ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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Vanishing Point

「わしの名はグエナエル・リー。シュ――――――」

 

 

二度目の自己紹介を言い切る前に、隼人は再び赤火砲を()()()()グエナエル目がけて放つ。

まさかの行動に、寸での所で姿を消したグエナエルも、開いた口が塞がらない。

敵か味方かも分からない相手に、問答無用で技をぶち込むなど、粗野で野蛮だ。

魔法使いみたいな杖を持っているが、暴力的でぶっきらぼうな行動という死神のギャップに、グエナエルは思わず脳内で戦略を練り直す。

しかし、いくら考えても無駄である意味を、隼人の口から告げられた。

 

 

「何処にいるか分かんないけどさ、あんた滅却師だろ。あんたとは初めて会ったけど、僕は()()()()()()()()()()()。壁の中から突然現れるとか、近くに死神の霊圧が今まで無かった以上滅却師しか考えられないよ」

 

 

加えて、決定的な一言を見えない敵に言い放った。

 

 

「あと、誰かは忘れたけどさっき壁の中で『初めまして』を何度も言うつもりの敵に会ったから、壁の中で『初めまして』を言ったあんたはもう僕の敵だよ!」

「ッ・・・!!」

 

 

存在そのものを完全に消した自分の能力を、霊圧を記憶する相手の能力で上書きされてしまい、実質的に力負けした。

おまけに、攻撃しようとすると何かの反応を察知しているのか、最初の時よりもより正確に、そして俊敏に反応し、手に持った刃物が身体に届かなくなる。

バージョン3を今まで数回使い、存在を気取られぬまま攻撃しようとしても、初対面どころか会ってもいない相手に隼人はしっかり鬼道を飛ばしている。

 

しかし、どっちにしろグエナエルが姿を消している以上、こっちの方が有利なのは変わりない。

一度反応が鈍ってボロが出た隙に、飛廉脚で距離を詰めて一気に刃物で胸を貫こうとした。

 

(これで・・・終わりじゃ!!)

 

となる筈だったが。

 

武器が隼人の身体に触れた瞬間、グエナエルは両腕を綺麗に吹き飛ばされた。

 

 

「あ・・・・・・、」

 

「あああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

「見つけたァァァァ!!!!破道の二十三 妖毒(ようどく)!!!」

「!」

 

 

杖から深紫色の毒を生成し、痛みで姿を現したグエナエルの両腕から体内へと浸潤していき、体全体に鬼道の毒が作用していく。

手足などの末端器官はすぐに黒く壊死し、身体の中心にある臓器、骨は溶けてドロドロになり、身体がみるみるうちに崩壊していった。

 

 

「ふぃ~~・・・ちょっと危なかったな、油断禁物・・・」

 

 

グエナエルの身体が全部液体となったのを確認してから、隼人は傷ついた身体を一気に回復させる。

白断結壁の様子は変化が無いので、このまま安全地帯で攻撃することも可能だ。

さて、さっき中断させられた技で再びまとめて全員無力化してしまおうかと考えていた所で、

 

 

隼人のいた場所は、豪奢な大聖堂によって壁ごと全部潰されてしまった。

 

 

 

*****

 

 

 

「・・・呆気ねえな」

「4人やられちゃったけどねーーーーーッ」

「4人ならまだマシに決まってんだろ。あと少し遅けりゃオレ達全員ああなってたぞ」

 

 

リルトットが指さしたロバートは、未だに倒れて気を失っている。

一切流血していないが、霊圧を感じられないのが不気味だ。

 

 

「でもそうなる前に、ミニーが間に合って良かったなッ」

「滅却師の力は防がれても、滅却師の力で投げられた物体まで消しちまうなんざありえねえ。グレミィの遺物と口囃子隼人が戦ってた間に風圧で中から瓦礫が飛んできてたからな。丸ごとツブしちまうしかねえだろ」

「あの壁も、壊れてますかねぇ」

 

 

三名の女性滅却師が喋っている中、バズビーとナジャークープは大聖堂が落ちてきたことに戸惑いつつ、弱くなった炎を掻い潜って落下点に向かう。

建物と地面の隙間からじわじわと血液が広がっていき、現場にいた者が圧死していることが確認できた。

中の霊圧は確認出来なかったが、恐らく強すぎる衝撃で霊圧もろとも一瞬で崩壊したのだろう。

苦しまずに死ねただけ幸運にすら感じる。

 

 

「あの小せえ奴だけ・・・にしては血の量が多いな」

「こんなモンに潰されて生きてる奴がいるかよ」

 

 

男2人も、血を見て死んだと確信する。

 

 

「あ~~あ、ゾンビにしたかったな~・・・」

「下手にゾンビにしてペペに奪われたら面倒だぞ」

「あの人、気持ち悪い事しそう――――」

 

 

「卍解 白霞罸(はっかのとがめ)

「「「「!!」」」」

「バーナーフィンガー 4!」

 

 

バズビー以外の滅却師は後ろに突然現れた朽木ルキアの存在に気付けず、とっさの防御として大聖堂の反対側に隠れて盾にする。

唯一ルキアの存在に気付き、さっき軽く交戦していたバズビーは、ルキアの力が氷に関係するものだと知っていたため、炎を使って精一杯の相殺を試みた。

地面を叩きつけて大規模な爆炎を生み出したものの、ルキアが放った冷気は爆炎ごと包み込むように凍てつかせ、周囲の物体を完全に凍り尽くした。

 

しかし、指を4本も使った以上、自分と他の滅却師の身はしっかりと守り切った。

少し身体の一部分は凍ったが、体温を上手く調整して難なく氷は融けていく。

 

 

「チッ、炎ごと凍らせちまいやがって・・・」

「だがこんだけ強力なら、しばらくは身動き取れねーはずだ。ブッ潰してやるぜ」

 

 

大口を開けたリルトットが、ルキアの身体へと襲い掛かる。

彼女の読み通り、ルキアの卍解は体への負担が甚大なため、まともに身動きを取ることが出来ない。

そしてルキア自身も、自身の卍解で全員殺せるなどと、甘い考えは持っていなかった。

 

ルキアの身体を捕食しようとして噛んだ瞬間、リルトットの歯がベキベキ!と一気に粉砕された。

 

(何だこの力・・・朽木ルキアのモノじゃねえ・・・?)

 

駆け出したミニーニャがルキアの身体に掌底打ちをかましたが、同じように今度はミニーニャの手の骨がバキバキ!と折れて粉々になった。

それから、ミニーニャの動きが止まった場所に、千本桜が押し寄せる。

 

 

「!」

 

 

伸縮自在な口をその場に残していたリルトットはすぐに元に戻し、ミニーニャも飛廉脚を使って後退する。

若干間に合わず、脚をかなり斬られてしまった。

 

 

「ッ・・・やってしまいましたねぇ・・・」

「大丈夫大丈夫。これぐらいならミニーの傷はちょちょいのちょいだよ?」

「ッ、痛てーな、チクショー・・・歯折れちまったぜ」

「ボクにまっかせなさーい!」

 

 

高らかに宣言してその場から離れようとしたジゼルに、高濃度の蒼い炎が飛んできた。

咄嗟の瞬発力が働き、ふわりとゆったりしつつ確実に後ろにのけぞる。

 

 

「・・・またアンタ?いい加減ウザいんだけど」

「君が敵である以上、僕は逃がすつもりは無い」

「キショッ、ストーカーするの止めてくれない?」

 

 

と、吉良に向かって喋っている途中でジゼルの所にも千本桜が襲い掛かってきたが、気配に気付いていたため難なく右に避ける。

しかし、避けた先にはまた別の死神がいた。

 

 

「卍解 天廉断風!!」

「!ぶッ!!!」

 

 

大気を圧縮した力を拳に籠め、拳西はジゼルの腹を容赦なく一発殴りつけて内臓を潰し、さっきまで一緒にいた女性滅却師の方向へとブッ飛ばす。

ミニーニャの力で受け止められたため新たな怪我を負う事はなかったが、しばらくジゼルは口から血が流れたまま止まらずにいた。

 

 

「悪りいな、今度は俺達の番だ」

 

 

吉良、白哉、拳西が一堂に集まって滅却師の前に立ちはだかり、恋次は今まさに卍解を解いているルキアを保護する。

身動きの取れる滅却師は見た限り5人しかいないようなので、隊長側で勝手に設定した目標を隼人は達成したようだった。

だが、当の本人は潰されてしまった。

 

 

「口囃子さんは・・・」

「恐らく口囃子は、あの下でただの肉と化してしまっただろう。遠くから見ていたが、素晴らしい戦いだったぞ、口囃子」

「ああ。だから後は俺達がやってやる。お前の分の仇を」

 

 

「取るとか言って勝手に殺してんじゃねえよコノヤロー!!!!」

 

 

こんな所で潰されて死ぬようなタマなはずなかった。

 

剛速球で上空から投げられた大聖堂が隼人の身体に触れる寸前で、藍染戦の時のお家芸だった違法行為の空間移動を瞬時に行った。

その時に、隼人は移動先にいた滅却師のシャズ・ドミノと場所を入れ替わったため、圧死して血肉と化したのは別の滅却師だった。

潰されてしまえば肉体の再生は不可能なので、ある意味正しい殺し方だ。

 

瞬間移動後さっきいた場所に戻ると、絶望的な文言を言い放った仲間たちが我が物顔で堂々と立っていたため、我慢ならず怒りの声を上げたのだ。

カンカンの状態で放った大出力の鬼道は、先ほど降ってきた大聖堂を粉々に吹っ飛ばした。

拳西の真後ろから狙って撃ったが、間一髪躱されてしまったようだ。

 

 

「何だよ生きてたのか。つーか危ねえだろ後ろからやりやがって」

「拳西さん達が僕を見捨てた事の方が危ないでしょ!!言っときますけどね、僕マジギレですよ!!もうぷんっぷんですよ!」

「そう言う奴は実際大してキレて無えのが相場だな」

「ええそうですよ!最初に一気に3人ボコったのでそこまででも無いですよ!」

「じゃあどっちなんだよ!!!」

 

 

それに答えようとした瞬間、隼人の身体に襷のような霊圧がかけられた。

後ろから飛んできたため、前につんのめって勢いで拳西の身体にダイブしてしまう。

バランス感覚というか、体幹の無さが非常に情けない。

 

 

「悪りいな、あんたの霊圧、十分観察させて貰ったぜ。俺達の攻撃を受け付けなくとも、霊圧を読むにゃああの壁は一切関係無え。あんたの弱点、この俺にとっちゃあお見通しよ!」

 

 

ナナナ・ナジャークープの聖文字・The Underbellyを使い、モーフィン・パターンを打ち込む。

さっき取り囲んでいた時に霊圧は完全に計測していたため、隼人の力を封じることは極めて簡単だった。

霊圧量から見て、30分程度なら止められる。

その間に殺すことなど、猿でも出来る。

 

 

「じゃあな!チチンプイプイマジカル野郎!!」

 

 

パンッ!と手を叩いた瞬間に、計測した霊圧の弱点へとモーフィン・パターンがしっかり打ち込まれ、霊圧そのものが重度の麻痺に陥り一切身体を動かせなくなった。

 

()()()()()()()()()()()

 

 

「がッ・・・、・・・ぁ、」

「やっちゃって下さい」

「わーったよ」

 

 

霊圧に関する似たような力を持っていたことは、壁の中でナジャークープの霊圧を読んでいた時から既に分かっていたのだ。

だからこそ隼人もいち早くナジャークープの霊圧を完全解析し、いつでも干渉出来るように備えていた。今回霊圧に干渉して相手の霊圧を麻痺させる技から、自分の霊圧を麻痺させる技へと一時的に変えてしまった。

 

自爆して動けなくなったナジャークープを、拳西が卍解の力を使って盛大にふっ飛ばす。

ちょっとしたパンチがいくつもの建物をなぎ倒す猛打になる様は、思わず顔をしかめる程だった。

 

あと4人いたはずだが、パイン頭の滅却師はルキアを追ってしまったため既に消えている。

白哉と吉良は、金髪と桃髪の女性滅却師相手に連携して戦っていた。

捨て身にも見える吉良の豪快な攻撃が少々不安に思うが、経過はともあれ強化された身体なら問題ないだろう。

 

残っていたのは女性滅却師だけ。

拳西が瞬歩で距離を詰めると彼女はすぐに逃亡し、あっという間に追い詰めることができた。

 

 

「わァ―――――――――――ッ、まってまってまってストぉ――――――――プ。さっきも思ったんだけどさ、こんな丸腰の女の子殴るとか斬るとか、ダサいよね!なに、そういう趣味なの!?ムキムキだから何でも殴ればいいって思ってんでしょ―――――――ッ!刀使えるから何でも斬っていいって思ってんでしょ!!っていうかそういうのってできないもんじゃないの!?男がすたる、みたいな?いや、だっさ!」

 

 

遅れてやって来た隼人も、思わず精気を失った顔をする。

ここまで攻撃されることを望んでいるなら、裏があるとしか思えない。

怪しいというか、最早答えを言っているようなものなので、血を流さずに痛めつけるしかない。

 

 

「・・・もうちょっと上手い事誘導できないの?」

「え??ボク嘘なんてな―――――んにも言ってないよ?唆すつもりも無いよ??」

「じゃあこれからする僕達の攻撃は、一切外に血を流さないものにするね。拳西さん、大丈夫ですよね?」

「血出さずに内臓潰したり骨折りゃいいんだろ?」

 

 

はい!とニッコリ笑う隼人に、ジゼルの表情は思いっきり固まる。

さっきの真珠みたいな弾を当てられれば、自分の力の性質上さすがにひとたまりもない。

血を出さなければ死神をゾンビ化させられないため、あまりやりたくないが自分で身体を痛めつけるしかないか、と嫌な考えが浮かんでしまう。

いくら不死身に近くとも、ゾンビに出来る確証も無い中自分を痛めつけることは好きではない。

 

 

「あとよ、一つ気になることがあるんだが」

「ボクに質問?するだけなら自由だよ?答えるかは別だけどねッ」

 

 

「お前男だろ」

 

 

「は?」

 

 

「へ!?」

 

 

猛烈なドリフトのかかった変化球のような拳西の問いかけに、ジゼルよりも隼人の方が衝撃を顔に滲ませる。

男でしょうか?ではない。男だろ、だ。少しの疑問の余地もない口ぶりだった。

見るからに女の子なのに、何故拳西は男だと断言するのか。

理由はちゃんと話してくれたが、それもそれで中々強烈だった。

 

 

「さっきオメーの身体殴った時の感触がな、女を殴った感触じゃねえんだよ、脂肪の付き方とか。コイツの根本の体つきは男だ。どういう訳か知らねえが、女のフリして何が楽しいんだよ」

「・・・マジすか、えぇ~~~っ・・・・・・ってか、拳西さん女の子に手上げたんですか!?最低ですねオイ!」

「違ぇよ!!!!」

「バンビちゃんッ!!!」

「「!」」

 

 

反射的に後退したのは正解だった。

昨日戦ったはずの見慣れた爆撃が、再び隼人に襲い掛かる。

少し威力が下がっているようだが、あの勝ち気な少女が無尽蔵にぶつけていた霊子に違いない。

二人とも怪我は無かったが、少し動きの鈍い隼人はギリギリだった。

 

 

「またせてゴメンね、バンビちゃん!!さッ!こいつら粉々にブッ殺そっか!」

 

 

突然物陰から現れたのは、見下げ果てた姿に変貌を遂げた、バンビエッタだった。

 

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