ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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復活

「おい・・・何だこれ・・・!何で殺したはずの奴が此処にいるんだ!」

 

 

数名の滅却師の中には、二回目の侵攻で拳西が殺したマスク・ド・マスキュリンが立っている。

更木剣八が殺した巨大な獣みたいな滅却師もいた。

他には機械仕掛けの滅却師に、中国っぽい顔立ちの滅却師。それどころか、さっきまで共に霊圧の門を創った金髪の滅却師もいた。

 

 

「とにかく倒すしかねえだろ!岩鷲!チャド!行くぞ!」

「黒崎くん!援護するよ!」

「頼む!」

 

 

現世組に加え、夜一にネリエルや拳西も前線に出たため、隼人は勇音と共に後方支援をする。

勇音は鬼道で敵の攻撃を阻害し、隼人は相手の霊圧を読んで敵の力を削ぐつもりだった。

しかし、敵の霊圧を読んだ瞬間、予想だにしなかった事態が分かった。

 

 

「・・・何で、山本総隊長の霊圧が・・・?」

「!? どういうことですか!?」

 

 

前総隊長の霊圧が滅却師から感じたことで強い困惑を浮かべるが、同時に彼らの手で滅却師達は倒されたところだった。

 

 

「コイツら、攻撃力はあるクセにちょっと殴るだけでやられちまったぞ?」

「何だよ、大したことねえなあ?」

「岩鷲一人でもどうにかなったんじゃねえか?」

「確かに・・・一護が出るまでもなかったな」

「オイテメェら2人ともまーだ俺のことナメてんなぁ・・・?」

 

 

「皆避けろ!!!」

「「「!!!」」」

 

 

遠くから隼人の叫び声が聞こえた瞬間に各々避ける動作に入ったため全員無傷で済んだが、一護の後ろにはさっき岩鷲が倒したはずのジェローム・ギズバットが無傷で立ち上がっていた。

『咆哮』により、ジェロームの真正面の壁龕にあった大理石彫刻は粉々になっており、壁にも所々銃創のような穴が開いていた。

猿のような見た目で、声を上げるとその方向にあった物体が風圧で吹き飛ばされるか、声に紛れた霊子の極小の神聖滅矢によって蜂の巣にされている。

折角の美しい聖堂が台無しなのは非常に残念だが、それ以上に倒したはずの滅却師がゾンビのように立ちはだかるのが異様だ。

あのゾンビ男が糸を引いていると考えたが、山本総隊長の霊圧を感じた時点でその可能性は消える。

 

 

「ならばこれでどうじゃ!」

 

 

次に出てきた夜一が懐から謎の球を取り出し、2回に分けてジェロームへと当てる。

ユーハバッハに当てようとした時は思わぬ横槍で失敗したが、今回は邪魔も入らずすんなり通る。

球が当たった瞬間に、敵は完全に溶けて消えてしまった。

 

 

「はっ!これで殺し損ねることなど――――――!」

 

 

気配を感じた夜一が横に飛び退くと、元いた場所は巨大な口によって噛み千切られていた。

ネリエルが倒したリルトットが、蘇って夜一を食い尽くそうとしていたのだ。

 

 

「ちょっと待って!どういうこと!?私がやったはずなのに・・・?」

 

 

そして、夜一が溶かした滅却師も息を吹き返し、再び四足で立ち上がる。

倒しても倒しても、何度も同じ姿で蘇る。

 

 

そして、滅却師が息を吹き返す度に強く感じる、山本総隊長の霊圧。

その霊圧の正体が、第一次侵攻の時に彼が放った卍解の霊圧だと漸く理解した。

 

 

「これ、山本総隊長の卍解!!」

「じゃあ、総隊長の卍解は敵に奪われてしまってたんですか・・・!」

「多分・・・それもユーハバッハに奪われたと思うよ!」

 

 

滅却師の霊圧が混じっているため、今目の前にあるのは卍解にアレンジが加わっている。

基本的に敵の力で卍解を捻じ曲げることができたというデータは無いため、前提知識で考えれば卍解の力よりも敵の力が勝っていると考えるしかない。

それも、総隊長に力が勝るとなれば、敵の大将以外思いつかない。

総隊長が斬った死者を蘇らせる卍解の技は、ユーハバッハが自らの手下を召喚する卍解へと書き換えられたようだ。それも既に死んだ滅却師含めて。

 

(何か、止める術は・・・)

 

滅却師が人間と死神に意識を集中させている隙に、打開策を探して辺りを見渡す。

向こうの建物にヒントがあるかと思ったが、どうやら夜一が大理石像を壊したと同時に塞がれてしまったようだ。入口だった地下の場所は、石塊で強引に塞がれていた。

ここまで来たら、さっき壊れた大理石像をアテにするしかない。藁にも縋る思いで祭壇から落ちた石像を見つけて拾うと、案の定きっかけが見つかった。

 

(霊圧がちょっとだけ取っつきやすくなってる・・・?)

 

割れた石像の裂け目から濃縮された霊圧が滲み出たからか、石像が放出する霊圧から複雑な部分が消え、普通の滅却師の霊圧と大差ないものとなった。

 

 

「勇音さん、僕ちょっとだけ無防備になるから、守護をお願いします!」

「はい!」

 

 

手で石像を包み込み、直接自分の霊圧をチューニングして石像の霊圧に合わせていく。

霊圧が合った瞬間を逃さず、一気に石像から霊圧を吸い出した。

 

(きた!)

 

吸い出した霊圧を宙に浮かべ、行き場を失った霊圧を今度こそ消失させる。

卍解をロッドに変え、先端から白滅光弾を1発だけ出して完全に霊圧を吹き飛ばすことができた。

 

 

「出来た!皆さん今度こそ倒せます!一気に倒しちゃって下さい!!」

「月牙・・・天衝!!」

 

 

一護が豪快に月牙天衝を放ったことで巨体の滅却師は倒れ、茶渡と岩鷲によって機械の滅却師が無力化される。

マスクは再び拳西がボコボコにし、夜一とネリエルが残りの滅却師を一網打尽にした。

 

 

「ふぅ・・・何とかなったのう」

「夜一さん!何てことするんですか!もう!!」

「わしのせいだと言いたいのか?」

「どっからどう見てもそうでしょうが!!」

「おぬしが遅いのが悪いんじゃ!何をちんたらちんたらトロ臭い事を・・・」

「蹴っちゃう方が誰だってビックリですよ!せっかち過ぎますよ~!!」

 

 

一段落ついたと思いきや、すぐに事態を厄介なものにした夜一のもとに瞬歩で詰め寄って怒る隼人に、全くもって夜一は調子を変えない。

ぷりぷり怒る若輩者は、いくら隊長とは言っても全くもって怖さが感じられないのだ。

怒るというよりお願いするような言い方のせいで、怒られるはずの夜一の方が依然として立場が上に感じてしまう。

 

 

「おぬしの力が足りんということじゃ。それをわしのせいにされても困る」

「だから・・・、・・・もう!!いっつも自分の行動棚に上げて!僕みたいな偶々周りにいる人が苦労してるんですよ!!」

「何にせよ今回はおぬしのせいと言っておるじゃろ!」

「あぁぁあぁちーーがーーうーーよーー!!!」

 

 

「おい・・・もうちょっと注意の仕方ちゃんとならねえのか・・・?」

「俺からすれば、隼人は言いくるめやすいからな・・・」

「だからって責める側が泣きそうになってんのは情けねえだろ・・・」

 

 

いい年の男がぐずぐずする光景をこれ以上見たくなかったため、一護が仲裁に入った結果、ちゃんと夜一のせいになった。

どの道多数決を取っても満場一致になるので、不服そうにしているのは夜一だけだった。

 

 

「納得いかんが・・・仕方ない。隼坊に免じて此度は引き下がるとしよう」

 

 

相変わらず涼しい顔をする逞しい精神は、どうせなら見習いたいものだった。

 

 

 

*****

 

 

 

「ッ・・・!!うぶぉっ!!がはッ!!がはッ!!」

「!?」

 

 

リジェとの戦いで劣勢に立たされていた京楽は、突然動きを止めて大量の血を吐き出す相手の隙を見逃さず、一気に影を駆使して距離をとる。

完聖体となり斬術が全く効かない状態の中、何故敵が血を吐いたのか京楽には分からない。

今の状態が最後のチャンスであるため、本隊から離れながらリジェの足を更に止めるため、縛道で畳みかけるつもりだ。

 

 

「縛道の七十九 九曜縛!」

 

 

リジェの身体の周りに9つの黒球が浮かび上がる。

複数の翼を生やした異形になったリジェは神の使いであるため、刀で傷付けることは不可能だ。

鬼道も効く可能性は低く、注意を引く程度のものでしかないと京楽は考えていたが、消極的な予想はこういう時にはよく当たる。

 

縛道も、全くもって効果が無かった。

リジェの身体を縛ろうとしてもすり抜けてしまい、霊圧が消失したのを遠目で見届けた瞬間に、再び霊子の弾丸が飛んできた。

 

 

 

*****

 

 

 

色々あったが一先ず落ち着いた現世組一行は、岩鷲の力のお陰で月牙天衝でも壊れなかった聖堂の壁を砂にすることで、容易に抜け出すことができた。

自分の力の存在を忘れる脳内の回路が、普通の死神にとっては到底信じられない。

一護と茶渡も心から呆れた顔をする。

 

 

「テメェが最初に壁を砂に変えてりゃすぐに終わったんじゃねえかよ!」

「いやぁ~、俺もうっかり忘れててよ。確かにちょっと頭回せば俺も活躍出来たな!悔しいぜ・・・」

「記憶力・・・の次元を超えているな・・・」

「しょうがねえじゃねえか!見たことねえ建物でいつもの考えがフッ飛んぢまったんだよ!むしろあんなキレイな絵見れてよかったじゃねえか、なぁ?」

 

 

皆に投げかけたものの、誰からも言葉で同意を得られなかった岩鷲は頭を落とす。

壁に開いた穴から外にでて歩いている最中、まるで岩鷲一人だけ初対面の人間の間に投げ込まれたかのうようだった。

しかも、ネリエルの提案よってグリムジョー探しを再開することになったため、益々岩鷲の存在が忘れられようとしていた。悉く残念な男だ。

 

 

「じゃあ俺達はグリムジョー探しに戻るか。口囃子さん達はまた別の場所行くのか?」

「うん。本当に助かったよ!ありがとう!」

「迷惑しかかけてねえ気がすんだけどな・・・」

「そんなことな―――――」

 

 

いつもの調子で喋っていた隼人の顔が豹変する。

さっきまでの温和な姿から一変し、一瞬で杖を取り出してから聖堂の屋上へと霊圧で作られた刃を放つ。

縁に当たってしまい爆発したのを見ると、立て続けに黄火閃を放って横に広く攻撃した。

 

(手応え無い・・・、!!)

 

後ろに霊圧を感じたため、振り返って銃口のように杖を突き立てる。

目の前にいたのは、肩に手を当てられた井上織姫。

そして、彼女の左肩に手を当て、頭の横にパチンコ玉のような小さい物体をつまんで背後に立っていたのは、一回目の戦いで唯一会った星十字騎士団のアスキン・ナックルヴァールだった。

 

 

「よォ、また会ったな。隊長昇進オメデトさん」

「・・・・・・」

「何だよ、折角の再会だし会話しようぜ?アンタの戦い色々見させてもらったから感想言いてェんだけど」

 

 

最早他の死神どころか、人質にしている井上に対しても関心を全く見せず、ナックルヴァールは隼人を見ていた。

特記戦力の黒崎一護がいても、相変わらずナックルヴァールが最も警戒するのは現在目線を合わせる男だ。

 

 

「井上!!」

「黒崎くん!あたしは大丈夫!皆でグリムジョーを探しに・・・」

 

 

井上が声を出しても、全くもって意に介さない。身体を掴む力を強めるわけでもなく、彼女が動こうとすれば簡単に逃げられるだろう。

だが、井上が口に出した名を聞いて、ナックルヴァールは眉をピクりと動かした。

 

 

「グリムジョーって、あのワイルドリーゼントか」

「お前、何で知って「あいつなら遠くで寝てるぜ」

「!!!」

 

 

即座に一護は両手に斬魄刀を構え、無駄のない動きで跳躍した。

僅かな微笑みを見せてからナックルヴァールは井上の身体から紳士に手を離し、後ろへと跳躍しながら右手に持っていた小さな玉を一護に向けて投げつける。

 

 

「こんな小せえ攻撃、俺が喰らう訳ねえだろ!」

 

 

右手に持った大きい方の黒い斬魄刀を斜めに振り上げ、剣圧だけで消し飛ばそうとするが。

 

右から何者かによって体当たりされてしまい、半分空中にいたせいで変にバランスを崩して盛大に左方向に倒れ込んでしまった。

一護に体当たりした隼人は、仕込んでいた簡易的な白断結壁を身体の前に張って毒入りボール(ギフト・バル)を防ぎきる。

 

 

「あ~らら、せっかく黒崎一護を先に殺せそうだったのに残念。我ながら致命的なミス・・・だな」

「一護くんをこんな所で潰されたらこっちが困るし。つーか、僕がこうする事も分かっててやってんでしょ?どこが致命的だよ」

「そう見える・・・か・・・?・・・あぁ~・・・」

「?」

 

 

じわじわと心配そうな顔になっていくナックルヴァールに、意味が分からず表情で不信感を見せると、後ろを指さして振り返るよう促される。

 

 

「あれ・・・大丈夫?」

 

 

敢えて両手を上げて攻撃の意思を見せずに本気で心配する顔をしていたため、警戒しながらも隼人も後ろを振り向くと。

 

鬼の形相を浮かべた一護がじわじわと此方に歩いて向かってきていた。

 




この聖堂に対応していたのはリジェです。もう少し近代のものにしようかとも思いましたが、能力の強さ的に見てこれぐらい壮大でもいいだろうと思い、モチーフを決めました。
ちなみに、時系列的には既にマユリが倒しているであろうペルニダの聖堂は、パルテノン神殿のような建物にしています。
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