ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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突入

ユーハバッハに反旗を翻した滅却師の中に、ロバートがいるのを京楽は不思議に思っていた。

まだ総隊長になる前にした“お話”の様子から、彼はユーハバッハに対して並々ならぬ忠誠心を持っていると読めたのだ。

外見からしても昔からユーハバッハに付き従っており、むしろナジャークープよりも長く共にいる筈だ。

少し試すような形でロバートに理由を尋ねたが、返ってきたのはたった一言だけだった。

 

 

「―――・・・目が覚めました」

 

 

存在ごと使い捨てられ、力を毟り取られる自身と仲間を見て、長年の忠誠心も冷めてしまったのか、ロバートの眼は光を失って疲れ切っていた。

ユーハバッハを殺しに行くとは言ったものの、消耗した力で勝利するのは無理だろうが、それでも彼らはこのまま付き従う道を捨て、自分達の足で歩み始める。

ロバートはそれ以降、死神達の前で口を開くことは一度も無かった。

 

 

*****

 

 

 

霊圧の増幅器があるお陰で死神達の負担はかなり軽くなり、再び一から始めた門の制作は見違えるような速さで進んでいく。

卍解して全員の霊圧に干渉するという役回りも必要なくなったため、隼人も他の者と同様に球を持って力を注いでいた。

 

 

「早えな・・・さっきまでと段違いだぞ」

「流石に滅却師もいて頭数増えてますからねぇ~・・・」

 

 

ぼそっと呟いた拳西の独り言に乗っかってきた隼人は、すっかり吹っ切れたようでここに来る前の様子に戻っているようだ。

藍染相手にあんなに怒ったせいで副隊長ほぼ全員が暗黙の了解で腫れ物扱いしており、修兵ですら近寄って来ない。よりによって阿散井と一緒にバズビーとくっちゃべっている程だ。

変に3人の波長が合っているようで、ルキアや雛森から異物のように見られている。

女の子には分からない何かがあるのだろう。他の者にも分からないかもしれないが。

 

 

「あんまり、一人で気にすんなよ」

「・・・さっきの事ですよね」

「変なトコで無理すんな。抱えるモンが大きすぎりゃ、溢れた時にどうしようもなくなる。もっと周りを頼れ」

「ほんとそれ、何回目ですか?“でじゃぶ”?所じゃないですよ」

「俺はうるせえぐらい言うから覚悟しろよ」

 

 

とは言いつつ、今回に限ってはそこまで心配する必要は無いだろうと思っている。

張り詰めた雰囲気は無く、言葉の中に棘も見られない。

思いがけない形であったが、一生モノの恨みを少しでも晴らしたため、これ以上さっきの件について話す事は無かった。

 

 

*****

 

 

時間が経ち、門の完成まであと少し。

そんな時に、瀞霊廷で突然、瓦礫が蠢き始めた。

 

 

「これは、一体・・・!?」

「何故だ・・・何故こんな事が起きている・・・!?滅却師共は一体何をしようとしているんだ・・・!?」

 

 

技術開発局付近だけではなく、中心から離れた真央霊術院でも同様に、見えざる帝国の街並みが剥がれている。

聖兵との戦いに目処がつき、暇をしていた白は過剰なリアクションで救援に駆け付けた吉良に問いかけたが、分かる筈もない。

 

 

「何コレ何コレ!?イヅルん分かる!?」

「僕に訊かれても何も答えられませんよ・・・ただ、敵の滅却師が、途轍もない力を持っているのは確かですね・・・」

「じゃああたし達もあっち行った方がいいんじゃないのーー?」

「ダメですよ。僕は鳳橋隊長から瀞霊廷で待機するよう命令されています。皆さんは霊王宮へ向かうようなので、万が一の為に僕達はここで待つべきかと」

「えーーーー!!!ずるいずるいずるいあたしも行きたいーーーー!!」

「上でなす術も無く殺られるより下で活躍した方が皆さんの印象に残るのでは?」

「じゃあ残る!!」

 

 

何で僕をここに派遣したんだと上司を恨みたくなる程に、これからずっと白の扱いに苦慮することになると、今の吉良は考えもしなかった。

 

 

息の詰まる光景に上空を見る隼人は完全に固まっていた。

平子が怒りの声を上げ、花太郎は焦るあまり球を落としてしまう。

何が起こるのか分からず、敵の目的も掴めない。

滅却師の面々も、困惑してただ空を眺めるだけだった。

 

しかしそれでも霊圧の注入は進み、門は完成の目処が立った。

浦原が大急ぎで機械を操作して霊圧の微調整を行い、僅かに震えていた霊子の門が完全に固定される。

 

 

「・・・よし!完成っス!開門しますよ!準備はいいっスか!」

「「「「おォ!!」」」」

 

 

ほぼ全員から威勢のいい返事が来て、浦原が最後のキーを押す。

そして開けた世界は、考えもしないような世界だった。

 

 

「・・・・・・な・・・、何や・・・・・・これは・・・!?」

 

 

霊王宮へと向かった筈なのに、見えたのは滅却師の街並みだ。

勿論ここにいる多くの死神が霊王宮に足を踏み入れたことが無いため、その正体は分からないのが当然だが、だからと言って滅却師の街並みが正しい姿であるとは考えられない。

平子が浦原に事情を訊いても、いまいちはっきりしない答えしか返って来ない。

多くの死神が辺りをきょろきょろして何か考える中、総隊長は時間の無駄とでも言うかのように最悪の可能性を口にした。

 

 

「・・・・・・つまり、さっき瀞霊廷から持ち上げた街を、霊王宮を潰して組み直したって事なんじゃないの?」

「アホな!さっきの今でそないな事・・・」

「だから、それ程の力を手に入れたって事だよ、敵さんがさ」

 

 

マユリの言っていた嫌な予感が、完全に的中してしまったようだ。

霊王の力をユーハバッハに吸収された事で、向こうは広大な街を数分で作り上げるレベルの途轍もない力を持っている。

更に、今護廷十三隊の面々が立っているのは、零番離殿の縁であり、空を見ても霊王宮は浮かんでいない。

 

要するに、霊王宮は完全に敵の物となってしまったのだ。

 

尸魂界の最重要施設が、敵に回る。それだけで、得体の知れない恐怖が感じられるようだ。

そんな中、夕四郎が姉の霊圧を感じ取った。

 

 

「ねえさまの霊圧です!今そちらへ参ります!!」

 

 

威勢のいい宣誓から空中を飛び立ち、霊子の足場を作って一目散に向かって行く・・・つもりだったが、空中に浮かんだ夕四郎は足場を作れず、そのまま瀞霊廷へ真っ逆様。

・・・とはならず、間一髪で恋次によって助けられた。

 

 

「バっ・・・馬鹿野郎!!!何してんだてめえええッ!!!」

 

 

すいません~~!とか、足場ができなくて・・・とか夕四郎は言っていたが、霊圧知覚に長けた隼人は別の事で呆れていた。

 

 

「一護くんも全く同じことやってた・・・・・・」

 

 

彼の名誉のため小声で呟くに留め、自分だけの弱みを握ったという事にしておく。さして意味無いかもしれないが。

というちょっとした事情は一旦脇に置き、隼人は再び霊王宮全体の霊圧パターンを探る。

足場が作れない以上、霊子の制御権は敵の手にある。滅却師であるため、こうすれば力を最大限に扱えるだろう。

 

 

そしてもう一つ、霊王宮を探って分かった事は、他と比べて極端に霊圧が変質した地点が6つ存在する事だ。

5つの動いている霊圧と1つの中央に留まった霊圧は滅却師の物であり、それとは別に6つの場所で、妙な霊圧地点が見つかった。

そこを潰せば、霊王宮が滅却師の街から元に戻るきっかけになるのではないか。

そうでなくとも、霊子の主導権を奪えるかもしれない。

尸魂界とは別に、霊王宮には特有の霊脈があると霊術院の特別授業で軽く聞いたことがあったが、それと関係する事象なのか。

全てが初めてなので、あらゆる想定外の可能性を考えながら行動する必要がある。

 

そして、今から隼人がやろうとしている事は、他の死神を巻き込むべきではない。

こっそり抜けるのもきっと怒られるだろうが、かといって隊を二つに分ければ全滅するリスクが高まる。

悩むくらいなら、一人で行くべきだ。

 

(どうせ霊圧の集中した地点を狙うはずだし、大丈夫だ、大丈夫)

 

一人黙々と思案していると、突然前からけたたましい音が聞こえてきた。

建物と建物が崩壊、合体していき、より高く聳え立つ。合体メカみたいだ。

 

最上部には2つの大きな霊圧があるものの、霊圧変質地点は変わっておらず、むしろ城の最深部にあるのだろう。

どうやって手をつけるべきか脳内でぐちゃぐちゃしていると、「行くよォ!」という京楽の声が聞こえてきた。

思わず手を震わせ「ハッ!」と口にしたが、後ろの方だったので誰も見向きせず、皆走って城に向かって行く。

京楽を追尾する形で分身となるダミーの霊圧を形成し、彼の少し後ろを等間隔でついていくようにして、形だけでもバレないようにした。

 

 

「・・・さてと、それじゃあちょっとばかり、作業しますか・・・!」

「何処行くつもりだ」

「ひぃうおぉっへ!!!」

 

 

つもりだったが。

 

 

「コソコソ一人で変な動きしやがって。目について仕方がねえ」

「ダメですよ拳西さん!皆と一緒に行かないと!せっかくバレない様にしたのに台無しだぁ・・・」

「そっくりそのままオメーに返すぞ。つーか新米隊長一人にする方がよっぽど問題だ」

 

 

一応一人で考えていたのだが、変な動きをしていたのだろうか。だとしたら気持ち悪い死神ではないか。

よりによって、一番バレたくない死神に隠密行動がバレてしまった。

だが過ぎたことを考えても仕方ないので、とにかく二人で向かうしかない。

と思ったが。

 

 

「・・・私もいます・・・」

「勇音さんにも気付かれてたんか・・・・・・」

 

 

結構なショックだった。

しかも、この3人がここで留まっていたことは、すぐに浦原にバレてしまった。

 

 

「涅隊長だけじゃなく、口囃子隊長まで~~!?困ったな~・・・」

「拳西もおらんで!!何しとんねんホンマにィ!」

「・・・自由な奴だな・・・」

 

 

平子はキレて、白哉は呆れる。全員が隼人の奔放な思考のせいで拳西が振り回されてしまったのだろうと考えているが、合っているようで微妙に違う。

引き返して強引に連れて行くかと野蛮じみたことを七緒が進言したが、意外にも京楽は首を横に振った。

 

 

「きっと、霊王宮に何かあることに気付いたんだよ。じゃないと、彼はきちんと皆と足並みを揃える筈だ。・・・ちょっとボクもびっくりだけどね・・・」

 

 

あぁ~あ~と気の抜けたわざとらしいため息を一回ついてからは、特にこの事に言及する事は無かった。

そしてこの時既に、何者かによって一人の死神が既に狙撃されて一切の身動きを取れなくなっていた。

 

 

*****

 

 

 

3名の別動隊が最初に向かったのは、霊王宮に来た時の地点から数分足らず歩けば着く場所にある、真っ白な建物だ。

周囲の建物に比べるとやや低いが、尖頭の小窓や、上に向かって細くなっていく三角の形をした建物は、まさしく現世の観光パンフレットで見た聖堂と言われているものだった。

中に入ると、木造の尖頭アーチが建物を支えており、正面奥には滅却十字が掲げられている。

太陽の光がステンドグラスに通り、電灯と共に室内を幻想的に照らしていた。

 

 

「ヨーロッパの教会か。にしては日本っぽいな・・・」

「よ、よー?」

「西梢局のある場所だ」

 

 

拳西の現世知識はどうせ分からないので聞き流しているが、確かにさっきまで瀞霊廷を覆っていた見えざる帝国の建物とは少し毛色が違う。

木の温かみが感じられ、現世にある「お寺」という場所に似ていた。

 

 

「何だか不思議ですね・・・」

「それで、ここに来てお前は何すんだよ?」

「うーん・・・、こっちです!」

 

 

とととと、と聖堂の奥まで走り抜け、正面奥の幾何学模様をしたステンドグラスの真下へ向かう。

棺なのか何か東洋文化に生きる死神には全くもって分からない物体に、霊圧を籠めた手で触れてみると。

 

 

「わっ!!・・・・・・、何だ、これ・・・?」

 

 

祭壇の壁に、左から突然文字が浮かんできた。

 




本作の独自設定として、霊子の掌握権奪還を入れました。
場所は5つの枝と、真世界城に1つ存在し、中央はハッシュヴァルト、他は親衛隊と石田の霊圧に対応しています。
詳細は追々説明していきます。
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