と、白断結壁の付与を同時にやるという荒業に、報せを聞いた死神だけでなく、術を理解した滅却師を震撼させる。

特に修兵以外の力を消耗していた副隊長達は、目に見えて動きが良くなった。

左手の甲についた蒼玉色の鬼道衆の紋様が、効果の付与を示しているのだろう。

神聖滅矢が身体に当たる直前で、全て四散して霊子の塵となってしまう。

 

 

「成程、防御に余計な力を割く必要が無くなり、我等は攻撃に専念できるということか」

「・・・最初っからとんでもねえ事しやがって。目つけられちまったらどうすんだよ」

 

 

二人にしか聞こえない声量で話していたが、拳西の目論見は見事に的中してしまった。

 

 

 

*****

 

 

 

一瞬での完全回復に、対滅却師に特化した霊圧の障壁の付与。

特に、死神の身に付けられた障壁は、完全防御といってもおかしくない。

ナジャークープの矢と、ロバートの銃が当たる直前に消失したのだ。

 

こんな壊れ技を出来る死神は、リルトットの頭の中で一人しか思いつかなかった。

 

 

「口囃子隼人だ!!!!コイツらより先にアレをツブすぞ!!」

 

 

戦闘前、リルトットが不確定要素の多さで強い警戒心を抱いていた死神。

その名を聞いたミニーニャ、キャンディスは、すぐさま宝石のように輝くドームへと飛廉脚で向かって行く。

リルトットの声を聞いた3人の男性滅却師も、件の死神に厄介な術をこれ以上使われては困るので、同じように3人の後を追う。

 

更に、リルトットが星十字騎士団独自の通信回線を使ってジゼルとバズビーにも連絡を入れて、危険性を判断した2人も戦っていた敵を放置してまで走っていく。そもそも技が効かないなら、このまま戦っても意味が無いのもあるだろうが。

ペペは、連絡したが応答は無かった。

 

 

走り出す滅却師を見て拳西は追うつもりでいたが、白哉が右手で制した。

 

 

「追うな」

「はぁ!?一体何のつもりだ!」

「力を見極める」

「奴らの力なんざ見極めねえでもそのままブッ潰せばいいじゃねえか!」

「口囃子の力を、だ」

「・・・?」

 

 

予想と違う答えが返ってきたため、何と返答すればいいか頭の中で纏まらずに言葉を出しあぐねていると、まるで悪巧みをするかのように細い笑みを零す。

恋次が見ていれば、きっとルキア不在時の女性死神協会に行ってないかどうか聞いた時の反応を思い出していただろう。

 

 

「非公式だが、口囃子の隊長就任試験を行う。3名以上の滅却師を倒せば、私達が救援に向かう」

「アイツが何か朽木の癪に障るような事でもしたのかよ?」

「・・・他人の話を遮って自己主張しては、危険な目に遭うことを体感させるまでだ」

「・・・・・・そうだな、いいかもな」

 

 

キレそうになっていた拳西を見かねて、白哉が気を遣ってくれたようだ。

滅却師を追ってきたルキア、恋次、吉良が通りかかると、彼らにも一度立ち止まるように命令する。

 

 

「六車、口囃子に伝令神機で伝えろ」

「・・・どんな反応するんスかね・・・」

「ブチギレそうだな・・・」

 

 

やっぱりその考えも、しっかり的中してしまった。

 

 

 

*****

 

 

 

次に発動する術は、死神側の霊力を一気に底上げするものにしようと考え、滞りなく準備を進めていた中、大事件は起こる。

懐にしまった伝令神機が振動したので開いてみると、『六車拳西』の文字。

おかしすぎるタイミングでかけられた電話に、自然と不信感が募って細目になってしまうが、ひょっとしたら別の死神がやられたため治療が必要になったのか。

それとも術が上手く発動していないとか?現に自分は結界の中にいるのでそれは無い筈だ。

 

9回のコールまでしっかり待たせてから電話に出ると、開口一番怒鳴られる。

 

 

【遅えよ!!!】

「いやだって、今頃拳西さんは力使ってバンバン敵倒しちゃったりしてる頃じゃないですか。にしては静かだし、電話かかってくるし、不気味でちょっと出るの躊躇っちゃいましたよ」

 

 

思った通りの言葉をつらつら~っと伝えていったが、何やら電話の向こうでは色んな死神の声がコソコソと聞こえてくる。

皆集まっているなんて一体何を企んでいるんだと、改めて皆の所在を探そうとしたら、一呼吸置いた拳西が再び喋り出した。

 

 

【・・・いいか隼人、よく聞け】

「何ですか、改まって。もしかして術ちゃん【お前んトコに10人位の滅却師が向かって行った。一人でどうにかしろ。じゃあな】

 

 

簡潔すぎる説明の後、ブツッ、と電話が切られてしまう。

まるでさっき自らの役割を志願した時のように、綺麗にスパッと話を遮られた。

 

拳西からの宣告を、脳内で反芻する。

 

 

【お前んトコに10人位の滅却師が向かって行った。一人でどうにかし「出来ねえよ!!!!!」

 

 

まさに開いた口が塞がらない。モチベーションなどで考えれば、人生で最も厄介な仕事を押し付けられた。

昨日は、一人の滅却師相手に卍解後は終始優勢状態を保てていたが、一気に10倍の人数を相手取れる自信は毛程も無い。というか多分どっかで破綻する。ふざけんじゃねえ。

 

などと考えているうちに、意識しなくても霊圧を感じられる程の距離に滅却師がいることを確認してしまう。

そして、10秒も経たずに、結界の周囲を星十字騎士団に見事に取り囲まれてしまった。

 

 

 

*****

 

 

 

「ペペ、様ァッ・・・・・・」

「うーーーーん、何か、苦しんでるネッ・・・」

 

 

ペペがリルトットの報せを留守電メモ的な機能で聞いても、かの死神の所へ向かわなかった理由はただ一つ。

チート級の術が使われる前に、既に自身と戦っていた死神を人心掌握していたからだ。

勿論先に術を使われていたら、真っ先にその死神を身も心も自身を愛するようにしてしまうつもりだったが、()()()()()がいるのであれば、ちょっと時間を置いて油断した隙を突くのが常套手段だ。

とりあえず、目の前でペペの愛に何故か思い悩むかのように苦しむ檜佐木修兵に更に愛を撃ち込むと、邪念は振り払われたようだ。謎の術の効果時間も、然程長くないようだ。

 

 

「一体、何に苦しんでたんだろうネッ・・・」

 

 

いつもペペが自分の術を的中させた時に、苦しむ素振りを見せる人間はいなかった。

ジゼルのゾンビを横取りした時も、変な様子を見せずペペの為に従順な奴隷と化していた。

 

ところが、この死神は恍惚とした表情を浮かべることはなく、思い悩み、苦しんでいた。まるで二人のタイプの女性に同時に告白されて、天秤で揺れ動く男のようだ。

想い人に対する気持ちが、相当強いのだろうか。

 

考えつつのんびり移動している矢先、危うく隊長格の一団に遭遇しそうになった。

瞬時に身を引いて姿を隠す。

 

(この中に混ぜ込むか・・・?いや、一人を始末した所で、他の死神に無力化されるのがオチだネッ)

 

せっかく隊長格一人を味方に取った以上、使い方を誤るヘマは許されない。

 

(むしろ、さっきのミョーな術はミーたちの力を無効化・・・、それなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()、攻撃は通るはずだヨネッ♡)

 

まさか、滅却師に操られた死神の力をも無効化するなんて離れ業は出来るとは思えない。

最強のカードを手に入れたことでゲッ、ゲッ、ゲッ、といつもの笑いをやりそうになったが、気配を悟られないように隊長格の死神達をかなり遠回りする形で件の死神の場所へ向かうことにした。

 

 

 

*****

 

 

 

更木を抱えたローズがとある場所に複数の死神と人間の霊圧を感じて入っていくと、そこは何と技術開発局だった。

 

 

「あ!!あの人は、確か・・・ローズさんだ!」

「あれッ、織姫ちゃんかい!?久し振りだね!」

「井上、何でローズと・・・って、そういや会ってたな・・・」

 

 

やけに拳西が嫌っていたせいで忘れがちだが、井上織姫は仮面の軍勢全員とちゃんとした面識を持っている。

ローズとは電波の波長が合っていたからか、空座決戦の後も会えばそれなりに話す程度の知り合いになっており、数ヶ月ぶりの再会であるからか互いにテンションが高くなる。

 

だが、本題は違う。更木剣八の治療だ。

 

 

「ありゃりゃ、こりゃあまた随分な怪我っスねぇ」

「十二番隊に任せちゃっていいかい?」

「承ります。でも、実は四番隊の人いるんで彼女に任せちゃいますね」

 

 

ちょくちょく出入りしていた阿近に身柄を引き渡し、ローズはすぐに戦いへと戻っていく。

技術開発局を出た所で、今度は夜一とすれ違った。

 

 

「おお、鳳橋か。おぬしはあの目が痛くなる眩しい結界を誰が作ったか分かるか?」

「ハヤトが作ったらしいよ」

「やはり隼坊か!あ奴め、わしの目を潰す気じゃな!後で覚えておれ!」

「大袈裟だね・・・」

 

 

清々しいワガママを吐き出した夜一も、厚手の外套を着て何やら大荷物を抱えているようだった。

死神だけでなく、人間も含め、皆が尸魂界を護るために奔走しているのだ。

勇壮な旋律を思いついて一筆楽譜にしたためたかったが、首を大きく振って、ローズは再び走り出した。

 




ある意味、この話は単行本でいう表紙回みたいなものです。
誰かの補助として活躍してきた隼人の、集大成の力が発揮されました。
ずっと抱えていた願いも、ようやく叶えることができました。

まぁ、ピンチなんですが・・・。
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