ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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横槍

「嘘だろ・・・みんな・・・!!」

 

 

隼人の呼びかけに対して、誰からも返事はない。

確かに霊圧は殆ど消えていたが、今目の前にいる隊長格の面々は、若干霊圧の質が変わっていた。

DNA情報を強引に書き換えられたかのように、霊圧の一部がジゼルと性質を同じくしていた。

 

 

「まずいな・・・取り囲まれちまった」

「どっ・・・どうすれば皆を元に戻せますかね・・・」

「無理だ。こういう手前は術者を倒しゃあどうにかなるが、倒そうとして迂闊に返り血浴びたら俺達がああなるぞ」

 

 

対滅却師用に特化した攻撃はまだ慣れておらず、準備動作が必要となる。そしてその間、隼人は完全無防備となってしまう。

死神の力を完全に断つ壁は予定になかったので、大急ぎでも作るのは不可能。いくら拳西でも、隊長副隊長席官合計10名以上を、隼人を護りながら一人で相手どるのは厳しいだろう。数が多すぎる。

かといってジゼルにそのまま攻撃してしまえば、逆にこっちがゾンビにさせられる可能性だってある。

ひょっとしたら、ゾンビの血を浴びただけでこっちもゾンビにさせられるかもしれないのだ。さっき殴ったのも、実際危なかった。

状況を打開する手は、一つしかなかった。

 

 

「・・・倒すしか、ないんですか・・・?」

「ああ。背中は任せたぞ」

「・・・・・・はい」

 

 

ようやくずっと目標にしていた拳西と同列に立ち、一緒に戦えることはこの上なく嬉しい。

だが。

 

相手の傀儡と化した仲間相手に、本気で戦える程強い心を持っていなかった。

 

最初に飛んできたのは大前田の五月頭。

これ位なら鬼道を使って粉砕することも可能だが、自分でも理解できない深い心の奥底でブレーキがかかってしまい、ただ単に防壁を作って防ぐだけになってしまう。

距離を詰められてしまい白打戦になってしまうと、副隊長相手に完全に防戦一方となってしまった。

 

 

「何やってんだ!!変な情は捨てろ!」

 

 

拳西は、卍解の力を使って大気を爆発させることで、ゾンビ死神達をそもそも寄せ付けようとせず、それを強引に掻い潜って近づいた敵には敢えて身体に触れさせることで、相手の腕や脚などの骨を振動で折ることにより、手あたり次第対処していた。

たまたま拳西のいた方向に席官が多く集まっていたのも、上手く対処出来た理由になる。

 

それに比べると、隼人の戦いぶりは大変情けなく、みっともなかった。

大前田相手に防戦一方になっている隼人に目を付けた松本が、灰猫で遠くから身体を斬りつけていき、じわじわと傷が増えていく。

傷など回復すればいい話であるが、表情を失った仲間が自分に襲い掛かる恐怖のせいで、正常な判断に遅れが出てしまう。

そんな中、遂に日番谷が動き出す。

やはり狙いは、消極的な動きを続けている隼人だった。

 

瞬歩で空高く飛び上がってから、日番谷は二人の真上へと位置を定める。

両手で斬魄刀の柄を強く握ってから刀の先端を下に向け、最高速度で下へと降りていく、。

日番谷の狙いは、真上から斬魄刀で隼人の身体を一突きして貫通させ、そのまま縦に真っ二つに斬り裂くすることだ。

 

(!!)

 

物凄い速度で極大の霊圧が近づいてきたために気付いたが、大前田に手古摺っている中避けることはできない。

日番谷の全ての霊力を防ぎきるには、大前田相手に霊力を割いている余裕も無い。

手詰まりになった中、背後にいた拳西が卍解の防御力を最大まで上昇させ、日番谷の下突きを防ぐためにギリギリで間に入ることに成功した。

 

 

「拳西さん!!」

「いいからお前は目の前の敵を倒せ!」

「ッ・・・!はいっ!」

 

 

仲間の身にまで危険が迫ってきた段階で、ようやく隼人はゾンビ死神にちゃんとした攻撃ができるようになった。

といっても、基本的には殺さず、無力化する方向の攻撃である。

 

 

「五柱鉄貫!九曜縛!!」

 

 

目の前で戦っていた大前田には上空から落ちる柱で五体封印し、遠くから灰猫で攻撃していた松本には、設置型の鬼道で縛り付け、動きを止める。

上を見ると、下突きに失敗した日番谷が、斬魄刀から氷を生み出して肉弾戦の拳西と鍔競り合いをしていた。

脚や腕を凍らせようと、周囲の大気を爆発させて全て砕いているようだ。

氷弾も、見えない空気の壁で爆発させているため、拳西が日番谷に負わされた傷は見られない。

今まで見たこと無かった防御型の卍解は、相手の手の内を強引に捻り潰すにうってつけだった。

 

 

「今からそっち行きます!拳西さ―――――――――」

 

 

と走り出した瞬間。

 

両腕両脚に、蔦のような物体が触手のように絡みつき、動きを止められてしまった。

 

 

「誰!?こんな力見たこと、」

 

 

と後ろを向くと、同じくゾンビとなった弓親が、斬魄刀から孔雀の羽にも似た蔦を自身の斬魄刀から放出していた。

 

 

「はぁっ!?お前何だよその力!・・・って、―――――!!」

 

 

謎の力の本質は、隼人の体質上瞬時に理解できてしまった。

自分の霊圧が、強制的に蔦に吸い取られている。

身体の中で生成されて放出されるはずの霊圧が、強引に絡みつく蔦へと流されているのだ。

蔦を焼き払うために、炎熱系の鬼道で焼き払おうとしたが、

 

 

「赤火砲!!」

 

 

蔦に砲撃が当たった瞬間、それも霊力として吸い取られてしまった。

このままでは、何もできずただただ霊力を搾り取られ、からっからになって干からびた所を殺されてしまう。

蔦は太いので、手で切るなんて不可能だ。

斬魄刀に戻せるなら戻したいが、卍解の副作用を考えればそう易々と決められない。

頭を抱えたくなる展開が再び訪れて、もう限界だ!となっていたら。

 

 

人間大の鋏を持った涅ネムが、隼人に絡みついた蔦を一気に切り落とした。

同じタイミングで、拳西と鍔競り合いをしていた日番谷に何かを刺そうとした涅マユリが上空にいたが、躱されて距離を取られてしまった。

 

 

「・・・何しに来たテメェら」

「横槍を入れてしまったのは謝罪するヨ、六車隊長、口囃子()()。だがこの力は私の知的好奇心を強く揺さぶるのだヨ・・・済まないが代わってもらいたい」

 

 

と言ったマユリは、思わず目を背けたくなる程に眩しい。

眩しいせいで日番谷に避けられたのではと思ってしまう。

なのに、わざわざ代わってもらいたいなどと言われれば、十三隊の中ではまあまあ好戦的な拳西は、黙っちゃいない。

 

 

「お前らの手なんざ要らねえよ。俺と隼人でどうにかする」

「君達では不可能だヨ」

「勝手に決めつけてんじゃねえ!」

「ならば理由を述べよう。私の解析から判断するに、現時点での口囃子隊長の力を以てしても、ゾンビ化を解くことは不可能だ。かといってあのゾンビ娘を殺そうとしても、返り血を浴びれば死神はゾンビと化す。君達二人が果てしない時間を掛けて戦おうが、決着はつかないのだヨ。貴重な戦力を無駄死にさせる前に、一旦下がり給え」

 

 

それは目の前でゾンビとなっている死神たちのことか、はたまた弓親がひた隠しにしてきた始解で霊力を軽く奪われた隼人のことか、どっちを指しているのかは分からない。

だがそれでも、頭に血が上りかけた拳西の心を留めるに値する程には、筋の通った冷静な分析だった。

このままやっても、何にもならない。ただただ無駄に力を消費するだけだ。

 

 

「あれ―――――――ッ?何かまぶしくてあんま見えないんだけど、誰?」

「ほう、これはまた、ものを知らん奴だネ。偉大な相手というのは、輝いて見えるものだヨ」

「まぶしい理由の方は訊いてないんですけど?」

 

 

突然現れた異形の存在に、ジゼルも自然と関心を向ける。

見計らったネムが拳西にその場を離れるよう誘導したせいで完全に蚊帳の外に置かれてしまい、強引にその場から引き剝がされてしまった。

 

 

「・・・行きましょう、拳西さん」

「何だってんだ、ったくよ・・・!」

 

 

あぁ、イライラしてんなあ、といつもの光景に苦笑いを浮かべつつ、二人はさっき一緒にいた白哉と吉良の許へ瞬歩で向かって行く。

距離が近かったので、あっという間に到着した。

見た所優勢であり、更に修兵も加わっており、数的にも、能力的にも、死神側が滅却師に勝っていた。

 

 

「これじゃあ、加勢する意味無さそうですね」

「あぁ!?こっちに来ても力使えねえのかよ!!ふざけてんのかテメェ!!」

「・・・何があったんですか、口囃子さん」

「涅隊長に獲物横取りされて、イライラぷんぷんって感じ・・・」

 

 

思いっきり胸倉を掴まれて、いつ殴られてもおかしくない雰囲気が前面に出ている。

八つ当たりでもしない限り、イライラが収まらない気持ちも十分理解できるが。

吉良と白哉の心配する目が、申し訳ない気持ちにさせられる。

だが、それ以上に眼前の凶悪面をどうにかして抑えないといけない。

 

そして、またまた白哉が気を遣ってくれたようだった。

 

 

「・・・私は、ルキアと恋次の様子を確認する。鳳橋の霊圧も向こうに感じる。吉良、行くぞ」

「あっ、はい、そうですね・・・行きましょう!」

「この二人は兄らに任せるぞ」

「ほっ、ほら、任されちゃいましたよ!力使えますって!」

 

 

と言って隼人が落ち着かせようとすると、さっきの凶悪面は多少ナリを潜め、普段通り(といっても常に怒り顔)の姿に戻ってくれた。

殴られなくて安心。滅茶苦茶痛いし。

イライラした拳西の扱いに、大分慣れてきた。

だが、逆に拳西の意識の矛先は、地味に今まで姿を消していた己の副官に向いた。

 

 

「つーか修兵、お前何してたんだよ」

「えっ?ふっ飛ばされてから一緒じゃなかったんですか?」

「ああ。コイツだけな。どこほっつき歩いてたんだ、あぁ?」

「なっ・・・!俺は滅却師と戦ってたんすよ!」

「それで?負けそうになって逃げてきたの?」

「失礼っすね!1人片付けましたよ!」

「えっ!マジ!?」

 

 

いかにもわざとらしく衝撃!!っという感じの顔で驚嘆する隼人に、修兵はちょっとイラついたが、一人片したのは事実なので、マジです!と言うと、戦場にいるにもかかわらず隼人はすごく嬉しそうな顔になって褒めてくれた。

 

 

「凄いよ修兵!成長したな!!カッコイイよ!かわいいよ!!いやぁー自慢の後輩だな!」

「さっきもですけど、かわいいって何すか・・・?」

「いやー九番隊の将来は安泰ですね!拳西さん!・・・って聞いてないけどまぁいいか。それでそれで!?修兵の戦った奴はどん、なや、つ・・・・・・」

 

 

一瞬、身体がほんの少し後ろに押されたような感覚がしたため、言葉が止まってしまう。

そのまま喋り続けようとしたが、お腹に違和感を抱いて下を見てみると、さっきまでの喜色満面な顔が一気に無へと変化した。

 

 

修兵の風死が、見事に隼人の腹を貫通していた。

 

 

「えっ・・・、あ、あれ、俺・・・」

「・・・・・・」

 

 

 

 

「何してんだテメェ」

 

 

修兵が聞いたことも無いような汚い言葉、低い声で、隼人は風死の刃を掴み、激烈な殺気の籠った目で睨みつける。

泣く子も黙るどころか、余計にビービー泣かせて失禁させるトラウマ顔だった。

ジゼルのゾンビのように傀儡として操られている訳でもないのに突然腹を貫かれてしまい、修兵自らの意思で刺したと誤解した隼人は、猛烈な怒りを顔に浮かべた。

 

ひっ、とたじろいだ修兵に鬼道をぶつけようとした瞬間、瞬歩で修兵の懐をとった拳西が裏拳で脇腹を打ち、そのまま頭部に回し蹴りをして修兵の意識を刈り取った。

卍解は解いていたので、修兵の首が折れていることはないだろう。

飛ばされた時に風死を手放したので、腹を突かれた隼人が二次被害を喰らうことも無かった。

突然目の前にいた修兵が消え、すっとぼけた顔で棒立ち状態になってしまう。

 

 

「えっ、あ、・・・」

「馬鹿野郎!!本気の鬼道使って修兵殺したらどうすんだ!!」

「・・・すみませんでした、ついカッとなって・・・」

「取り調べ中の容疑者みてぇなこと言ってんじゃねえよ!」

 

 

滅却師一人片付けたと聞いた時点で、既に拳西は修兵の言動を訝しんでいた。

現在の己の実力や、相手した滅却師の実力、他の死神の力を勘案しても、余程相性が良くない限り、修兵が星十字騎士団相手に勝ち星を挙げられるとは残念ながら思えなかった。

それは、修行を経て卍解習得まで至らず、爆撃する滅却師相手に逃げるしかなかった修兵を見ても明らかだと分かった。

それなのに、1人片付けたなら、何か裏がある。

黙って修兵の様子を窺っていると、遂に化けの皮が剥がれたのだ。

 

余程高等な術で、修兵は何者かに操られている。

ゾンビの力よりもきっと強いものだろう。

一旦操っていた修兵が無力化されたのであれば、じきに現れるはず。

 

考えているうちに、すぐに術師は遠くから奇妙な笑い声を上げて登場した。

 

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