「ゲッゲッゲッゲッゲッゲッゲッ」
「ココロは1つ、カラダも1つ。ミーのヒトミにみつめられれば、キミのココロはまっ2つ。2つになったココロとカラダ、1つにまとめてボクのもの♡星十字騎士団”L”の文字、ペペ”
ペペ・ワキャブラーダの言葉が終わると同時に、回し蹴りで気を失っていたはずの修兵が既に隼人に斬りかかっていた。
(!)
慌てて腹に刺さっていた風死を引き抜き、鬼道で壁を作ったが、攻撃用のロッドのままで壁を展開してしまったため、一撃で破壊されてしまう。
勢いで後退してしまった隙に、ペペがハート型の霊子を手から射出する。
姿勢を維持したまま躱すのは不可能なので、思い切って後ろに一気に倒れ込む。
身体を強打したが、斬られた痛みに比べればどうってことない。
そしてペペの射出した霊子は、その先にいた女性滅却師のうち、桃髪の方に直撃した。
「ペペ、さまぁ・・・・・・・・・♡」
とろぉん、とした恍惚の笑みを浮かべると同時に、ミニーニャはペペの操り人形と化してしまう。
頬を赤く染め、まるで快感に身を浸している最中のように、顔を緩めている。
修兵もあんな顔をしたのかと思うと、吹き出しそうになったが寸前でこらえる。
「くそっ!」
実質仲間割れしてしまった女性滅却師の二人は死神に構っている余裕など無くなり、リルトットはミニーニャとの戦闘を始めざるをえなかった。
同じ服を纏う仲間同士が戦う異様な光景を見て、一言。
「やめてぇ!ミーのことが好きだからって、みんなミーのために争わないで!!みんなが死ねばミー1人のお手柄になるなんて、ぜんぜん思ってないからぁ♡」
何とも浅ましい精神である。
欲に忠実、自己本位。星十字騎士団の良くない点を、一手に凝縮したかのような人物だった。
*****
「修兵は俺がどうにかする!お前はあの滅却師を殺せ!」
「あのグロくてキモい奴ですね!分かりました!」
操られた後輩は直属の上官に任せ、隼人は自己回復を済ませてから、本丸の術者を討ちに走る。
ゾンビ同様、人を操る系統は術者を殺せばどうにかなるのが相場であることに加え、ジゼルのように攻撃方法に工夫する必要は無い。
ペペの放つ技にだけ気を付ければいいのだ。特攻をかましても避けきれば大丈夫だ。
「ペペ様のために、口囃子さんを・・・!」
修兵が投擲した風死は届かず、拳西が強引に斬魄刀で受け流すことで隼人は臆することなくペペに向かって行けた。
「とうっ♡とうっ♡」と何度もハート型の霊子を射出していくが、本気を出していないからか一つ一つの速度が遅く、鈍い隼人でも上手い事避けることが出来た。
「あららららぁ~~~~♡こわいねこわいねッ♡」
「そう言うあんたの人を操る術の方が、すこぶる怖いと思うんだけど?でもあんたを倒せば修兵は解放される。だからとっとと倒されちまえよ!」
「さすが口囃子隼人、霊圧探る力は折り紙つきだねッ♡こわいッ♡」
連続射出で大量に“愛の弾”を発射してきたが、黄火閃による霊圧の範囲攻撃で、全て一気に打ち消した。
大して力を入れずに放ったものの、ペペの放つ霊子を打ち消してそのまま威力を落とさずに霊圧は進んでいったため、ペペの放つ霊子そのものには耐久性は見られない。
逃げ足が速いのがむしろ難点だった。
「おんやあ~~~~?ミーの愛を打ち消すなんて、ミーには人の心が無いのかナ~~~~?」
「お生憎様だけど、僕は得体の知れない気持ち悪い人間から愛を受け取るような聖人君子じゃないから。好き嫌いは激しいよ?」
「ムムムう~~~?ってことはミーのことはきらい・・・?ミーの愛を、受け入れられない・・・?」
頷くと、ペペは心底悲しそうな素振りを見せながらも、両手を顔の前に翳してから、大きなハートを形作っていく。
見るに堪えない程気持ち悪かった。
「キミの使命はミーのために死ぬことでしょ~~~?許せない~~~♡受け入れないなんて、そんなの絶対に、許せないモ~~~~ン♡」
「
「!」
「ラヴ・ロォォォォォォォォープ!!!!!」
隼人にとっては殆ど前触れもなく完聖体を使用したペペは、間髪入れずにさっきまでと毛色の違う技を発動させた。
同じように黄火閃で打ち消そうとしたが、ペペの作り出した愛の縄は逞しく、番号の小さい鬼道で止めることは出来なかった。
逃げる判断が遅れてしまい、3本の縄が隼人の身体を貫通する。
「あらん♡ミーのラヴに囚われちゃったん♡」
「ッ!!こんなもの!!」
廃炎で燃やし尽くそうとしたが、寸前で手が止まってしまう。
ペペに対して攻撃しようとした瞬間だけ、身体が石化してしまったかのように動かなくなってしまうのだ。これも愛の力か。憎たらしい。
「ミーの愛、届いたかどうか、チェックし~~ちゃお~~~~♡」
それからペペは、徐にマーガレットを取り出した。どこからかは分からない。
フンフンフン♡と鼻歌を小気味よく歌ってから、ペペは花弁の1枚を摘まんで引っ張った。
「スキ♡キライ、スキ♡キライ、スキ♡・・・・・・」
まさかの古典的な花占いを始めたペペのビジュアル、風貌は、どうしようもないくらいに気色悪い。
止めてやりたい所だが、こちらから一切攻撃が出来ないため、援助を待つしかない。
そろそろ拳西が戻ってきてもおかしくないが、残念ながら花占いの方が先に終わってしまった。
「スキ♡キライ、・・・・・・スキ――――――――――――♡♡♡
結果は勿論好きの方になってしまったし、どうせそうなるだろうなと諦めの気持ちはあったが、そんなものを吹き飛ばす程に、凶悪な技が隼人の身体に降り注いだ。
「へぁっ・・・・・・、な、んだ、これ・・・!・・・ッぁぁっ!!あっ!あふっ!あっ!やめっ・・・だめっ・・・!」
ペペの愛による、超高濃度の媚薬が強制的に体内に注入され、男の身ながらまるで女の子のような嬌声が出てしまう。
他人の事を気持ち悪いとか考えたバチが当たったのか、自分自身でも知らないような媚態を振る舞ってしまう。
苦しく、辛いのに、体中を駆け巡る快感に堕とされてしまい、呼吸が荒くなってしまう。
苦しみ、喘ぎ、身体を震わせる淫らな姿に、ペペはニンマリと口を緩める。
「いいねッ♡カワイイよッ♡女の子だったらもっと良かったんだけどねッ・・・。でももうおしまいッ♡お゛ろ゛っ・・・お゛ろ゛ろ゛え゛え゛ぼぼぼぼぼぼぼぼ・・・・・・、」
「あっ、ああっ、あっ、やっ、やめっ、ダメっ、ダメッ、あああああああ!!!やらっ、ダメダメダメダメ!!」
ペペが口から霊子兵装を出していくうちに媚薬の効力はさらに増大していき、隼人の身体は完全に毒牙に犯されたようなものだった。
正常な感覚は失われ、完全に性行為中の人間の反応だった。
とにかく解放されたい一心で体を捩るが、全く意味をなさない。
その反応も面白そうに眺めてから、ペペは究極の愛を撃ち込む。
「喰らえい・・・これが究極の・・・・・・、」
「あい゛っ、」
「らぶぅ~~~~~~!!!!」
ペペの攻撃は、何者かによる強烈な肘打ちによって中断させられ、隼人の身体を貫通していたロープも流れでズルズルッと引き抜かれる。
全身を巡る性的な感覚から解放されたが、立つこともままならず、そのまま荒く呼吸しながら地面に横たわる。
少し落ち着いてから顔を上げて状況を確認すると、思いがけない死神が立ち尽くしていた。
「・・・、お、前ら・・・!」
大前田、斑目、綾瀬川。
3名の死神が、さっきとは違い、頭部から目に沿って黒い肌地となったゾンビの姿で、滅却師に攻撃した。
たとえ隼人の顔が涎でぐちゃぐちゃになっていても、何の関心も寄せず、ただただ白くなった目で敵を見ているだけだ。
ジゼルのゾンビよりも、より強い呪縛で操られ、完全なる傀儡となっていた。
「その、姿、一体・・・」
「ヤレヤレ、折角卍解を習得して更なる力を得たというのに、こんな所で惨めに悶え苦しみ、喘ぐとは情けないヨ、口囃子隊長。君は下がって、この涅骸部隊に任せるといいネ?」
「涅隊長・・・!」
ジゼルのゾンビではなく、マユリのゾンビ。
何だかそれだけで、さっきまでの数倍恐ろしく感じてしまう。
彼らがどんな人体実験をされたのか想像するだけで、全身に悪寒が走りそうだ。
隼人が杖を使って立ち上がると同時に、マユリも隼人の近くへと歩み寄る。
「何で弄ぶような真似を・・・!そんなことしなくても貴方なら回復させられるでしょう!?」
「ホウ、珍しく君とは意見が喰い違うようだネ?・・・君は、死してでも瀞霊廷を護るのが、護廷十三隊の本懐だとは思わんかネ?」
「・・・・・・、」
いざという時に優柔不断な隼人は、この意見を言われて即座に違うとは言えなかった。
他の隊士よりかは十二番隊に出入りしているため、マユリの意思、信念は少しばかり知っている。
理解できない場面こそ多々あるが、少なからず共感できた所も今までにあった。
だからこそ隼人は、現時点で考えている自分の意思を口にする。
「それでも僕は、死んでから他人に利用されるのは御免です」
「何とでも。万が一君が死んだ時には、私は君の死体を隅々まで利用させてもらうことに変わりはないヨ。瀞霊廷の為に、ネ」
マユリが話を終えたと同時に、吹き飛ばされたペペがゾンビとなった弓親にハートの霊子を注入した。
「へ・・・・・・、へへぇ~~~・・・、ジジのゾンビよりミーの愛の方が強いモンね~~~~♡前にジジのゾンビをミーの虜にしてやったこともあ゛る゛ん゛っ!」
ペペが喋っていた途中で、愛を受けた弓親は藤孔雀を喉に突き刺した。
自らの愛が完全に通用しない無機物みたいな死神に、ペペは全ての手段を失い、絶望の淵に立たされる。
追い詰められた時の表情も、この上なく気持ち悪かった。
「ヤレヤレ、五月蠅いヨ。それに話を聞いていなかったのかネ?そいつはもう、私のゾンビだ。私のゾンビに、愛など通じぬ」
「―――――、ゕっ、ぁ―――・・・」
喉を貫いた藤孔雀は縦に斬り裂かれ、追撃の大前田と斑目の白打によって、ペペは完膚なきまでに打ちのめされてしまった。
*****
「口囃子隊長、体内の毒素を分解する液体です。お飲み下さい」
「ありがとうございます・・・・・・、」
ペペに注入された媚薬の後遺症のせいで、身体に何かが触れるだけで敏感に感じてしまうみっともない醜態を晒していたが、ネムからもらった薬を飲むことですぐに回復する。
変な感覚から完全回復したところで、ダウンした修兵を担いだ拳西がこちらにやって来た。
「おい、さっきお前の叫び声聞こえたんだが大丈夫か?」
「大丈夫です・・・、」
「あぁ?はっきり言えねえのかよ?」
「追及しないで下さい・・・」
黒歴史どころのレベルじゃない醜態なので、たとえ回復していても落ち込んだ気持ちまでは元に戻りそうもない。
あまりにも落ち込んでいたので、拳西も問い詰めるようなことはしなかった。
一先ず、周囲を巡る戦況について伝えることにする。
「女滅却師どもは相打ちだ。敵の力に助けられるとはな・・・」
「ゾンビ娘は私が倒したヨ。瀞霊廷内にいる滅却師の霊圧も少なくなっているようだネ・・・」
「何とか、数減らせたようですかね・・・ちょっと、疲れました・・・」
「一回卍解解いた方がいいんじゃねえか?」
「そうですね、じゃあまた拳西さん近くにいて下さい、頼みます」
「おう」
再び卍解を解いたことで暫く霊圧を感知できなくなり、拳西を頼って移動を始める。
「技術開発局に向かうといいヨ。貴様らが迎合する浦原喜助もいる筈だ」
「迎合って・・・、まあ、そうですね。休めますし行きましょうか」
夜明けから始まった戦いに、遂に一つ目処が立った。
敵の首領は霊王宮にいるようだが、きっと零番隊の面々が倒してくれるはずだ。
もう役目が終わった安心感で、丸一日寝ていられるかもしれないと口に出しそうになる程に、身体を動かすのも億劫になっていた。
ここで、第二次侵攻は終わりです。
次は霊王宮篇ですが、実質戦闘回数が少ないので、もう少しサクッと終わらせるつもりです。