ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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この話を最終話にしようか迷いましたが、原作に合わせる形でここからは次の篇に移ります。


神掛

【石田サン!?もしもし、石田サン!!】

 

 

浦原が瀞霊廷の石田と連絡が付かなくなった事は伝令神機越しに隼人達の場所にも伝わっており、ノイズみたいな音声が流れてから、ブチっと切れてしまった。

 

 

「成程、ユーハバッハの方が一枚上手じゃったという事か」

 

 

一兵衛の一言で、重苦しい空気が流れる。

ここまでやって無駄骨であれば、いよいよ死神全員で何も考えず特攻をかけるしかないのか。

しかしそうするとなれば、藍染の時の苦い記憶が蘇る。

時間は稼げるが、一護達を殺した敵に死神側の勝算など全く以て無い。

 

ここまで必死に戦い抜いて、最後は結局負けて何も残らないのだろうか。

 

 

しかし、隼人だけは、まだ完全に希望を捨てていなかった。

 

 

「・・・まだですよ。まだ、僕が治した井上さんとルキアちゃんがいます」

「・・・どういう事だい?」

「井上さんから聞いたんですが・・・」

 

 

京楽に促された結果、彼女達を送り出した時を思い出しながら経緯を話し始めた。

 

 

*****

 

 

 

『何か、こう、ぶっ飛んだ策とか無いかな!?』

『うーん・・・』

 

 

瀞霊廷に向かってもらう前に井上と一緒にうーんうーんと考えを捻りだしながら唸っていると、思い出したようにルキアが言葉を発する。

 

 

『未来を書き換える力に今の所対抗出来たのは、過去を改変する力です。月島の力のおかげで一護の刀は未来を書き換える力で折られても元に戻りました』

『それだっ!!!』

 

 

と威勢よく叫んだが、月島の戦闘力に関してはそこまででは無い事をデータで知っていたため、彼を使った策は現実にそぐわない。

というか、それ以前に協力するとは思えない。挟まれそうだ。

 

 

『いや、やっぱ嘘・・・』

『私も、月島が協力するとは思えません。別の方法がいいかと』

『あんな事言った手前何か考えないといけないけど、厳しいなぁ~~・・・』

 

 

今度はルキアと二人でうーんうーんと全く同じように唸っていたら、井上がはっ!と分かりやすい表情を浮かべた。

 

 

『どうした井上!!』

『あ、えっとね、大した事じゃないんだけど・・・』

 

 

と言ったが、めちゃめちゃ大した事だった。

 

 

『霊王って人の所に皆で行った時に、黒崎くんが敵の大将さんに操られて、霊王さんを斬っちゃったことがあって・・・』

『一護が霊王を斬ったのか!?』

『うん・・・敵の滅却師が霊王さんに突き刺さった剣を抜いた時に黒崎くんの身体に模様が出て、黒崎くんを操った敵の人が霊王さんを斬ったって言えばいいのかな・・・?』

『何てこった・・・これはあんまり口外しない方がいいかもな・・・』

 

 

隼人の言葉に『すみません!気を付けます・・・』と井上がかなり慌てた様子で返したが、とりあえずこれ以上言いふらさなければいいから続きを・・・と落ち着かせることで、もっと重要な話を聞くことが出来た。

 

 

『それで、黒い手のお化け?みたいなものが霊王さんに絡みついた時、敵の大将さんがすごく動揺していました。“どういう事だ”とか、“私の眼に映らない”って』

『今度こそそれだぁっ!!!!!!』

『ふいいいっ!!びっくりしたぁ~・・・』

 

 

叫び声を上げてから隼人は周囲を見渡し、手頃なサイズの瓦礫を見つけて手に取る。

霊力を使って隠していた卍解を取り出し、杖を宝珠杵に変えて自分の身体の霊圧を変質させた。

 

 

自分の霊圧を神掛後の浮竹の物に完全に変えて、それを手に持っている瓦礫に全て注入する。

この霊圧が外に放たれた後に消えてしまえば、隼人の記憶にも残らなくなるが、むしろそれは浮竹の望むことのような気がする。

二度と全く同じ霊圧を思い出せなくなるが、これで敵に一矢報いることが出来たらもう大金星だ。

霊圧を全て注入し終え、2人の許へ戻る。

 

浮竹の霊圧を籠めた瓦礫は、ルキアに渡した。

 

 

『これ、上手くいくか分からないけど、はい!』

『? 何でしょうか、これ・・・』

『それは・・・使ってみてのお楽しみだな。霊圧籠めて、うぉりゃあっ!!って!』

 

 

これでもかと乱れた投球フォームで投げるフリをする隼人の姿に、ルキアは冷え冷えとした目を向ける。

 

 

『これは・・・六車隊長に告げ口をすれば面白い事になりそうですね・・・』

『えっ!何、そんなに変!?』

『あぁ、いえ・・・しかし、井上でなくていいのですか?』

『うーんとね、これは、ルキアちゃんが使うべき。敵に向かって投げれば、何かの役に立つ筈だ!』

『はぁ』

 

 

実感が湧かないのも仕方無いが、どうせなら何も知らない状態で渡す方がいい。

敵を騙すならまずは味方から、というのとはちょっと違うが、敵が自信満々で投げてくるものを受ける人間が、それに警戒しない筈は無い。

それなら、力が分かっていない状態で投げてもらう方が、敵を少しでも油断させる事が出来るかもしれない。

 

結局それも、書き換えられれば意味ないが。

 

 

『これなら、敵のもつほんの僅かな弱点を突けるかもしれない。ダメだったら逃げればいいんだ。戦う前から逃げるのは論外だけど、あんな強大な敵に一度立ち向かってから逃げた所で誰も文句なんて言わないよ。だから・・・お願いします』

 

 

『一護くん達と、一緒に戦って下さい』

 

 

狛村にしていたのと全く同じように、深く頭を下げて2人に頼み込む。

突然頭を下げてきたのを見て二人とも面食らってたじろぐが、頑なに頭を上げずにいる隼人を見た2人は、今一度決意を固める。

 

 

『承知しました。これで少しでも敵の動きを止められるなら、私はもう十分です』

『最後まで一緒に、あたしも皆と戦います』

『ありがとう・・・本当に、一護くんはいい友達に恵まれているね・・・』

 

 

隼人からもらった瓦礫をルキアは懐にしまい、2人は門へと足を進めていく。

 

 

『ルキアちゃん!井上さん!・・・生き残るんだぜ!行ってこい!』

『『はい!!』』

 

 

 

*****

 

 

 

「という事がありまして・・・」

「何ィ!!!!」

 

 

話を聞いて最も強く反応したのは一兵衛だった。

 

 

「おんしの霊圧を・・・浮竹十四郎の霊圧に変えたじゃと!?」

「少しの間です!全部石に注入しちゃって、僕の身体にはその霊圧の記憶も全部残っていません。今も・・・思い出せないです」

「まさかここまでやってのけるとは・・・いや、所詮模倣に過ぎぬのであれば・・・」

 

 

ブツブツと小声で呟きながら皆とは反対方向を向いて考えていると。

 

 

ユーハバッハの霊圧が、遂に極限まで弱まった。

 

 

「あ・・・・・・」

 

 

その瞬間に、全員無意識に感じていた圧迫感が消え失せる。

 

 

「これで・・・終わったんすか・・・?」

「何だか、本当か分かんねえな・・・」

 

 

確かにユーハバッハの霊圧は恐るべき速度で弱くなっているのだが、ラブの言う事は尤もであり、あれだけ強大な敵が沈んでいく様というのは、実際に起きると本当かどうか疑わしくなってしまう。

藍染が封印された時と違い、“戦いが終わった”という感覚が全く感じられない。

だが、清之介から伝令神機を受けた浦原が、吉報を全死神に伝達した。

 

 

【皆サン!黒崎サンが、ユーハバッハを倒しました!!滅却師との戦いはアタシ達が勝ちましたよ!】

 

 

多くの犠牲を生んだ戦争が、漸く終わりを告げた。

それを聞いた仲間達は、ほぼ全員が安堵のため息をつく。

単純に勝利を喜ぶ十一番隊士もいれば、今後の治療の為に決意を固める四番隊士もいる。

実に3000名もの隊士が亡くなっている壮絶な戦いだったが、それを知るのは後の話である。

 

 

「瀞霊廷に繋がる門は、何処に在る?」

「えっ、あぁ、ここの頂上です・・・」

「成程」

 

 

休む間も無く、一兵衛はその場を後にする。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、想定外の仕事が増えて一気に忙しくなるのだ。

 

 

「え?おじさん、もう行っちゃうんですか!?身体とか色々・・・」

「当たり前じゃ。事後処理を怠けていれば面倒な事になるのは仕事の鉄則じゃぞ」

「いや、そういう問題?」

「そういう問題じゃ」

 

 

と言って地下室から一度出たのだが、何を思ったのかすぐに戻ってきた。

ビシィィィッ!!と人差し指だけ出したポーズをバッチリ決めて、地下室の出口前で声を轟かせる。

 

 

「励めよ!!」

「!?!?」

 

 

それだけ言い残すと、一兵衛は霊圧を使って跳躍し、あっという間に霊王宮の中から霊圧を消した。

 

 

 

*****

 

 

 

地下室にいた一行が階段をつかって地上に戻ると、他の霊圧地点の対処をしていた浦原一行と合流する。さっきはいなかったハッチ達も含まれていた。

石田竜弦と黒崎一心は独自のルートで既に現世に帰っており、破面は囚われたハリベルを探しに行ったらしい。

 

 

「さて・・・ここにいても慣れませんし、瀞霊廷に帰りましょうか」

 

 

下に帰る手段は、霊王宮侵入時と同じ門を使う。

技術開発局は奇跡的に無事であり、隊長格の良質かつ高密度の霊圧を集結したお陰で門の力もまだ残っているため、あと数回は霊王宮と行き来できるらしい。

下にいる阿近と連絡を取り、座標を丁度いい位置に合わせていく。

向こうで発動スイッチが押された瞬間に、あの時と全く同じ霊子の門が下から生成された。

 

 

「お~~~い!!」

「・・・?何やアレ、面倒なやっちゃな」

 

 

上の方から、豆粒程度の人間がこちらに向かって手を振っている。

気怠そうに平子が適当に手を振り返すと、白黒2色で構成された3つの影が段々と此方へ近付いてくる。

というより、落ちてきた。

茶渡と岩鷲は霊圧を巧みに操作して安全に降りてきたが、一護は失敗して床に激突し、強く尻を打ち付けた。

 

 

「ムゥ・・・済まない、一護は相変わらず霊圧操作が下手なようだ」

「なっさけねえなァ一護!折角ユーハバッハ倒したクセにダッセェ!」

「オイテメェ勝手に言ってんじゃねえよ!!!俺が言いたかったのに!!!」

「はーん!!知るかボケ!呼んでもいねえのにわざわざ上に来て“もう全部終わったぜ”って誇らしげに言いやがったオメーにムカついてんだよ!!カッコつけてるけどドン滑りだ!!!恥ずかしーー!」

「う、うるせえよ!!そういやテメェ途中で別れてから何もしてねえだろ!呑気にサボってたんじゃねえの!?」

 

 

「やかましいわアホんだらァ!!!!」

「「すっ、すびばせ~ん!」」

 

 

ひよ里の怒声を受ける前から空気を読んでいた茶渡は黙っており、一護と岩鷲の首根っこを掴んで頭を強引に下げさせる。

元気なのはいいが、もうちょっと時を選んで欲しかった。

勿論この三人も、一緒に瀞霊廷に帰ることになった。

 

扉が開いた瞬間、皆何も言葉を発することなく淡々と足を進める。

最早誰も喋る気も起きず、瀞霊廷に着いてからもまるで隊首会の帰り道のように各々の持ち場があった場所へと戻っていく。

 

 

ユーハバッハの力と、霊王宮から発射した霊子砲弾の影響で悲惨なことになっているかと思ったが、隊舎に関しては頑強な造りのものも幾つかあったため、無事なものが多かった。

重要な施設を兼ねている一、四、十二番隊舎は言うまでもないが、訳アリで壊れやすい十一番隊舎に、隊長の意向で増改築された五、六、十番隊舎も傷は殆ど無い。

中央から離れた二番隊舎と十三番隊舎も損傷は少なかった。

 

一方で、当たり所が悪く被害の多い隊舎もあった。

九番隊は、何と不幸なことに、編集室の区画だけがピンポイントで破壊されていた。

元々の隊舎の被害は大した事無いレベルだが、破壊された編集室を目の当たりにした修兵は強いショックこそ受けたものの、この逆境を乗り越えてこそ真の編集長になれるのだと闘志を燃やす。

 

残る三、七、八番隊舎は、立地や当たり所の悪さなどもあり、全壊してしまっていた。

 

瓦礫の山となった隊舎を見たローズも修兵と同じく強いショックを受けたものの、「いいじゃないですか、これ以上失う物は何も無いんですから」という、吉良からのネガティブな方向の励ましを受けた結果、謎のインスピレーションに手繰り寄せられて再起を誓うこととなった。

八番隊には隊長副隊長両方が不在となったため、隊舎含めて改めて全部再建、という事になるだろう。

 

 

そして、七番隊跡地に歩いて辿り着いてから、更地になったいつもの場所に座り込み、縛り付けられたように動かなくなった。

 

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