ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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霊王宮侵攻は、17話で終わる予定です。新規要素を盛り込んだ結果、第一次侵攻とあまり変わらない長さになりました。
また、最後に関してはちょっと護廷十三隊っぽくない事をしています。というより、京楽が総隊長になってから、原作でも結構昔の慣例とかに比べると変わっているなーという部分はありますが、浦原喜助の影響でかなり瀞霊廷にも変化が訪れたと解釈し、最後はちょっと一風変わった感じになりました。沢山のss作者様が描かれる中で、霊王護神大戦の終わる一つの形として見届けて頂けると幸いです。


千年血戦篇・霊王宮侵攻・訣別譚
二度あることは三度ある?


「ッ・・・、はっ!!俺は一体何を!!って・・・、すんません隊長!!!」

「やっと起きたか・・・とっとと自分の足で歩け馬鹿野郎!」

「うっうおぉあああああ!!!」

「おぉ・・・・・・」

 

 

右肩に担いでいた修兵の腕を掴み、勢いをつけて拳西は一本背負いの要領で前にぶん投げる。

受け身など取ることもできず、ビターン!!と地面に身体を打ち付けたが、不思議と痛みはあまり感じなかった。

というか、さっきまで負った傷は、既に治療されていた。

 

 

「怪我・・・治ってる・・・、ありがとうございます!」

「へへん。霊圧感知できない中何とか頑張ってやってやったんだぞ!感謝せい修兵!おなーりーって感じで!」

「その割にはちゃちゃっと済ませてたじゃねえか」

「・・・・・・」

 

 

微妙な空気感が生まれてしまった所で再び歩き始めたら、雨の降っている区域に突入した。

何故か雨の降る場所と降らない場所が明確に分かれているのは気になる所だが、恐らく雨の降りが強い場所は瀞霊廷で、降っていない場所が俗にいう見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)なのだろう。

その読みが外れている可能性もあるため、深く考えるのは止めにした。

代わりに、至極どうでもいい事を考えるようにする。

 

 

「あ~~雨降ったら髪型がぺちゃんこになる・・・」

「ハードのワックス使えよ。1日しっかり持つぞ」

「そんなのあるんですか?あぁ、だから拳西さんのカチカチトサカは夜になっても崩れないんですね!」

「ハードタイプいいっすよ、今度貸しましょうか?」

「うーん、考えとくぜ!」

 

 

絶対に借りない奴の返事だった。

 

 

 

*****

 

 

 

トサカなんて言うせいで拳骨を喰らってしまい、たんこぶに痛んでいると、目的地が見えてきた。

三人でやっていた見えざる帝国珍道中も、終わりが見えてくると否応なしにホッとする。

 

 

「あぁ~やっと安住の地に・・・」

「住むのかよ、涅に人体実験されるぞ」

「・・・それはイヤ・・・」

 

 

子どもみたいな否定の仕方をしていたら、空から謎の光が様々な場所に降り注いできた。

攻撃かと思って九番隊の二人は斬魄刀に手をかけるが、どうにも自分達の周囲に光が降りてくる雰囲気は全くもって見られない。

現在霊圧を感じられない隼人は何も見えていない中で、二人が斬魄刀を構えて空を見上げたのをきっかけに同じく警戒心を強めたが、特に何も身に降りかかることは無かった。

 

 

「ねえ、何が見えてんの?」

「光っすね・・・天へ繋がっているのか・・・?」

「ざっと10個以上はあるな・・・」

 

 

恐らく現在隼人が霊圧を感知出来たのであれば、とんでもない現象を目の当たりにして大騒ぎしていただろう。

この聖別(アウスヴェーレン)では、力の移動が行われていた。

霊子による能力の吸収ではなく、完全な力の移動であるため、より色濃い形で霊圧が動いているのだ。

余程聡い死神か、余程霊圧知覚に優れた死神でなければ、幾つもの光柱で力の移動が行われていることを理解できなかった。

 

 

「一体何だったんすかね・・・?」

「さあな。とにかく技術開発局入るぞ」

「・・・?何かハブられてる気分・・・」

 

 

やはり、今まで最も当てにしてきた霊圧知覚を失うだけで、かなり精神的に不安になってしまう。

おまけに二人だけにしか分からない会話を繰り広げられると、仲間外れにされた気分で余計心細い。

別にこの二人が自分を仲間外れにしようとは思いもしないだろうが、今の自分が普通じゃないことを思い知らされ、どうしてもしゅんとする。

技局の入り口に来た時もそうだった。

 

 

「お、浦原と・・・何だ、ひよ里たちもいるのか」

「この霊圧が、猿柿さん達のっすか・・・」

「・・・分からんわ、悲し」

 

 

吐き捨てるように呟いても、霊圧が感じられるようにはならない。

こればかり考えているといよいよ気が滅入りそうになったので、これからの事に意識を集中させる。

厚そうな扉があり、拳西が手紋を使って自動ドアを開けた。

ピピッ、という音がしたので、見えざる帝国のものではない事は普通に分かる。

 

 

「わっ・・・何これ、お立ち台?」

「こんな時にどんな発想したら浮かんでくるんすか・・・」

「あっ!」

 

 

聞きなれない声に三人とも?となるが、声を上げた主は構わずに自己紹介を続けた。

唯一思い出したのは修兵だけだった。

 

 

「皆様ご無沙汰しております!四楓院夕四郎です!ねえさまがいつもお世話になってます!」

「四楓院って・・・夜一の弟か。覚えてねえな」

「そういや、何年か前に新当主になった時に取材しましたね・・・」

「・・・ごめん・・・全っ然覚えてない・・・」

 

 

会った覚えすらない隼人は、完全に初対面と割り切ることにする。

修兵とお喋りしている様子を見ていても、全くもってその姿は記憶に無い。きっと箱入りで大切に育てられたのだろう。うん、そうだ。

そんな見かねた浦原に、ツンツンと肩を突かれた。

 

 

「お疲れ様っス、口囃子サン」

「浦原さん!この何とも言えないやり場のなさと手持無沙汰な雰囲気を察してくれたんですね!!」

「いやぁ~まぁ・・・、ってそれは置いといて。死覇装の替え、良ければ使って下さい。何だか他の方に比べて汗で濡れているようなので・・・」

「あ・・・はい・・・」

 

 

さっきのペペとの戦い(嫌な記憶)が蘇りそうになった所で頭をブンブンと振り、一時的にでも考えないようにする。あの時かいた大量の汗と口から出た涎で、気持ち悪いくらいだったのだ。

隊長羽織は奇跡的に無事なので、中の死覇装だけを着替えることにした。

周りには男しかいないので、更衣室に移動する必要もない。

 

 

「あ~~っ、すっきりする」

 

 

近くにあった椅子に羽織をかけてから、ベルトを取って一気に上下の死覇装を脱いでいく。

汗のせいで、下帯もじっとりしていて気持ち悪かった。

 

 

「浦原さん、下帯もありますか?替えたいです」

「ここで替えるんすか・・・?」

「別にすっぽんぽんになっても男しかいないからいいよ、銭湯と同じ同じ」

「大丈夫っスよ、袴と一緒に添えてあるんで」

 

 

用意のいい浦原は死覇装セットの中に、ちゃんと下帯も含めて渡してくれた。

不特定多数の死神に見られているわけでもないので、臆することなく帯をスルっと解いた。

 

 

「何か逆にスースーするけど、汗で湿って不潔な股間よりマシだよな。湯浴み行きてぇ~!!」

「お気楽なモンだな・・・」

「一日風呂入らなかっただけでもう身体が何かヤバいですよ。変な蛆湧いてきたらどう責任とってくれるんですか!」

「知るかよ・・・・・・って・・・・・・」

「うえっほん!!!・・・あのーーーッ、口囃子サン・・・?」

 

 

普通に喋っていた拳西が急に顔を青くすると、同じように近くにいた修兵も「あ・・・」と口を噤み、何故か緊迫した表情を浮かべている。

浦原の極端な咳払いから、やや大き目な声で名を呼ばれて当人の方へ向くと、彼も中々にヒヤリとした表情を浮かべ、ちょっとだけ汗っぽいものを垂らしていた。

 

 

「伊勢副隊長がお見えっス・・・・・・」

「え・・・・・・、」

 

 

逆ラッキースケベ、カムバックである。

目が合った瞬間(と言っても眼鏡の光のせいで眼の奥までどんな表情かは分からない)、凄みを帯びた謎のオーラが見えたような気がした。

霊圧を読み取れなくとも、何故か紫色のウヨウヨした負の雰囲気を感じ取ってしまった。

 

 

「ち、ちが・・・!これは、これはッ、ぶーーーーーっ!!!!」

 

 

たとえ顔を真っ赤にして弁明しようとしても、既に遅かった。

無言で手持ちの本を垂直に投げつけ、見事に本の角の部分が顔面にクリーンヒットした。

今回の七緒は、ガチギレだったようだ。眉の震え方が、尋常ではない。

 

 

「全く!!貴方は何故公衆の場で裸になるんですか!!女性も立ち入る可能性を考えていないのですか!!皆さんも何故私がいるのに止めなかったのですか!!」

「いやぁ~面白そうだなって思って・・・すみませんでした・・・」

「いい加減にして下さい浦原さん!2回目ですよこれ!!」

「「「2回目?」」」

 

 

こんな事件があったなどと聞いたことのない3名の男達は、まるで男子高校生のようなノリでポイントとなるワードを反芻する。

以前想っていた女性相手にこんな逆ラッキースケベ案件があったなんて、何故相談してくれないのか。

話してくれれば、いいネタとして一生面白おかしくイジり倒すつもりだった。今後は事あるごとにイジってやろう。

だが、茶化すような男性陣の言い方に、七緒は無の表情となり、遂に眼鏡を取る。

 

そこから先は、現場にいた者しか知る由はない。

 

 

 

*****

 

 

 

浦原が技術開発局の機械を使用して全隊長格に一旦集合してもらうよう頼み入れてから、続々と瀞霊廷中にいた隊長格が集まって来る。

最初に来たのは平子や砕蜂を中心にした、四番隊が中心の部隊だった。

その中にいた花太郎は、ずっと探していた上司を思いがけないタイミングで見つけることが出来た。

 

 

「あ!虎徹副隊長!!連絡お気づきにならなかったですか・・・?」

「えっ?・・・!伝令神機の電源切れてた・・・」

「そんなぁ~」

「あ、悪りぃ花太郎、滅却師相手にしなきゃならなくて虎徹副隊長探してるヒマ無かったぜ・・・」

 

 

お前操られてたじゃねえかとツッコミが飛んでくる可能性もあったが、余計な口を挟んだら面倒な死神がもう一体増えてしまう。

そしてツッコまずにいられない平子は、案の定面倒な死神に言及していた。

 

 

「で?アイツ何しとんねん。おーーーーーい、隼人ォ!」

「・・・そっとしておいてやれ」

「はァ?どないしたんや一体・・・」

 

 

すっぽんぽんの姿を再び七緒に見せてしまって強烈な攻撃を顔に喰らった隼人は、顔の痛み以上に心の痛みで半ば再起不能状態になっていた。

隅っこでしゃがんで皆に背を向け、膝を抱えながら凄まじく落ち込んでいる。

「あぁ、やっちゃったやっちゃったやっちゃった・・・」と延々と低い声で繰り返し、ずーーーんと音が響き渡るかのように、強く消沈している。

せっかくの背中の【七】の文字が、情けなく見えてしまう。

 

 

「喜助ェ、何があったんや?」

「まぁまぁ、口囃子サンにも事情がありますし・・・」

「ほんなら、七緒ちゃ「私は何も知りませんが」

「・・・さよか・・・」

 

 

事情を察した平子は、哀れみの目で隼人を見つめてから、そっと隣に寄り添って声をかける。

だがその顔は、完全に丁度いいおもちゃを見つけたような顔だった。

 

 

「(オイ隼人!オマエ七緒ちゃん相手に何したんや!押し倒したんか!)」

「うっ・・・うわぁぁぁぁぁああああああん!!!!!!!!」

「なっ・・・泣くことあれへんやろ!どないしたん!え?え!?」

「あぁもう!せっかく落ち着いたのにまた泣かせちゃだめじゃないっスか~!」

「ガキかコイツは!つーかこの非常事態っちゅうんに何やっとんねんオマエら!」

 

 

フリーダムに泣く隼人の姿に軽く引いている死神もいたが、「他人が見てるぞ」と拳西が言うだけですぐに収まった。

更に白哉やローズらの部隊も来たことで、隊長格が徐々に集まってきた。

 

 

「・・・副隊長が少ないな。連絡来てへんのか?」

「二番隊の副隊長は、斑目サンと綾瀬川サンと一緒に、十二番隊と行動を共にするそうっス。他にも多くの席官が彼らと行動を共にするとか・・・。まァ涅隊長の事だから、いずれ合流するでしょう。尸魂界が無くなって困るのは、あの人も同じ筈っスから。それから、更木隊長は虎徹副隊長のお力によって緊急治療を終えた所です。目覚めるのを待ってる所っスよね?」

「はい。浮竹隊長に様子を見てもらっている所です」

 

 

ローズの運んだ更木は、技術開発局で控えていた勇音が引き受けたことにより、迅速に対応して一名を取り留めることができた。

あの更木剣八がここまで体を傷めるとはと驚きを隠せなかったが、まだ治せない傷ではなかったので、とりあえず処置は済ませられた。

そして治療の最中、卯ノ花の件について告げられたが、

 

 

『斬られたんですね・・・そうですか・・・』

『・・・あァ』

『なら・・・名を、受け継がれたんですね。卯ノ花隊長の名を・・・・・・、』

 

 

『よかった・・・・・・』

 

 

勿論、卯ノ花が死んで嬉しい筈などない。本心なら、何度更木を斬っても足りないぐらいだ。

だが、今目の前でボロボロになった更木は、卯ノ花の持っていた剣八の名をしっかりと継ぎ、巨大隕石が落ちる程の激戦を戦い抜いたのだ。

更木を治さねば、卯ノ花を裏切ることになる。

気付いた時には、自然と更木の身体に回道をかけていた。

 

 

「ありがとうございます、虎徹サン。・・・そして、一番隊隊長は所用で四十六室へ。ただ、十番隊だけは隊長副隊長ともに一切連絡がついていません」

「・・・・・・、」

 

 

十番隊がどうなったのか知っている隼人は言うべきか迷ったが、彼らの事を考えると皆の前で口に出すことではないと思い直し、必要性があればこっそり浦原に伝えることにした。

隼人の隣にいたもう一人の当事者の拳西も、口を開こうとはしなかった。

ゾンビになったなど、皆の前で言うべきではない。

 

 

「ほんで?この障子に穴開いたような連中集めて、何を始める気やねん」

 

 

そして、平子に対する浦原の返答は、皆の度肝を抜くに値するものだった。

 

 

「霊王宮に突入します」

 




あのマユリをも震撼させた眼鏡無し七緒の再来です。
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